弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主    文
1 原告と被告とを離婚する。
2 原告とA(平成7年7月31日生)とを離縁する。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2事案の概要
 本件は,夫である原告が妻である被告に対し,婚姻を継続し難い重大な事由
があるとして,民法770条1項5号に基づき離婚を求めるとともに,同法814
条1項3号に基づき養子であるAとの離縁を求めた事案である。
 1 前提事実
 (1)原告(昭和42年5月10日生)と被告(昭和46年1月7日生)は,平
成14年2月3日に婚姻の届出をした夫婦である(甲1)。
 (2)A(平成7年7月31日生)(以下「A」という。)は,被告と被告の前
夫Bとの間の子であるが,父母の離婚後は母である被告がその親権者となり,被告
の下で育てられた。原告と被告は,平成14年2月3日,原告と被告との婚姻を機
に,被告をAの代諾者として,Aを原告の養子とする旨の養子縁組の届出をした。
(甲1)
 (3)原告は,被告を相手方として夫婦関係調整調停(神戸家庭裁判所平成14
年(家イ)第875号)及び養子縁組調停(同裁判所平成14年(家イ)第970
号)を申し立てたが,いずれも不成立により終了した(弁論の全趣旨)。
 2 原告の主張
 (1)原告は,郵便局において集配の業務に従事している者であるが,平成13
年11月10日,Cの仲介により,薬局でパート勤務をしていた被告と知り合い,
交際するようになった。その後,原告と被告は,Aが原告に懐いたことから,Aの
小学校入学までに婚姻届出及び養子縁組届出をすることとし,平成14年2月3日
に両届出を済ませ,同年3月12日から同居を開始した。
 (2)原告と被告との婚姻生活の状況は,次のア~キのとおりであり,被告は,
自らの生活習慣を一方的に押し付け,原告の些細な日常生活の態度にも苦情を言い
続け,これに対し,原告は,原告にとっては初めての結婚生活であり,夫婦・親子
として円満な家庭生活を望んでいたことから,被告の生活習慣に合わせるよう最大
限努力したが,被告はこれを理解しようとせず,夫婦は相互に譲り合うべきだと述
べる原告に対し,「結婚生活はそんなに甘くない。私は私の考えのとおり,変える
つもりはない。」と言って,自らは全く譲歩しようとせず,また,原告の健康状態
にも全く配慮しようとしなかった。
   ア 原告が「日頃,外で仕事をしているので,休みの日には自宅でのんびり
過ごしたい。」と言ったところ,被告は「私は外に出るのが好きだから,あなたは
家で好きなようにして。」と述べ,週末は原告に声をかけることなく,Aと2人だ
けで被告の実家に行くようになった。また,原告は平日が休日になることが多かっ
たが,そのような日に被告は,必ず友人と会う予定を入れて頻繁に外出した。結
局,家族3人で出かけることは,3,4回しかなかった。
   イ 原告は,Aの入学式に出席するため休暇をとっていたが,被告から出席
を拒否され,入学式には参加できなかった。また,被告から父親参観などのAの学
校行事の日程も知らせてもらえなかった。
   ウ 原告は,被告との婚姻後,その費用の大半を原告が出して自動車(新
車)を購入したが,日頃はもっぱら被告が使用していた。たまに,原告が休日に自
動車に乗ろうとすると,「娘を病院や塾に送り迎えするから使わないで。」と言わ
れ,原告はやむを得ず被告に従っていた。原告の友人が横浜から帰省したとき,車
を使いたいと言ったときも,被告から使用を拒否された。
   エ 原告と被告は,婚姻前から2,3年後には新築住宅を購入しようと話し
合っていたが,同居して2ヶ月ほどたった休日に,原告が自宅で疲れて横になって
いると,被告が掃除機をかけ始め,「邪魔や,邪魔や。」とまくし立て,「家買っ
て。こんな狭い家でごろごろされるより,広い家買ってくれたら,あんたに一部屋
与えるから。」と言い,原告が「今は,家を買うことは考えていない。」と答える
と,Aまでもが「あんたに部屋を与えるから家買って。」と言ったので,原告は思
