弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告訴訟代理人弁護士花村美樹の上告理由について。
 本件農地は被告人先代Dの所有に属したところa村農地委員会はこれを自作農創
設特別措置法(以下法と略称する)第二条第一項第一号に該当する農地として買収
計画を立てたので同人は右農地は法第五条第六号に該当するから買収計画から除外
さるべきものと主張し同委員会に対して異議の申立をしたが却下の決定があつた。
同人はさらにE県農地委員会に対し訴願をしたが同委員会は昭和二二年九月一七日
付で却下の裁決を下し、右裁決に対しては出訴期間内に訴が提起されなかつたので
ある、そして右買収計画に対しE県農地委員会の承認が与えられ、三重県知事は昭
和二三年三月二四日買収令書を同人に交付して買収を行つたのであるが原判決は本
件農地(訴外F耕作の分)については法第五条第六号に該当する農地として買収を
免るかべきものであると判断し従つてa村農地委員会のした買収計画は違法であり、
この買収計画にもとずく三重県知事のした買収処分もまた違法であるから右買収処
分の取消を求める被上告人等の本訴請求は正当であると判定したのである。
 ところで法第五条はその各号の一に該当する農地については買収をしないと規定
しているのであるからこれに該当する農地を買収計画に入れることの違法であるこ
とは勿論これが買収処分の違法であることは言うまでもないところである。従つて
右の如き違法は買収計画と買収処分に共通するものであるから買収計画に対し異議
訴訟の途を開きその違法を攻撃し得るからといつて買収処分取消の訴において、そ
の違法を攻撃し得ないと解すべきではない、法第七条が買収計画に対して異議訴訟
を認めているのはただその違法の場合に行政庁に是正の機会を与え所有者の権利保
護の簡便な途を開いただけであつて異議訴訟等の手続をとらなかつたからと言つて
買収処分取消の訴訟においてその違法を攻撃する機会を失わせる趣旨であるとは解
せられない。買収計画に対し異議申立や訴願をせず又は訴訟裁決に対する出訴期間
を徒過したときは当事者はもはや買収計画に対しその取消を請求する権利を失うの
であるからその意味では確定的効力があるのであるがその確定的効力は買収計画内
容に存する違法を違法なしと確定する効力があるものではない。買収の計画は買収
手続の一段階をなす市町村農地委員会の処分に過ぎないので更に都道府県農地委員
会の承認及び都道府県知事の買収令書の交付を経て買収手続は完結するのである。
しかして買収計画の確定的効力は前記の如くその内容に存する違法を違法なしと確
定する効力がないのであるから都道府県農地委員会の買収計画承認の権限は買収計
画の内容の適否を審査する権限を包含するものと解すべく更に都道府県知事は買収
計画又はその承認の決議に対しこれを再議に付して是正させる権限を有するのであ
る(農地調整法第一五条ノ二八)故に都道府県農地委員会や知事が右権限の適正な
行使を誤つた結果内容の違法な買収計画にもとずいて買収処分が行われたならばか
かる買収処分が違法であることは言うまでもないところで当事者は買収計画に対す
る不服を申立てる権利を失つたとしても更に買収処分取消の訴においてその違法を
攻撃し得るものといわなければならない、然らば右と同一の見解に立つ原判決は正
当で論旨は理由なさものである。
 よつて民訴第三九六条第三八四条第一項、第九五号第八九条により主文のとおり
判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    藤   田   八   郎

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