弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一年一〇月に処する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人相沢登喜男、同大池龍夫、同大池崇彦共同作成名義の
控訴趣意書に記載されているとおりであるから、ここにこれを引用する。
 論旨第一点について。
 所論の要旨は、原判決は訴因変更の手続を経べきであるのに、この手続を経ない
で被告人に対し訴因としてかかげられていない事実、すなわち審判の請求を受けな
い事件について判決をなしたもので、刑事訴訟法三七八条三号の事由があり、破棄
を免れないというのである。
 所論にかんがみ、記録を仔細に調査したうえ、次のとおり判断する。
 昭和四五年一一月一二日付起訴状記載の公訴事実をみるに、その第二は『被告人
A、同B(いずれも原審相被告人)の両名は、共謀のうえ、同年(昭和四五年)一
〇月一六日午後一一時三〇分ころ、前記キヤバレー「C」において、右Dに対し、
同女の髪の毛を手で交々引張つたり、被告人Aが手拳で顔面を数回殴打したり、同
女の脇腹を足蹴りにして床上に転倒させ、さらに同店前駐車場に駐車中の普通乗用
自動車内に連れ込み「今日はカチカチに頭にきた。ヤキを入れてやる。」などと申
し向けつつ被告人Aが同女の化粧箱をとり上げて同女の頭部を殴打したり、被告人
Bが髪の毛をつかみ頭部を数回手拳で殴打するなどの暴行を加え、もつて数人共同
して暴行を加え』というのであり、被告人に対する訴因は、前記起訴状記載の公訴
事実第三の『被告人E、同A、同Bの三名は、共謀のうえ、右Dから金員を喝取し
ようと企て、同年一〇月一七日午前〇時三〇分ころ、名古屋市a区b町c丁目d番
地Fビル地下ホストクラブ「G」において、同女に対し「俺はHのために金を使つ
たんや。お前金を出せ。」など怒号し、同女の座つていた丸椅子を足蹴りして同女
を転倒させたり、同女の頭部を手拳で数回殴打し、更に卓子上にあつた食塩瓶で同
女の頭部を数回殴打するなどの暴行を加えたうえ、同女を同日午前一時三〇分こ
ろ、前記Iホテル四階客室に連れ込み、さらに同女に対し「これぽつちのヤキです
むと思うと大間違いだ。生爪をはいだり、歯を五、六本抜くぐらいのことはやつて
やる。」「Hには入墨を入れるのや、探すのに組の者を大勢使つて七、八〇万円の
金を使つた。お前はHの女なんだから三〇万円だせ。」「三〇万円の金はお前がパ
ンパンをやつても作れ。」などと申し向けて脅迫しつつ金員を要求し、もしこの要
求に応じなければ同女の身体などに更に暴行を加えかねない態度を示して同女を極
度に畏怖させ、その場において、同女をして、同月二四日金三〇万円を支払う旨約
束させて、もつて不法の利益を得るとともに、前記暴行により同女に加療約三七日
間を要する頭部、右手、左大腿部挫傷等の傷害を負わせ』たものであるというので
ある。しかるに、原判決はその罪となるべき事実第三において『被告人A、向Bの
両名は共謀のうえ、以前被告人Aとともに前記キヤバレー「C」に勤めていたこと
のあるHが同被告人に不義理を重ねたまま所在不明になつたことを種に、右Hと親
しくしていた前記Dから金員を喝取しようと企て、同年同月一六日午後一一時三〇
分頃前記キヤバレー「C」において、右Dに対し、同女の髪の毛を交々手で引張つ
たり、被告人Aにおいて手拳で顔面を数回殴打したり、脇腹を足蹴りにして床上に
転倒させ、更に同店前駐車場に駐車中の普通乗用自動車内に連れ込み、「今日はカ
チカチに頭にきた、てつていてきにやきを入れてやる」などと申し向けつつ、被告
人Aにおいて手拳乃至同女のハンドバツクで同女の頭部顔面等を殴打し、被告人B