わず「誰に養ってもらってるんや。」と言い返した。これに対し,被告は,「子供
にそんなことを言うのは最低の人間だ。」と言った上,「2,3年後には家を買っ
てよ。休みの日には。外で時間を潰して。」とまで言った。その後,被告はこれま
で以上に外出が増え
,原告を避けるようになるとともに,原告が暴言を吐いたとの非難を繰り返した。
   カ さらに,このころから被告の原告に対する小言が増え,原告は,自宅に
帰ってもくつろぐことができず,常に被告の顔色をうかがわなければならないよう
な状態になった。そのうち原告は精神的に萎縮し,何事にも自信がなくなり,家庭
生活だけでなく仕事にも支障をきたすようになったため,平成14年5月17日,
神経外科であるDで診察を受けたところ,夫婦間の葛藤による動悸,不安,焦燥
感,劣等感,入眠障害の症状からくる心因反応と診断された。その後,被告は同ク
リニックに通院するようになったが,これに対し被告は,「薬に頼るのは努力と認
めない。無駄金を使っている。」と言い,費用は原告の小遣いでまかなうよう述べ
た。
 平成14年6月に入っても原告の症状は改善せず,むしろ焦りや劣等感
が高まってきた。これに対し,被告は「暗い。声が小さい。娘以下の子供以下やか
ら改善してやる。」と言って侮辱された。また,被告は,Dの医師から,原告の症
状の改善には家族の協力が必要であるので被告に会いたいと言われ,同年6月17
日,同クリニックに行ったものの,その後,原告に対し,「病院に行ってきたけ
ど,先生はあんたが頼りないだけと言っていたわ。」と述べ,一向に原告の疾病に
理解を示そうとしなかった。
   キ このような被告の態度から,原告はこれ以上被告と生活することはでき
ないと考え,その旨を原告に伝え,同日(平成14年6月17日),原告は家を出
て実家に戻った。
 (3)原告と被告との婚姻生活の状況は,以上のとおりであり,被告は,原告に
対し,一方的に生活習慣を押し付け,原告の日常生活の態度をことごとく非難し,
原告を精神的に追い詰めた上,原告の疾病に理解も示さず,人格的な非難を繰り返
したものであり,これらは婚姻を継続しがたい重大な事由に該当する。また,原告
とAとの養子縁組は,原・被告間の円満な婚姻関係の存続を前提としてなされたも
のであるから,上記事由は縁組を継続し難い重大な事由にも該当する。
 (4)被告は,原告と被告との間に婚姻を継続しがたい重大な事由はなく,当事
者間の意思疎通がうまくできなかったために溝ができたものの,夫婦親子間の会話
の機会を増やすことにより,その関係は十分に修復可能である旨主張するが,被告
が本件訴訟においても原告の性格や心情を理解しようとしていないこと,原告の疾
病に対し無理解であること,話し合いで解決すべきと主張しながら,話し合いがで
きない理由を専ら原告のみに求めていることなどに照らすと,原告と被告との間で
は,相互に理解を深めるための話し合いは不可能であるといわざるを得ない。
 3 被告の主張
 (1)原告と被告との婚姻生活の状況は,次のとおりであった。
   ア 原告は,休日は部屋にこもってパソコンゲームをするばかりであった。
原告の方こそ独身時代からの生活習慣を変えていない。
   イ 原告の休日だけに予定を入れたことはない。被告は原告に対し,買い物
などに一緒に行こうと声をかけたが,原告は「自分は家でパソコンゲームなどをし
てずっと家にいるのがいいので外に出たくない。行くなら2人で行くように。」と
言われた。このようなことが幾度となく続き,原告がパソコンゲームばかりしてい
ることから,被告はAと2人で外出することが多かった。
   ウ 被告がAの入学式への原告の出席を拒否したことはない。被告は原告か
らAの父親参観などの学校行事の日程を聞かれたことはなく,食事中に話してはい
たが,あまり聞いていなかった。原告と被告は,婚姻前からAの学校行事,教育に
ついて,原告にはよく分からないのですべて被告に任せるという合意があった。
   エ 原告が休日に車に乗ることは滅多になかった。原告と被告は,婚姻前
は,それぞれが自動車を所有していたが,原告が「2台も無駄だ。結婚したら,自
