弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
       事実及び理由
第一 請求
一 被告は、原告Aに対し、一万一〇〇〇円及びうち五五〇〇円に対する平成元年
一〇月二六日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告Bに対し、一万四二〇〇円及びうち七一〇〇円に対する平成二年
一一月二三日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
三 被告は、原告Cに対し、一万二六〇〇円及びうち六三〇〇円に対する平成二年
一一月二三日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
 原告らは、乗合バスの運転士として被告に雇用されているものであるが、夏期に
おける制帽の着用は、バスの運転士に無用の生理的苦痛を強い、かつ、運転に支障
を生じさせるものであるから、その着用を義務付ける就業規則等を夏期に適用する
ことは不合理であると主張して、制帽を着用しないでバスに乗務していたところ、
被告から、これが乗務中の制帽着用義務を定めた就業規則等に違反するとして、減
給の処分を受けた。そこで、その処分は懲戒権を濫用するものであり、かつ、不当
労働行為に当たるものであると主張して、被告に対し、減給相当額及びこれに対す
る賃金支払期日からの商事法定利率による遅延損害金と、労働基準法一一四条によ
る減給額相当の付加金の支払を求めたものである。
一 当事者間に争いのない事実(争点の前提となる事実)
1 被告は、一般乗合旅客自動車運送事業(いわゆる乗合バス事業)、一般貸切旅
客自動車運送事業(いわゆる貸切バス事業)等を営む株式会社である。
2 原告Aは昭和五五年七月一六日、原告Bは昭和六二年一二月二八日、原告Cは
昭和五二年一〇月三日、それぞれ被告に雇われ、大和営業所に配属されて乗合バス
の運転士として勤務しているものである。
3 原告らは、別紙処分行為一覧表記載の行為をした。
4 被告は、原告らの右行為は被告の就業規則八条一項、一〇条、乗務員および誘
導員服務規程(以下「服務規程」という。)五条、七条五号に反するものであると
して、従業員懲戒規程九条五号ないし七号により、平成元年一〇月六日、原告Aに
対し、平均賃金日額の二分の一(五五〇〇円)の減給処分を行い、同年一二月二五
日の賃金支払日に賃金から五五〇〇円を控除し、平成二年一〇月一九日、原告Bに
対し、平均賃金日額の二分の一(七一〇〇円)の減給処分を行い、同月二五日の賃
金支払日に賃金から七一〇〇円を控除し、同月一九日、原告Cに対し、平均賃金日
額の二分の一(六三〇〇円)の減給処分を行い、同月二五日の賃金支払日に賃金か
ら六三〇〇円を控除した。
5 右就業規則等の各規定の内容は、別紙関係規則規程一覧表記載のとおりであ
る。
二 争点
 本件の争点は、制帽着用義務を定めた就業規則及び服務規程を夏期に適用するこ
とが不合理であるといえるか、及び本件処分が不当労働行為に当たるといえるかで
あり、この点に関する当事者の主張は、次のとおりである。
(原告らの主張)
1 就業規則及び服務規程の右規定は、四季を通じてバス乗務中の運転士に制帽の
着用を義務付けているが、夏期に制帽を着用することは、その労働環境からみて、
バスの運転士に無用の生理的苦痛を強いるものである。それだけでなく、制帽を着
用することによって汗をかけば、ハンドルから手を離してこれを拭うなどの行動に
出るので、安全運転に支障を生じさせるものである。被告は、車内は冷房化されて
いると主張するが、車内が冷房化されても運転席は相当に暑く、制帽の着用による
生理的苦痛は変わらないし、発汗により安全運転に支障を生じさせることも変わら
ない。そうであるからといって、冷房を強くすれば、首や肩が冷やされ、健康上重
大な支障が生ずることになる。
2 夏期に制帽を着用することが不合理であることは、次のことからも明らかであ