において同女の髪の毛をつかんで押えつける等の暴行を加えた上、翌一七日午前零
時過ぎ頃名古屋市a区b町c丁目d番地Fビル地下一階ホストクラブ「G」へ連行
し、被告人Aにおいて同所において被告人Eの面前で「親分さんの前に出て挨拶を
せんのか」「Hのために金を使つた。お前金を出せ」などと怒号し、同女の坐つて
いた椅子を足蹴りして同女を床に転倒させ、同女の頭部を手拳で数回殴打し、更に
卓上の食塩瓶で同女の頭部を数回殴打する等の暴行を加え、被告人Bにおいて倒れ
ている同女の髪や肩をつかんで引き起しては被告人Aの方へと突きとばす等の暴行
を加えたが、この有様を見た被告人Eも被告人A、同Bの同女に対する既発の暴行
脅迫を利用し、これに加わることによつて同女から金員を喝取しようと企て、ここ
に被告人三名共謀の上、被告人Eにおいて「こういうものはいつみてもおもしろ
い、ええ音だ」などと云つて右暴行に気勢を添えたのち、「この女は俺が連れて行
く」と述べて自己の運転する普通乗用自動車に同女を乗用させ、被告人A、同Bは
別の車に乗つて追随し、同日午前一時半頃同女を前記Iホテル四階客室に連行し、
更に同所において被告人Bが「最初からおとなしくついてくればこんな痛い目に会
わんですんだのだ」、被告人掘口が「これぽっちのヤキで済むと思つたら大まちが
いだ。今日はボテボテにヤキを入れてやる」、被告人Eが「俺がやるならこんなに
甘くはない。生爪をはがすぐらいのことはやるし、歯の五、六本ペンチで抜いてや
る」などと交々同女を脅迫した上、被告人Aにおいて「Hの入れ墨代は一二万円も
した。Hを探すには組の者を何百人も使つて六〇万円使つておる。お前は三〇万円
出せ」被告人Eにおいて「お前が金を作つてこんとAに指をつめてもらわにやなら
ん。三〇万円位はお前の体を張つても作つてこい」などと申し向けて金員を要求
し、もし右要求に応じなければ同女の身体に更にどのような暴行を加えるかわから
ない言動を示して同女を極度に畏怖させ、その場において同女をして同月二四日午
後八時に前記キヤバレー「C」で現金三〇万円を交付する旨約束させて、もつて財
産上不法の利益を得るとともに、右一連の暴行により同女に加療約三七日間を要す
る頭部、右手、左大腿部挫傷等の傷害を負わせ』たものであると認定し、右認定の
事実に対する被告人の所為を刑法六〇条、二四九条二項の恐喝罪、同法六〇<要旨>
条、二〇四条の傷害罪に問擬している。そしてその認定の理由として原判決法令の
適用欄の末尾において『な</要旨>お検察官は右判示第三の所為中、被告人A、同
Bのキヤバレー「C」及び同店駐車場に駐車中の自動車内におけるDに対する各暴
行を、その後の被告人三名による恐喝傷害とは区別してこれを暴力行為等処罰に関
する法律一条、刑法二〇八条に該当するものとして、併合罪として起訴しているの
であるが、関係各証拠によれば、被告人A、同Bには右キヤバレー「C」における
暴行の時点において既に恐喝の犯意があつたこと、Dにおいてもその旨を十分察知
していたことは明らかであるし、右暴行と同店前駐車場に駐車中の自動車内での暴
行と更にホストクラブ「G」における暴行とは、短時間の間に同一犯意の下に接着
してなされた一連の行為であること、被告人Eとしては判示の如く右ホストクラブ
において後から加わつたものの、被告人A、同BのDに対する既発の暴行脅迫を利
用して、更にこれに加わつて暴行脅迫をして金員を喝取しょうとしたこと等を総合
して考えると、被告人A、同Bによる右キヤバレー「C」及び同店前駐車場に駐車
中の自動車内における各暴行は、その後の被告人三名による恐喝(及びこれと一所
為数法の関係に立つ傷害)の罪に吸収されるものとみる方が相当である』旨説示し