分はバイクがあるので自由に乗ってよい。」と言ったために,被告が自分の車を処
分し,原告が車を使わないときに子供の病院などの送り迎えに使用していたもの
で,被告が原告に車の使用を拒否したことはない。原告の友人が帰省するため,車
を使用したいと言われたときは,すでに被告において車を使用する予定を入れてい
たものであり,原告も「バイクで行くのでいいよ。」と言っていた。
   オ 被告はかねてより,原告の妹から原告に一部屋与えて欲しいと言われて
いたが,今の家には二部屋しかなく,原告のためだけに一部屋を充てることは無理
であった。そのような事情の下,原告に家の購入の相談をした際,Aが「お父さ
ん,一部屋使えるよ。」と言っただけなのに,原告は「誰の金でメシ食ってるん
や。」などと暴言を吐き,被告とAは非常に傷ついた。なお,原告は疲れて横にな
っていたのではなく,病院でもらってきた睡眠薬を常に飲み,昼間はずっと寝てば
かりで,被告が室内を掃除するにも差し支える状態であった。
   カ 原告は時間をみては実家に帰っていた。そして,原告は姑や義妹に被告
の悪口を言うなどしていた。そのため,それを聞いた姑と義妹から被告と被告の母
に電話がかかってきて,「顔も見たくない。」などと暴言を吐かれたことが度々あ
った。
   キ 被告が,原告を精神的に追い詰めたり,原告に対して人格的な非難を繰
り返したことはない。原告は婚姻当初から,何かあれば,何から何まで実家の母親
に相談して決めており,被告に相談することはなかった。原告は被告と同居し始め
たとき,病院などの治療費は一応小遣いから出し,足りない分は生活費から出すと
言っていた。
 被告がDに医師の話を聞きに行ったとき,医師から「ご主人はおとなし
すぎる感じで,少し頼りない感じだ。」と言われた。被告は原告に医師から言われ
たことをそのまま伝えただけである。
   ク 平成14年6月17日,原告は一方的に「出て行く。」と言い,「責任
だけはとる。」と言って出て行ったもので,原告と被告との間で何の話し合いもな
されなかった。
 (2)以上のとおりであり,原告と被告との間に婚姻を継続しがたい重大な事由
はない。当事者間の意思疎通がうまくできなかったために溝ができてしまったもの
であるが,これは決して埋めることのできないものではなく,本件を機に,互いに
従前の態度を反省し,夫婦親子間の会話の機会を増やすなどして努力すれば,その
関係は十分に修復可能である。婚姻後の期間及び別居後の期間が短期間であるこ
と,当事者双方及びAの年齢からしても,現実に修復できる可能性は高いといえる
上,現に,被告は,現在でも婚姻生活の継続を希望している。仮に,離婚及び離縁
が認められた場合,被告は7歳の長女を抱えて今後の生活に多大な困難を来すこと
となる上,精神的なダメージも非常に大きく,離婚及び離縁により被告及びAが苛
酷な状態におかれるこ
とは明らかである。
第3 当裁判所の判断
 1 前記前提事実,証拠(甲1~4,乙1,2,原告本人,被告本人)及び弁論
の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
 (1)原告は,婚姻前から現在に至るまで,郵便局ににおいて集配の業務に従事
している。被告は,原告との婚姻前は,薬局においてパート勤務をしていたが,原
告との婚姻を契機にこれを辞め,現在は無職である。
 (2)被告は,前夫Bとの間に長女A(平成7年7月31日生)もうけたが,同
前夫との離婚後は,親権者としてAの養育にあたってきた。
 (3)原告と被告は,平成13年11月10日,Cの仲介で知り合い,交際する
ようになった。その後,Aが原告になついたことから,Aの小学校入学までに婚姻
及びAの養子縁組の手続を済ませることとし,平成14年2月3日に両届出を済ま
せ,同年3月12日から同居を開始した。
 (4)原告は,平成14年6月17日,被告らと同居していた家を出て,実家に
戻った。以後,原告と被告らとの別居が続いている。
 (5)原告と被告との間には,同居後,次のような出来事があった。
   ア 被告は原告に対し,例えば湯船にタオルを入れて入浴するという原告の
