弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を却下する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 抗告代理人長野潔(名義)、同秋山昭八、同石原豊昭、同鈴木稔、同平井二郎、
抗告指定代理人川島一郎(名義)、同横山茂晴(名義)、同樋口哲夫(名義)、同
諸沢正道(名義)、同宮野礼一(名義)、同波多江明の抗告理由について。
 所論の点に関し、原決定は、抗告人と相手方(原審における抗告人をいう。以下
同じ。)との間には、抗告人が相手方の著作に対する所管行政庁の検定という方式
を通して、相手方の有する表現の自由を制限したという法律関係が存在し、検定実
施者が検定手続に関して作成することを法律上要求され、かつ、現に作成した文書
であつて、検定内容(判定理由)を構成する文書は、一応右法律関係について作成
された文書であるとし、本件提出命令申立にかかる原判示各文書はこれに当たる旨
判示しているが、一件記録および原決定の全判文に徴すれば、右判示は、(一)検定
により表現の自由が侵害された旨の相手方(本件文書提出命令申立人)の主張、(
二)本件において教科書原稿についての検定が行なわれたという当事者間に争いの
ない事実および(三)文部大臣の判定結果の通知に際しては検定基準の各項目との関
連を文書によつて指摘しない行政慣行である旨の抗告人の主張を前提とし、このよ
うな前提のもとにおいては、前記のような法律関係が存在することとなり、したが
つて、本件提出命令申立にかかる原判示各文書は右法律関係について作成された文
書であるとしているものにすぎず、原審は、本件検定が相手方の表現の自由を侵害
している旨をみずから判断したものではない(なお、原決定は、原判示の各文書が
民訴法三一二条三号後段所定の文書に該当するものと判断し、これに該当しないと
した第一審決定を取り消し、事件を第一審に差し戻すこととしたものであるところ、
原決定は、提出命令の許否の決定は受訴裁判所が訴訟の進行程度に応じて判断すべ
き専権事項に属するものとし、受訴裁判所が提出命令の申立を却下し、抗告審にお
いて提出命令の申立の対象となつている文書が同条各号に該当するか否かが争われ
ている場合には、抗告審はその当否を判断すれば足り、右各号のいずれかに該当す
ると判断したときは、受訴裁判所である第一審をして訴訟の進行状況、立証の必要
等に照らし申立の許否を決定させるべきものとし、事件を第一審に差し戻すべきも
のとしているにすぎない。)。したがつて、原決定は本件検定が相手方の表現の自
由を侵害している旨をみずから判断したものであるとして、原決定の違憲をいう所
論は、ひつきよう、その前提を欠くに帰し、特別抗告適法の理由とは認められない。
 よつて、本件抗告を不適法として却下することとし、抗告費用は抗告人の負担と
して、裁判官全員の一致で、主文のとおり決定する。
   昭和四六年一二月一七日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    天   野   武   一

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