ている。右説示にある如く、A、Bに対する併合罪の起を訴裁判所が一罪と評価し
て認定する場合に訴因変更の手続を要しないことは是認できる。しかし、このこと
は本件被告人については直にあてはまるものではないこと明らかである。
 原判示第三の摘示事実および前説示部分を仔細に検討すれば、原判決は所謂承継
的共同正犯理論を採つて、被告人に対して、ホストクラブ「G」以前の前記A、B
の暴行行為についても被告人に責任があるがごとき認定をしていることが明らかに
看取できる。しかしながら、被告人に対する訴因は「G」以後の恐喝、傷害を明示
しているに過ぎないのであるから、被告人に対する審判の対象は右訴因に限らるべ
きである。原審が前記の様な見解に立つて、被告人に対し、「G」以前の共犯者の
行為についての責任を問うのであるならば、検察官の訴因変更請求をまつて、これ
を許可するか、または検察官に訴因変更命令を発して訴因変更の手続を履践したう
え、右「G」以前の共犯者の暴行行為を被告人に対する関係で審判の対象にすべき
である。しかるに原審が被告人に対する関係でかかる訴因変更の手続を履践した形
跡は全くないにかかわらず、原判示第三の事実を認定するの挙に出たもので、かく
ては被告人に対し不意打を喰わせ、被告人の防禦に実質的な不利益を生ぜしめたも
のといわなければならない。されば、原判決には刑事訴訟法三七八条三号後段の審
判の請求を受けない事件について判決した違法があるというべきであるから、その
余の論旨について判断を加えるまでもなく、原判決は破棄を免れない。論旨は理由
がある。
 よつて、刑事訴訟法三九七条一項、三七八条三号により原判決を破棄したうえ、
同法四〇〇条但書により当裁判所に溶いて更に判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は、昭和四五年一〇月一七日午前零時三〇分頃、名古屋市a区b町c丁目
d番地Fビル地下一階ホストクラブ「G」において飲酒していた折、A、Bの両名
がD(昭和二三年一月八日生)を同所に連れ込み、被告人の席の前の丸椅子に座ら
せ、Aにおいて同女に対し「親分さんの前に出て挨拶せんのか。」「ビール位つい
でサービスせんのか。」と怒号し、同女の顔面を手拳で殴りつけた後被告人に「こ
いつはHの前の女やぜ」と伝えるにおよび、被告人は、かねてより右Aが、同人に
不義理を重ねたまま所在不明になつたHのことを種に、右Hと親しくしていたこと
のある前記Dから金員を喝取しようとしている情を察知していたので、ここに被告
人は暗にA、Bと共謀のうえ、同女から金員を喝取しようと企て、Aにおいて同女
に対し「Hのために金を使つた。お前金を出せ。」などと怒号し、同女の座つてい
た丸椅子を足蹴りして同女を床に転倒させ、同女が立ち上がるや同女の頭部を手拳
で数回殴打し更に卓上のガラス製食塩瓶で同女の頭部を数回殴打し、あるいは床に
倒れた同女の腕や大腿部等を靴覆きのまま数回蹴りつけるなどの暴行を加え、Bに
おいて倒れている同女の髪や肩を掴んで引き起してはAの方へ突きとばすなどの暴
行を加え、その間被告人は「こういうものはいつみてもおもしろい、ええ音だ。」
などと云つて右両名の暴行に気勢を添え、同女の頭部より流血したのを見て、ひと
まず暴行を止めさせたうえ、「この女は俺が連れて行く」と云つて、自己の運転す
る普通乗用自動車に同女を乗車させ、A、Bは別の車に乗つて追随し、同日午前一
時半頃同女を同市a区e町f丁目g番地Iホテル四階客室に連行し、更に同所にお
いて、Bが「最初からおとなしくついてくればこんな痛い目に会わんですんだの
だ。」、Aが「これぽつちのヤキで済むと思つたら大まちがいだ。今日はボテボテ