る。すなわち、被告は、制帽を着用することがバスの運転士に無用の生理的苦痛を
強い、かつ、安全運転に支障を生じさせることから、従来、夏期においては、制帽
を着用せずに乗務することを容認しており、車内が冷房化された後においても制帽
の着用を厳格に要求しなかった。運転士も乗務中以外には着用していないし、乗務
中であっても、乗客のいない折返点での待機中、回送中あるいは監督者の目の届か
ない場所では着用していないことが多い。運転士以外の営業所の職員にも制帽が貸
与されているが、これらの者は着用していない。
 さらに、同業他社においては、冷房装置の有無にかかわらず、夏期においては運
転士に対して制帽の着用を義務付けていないし、実際にも着用していないのであ
る。
3 このような実態に即してみれば、夏期においてバスの運転士に制帽の着用を強
制することが不合理であることは明らかであるから、制帽の着用を義務付ける就業
規則及び服務規程の右規定は、夏期においては適用されるべきではない。本件処分
は、夏期においてこの規定に違反したことを理由とするものであるから、懲戒権を
濫用するものであって、無効である。
4 それにもかかわらず、被告が原告らを処分したのは、次のような事情によるも
のである。すなわち、被告の社内には、企業内単一労働組合で、被告とユニオンシ
ョップ協定を結んでいる神奈川中央交通労働組合(以下「神奈中労組」という。)
があり、原告らもその組合員であるが、同組合執行部は、労使協調路線をとり、真
剣に組合員の労働条件の改善に向けた取組みをしない。このため、これに批判的な
組合員は、「神奈中職場に権利を確立する会」(通称「権立会」)と称する団体を
結成し、この権立会を中心に、独自に、労働条件の改善を求めるなどの活動を行っ
てきたが、被告は、権立会のこの活動を嫌悪して、ことあるごとにその活動を妨害
してきた。
 原告Aは、権立会に対する被告の差別的な対応やこれを放任する組合執行部のあ
り方に不信を抱き、会社派にも権立会にも属さない中間層の組合員、特に若手組合
員を集めて「白友会」と称する団体を結成して活動していたが、平成元年八月ころ
権立会に加入した。
 原告B及び同Cは、権立会の主要な会員で、神奈中労組の役員選挙の際は権立会
の支援を受けて毎回立候補をしていた。
 本件処分は、原告らのこうした活動を嫌悪した被告が、原告らの影響力を減殺す
るために、原告らが夏期に制帽を着用しなかったことを口実にして行ったものであ
るから、不当労働行為に当たるものであって、無効である。
(被告の主張)
1 道路運送法二四条は、乗合バス事業が、不特定多数の公衆に輸送利便を提供
し、乗客の生命、身体、財産の安全に直接かかわる公共性のある事業であることか
ら、その事業者に対し、旅客又は公衆に接する従業員に制服を着用させるなどし
て、その者が従業員であることを表示させることを義務付けている。被告は、右法
律の規定を受けて、就業規則一〇条、服務規程七条五号により、従業員に制帽を含
む制服の着用を義務付けているのである。
2 被告においては、乗合バスが冷房化される以前に、暫定的な特例として、夏期
において制帽を着用しないで乗務することを認めていたことはあるが、冷房車の導
入に伴い、労使協議会の協議を経て、昭和五二年から冷房車に乗務するときは右特
例を適用しないこととし、さらに、昭和六二年五月までにすべて冷房車になったこ
とに伴い、労使協議会の協議を経て、右特例を廃止し、原則に戻って乗務中は全員
必ず制帽を着用することにしている。
3 被告の運行するバスには、全車両に除湿機能を伴った冷房装置が設けられ、さ
らに、運転席上部に、客席とは別に冷気の吹出口が設けられていて、運転士の操作
により、温度、風向、風量等の調節ができるようになっている。そのうえ、運転士
の制帽は、通気性に富んだ布地で作られているから、夏期に制帽を着用しても、そ
のことにより、運転士に生理的苦痛を生じさせたり、安全運転に支障を生じさせた
りすることはあり得ない。
