弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役六月に処する。
     第一審における未決勾留日数中四五日を右本刑に算入する。
     押収にかかる金指輪一個、日本銀行券一二枚(一〇〇〇円券九枚、一〇
〇円券三枚)および硬貨四枚(五〇円貨二枚、一〇円貨二枚)を没收する。
     原審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人稲沢智多夫の上告趣意第一点について。
 所論は、原判決が被告人の密出国の所為に対し、出入国管理令二五条二項、七一
条により処罰したのは、憲法が与えた外国移住権を制限したものであるから、同二
二条二項に違反するものであると主張する。しかし、出入国管理令二五条が憲法二
二条二項に違反するものでないことは、判例の示すところであり(昭和二九年(あ)
三八九号同三二年一二月二五日大法廷判決、集二巻一四号三三七七頁)、従つて同
令二五条二項の規定に違反して出国した被告人の所為につき、同令七一条を適用処
断した原判決が、憲法二二条二項に違反するものでないこともまた明らかである。
よつて所論違憲の主張は採用できない。
 同第二点について。
 所論は量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 福岡高等検察庁検事長草鹿浅之介の上告趣意について。
 所論指摘の原判決の判断が、所論二の1の判例と相反するものであることは所論
のとおりである(2の判例は密出国と密輸出とに関するものであつて本件に不適切
である)。かつ参考判決として引用の同3の被告人A外一名に対する出入国管理令
違反、関税法違反等被告事件に対する福岡高等裁判所の判決については、最高裁判
所昭和三三年(あ)二九六八号同三五年一〇月二八日第二小法廷判決(最高裁判所
裁判集刑事一三五号六五五頁)は、「原判決が所論出入国管理令違反罪と関税法違
反罪を併合罪の関係にあるとしたのは正当である」旨判示し、これを支持している
のであつて、当裁判所もこれと見解を同じくするものである。
 よつて被告人の本件上告はその理由がないけれども、検察官の上告はその理由が
あるものと認め、刑訴四一〇条一項、同四一三ほ条但書により原判決を破棄し、被
告事件につき更に判決をすることとする。
 第一審判決の確定した事実に法令を適用すると、被告人の判示所為中第一1の密
出国の点は出入国管理令二五条二項、七一条、罰金等臨時措置法二条に、第一2の
密入国の点は同令三条、七〇条一号、罰金等臨時措置法二条に、第二の密輸入の点
は関税法一一一条一項、罰金等臨時措置法二条に各該当するので、各所定刑中いず
れも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条、一〇
条により最も重い密入国の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人を懲
役六月に処し、同法二一条により第一審における未決勾留日数中四五日を右本刑に
算入し、主文第四項掲記の物件は前記第二の密輸入の犯罪に係る貨物であつて、被
告人の所有に属するので関税法一一八条一項により被告人から没収し、原審におけ
る訴訟費用(国選弁護人の費用)は刑訴一八一条一項本文により被告人に負担させ
ることとし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 田中万一公判出席
  昭和三七年五月一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    横   田   正   俊

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