にヤキを入れてやる。」、被告人が「俺がやるならこんなに甘くはない。生爪をは
がすぐらいのことはやるし、歯の五、六本ペンチで抜いてやる。」などと交交同女
を脅迫したうえ、Aにおいて「Hの入れ墨代は一二万円もした。Hを探すには組の
者を何百人も使つて六〇万円位使つておる。お前は三〇万円出せ。」、被告人にお
いて「お前が金を作つてこんとAに指をつめてもらわにやならん。三〇万円位はお
前の体を張つても作つてこい。」などと申し向けて金員を要求し、もし右要求に応
じなければ同女の身体に更にどのような暴行を加えるかわからない言動を示して同
女を極度に畏怖させ、その場において同女をして同月二四日午後八時に同市a区h
i丁目j番k号所在のキヤバレー「C」で現金三〇万円を交付する旨約束させて、
もつて財産上不法の利益を得るとともに、前記「G」における暴行により同女に加
療約三七日を要する頭部、右手、左大腿部挫傷等の傷害を負わせたものである。
 (証拠の標目)(省略)
 (累犯前科)
 被告人は、昭和四〇年四月一二日津地方裁判所伊勢支部において、暴力行為等処
罰ニ関スル法律違反、傷害、暴行の罪により懲役一年(未決勾留日数五〇日算入)
に処せられ、該裁判は同年一一月二七日確定し、同四一年一〇月二三日右刑の執行
を受け終つたもので、右事実は検察事務官作成の被告人に対する前科調書および同
四五年一一月一〇日付判決書謄本によつてこれを認める。
 (法令の適用)
 被告人の判示所為中恐喝の点は刑法六〇条、二四九条二項に、傷害の点は同法六
〇条、二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号にそれぞれ該当するところ、右は
一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条に
より一罪として犯情の重い恐喝罪の刑をもつて処断することとし、前示前科がある
ので、同法五六条一項、五七条により再犯の加重をした刑期範囲内で処断すること
にするが、被告人の情状について検討を加えるに、被告人はかつて暴力団J組糸K
組に属し、自らL組を組織しその組長となり、その後右L組を解散したとはいうも
のの、M社社長として実質的には右組織を温存し、本件共犯者のA、Bはいずれも
被告人の支配下にあるものであり、本件犯行の動機もHがAに不義理をしたという
ことを種に、右Hと以前親しくしていたことがあるという関係で、何ら責めらるべ
き点のない女性より金員を喝取しようとしたもので、その態様は、右女性に対し執
拗な暴行脅迫を加えて金員提供の約束をさせ、右暴行により重大な傷害を生ぜしめ
るという典型的な暴力団犯罪であつて、本件における被告人の言動からも前記組組
織の解散が全くの擬装に過ぎないことが裏書されており、本件により被害者の受け
た肉体的、精神的苦痛は測り知れないものがあり、被告人が前記暴行について直接
手を下していないとはいうものの、判示のごとく自己の支配下にあるA、Bの暴行
行為に積極的に気勢を添えているのであつて、その犯情はまことに悪質でありその
責任は重大といわなければならないが、幸に被告人らの得たる不法の利益は現実化
するに至らず、被告人において被害者Dに対し治療費等として二五万円を支払つた
こと、原判決後被害弁償の追加に替えて五万円を財団法人N協会O支部に寄附した
こと、その他諸般の情状を総合考察したうえ、被告人を懲役一年一〇月に処するこ
ととする。
 よつて、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 野村忠治 裁判官 村上悦雄 裁判官 小沢博)

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