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平成13年(ネ)第3667号 実用新案権侵害差止等請求控訴事件 (原審・東
京地方裁判所平成10年(ワ)第19115号)
平成13年12月13日口頭弁論終結
         判      決
     控 訴 人        株式会社ユタカ
     訴訟代理人弁護士     佐 藤 泰 正
     同            阿 部 泰 典
     同            飯 田   丘
     同            鈴 木 正 勇
     補佐人弁理士       志 村 正 和
     同            阪 本 清 孝
    被 控 訴 人   イノテック株式会社
     訴訟代理人弁護士     阿 部 佳 基
     同            松 留 克 明
     同            和 田 信 博
     同            渡 辺 広 己
     同            中 川   豊
     同            野 中   武
     補佐人弁理士     大 塚 康 徳
 同            木 村 秀 二
     同            高 柳 司 郎
同            大 塚 康 弘
 主     文
      本件控訴を棄却する。
      控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
  (1) 原判決を取り消す。
  (2) 被控訴人は、別紙物件目録1及び2記載の物件を輸入し、販売してはなら
ない。
  (3) 被控訴人は控訴人に対し、金6億5400万円及びこれに対する平成10
年8月29日から支払済みに至るまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
  (4) 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
  (5) この判決は仮に執行することができる。
 2 被控訴人
  主文と同旨
第2 事案の概要 
 本件は、ガス圧力調整器の考案に係る実用新案登録第2134718号の実用新
案権(以下「本件実用新案権」といい、その実用新案登録請求の範囲第1項の考案
を「本件考案」という。)を有している控訴人が、別紙物件目録1及び2記載の各
物件(同目録1及び2記載の物件を、順に「被告物件1」、「被告物件2」とい
い、両者を併せて「被告各物件」という。)を輸入、販売している被控訴人の行為
が本件実用新案権を侵害するとして、被控訴人に対し、被告各物件の輸入等の差止
めと損害賠償の支払を求めた事案である。
 原判決は、①本件考案は、実用新案法3条2項の無効事由を有することが明らか
であるから、本件実用新案権に基づく請求は権利濫用に当たる、②被告各物件は、
本件考案の構成要件オに記載された「仕切体」を有しないから、本件考案の構成要
件オを充足しない、との理由により、原告の請求はいずれも理由がないと判断し
て、原告の請求をいずれも棄却した。
 本件において前提となる事実は、原判決事実及び理由中の「第2 事案の概要」
の「1 前提となる事実」に記載のとおりであるから、これを引用する。
第3 当事者の主張
以下のとおり、当審における当事者の主張を付加するほか、原判決「事実及び理
由」中の「第2 事案の概要」の「2 争点」に記載のとおりであるから、これを
引用する。
 1 当審における控訴人の主張の要点
  (1) 弁論主義違反
原審において、被控訴人は、本件実用新案権に基づく請求が権利濫用に当たる旨
の主張を提出していない。のみならず、被控訴人は、乙1号証、乙6号証及び乙1
7号証から当業者が本件考案を極めて容易に考案し得るという具体的な無効事由に
ついての主張も行っていないし、無効事由のあることが「明らかである」との主張
も行っていない。
 このように原判決は、当事者が弁論において主張していない事実を認定し、それ
に基づき控訴人(原告)の請求を棄却したものであり、弁論主義に違反することが
明らかであるから、取り消されるべきである。
  (2) 権利濫用の判断の誤り
 ア 無効理由の不存在
    (ア) 原判決は、乙17号証(USP4744387号明細書)に記載さ
れた発明と本件考案とは、以下の相違点①、②において相違するが、それ以外の点
では同一である(原判決13頁6行ないし15行)と認定した上、相違点①、②に
ついて、以下のとおり判断し、本件考案が実用新案法3条2項の無効事由を有する