4 屋内で勤務する事務職員と、乗客と接するバスの運転士とで制帽着用について
の取扱いが異なっても不合理なことではなく、事務職員も、客と接するときには、
制帽を着用することとしている。
 バスの運転士が待機中や回送中に脱帽していることがあるとしても、被告は、こ
れを容認しているのではなく、乗客がいないために大目に見ているにすぎない。全
国の同業他社においても、その八割強の会社が、冷房車を運転する場合は、夏期に
おいてもバスの運転士に制帽着用を義務付けているのである。
5 このように、制帽の着用を義務付けている就業規則等の規定を夏期に適用する
ことに何ら不合理な点はないから、これが不合理であることを前提とする原告らの
懲戒権濫用の主張は理由がない。
6 本件処件は、原告らが、就業規則等の規定に反して、繰り返し制帽を着用しな
いで乗務し、被告の再三にわたる教育指導や指示命令に従わなかったことに対し、
被告が職場規律の保持のために行ったものであり、原告らが権立会又は白友会の活
動をしていることとは何の関係もないから、その活動をしていることを理由に処分
したことを前提とする原告らの不当労働行為の主張は理由がない。
 なお、権立会、白友会なる団体は、労働組合ではなく、その団体の活動は、労働
組合の正当な行為でもないから、この点からみても、本件処分は不当労働行為には
当たらない。
三 証拠関係(省略)
第三 争点に対する判断
一 被告においては、戦前から、制服上下と制帽を乗務員に着用させていたが、昭
和二六年に制定された道路運送法により、乗合バスの乗務員に制服を着用させる義
務が定められたのに伴い、乗務員の制服制帽着用義務を就業規則上に明文化した
(乙第四、第一一四号証)。
 その後、昭和三九年に、被告の従業員のうちの運転士、車掌及び誘導員について
「乗務員及び誘導員服務心得」を制定した際にも、その中に乗務員等の遵守事項の
一つとして制服制帽の着用義務を明記した(乙第五、第一一四号証)。
二 被告は、昭和五一年に、神奈中労組から、貸与制服の着用等を具体的に定めた
「被服規程」の中に夏期(六月一五日から九月一四日まで)に限り脱帽を許可する
との条項を新設するよう申入れを受けたので、労使協議会に諮り、神奈中労組の同
意を得て、昭和五二年から、被服規程の改定は行わず、労使の了解事項として、夏
期の暑い日中に限り特例として脱帽を許可することとした(乙第九号証)。
 その後、次第に冷房車が導入されるようになったので、被告は、神奈中労組の同
意を得て、昭和五五年から冷房車については前記特例を適用せず、原則どおり制帽
を着用すべきものとした(乙第一一号証)。そして、昭和六二年五月までに全車の
冷房化が完了したことに伴い、神奈中労組の同意を得て、前記特例を廃止して全面
的に制帽の着用を実施することとし(乙第一三号証)、その趣旨の周知徹底を図っ
てきた(乙第一四ないし第一六号証)。
三 このように、バスの運転士に対して制服制帽の着用を義務付けた就業規則一〇
条、服務規程七条五号の規定は、道路運送法二四条の規定に基づくものであり、右
就業規則等の規定の目的は、乗合バス事業が、不特定多数の公衆に輸送利便を提供
し、乗客の生命、身体、財産の安全に直接かかわる公共性のある事業であることに
かんがみ、乗務員に対して、制服、制帽を着用させることを通してその任務と責任
を自覚させるとともに、これを利用する公衆に対して、正規の乗合バスの乗務員で
あることを認識させて信頼感を与えることにあると考えられるから、それ自体は合
理性のあるものである。
四 原告らは、夏期に制帽を着用することは、バスの運転士に無用の生理的苦痛を
強い、安全運転に支障を生じさせる点で不合理であると主張する。そして、原告ら
及びその他の運転士ら作成の陳述書類(甲第四、第八、第一〇、第一一、第一四号
証、第三三号証の七)と証人D、原告ら本人の各供述中には、夏期に制帽を着用す
ることは苦痛である旨の記載と供述がある。
 しかしながら、その苦痛がどの程度のものであるかを具体的、客観的に裏付ける
