弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人古屋貞雄の上告趣意について。
 所論は、違憲を主張するけれども、実質は、単なる法令の解釈適用の誤りと事実
誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 のみならず、当裁判所の判例(昭和三〇年(オ)第八九〇号、同三六年四月五日
大法廷判決、民集一五巻四号六五七頁)は、日本の国内法上で朝鮮人としての法的
地位をもつた人は、日本国との平和条約発効により、日本の国籍を喪失したものと
解している。その法理は、日本の国内法上台湾人としての法的地位をもつた人につ
いても、これを異にすべき理由はない。ただ、台湾人としての法的地位をもつた人
は、台湾が日本国と中華民国との間の平和条約によつて、日本国から中華民国に譲
渡されたのであるから、昭和二七年八月五日同条約の発効により日本の国籍を喪失
したことになるのである。そして日本の国内法上台湾人としての法的地位をもつて
いた人とは、台湾の戸籍に登載された人及び現実には台湾の戸籍に登載されていな
くとも、法律上台湾人との婚姻の届出がなされて内地戸籍から除かれるべき人すな
わち内地人たる法的地位を失つた人を含むものと解するのを相当とする。もつとも、
この点に関し右判例は、「朝鮮人としての法的地位をもつた人というのは、……朝
鮮戸籍に登載された人である」と判示するにとどまり、右内地戸籍から除かるべき
事由の生じた人を含むかどうかについて、判文上明らかにしていない。しかし、そ
れは事案がたまたま内地人女が朝鮮人男と婚姻し朝鮮戸籍に入籍していたものであ
つたためであつて、婚姻は、その届出によつて成立するものであること、その事後
処理にすぎない除籍ないし送籍の手続がとられたかどうかは、婚姻の効力に影響を
及ぼすものでないことを併せ考えると、朝鮮人との婚姻による除籍事由の生じた人
に対し、朝鮮人としての法的地位をもつことを否定する趣旨を含むものと解すべき
ではなく、このことは、台湾人としての法的地位をもつていた人の範囲を認めるに
ついても妥当するところである。
 本件において、原審が証拠により適法に認定したところによれば、被告人は、大
正一〇年二月七日小田原市a町b丁目c番地に本籍を有した日本人として出生し、
昭和二二年三月一五日台湾人Aとの適式の婚姻届をなし本籍地の小田原市長によつ
て受理されているのであるから、たとい重婚であつてもその婚姻は無効ではなく、
被告人の戸籍にはその氏名が抹消未済となつてはいても、被告人は、日本国と中華
民国との間の平和条約発効前台湾人との婚姻によつて内地戸籍から除かるべき事由
の生じていたものであり、すなわち台湾人としての法的地位をもつていた人であつ
て、右条約発効とともに日本国籍を喪失したものと解すべきである。
 よつて刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官奥野健一の補足意見があるほか裁判官全員一致の意見によるも
のである。
 裁判官奥野健一の補足意見は次のとおりである。
 私見によれば、わが国はポツダム宣言受諾により台湾等の領土権を放棄したもの
であり、日本国との平和条約及び日本国と中華民国との間の平和条約は、何れもこ
れを確認したものと解する。従つて本来の台湾人及びその子孫はわが国がポツダム
宣言を受諾した時から、日本国籍を離脱したものと解すべきであり、本件において
は、被告人は終戦後である昭和二二年三月一五日当時既に外国人となつていた台湾
人A(中華民国人)と婚姻したのであるから当時のわが国籍法(明治三二年法律第
六六号)一八条、法例一四条、中華民国国籍法二条一号により、夫の国籍である中
華民国の国籍を取得し、日本の国籍を失つたものと解すべきである。
 多数意見は、日本国と中華民国との間の平和条約二条により同条約発効と同時に
被告人は日本の国籍を喪失したものと判示する。しかし、前述の如くわが国はポツ
ダム宣言の受諾によつて台湾等の領土権を放棄したものであり、このことは日本国
との平和条約二条及び日本国と中華民国との間の平和条約二条によつて確認された
ものと解すべきであるが、ボツダム宣言においても、また右各条約においても領土
の変更に関する条項を規定しているのみで、国籍の変動については全く言及してい
ないのである。勿論領土割譲により領土が外国領土に帰属することとなつた以上国
民の存在しないことは考えられないから、台湾についていえば、本来の台湾人及び
その子孫につき日本国籍を喪失させる趣旨を含むものであることは首肯できるとこ
ろであるが、これらの者と婚姻した日本人女についてまで日本国籍を喪失せしめる
趣旨まで包含するものとは解し難い。
 そして国際法及び国際慣行上も、夫婦同一国籍主義の原則は確立されていないの
であるから、右日本人女の国籍の問題は結局わが国の国内法により決定しなければ
ならないのである。然るに、右各条約発効当時施行されているわが現行国籍法(昭
和二五年法律第一四七号)によれば、夫婦独立国籍主義を採用しているのであつて、
外国人と婚姻した日本人女は、特に日本国籍離脱の手続を採らない限り、当然には
日本国籍を失わないものといわねばならない。従つて、右条約の発効と同時に被告
人は日本の国籍を喪失したとする多数意見には賛成し難い。
 また、多数意見は前記条約発効前に台湾人と婚姻し、内地の戸籍より除籍せらる
べき人は仮令台湾の戸籍に登載されていない者でも台湾人としての法的地位を有し、
条約発効と共に日本の国籍を喪失すると判示しており、右は共通法三条を根拠とす
るものであるが、台湾等がわが国の領土であることを前提として内地との関係を規
定している共通法は、わが国が前記ポツダム宣言受諾により台湾等の領土権を放棄
した趣旨と相容れないものであるから、終戦後は右共通法は実質的にその効力を夫
つたものと解するを相当とすべく、また右各条約発効当時においては憲法の施行に
伴い民法の改正が行われ、これにより共通法三条の「家ニ入ル」「家ヲ去ル」の規
定及びこれに基づく戸籍に関する法令も既に失効したものと解すべきである。
 そして本件の場合は昭和三〇年(オ)第八九〇号の事件の事案と異り、終戦後被
告人が婚姻した事案であるから、共通法及びこれに基づく戸籍に関する法令により
内地戸籍及び台湾戸籍の移動は最早行わるべきではないと解する。
 然らば、既に失効した前記規定を根拠として、終戦後台湾人と婚姻した被告人に
ついて内地戸籍より除籍さるべき者として日本国籍の喪失を認定した多数意見のこ
の点の判断にも賛成できない。
  昭和三七年一二月五日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奧   野   健   一
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊

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