ことが明らかであるとしたが、誤りである。
  相違点① 「本件考案が、弁シートをハウジングに別体に形成して備え、ダイ
ヤフラム室を介してガス流入口とガス流出口とを連通する仕切体を設けたのに対
し、上記発明(注、乙第17号証記載の発明)がリング形弁座(弁シート)を部品
11(ハウジング)に一体的に形成し、仕切体を備えていない点」
  相違点② 「本件考案の第1調整スプリング、第2調整スプリングが箱体を介
してそれぞれ設けられているのに対し、上記発明が距離ばね(第1調整スプリン
グ)を底部ばね案内と上方ばね案内との間に、ポペットばね(第2調整スプリン
グ)を距離ばね(第1調整スプリング)内方に位置する上下の固定物の間に配置し
た点」
  相違点①の判断  「相違点①については、乙1号証(USP4807849
号明細書)には、本件考案が属する技術分野であるガス圧力調整器において、シー
ル(弁シート)をハウジングとは別体のものとして備え、このシールを流体通路を
有するコンプレッションメンバーで保持する構成が示されているところ、この構成
を、同一の技術分野に属する乙17号証(USP4744387号)記載の発明に
適用することは、当業者であれば極めて容易に想到できるといえる。」
  相違点②の判断 「相違点②については、乙6号証(実願昭59-15238
7号のマイクロフィルム)には、ダイヤフラムの反弁体側のボデー(カバー)内に
配置された係合部を有するばね受け具(箱体)を介してダイヤフラムを弁体方向に
付勢する弁ばね(第1調整スプリング)と反弁体方向に付勢する感温ばね(第2調
整スプリング)を配置するとの本件考案の第1調整スプリングと第2調整スプリン
グの配置構成と共通する構成が示されている。この構成を、乙17号証(USP4
744387号明細書)記載の発明に適用することは、当業者であれば極めて容易
に想到できるといえる(なお、同考案はインクジェットプリンタのプリント用イン
クの加圧力を自動的に調整するための圧力制御装置ではあるが、「流体」の圧力制
御装置に関するものであり、同一の技術分野に属するものということができ
る。)。」
    (イ) 相違点①について    乙1号証記載の発明においては、図1に
示されるように、コンプレッションメンバー(仕切体)(注、コンプレッションメ
ンバー(圧縮部材)は、装置2のシール3上に位置し、第一表面4と第二表面5を
有し、中心軸線8に沿って流体通路7が形成されており、外側に突出する環状アー
ムには4本の流体通路16がある。)は、押し付けリング20がねじ切りナット2
1により固定されて加重されることによってはじめてその機能を発揮することがで
きるものである。乙1号証の発明から単にコンプレッションメンバー(仕切体)に
よりシールを保持する構成のみを取り出して、乙17号証記載の発明に適用するこ
とができるものではない。また、乙1号証記載の発明のコンプレッションメンバー
(仕切体)でシールを保持する構造は、ばね27を弁室内に設置することを前提と
するものであって、ばね27を弁室から出して設置する場合にまで適用し得るもの
ではない。
    (ウ) 相違点②について    本件考案の第2調整スプリングは弁体を
反弁体方向に付勢するために配置されているのであり、単に第1調整スプリングの
付勢力を調整するために設置されているものではない。これに対して、乙6号証記
載の考案の感温ばね19は、弁ばね16の付勢力を調整するためだけに作用するも
のであり、弁体を反弁体方向に付勢するものではない。両者は、その目的、作用が
異なっており、感温ばね19は第2調整スプリングに相当するものではない。した
がって、乙6号証に相違点②に係る構成が示されているとはいえない。
 しかも、乙6号証の考案においては、弁体を反弁体方向に付勢するばね14が必
須なのであり、同号証の構成から圧力調整を行う構成であるばね受け具、感温ばね
19及び弁ばね16だけを取り出して、他の発明に適用することはできない。さら
に、感温ばね19の受け座である係合部22はボデー2自身に設けられているか
ら、このままの構造では、本件発明のものに感応ばね19を配置することは物理的
に不可能である。
 本件考案は、第2調整スプリングのスプリング受け座をカバーとは独立した部材
としたことによって、組立・製造の容易性等の優れた効果を奏する。このような効
果は仮に乙17号証記載の発明に乙6号証に開示されたものを組み合わせたとして
も、得られるものではない。
   イ 無効理由の存在することが明らかであるとはいえないこと