ものはないこと、被告の運行する乗合バスは、全車に除湿機能を伴う冷房装置が設
けられているほか、運転席上部に、客席とは別に冷気の吹出口二個とスイングファ
ン(ローリングファンともいい、内気、外気の吸排、攪拌による温度の調整と均一
化をするための装置)一個が設けられていて、運転士の操作により、運転席だけの
温度、風向、風量等を調節することができる構造になっていること、運転士の制帽
は網目の布地で作られた通気性に富んだものであること、原告Aは平成元年五月
の、原告Bは昭和六三年四月の、原告Cは平成元年一月の各添乗監査の際までは、
夏期においても制帽を着用しており、この間、特に制帽の着用による身体の異常や
運転の支障を訴えたことはなかったこと、夏期における制帽の着用はバスの運転士
も構成員となっている神奈中労組の同意のもとに実施されているものであること
(乙第五七号証、第六九号証の一、二、第八二、第八三、第九四号証、証人D、同
Eの各供述)などの事実に照らすと、前記原告ら及びその他の者の作成した陳述書
類や供述にもかかわらず、夏期に制帽を着用することが、それ以外の時期に着用す
ることと比べて、特にバスの運転士に生理的苦痛を与えたり、安全運転に支障を来
したりするものと認めることはできない。
五 原告らは、室内で勤務する事務職員の制帽着用状況と対比しても、夏期におい
て運転士を制帽を着用させることが不合理であると主張するが、室内で勤務する事
務職員と乗合バスの運転士では、その職責も制帽着用の趣旨も違うから、その職種
に応じた運用がなされることはあり得ることであって、両者を同じ取扱いにしない
からといって、夏期においてバスの運転士に制帽を着用させることが不合理である
とはいえない。
六 原告らは、夏期における制帽の着用が不合理なものであるため、同業他社にお
いては、夏期における制帽の着用を義務付けていないと主張する。しかしながら、
被告が、労務課長Fを責任者として、平成五年初めに、全国の乗合バス会社のうち
保有車両が五〇台以上の会社全部(二〇一社)に対して、書面又は電話により夏期
における制帽の着用状況について問い合わせたところによれば、全車両とも制帽を
着用すべきものとしている会社は一五三社、冷房車だけ制帽を着用すべきものとし
ている会社は八社を数え、被告と営業区域が競合する会社にも制帽を着用を義務付
けているものがあるのであり(乙第一一五、第一一六号証、第一一七号証の一、
二)、権立会所属の運転士のGが各バス会社の労働組合に照会した結果によって
も、夏期に制帽を着用しないことを容認している会社は半数にも満たないのである
(甲第二六号証)。
七 以上の次第で、バスの運転士に制帽の着用を義務付けている就業規則一〇条、
服務規程七条五号の定めを夏期に適用することが不合理であるとはいえないから、
これが不合理であることを前提とする原告らの懲戒権濫用の主張は理由がない。
八 被告の社内には、企業内単一労働組合で、被告とユニオンショップ協定を結ん
でいる神奈中労組があるが、同組合執行部に批判的な組合員は、権立会、白友会等
の団体を結成し、それらの会を中心に独自に活動をしており、原告らもそれらの会
員として活発に活動してきた者であるところ(原告らの各供述)、原告らは、本件
処分は、原告らの右活動を嫌悪してなしたものであるから、不当労働行為に当たる
ものであると主張する。
 しかしながら、第一の一の3記載のとおり、本件処分は、故意に制帽を着用しな
いで乗務し、上司の警告や指導に反抗してこれを反復したことに対してなされたも
のであることは明らかである。原告らのほかにも制帽を着用しないで乗務する運転
士がいないとはいえないが、これらは、制帽を着用しないで乗務したことを上司に
認知されてない者か、認知されて警告書を発せられても、これを受け入れている者
であって、原告らのように、故意に制帽を着用しないで乗務し、上司の警告や指導
にも反抗してこれを反復している者とは、その情状において大きく異なるから、こ
れらの者を処分せず、原告らだけを処分したからといって、これが、原告らが権立