風呂の入り方や,部屋にこもってパソコンゲームをすることといった原告の日常生
活の態度に苦情を述べることが多くあった。
   イ 原告の休日に,家族3人が揃って外出することはあまりなかった。原告
は平日に休みとなることがしばしばあったが,そのような場合,被告は,原告と行
動をともにするのではなく,友人と会う予定を入れて外出することが多かった。
   ウ Aの入学式,父親参観への出席に関し,日時が分からなかった原告は参
加することができなかった。
   エ 原告は,被告との婚姻後,その費用の大半を出して自動車を購入した
が,日頃はもっぱら被告が管理しており,原告が使用したいときに使用できないと
いうことがあった。
   オ 原告と被告は,婚姻前から2,3年後には新築住宅を購入しようと話し
合っていたが,原告の休日に家で自宅購入が話題となったとき,原告と被告との間
で,原告の部屋を設けることに関して口論が生じたことがあった。
   カ 平成14年の4月ころ,原告と被告は何回か夫婦生活を試みたが,満足
した成果を得ることができず,その後,別居するまで夫婦生活はなかった。
 (6)被告は,自分の言いたいことをはっきりと言う性格で,日常生活について
細かい点についてまで原告に対し,積極的に思ったことをストレートな表現で告げ
ていた。原告は,これを快く思っていなかった。
 一方,原告は気弱でおとなしい性格であり,被告に対して自分の言い分を
きちんと主張することができず,言いたいことがあっても内に秘めてしまいがち
で,自己主張することなく被告の言い分に従ってしまうことがしばしばあった。被
告は,原告は親離れができておらず,自分の意思をもっていないと感じていた。
 婚姻生活の主導権は,被告が握っていた。
 (7)このような婚姻後の生活の中で,原告は次第に精神的に萎縮し,過大なス
トレスを感じるようになり,このことが原因で家庭生活だけでなく仕事にも支障が
生じるようになった。そこで,原告は,平成14年5月17日,神経外科であるD
で診察を受けた。その結果,夫婦間の葛藤による動悸,不安,焦燥感,劣等感,入
眠障害の症状が認められ,心因反応と診断された。その後,同病院に通院したが,
平成14年6月に入っても原告の症状は改善せず,別居後である同年7月24日時
点においても,引き続き通院加療が必要な状態であった。
 一方,被告は,このような原告の精神状態に然したる配慮をすることもな
く,原告に対する従前どおりの接し方を変えることはなかった。これに対し,原告
は被告の理解のなさを感じていた。
 2 以上に基づき検討する。
 (1)一般に,婚姻においては,程度の違いはあるものの,両当事者の物事の捉
え方,価値感,生活習慣などに一致しない点が生じるのはやむを得ないことであ
り,共同体である婚姻生活を継続する以上は,しばしば相手の言動,考え方に不満
を感じ,場合によってはお互いが衝突することも避けられないことといわなければ
ならない。しかしながら,婚姻生活は,このような目前にある障害を共同して乗り
越えながら,さらなる絆を深めていくべきものであって,婚姻の両当事者は,夫婦
間のさまざまな問題を克服すべく,お互いが成熟した対等な存在であることを尊重
し,十分な話し合いを尽した上で,お互いの考え方や立場を尊重した妥協点を探
り,譲歩すべき点は譲歩するといった寛容さを見せながら,両者の考え方の溝を地
道に埋めてゆき,さらな
る信頼関係の熟成に努めていかなければならない。婚姻生活における夫婦間の話し
合いは,婚姻生活の中核部分をなすものであり,婚姻生活の基本的プログラムとい
えるものであって,衝突を伴っても話し合いを繰り返し,婚姻生活の課題を乗り越
えてながら家族の絆を深めていくという過程を婚姻は当然に予想しているものとい
える。
 このような観点から,原・被告間の婚姻生活をみると,原告と被告は,婚
姻後約4ヶ月(同居後約3ヶ月)で別居に至っているところ,原告と被告との間に
は,性格,価値観,生活習慣等の点で種々の違いがあり,かかる違いに根差した種
々の問題が生じた結果,原告としては被告との婚姻生活に耐えられなくなり,別居