 最判平成12年4月11日(民集54巻4号1368頁)に判示された「無効理
由が存在することが明らかであるとき」とは、誰が判断しても確実に無効理由があ
ると認められるような場合に限られるべきである。本件考案の無効理由は、進歩性
についてのものであり、その判断は無効理由の中でも最も困難なものであるから、
その判断は無効審判に委ねられるべきであり、安易に侵害訴訟の裁判所において、
手続的制約もなく審理判断することを許すべきでない。
  (3) 構成要件オの充足性
   ア 原判決は、本件考案の「仕切体」の意義が不明瞭であるとして、本件明
細書の記載を参酌し、「仕切体」を「ハウジングに固着されたもの」と限定して解
釈した。しかし、「仕切体」という部材の名称は適当でないとしても、当業者は、
本件明細書(甲1の2)の記載から「仕切体」が弁シートを押さえる作用をする部
材であることを容易に理解することができるから、「仕切体」の意義は明瞭であ
る。「仕切体」という名称自体に特別な意義はなく、具体的に仕切る対象や仕切る
方法は本件考案においては問題にならないのであるから、その点が明細書に記載さ
れていないからといって、「仕切体」が不明瞭であるということにはならない。し
たがって、「仕切体」を、「ハウジングに固着されたもの」という限定を付けて理
解することは誤りである。
   イ 仮に「仕切体」に「ハウジングに固着されたもの」という限定をつけて
も、本件考案における「固着」は接着剤やねじ込み等で物理的に固定し剥がれない
ような状態にすることを意味するものではなく、装置が組み上がった状態におい
て、上から力が「仕切体」に加えられることにより、「仕切体」の中央下に配置さ
れた「弁シート」がハウジングに押しつけられて、密着して固定される状態を意味
する。被告各物件は、「コンプレッションメンバー(13X、13Y)」が「シー
ト部(15X、15Y)をベース(1X、1Y)のうち流体流入通路(3X、3
Y)の先端開口を形成する部分に押しつけ固定」することによって、コンプレッシ
ョンメンバーの中央下に配置されたシート部がベース上に密着して固定され動かな
い状態になるから、「ハウジングに固着された仕切体」の構成を備えるものであ
る。
 2 被控訴人の反論の要点
(1)被控訴人(被告)は、原審において「権利濫用」の用語は用いなかったも
のの、本件実用新案登録に無効理由があることを主張、立証している。すなわち、
被控訴人は、原審において、出願前に存在していた公知技術を立証するものとし
て、乙1号証(USP4807849号明細書)、乙6号証(実願昭59-152
387号のマイクロフィルム)、乙17号証(USP4744387号明細書)を
含む多数の公知文献を提出し、また、被控訴人が特許庁に対し本件実用新案登録の
無効審判請求を申し立てた事実を主張し、その証拠(乙2号証、無効審判請求書)
も提出している。
 また、権利濫用などの一般条項については、それらの評価の対象となる具体的事
実が主要事実として弁論に顕出されていれば足りると解されるところ、被控訴人は
本件実用新案権に無効理由があることを基礎づける具体的な事実を乙号証をもって
顕出していた。
  (2) 権利濫用の判断について
 控訴人の主張は争う。
   ア 無効理由の存在
    本件考案に明らかな無効理由があるとした原審判断は正しい。
    (ア) 相違点①について   乙17号証記載の発明に乙1号証の構成を
適用することは、当業者が極めて容易に想到し得ることである。
    (イ) 相違点②について   乙6号証に開示された重要な点は、互いに
反対方向に作用する弁ばね(第1調整スプリング)と感温ばね(第2調整スプリン
グ)を本件考案の箱体と同じ構成のばね受け具20により支持した構成にあり、上
記構成を乙17号証記載の発明に適用することは、当業者が極めて容易に想到し得
たことである。第2調整スプリングが感温ばねか否か、弁体を反弁体方向に付勢す
るか否かの議論は無効理由の存否に何ら影響を及ぼすものではない。
 控訴人は乙17号証記載の発明に乙6号証の考案の「感温ばねを配置することは
物理的に不可能である。」と主張するが、例えばボデー2をばね受け具22の上端
で上下に分割し、固定するなどの構成によって感温ばね19(第2調整スプリン
グ)をボデー2内部に配置する程度のことは、容易な設計変更であり、格別の支障
なく実施することができるものである。
  (3) 構成要件オの充足性に対して
  控訴人の主張は争う。「固着」とは、辞典によると、「ある物がある物に物理
的に固定しはがれない状態」を意味するのであって、「力が加えられて・・・押し
つけられて密着するようなもの」を「固着」ということはできない。
