弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
       事実及び理由
一 当事者の求めた裁判
 控訴人は「原判決主文第二項を取り消す。被控訴人が控訴人に対してした原判決
別紙物件目録記載の自動車の抹消登録申請を受理しないとの処分を取り消す。訴訟
費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、
主文同旨の判決を求めた。
二 本件事案の概要は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決事実及び理由
 「第二 事案の概要等と争点」及び「第三 争点についての当事者の主張」の自
動車抹消登録申請不受理取消請求関係部分記載のとおりであるからこれを引用す
る。
1 原判決四頁一〇行目の「用途を廃止し」の次に「(甲一)」を加える。
2 原判決五頁一行目の「同月一一日ころ」を「同月一五日」に改め、二行目の
「返送し」の次に「(甲三の2)」を加える。
3 原判決一一頁一三行目の「適正」の次に「迅速」を加える。
4 当審における控訴人の新たな主張
(一) 本件抹消登録申請を不受理とする旨を記載した書面(甲四)には、処分
者、被処分者、処分の年月日、本件自動車に関する記載がなく、控訴人の不服申立
に支障を生じるおそれがあるから、処分の手続に違法がある。
(二) 法三九条一項は事務的ないし軽微な事項を政令に委任しただけで、法一五
条一項一号の抹消登録申請(以下「廃車申請」ともいう。)に出頭主義を採用する
というような国民の権利義務に大きな影響を及ぼす規定を設けることは委任の範囲
を逸脱し(内閣法一一条)、また、行政手続法一条にも違反しており、違法であ
る。
三 当裁判所の判断は、次のとおり付加、訂正及び削除するほかは、原判決事実及
び理由「第四 当裁判所の判断」の自動車抹消登録申請不受理取消請求関係部分の
記載と同じであるからこれを引用する。
1 原判決一九頁一〇行目の「(なお、」から一二行目の「規定している。)」ま
でを削除し、同頁末行の末尾に「なお、控訴人は、登録令には廃車登録に関する明
確な規定がないという前提に立って、登録令は全体として廃車登録には適用されな
い旨主張するが、登録令一条はその目的として法による自動車の登録等に関する事
項を定めるとしていて、全体として廃車登録への適用を除外する旨の規定はなく、
かえって、個別に廃車登録への適用を除外する旨の規定をおいている(三二条但書
)から、そのような個別の規定がない限り原則として廃車登録へも適用があるとい
うべきであって、控訴人の主張は採用できない。」を加える。
2 原判決二〇頁四行目の「公証」を「公示」に、一一行目の「を公証する民事的
効力」を「に対抗力」に、それぞれ改める。
3 原判決二一頁七行目の「登録令一四条」の前に「法七条、」を、八行目の「提
出された書面」の前に「原則として、」を、それぞれ加える。
4 原判決二二頁一二行目の「職権で」から一三行目の「ならざるを得ない。」ま
でを「明白な誤記であればそのまま受理することもできようが、申請書等を勝手に
訂正することもできないから、受理を留保して後日補正してもらうか、そうでなけ
れば、不受理処分とせざるを得ない(登録令二一条一項四号等)。」に改める。
5 原判決二四頁七行目「当事者本人」を「行政書士以外」に、九行目の「抹消登
録については」を「その場合には」に、末行の「チェックがあり」を「チェックが
あるなど」に、それぞれ改める。
6 原判決二五頁三行目の「結局、」を「他方、本件自動車の用途廃止を証する書
面(甲一)の添付がなく、結局、控訴人の意思が、」に改める。
7 原判決二六頁二行目の「また、」から二九頁一三行目までを次に改める。
 「とりわけ、本件抹消登録申請のような用途廃止は、滅失及び解体のように外形
的事実として既に発生し、客観的に明らかな場合と異なり、最終的には所有者の意
思にかかるものであるから、この点からいっても、申請意思確認の必要性は認めら
れる。また、控訴人は、登録官が申請人本人と面識のある場合は少なく、本人と特
定できない以上、出頭したからといって登録の真正が確保されるとは限らないと主
張する。しかし、単に、所有者の名前で虚偽の申請書類一式を郵送するのに比べ
て、自ら出頭して又は代理人を出頭させてまで虚偽の申請をしょうとする者は少な
いであろうし、その場合、申請時の態度などから発覚することもありうる。もちろ
ん、登録の真正を確保するには、当事者を出頭させることなく、陸運支局等におい
て調査して事実関係を確認することも考えられる。しかし、自動車は、建物と異な
り移動するものであるから、車検証記載の位置に存在しなかったからといって滅失
または解体されたと判断することはできないし、用途廃止の場合はさらに所有者の
意思を確認することになろうから、右調査は容易ではない。なお、控訴人
は、廃車登録を登録官が職権ですべきものと主張するが、職権による抹消登録が補
充的な規定であることは法一五条の規定自体から明らかである。
 また、即時に申請意思を確認することや補正を促すことによって登録事務の迅速
な処理が可能になる点でも、廃車登録における当事者出頭主義には合理性を認める
ことができる。即ち、仮に年間約二〇〇〇件の廃車登録申請について、郵送による
申請が可能になれば、本人による郵送申請が増加するものと考えられ、そうなれ
ば、訂正等を要する申請が一層増えるであろうし、かつ、電話などで訂正を促そう
としても、連絡の取れない場合、連絡が取れても迅速・適切に補正されない場合な
どが発生し、事務量が増加するとともに、処理が停滞することは明らかである。
 しかしながら、順位保全の点については、法一五条一項の抹消登録申請の場合に
は自動車が実態を喪失し再登録が予定されていないことから、順位保全の必要性自