会又は白友会の会員としての活動を嫌悪してなしたものとはいえない。したがっ
て、原告らの右主張は理由がない。
九 よって、原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴
訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり
判決する。
(裁判官 小林亘 飯塚圭一 柳澤直人)
 処分行為一覧表
一 原告A
1 平成元年六月八日午前一一時五八分から午後〇時二五分ころまでの間、町田バ
スセンターと成瀬台の間を制帽を着用しないでバスに乗務した。そして、添乗監査
(監査業務を担当している被告本社調査室所属の監察員が、会社の業務監査の一環
として、運転士が乗務している乗合バスに添乗して、その日常の業務遂行状況を監
査することをいう。以下同じ。)をしていた被告本社調査室(以下「調査室」とい
う。)のH監察員にこれを現認されて注意を受け、警告書を発行され、同月二七
日、調査室より右報告を受けた大和営業所のI助役から、個別教育を受けて、乗務
中制帽を着用するように指示されたのに、「暑いので脱いだ。これからも暑い時は
脱がせてもらう。」などと言って右指示を拒否し、同年八月二日、同営業所のE所
長からも同様の指示を受けたのに、これを聞き入れなかった。
2 同年八月二〇日午前九時五〇分から午前一〇時四分ころまでの間、町田バスセ
ンターと成瀬駅の間を制帽を着用しないでバスに乗務した。そして、添乗監査をし
ていたH監察員にこれを現認されて注意を受け、警告書を発行され、同月二六日、
調査室より右報告を受けたE所長とI助役から、重ねて個別教育を受け、乗務中制
帽を着用するように指示されたのに、「眠気がして安全運転できないから脱いだ。
暑い時はかぶらない。」などと言って右指示に従うことを拒否した。そのため、E
所長から、「今度は私の方で添乗し、写真も撮らせてもらう。」と警告注意を受け
た。
3 同月三一日午後五時二五分から三八分ころまでの間、車庫前と町田ターミナル
の間を制帽を着用しないでバスに乗務した。
二 原告B
1 平成二年五月三〇日午後一時五五分から午後二時三分ころまでの間、小田急相
模原駅と国立病院間を制帽を着用しないでバスに乗務した。そして、添乗監査をし
ていた調査室のJ監察員にこれを現認されて注意を受け、警告書を発行され、同年
七月五日、大和営業所のE所長とK助役から、個別教育を受けて、乗務中制帽を着
用するように指示されたのに、「暑い時は着用できない。」と言って右指示に従う
ことを拒否した。
2 同年八月一三日午前八時一三分から二五分ころまでの間、成瀬台とつくし野駅
間を制帽を着用しないでバスに乗務した。そして、添乗監査をしていたJ監察員に
これを現認されて注意を受け、警告書を発行された。
3 次いで、同日午後四時三二分から午後五時一六分ころまでの間、鶴間駅と桜ヶ
丘駅の間を制帽を着用しないでバスに乗務した。そして、追跡添乗(添乗監査によ
って警告書を発行され、所属営業所の上司から注意、指導を受けた運転士に対し、
所属営業所の上司がその運転士の乗務する乗合バスに添乗して注意、指導の履行状
況を監査することをいう。以下同じ。)をしていたE所長とL助役にこれを現認さ
れ、その場で、E所長らから制帽を着用するように指示されたのに、その指示に従
わなかった。
4 同月一六日午前九時五〇分から午前一〇時二三分ころまでの間、鶴間駅と大和
駅の間を制帽を着用しないでバスに乗務した。そして、追跡添乗をしていたE所長
にこれを現認され、その場で、制帽を着用するように指示されたのに、その指示に
従わなかった。
5 同年九月五日、大和営業所のI助役から、個別教育を受けて、乗務中制帽を着
用するように指示されたのに、「暑い時には事故をやらないためかぶらない。」な
どと言って右指示に従うことを拒否した。次いで、同月一〇日、I助役から、同月
一三日に被告本社研修センターで個別教育を受講するように指示され、同月一二