に至ったものであると認められるが,原・被告間に生じた一つ一つの出来事を見る
限り,いかんともし難い克服困難な問題が生じたとまではいい難く,通常の婚姻生
活を営む中でしばしば生じうる範囲内の問題であるといえなくもない。そして,
原・被告双方の言い分を検討すれば,原・被告間の婚姻関係がこじれた原因は,双
方の話し合いが不十分であったことが大きな原因であると認められるところ,この
ように話し合いが不十分
であったことについては,気弱でおとなしく,自己主張することなく被告の言い分
に従ってしまう原告の態度がその一因となっていると認められる。原告は,成熟し
た一人の大人であり,夫であり父であるという自覚と責任を持って行動すべきであ
り,被告の言い分を聞いて不満を溜めるばかりではなく,きちんと自分の言いたい
こと,考えることを主張し,それを理解してもらえるよう,被告とのコミュニケー
ションを図る努力をすべきであったといえる。
 しかしながら,原・被告間の話し合いが不十分であったことについては,
一方的に原告にその原因があったのではなく,被告の側にも大きな原因があったと
認められる。すなわち,被告としても,婚姻後は原告の内向的で言いたいことを素
直に言えない性格を認識していたにもかかわらず,話し合える雰囲気を作るなど,
自ら婚姻関係を維持・継続するための努力をした形跡はうかがわれない。しかも,
上記1の(7)のとおり,原告が,被告との婚姻生活の中で,次第に精神的に萎縮
し,過大なストレスを感じるようになり,夫婦間の葛藤による動悸,不安,焦燥
感,劣等感,入眠障害の症状が認められるようになったにもかかわらず,原告の症
状に格別の配慮をすることもなく,原告に対する従前どおりの接し方を変えること
はなかった。婚姻生活の
主導権を握っていた被告としては,自らの考え方,やり方に拘泥するのではなく,
原告の立場にも配慮して婚姻関係を維持・継続するよう努力すべきであったといえ
る。
 以上のとおり,原・被告間の婚姻関係がこじれたことについては,原・被
告双方に相応の帰責性があるものといえ,どちらかが一方的に責められるべきもの
ではないと認められる。
 (2)そこで,このような原・被告間の婚姻関係がもはや継続し難いものである
か否かについて考えるに,原・被告間の婚姻関係は,婚姻生活の基本的プログラム
といえる夫婦間の話し合いが不十分であったことが原因でこじれてしまったと認め
られるところ,婚姻後別居までの期間が約4ヶ月(同居後別居までの期間は約3ヶ
月)であることを考えると,離婚請求を棄却して,婚姻関係修復のための話し合い
の機会を設けることも,一つの選択肢として,十分に検討しなければならないとこ
ろである。しかしながら,別居後,調停及び本件訴訟において,話し合いの機会が
設けられたものの,婚姻関係を維持・継続する方向での話し合いをすることはでき
なかったものである上,本件訴訟における双方の言い分,原・被告の本人尋問にお
ける供述内容・態度
等に照らしても,原・被告双方に今後新たな夫婦関係を築いていくとの意欲や展望
はうかがわれず,このことに,原・被告双方の性格,物の考え方,見方の違いを併
せ考えれば,今後,原告と被告が正常な婚姻関係を築きあげていくことは困難であ
ると認められる。そうすると,離婚請求を棄却して,婚姻関係の維持を強制するよ
りも,離婚請求を認容し,金銭的に精算すべきものがあれば精算をし,双方に新た
な出発の機会を与える方が,お互いの将来にとって利益であると考えられる。ま
た,原告と被告との離婚を認める以上,原・被告間の円満な婚姻関係の存続を前提
としてなされた原告とAとの養子縁組についても離縁を認めるのが相当である。以
上のような意味で,民法770条1項5号及び同法814条1項3号の婚姻(縁
組)を継続し難い重大な
事由が存するとの原告の主張には理由がある。これに反する被告の主張は,以上に
おいて認定・説示したところに照らして採用できない。
 3 よって,主文のとおり判決する。
神戸地方裁判所民事第1部
裁判官     西   村   欣   也

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