体が認められず、かつ、被控訴人主張のような例外的な場合に必要が生じるのであ
れば、それについて、任意に当事者の出頭を求めたり、あるいは自ら調査すれば足
りるのであって、例外的な場合のために全体について当事者出頭主義を採用しなけ
ればならないとはいえない。したがって、また、即日補正により、直ちに申請が受
理されることにより、申請人が利益を受けるという事態も考えにくい。
 他方、控訴人は、郵便等による申請が当事者に負担をかけず、社会経済的にも合
理的である旨の主張をし、行政手続によっては当事者の負担を考慮して郵送等によ
る申請が認められていることを指摘する(甲五ないし七)。また、遠隔地の場合に
は代理人を利用することにより負担を軽減することが可能であるが、それにして
も、申請者にとって某かの負担となる。
 そこで、当事者出頭主義の目的自体は合理性を有するとしても、手段との関係で
当事者出頭主義による申請者の負担が合理性を欠く過重なものかどうかを検討す
る。まず、前記目的(登録の真正確保及び登録事務の迅速な処理)を達成するため
申請者が出頭することによる負担が郵送の方法を採ることにより軽減される部分と
郵送による方法を認めることにより陸運支局等において本人に連絡を取って補正を
促したり、積極的に調査したりする負担とを比較すれば、当然にどちらか一方を採
用すべきであると断定できるほどの大きな差があるとは考えられない。そこで、さ
らに、所有者に負担を求めることを正当とする理由があるかどうかを検討するに、
所有者は廃車登録により直接の利益を受けるとはいえなくても、自動車を所有する
場合、抹消登録を含め登録の真正が保持されることにより利益を得るのだから、所
有者に負担を求めることには合理性がある。他方、陸運支局等に負担させることに
なれば、事務量の増加によって、いわゆる行政改革に伴う人員の削減に支障を来
し、場合によっては人員の増加などを招くこともあり得るから、結局は、国民ない
し社会の負担となる。現在のように自動車を所有する人が多くなり、これと全く無
縁の生活を送ることは考えられない状況であれば、国民ないし社会全体の負担によ
り登録の真正を保持することにも合理性がないとはいえない。また、現在でも大都
市部では日常、ほとんど電車と自転車や徒歩で移動し、バスも利用しないという人
が相当数を占めるものと考えられるところであり、そのような人にとっては、自動
車の所有者の利便のために余分な税金を使うということは納得し難いところであろ
う。なお、控訴人は、当事者出頭主義により公害の増大、道路の渋滞を招くとも述
べるが、そのような因果の関係があるとは認め難い。このように考えてくると、廃
車登録申請の場合にも当事者出頭主義を採用することには合理的な理由があるとい
える(もちろん、今日に置いて、郵送による申請を認めることに合理性がないとい
う趣旨ではない。)。」
8 原判決三〇頁一三行目の冒頭から一四行目の「趣旨のものであって、」までを
次に改める。
 「確かに、沿革的に見て、平等原則は、当初、単に国家による法的な差別扱いを
禁止し、機会の平等を保障しようとしたが(形式的平等)、その後、社会的、経済
的な格差が無視し得ないものとなり、個人の尊厳を確保するために、事実上存在す
る社会的、経済的不平等を積極的に是正すること、即ち、結果の平等までもが求め
られるようになった(実質的平等)。しかし、結果の平等を徹底すれば、無数の形
式的差別扱いを生じ、自由な社会的、経済的活動を拘束し、阻害することになるか
ら、憲法は、一四条一項の定める法の下の平等としては、絶対的な平等ではなく、
同一の事情の下での差別ないし差別すべき合理的理由のない差別を禁止し、事情が
異なる場合にそれに応じた合理的な根拠に基づく差別的な取り扱いを禁止するもの
ではない(相対的平等)という限度で、実質的平
等の趣旨を考慮するにとどめ、積極的な実質的平等の実現は社会権によるものとし
たと解するのが相当である。従って、憲法一四条一項は、」
9 当審における控訴人の新たな主張について
(一) 本件抹消登録申請を不受理とする旨を記載した書面(甲四)の方式につい

 確かに、右書面には、処分者、被処分者、処分の年月日、本件自動車に関する記
載がないが、控訴人が送付した申請書類一式を同封して返送し、その封筒には平成
一〇年三月一五日の消印が押捺され、裏面には九州運輸局鹿児島陸運支局の記載が
なされており(甲三の2)、これらによれば右の点もほぼ判明するのであるから、
処分の手続に瑕疵があるとはいえない。
(二) 法三九条一項の委任の範囲などについて
 不動産登記法は当事者出頭主義を採用するか否かを明記している(同法二六条一
項)のに対し、法はこれについて全く規定をおいておらず、また、遠隔地居住者に
対する配慮としては、わずかに自動車登録番号標の滅失等の際の取り外し及び取付
について市町村長においても行う余地を定めるだけである(一一条二項以下)。さ
らに、自動車の登録制度については、土地建物とは異なり、自動車の普及の程度な
どによって運用方法を機敏に改訂する必要性が予想される。このような点からすれ
ば、法三九条一項は当事者出頭主義の採否を含めて政令に委任したものと解するの
が相当である。そして、前記のとおり法一五条一項の抹消登録についても当事者出
頭主義を採用することに合理的理由が認められる以上、これについても委任の範囲
内であるというべきである。
 また、行政手続法一条違反をいう点は、同条は同法の目的と適用範囲を定めたも
のであり、理由がない。
 よって、控訴人の右主張は採用できない。
四 よって、原判決は相当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却する。
福岡高等裁判所宮崎支部
裁判長裁判官 海保寛
裁判官 多見谷寿郎
裁判官 水野有子

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