日、E所長からも重ねて同様の指示を受けたのに、その指示に従わなかった。
6 同月二九日午後四時二〇分から五五分ころまでの間、町田バスセンターとつく
し野駅の間を制帽を着用しないでバスに乗務した。そして、添乗監査をしていた調
査室のM監察員にこれを現認されて注意を受け、警告書を発行された。
三 原告C
1 同年四月二三日午前八時四四分から午前九時七分ころまでの間、町田バスセン
ターと成瀬台の間を制帽を着用しないでバスに乗務した。そして、添乗監査をして
いた調査室のJ監察員にこれを現認されて注意を受け、警告書を発行され、同年五
月二一日、調査室より右報告を受けた大和営業所のE所長とL助役から、個別教育
を受けて、乗務中制帽を着用するように指示されたのに、「帽子は暑いからかぶら
ない。」などと言って右指示に従うことを拒否した。
2 同年七月五日、E所長から、同月七日に本社研修センターで個別教育を受講す
るように指示されたのに、その指示に従わなかった。
3 同年八月二一日午前一一時三二分から五四分ころまでの間、鶴間駅と大和駅の
間を制帽を着用しないでバスに乗務した。そして、追跡添乗していたE所長にこれ
を現認され、その場で、同所長から制帽を着用するように指示されたのに、「暑く
て帽子はかぶれない。」と言って、その指示に従わなかった。
4 同年九月三日午前一〇時三一分から四七分ころまでの間、成瀬台と町田バスタ
ーミナルの間を制帽を着用しないでバスに乗務した。そして、添乗監査をしていた
調査室のN監察員にこれを現認されて注意を受け、警告書を発行され、同月一二
日、調査室より右報告を受けた大和営業所のE所長とI助役から、個別教育を受け
て、乗務中制帽を着用するように指示されたのに、「暑い時は脱ぐよ。」などと言
って右指示に従うことを拒否した。
5 同月二一日、E所長から、再度、同年一〇月三日に本社研修センターで個別教
育を受講するように指示されたのに、その指示に従わなかった。
6 同月三〇日午前一〇時四五分から午前一一時一〇分ころまでの間、町田バスセ
ンターとつくし野駅の間を制帽を着用しないでバスに乗務した。そして、添乗監査
をしていた調査室のM監察員にこれを現認されて注意を受け、警告書を発行され
た。
 関係規則規程一覧表
従業員就業規則八条一項
 従業員は、その職務に関して会社の諸規則を誠実に守り、所属長(課長以上の者
および所長をいう。以下同じ。)の指示に従い互いに協力し、その職責を遂行する
とともに職場秩序の保持に努めなければならない。
同規則一〇条
 制服および制帽を貸与された従業員は、労働時間中必ずこれを着用しなければな
らない。
乗務員および誘導員服務規程三条
 乗務員等は、事業の公共性を認識し、職責の重要性を自覚して誠実に職務を遂行
しなければならない。
同規程五条
 乗務員等は、所属長の指示命令に従って職場の秩序保持に努めなければならな
い。
同規程七条(抄)
 乗務員等は、勤務に際し、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
5 勤務時間中は、必ず制服および制帽を着用すること。
従業員懲戒規程九条
 次の各号の一に該当するときは、譴責、減給、出勤停止、昇給停止もしくは降職
に処する。ただし、情状により所属長の訓戒のみに止めることができる。
(1) 正当な理由なく、しばしば遅刻・早退したとき、または無断欠勤引続き三
日を越えたるとき。
(2) 就業時間中著しく業務を怠ったとき。
(3) 業務上の過失または監督不行届により事故を発生させ、会社に損害を与え
たとき。
(4) 業務上不正な行為があったとき。
(5) 社内の風紀秩序を乱す行為のあったとき。
(6) 会社の諸規則、令達に違反したとき。
(7) 業務上の指示命令に違反したとき。
(8) 業務上の権限を濫用したとき。
(9) 社員として、会社の体面を汚す行為のあったとき。
(10) その他前各号に準ずると認められたとき。

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