イ 無効理由が存在することの明白性
 控訴人の主張は争う。
第4 当裁判所の判断
 当裁判所も控訴人の請求はいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、次
のとおりである。
 1 弁論主義違反の主張について  
 原審記録及び当審における弁論の全趣旨によれば、本件訴訟が原審に係属してい
た平成12年4月11日に最高裁判決が出されたこと、原審において、被控訴人
は、本件考案について平成10年12月29日付けで無効審判を請求したことを主
張するとともに(被告準備書面(四))、その審判請求書写及び無効主張を理由づけ
る公知文献等を証拠として提出し、審決確定まで訴訟手続の中止を求める申立てを
していたこと、第12回弁論準備手続(平成12年3月28日)以降、和解による
解決が打診されたが、被控訴人は、和解金として名目的な額の支払にのみ応じる旨
の意向を表明していたこと、被控訴人の平成13年2月21日付け証拠説明書に
は、立証趣旨として「本件考案優先日(平1.3.28)前に公知技術が存在して
いた事実」(乙2号証)、「本件考案の優先日前に公知技術を利用したフロロカー
ボン社のレギュレータが、遅くとも1986年には日本国内で販売されていた事
実」(乙18ないし28号証)、「本件考案の優先日前に、ベリフロコーポレーシ
ョンが本件考案に関する公知技術を利用したレギュレータを製造・販売していた事
実」(乙31号証)と記載していること、一方、控訴人も、上記公知文献等が無効
主張を理由あらしめるものではない旨争っていたことが認められる。
 以上の経過に照らすと、被控訴人は、原審において、権利濫用という用語は用い
なかったものの、本件考案は明らかな無効理由を有する旨の主張及び具体的な無効
理由についての事実の主張をしていたものと認められる。さらに、被控訴人は、当
審において原判決説示の権利濫用の点を援用していることが明らかであり、当審口
頭弁論終結までに、控訴人の本訴請求は権利の濫用に当たるとの主張をしているも
のである。
 したがって、原判決に弁論主義違反の違法があるとする控訴理由は理由がない。
 2 権利濫用について
 当裁判所も以下の3のとおり、本件実用新案権には無効理由があることが明らか
であると判断する。なお、「無効理由があることが明らか」であるとは、侵害事件
を審理する裁判所において「無効理由があることが明らか」であると判断し得る程
度の明白性があることをもって足り、控訴人が主張するように無効理由の存在が何
人の目にも疑問の余地なく明らかであるという意味での明白性まで要求されるもの
ではないというべきである。
 3 本件考案の無効理由について
  (1) 原判決が、本件考案は乙17号証記載の発明及び乙1、乙6号証に開示さ
れた構成(別紙本件考案第1図、乙17号証図FIG1、乙1号証図1及び乙6号
証第1図参照)に基づいて当業者が極めて容易に想到し得たものであるとした判断
及びその理由は、相当としてこれを是認することができる。なお、被控訴人が請求
した本件実用新案権についての無効審判請求事件(平成11年審判第35011
号)において、平成13年5月1日、原判決と大要同旨の理由により、実用新案登
録を無効とするとの審決がなされている。
  (2) 相違点①について、控訴人は、乙1号証記載の発明においてコンプレッシ
ョンメンバー(本件考案の〔仕切体〕に相当する。以下、〔 〕内は対応する本件
考案の部材名称)によりシール〔弁シート〕を保持するためには、コンプレッショ
ンメンバーを押し付けるリング20が不可欠であり、コンプレッションメンバー
〔仕切体〕によりシールを保持する構成だけを取り出して乙17号証記載の発明に
適用することはできない旨主張する。しかし、乙1号証に、ガス圧力調整器におい
てシール〔弁シート〕をハウジングとは別体のものとして備え、このシールをコン
プレッションメンバー〔仕切体〕で保持する構成が示されていることは、明らかで
あり、また、コンプレッションメンバーを押し付ける部材は、コンプレッションメ
ンバーがシールを保持するという機能を発揮することができれば足りることも、当
業者が極めて容易に看取し得ることであって、これらの点からすれば、乙1号証記
載の発明からコンプレッションメンバー〔仕切体〕によりシールを保持する構成だ
けを取り出して乙17号証記載の発明に適用することはできないとの控訴人主張は
当を得ないといわざるを得ない。そして、乙17号証記載の考案におけ
る可撓性隔膜〔ダイヤフラム〕を挟んでいる部材11〔ハウジング〕と部材12
〔カバー〕との間に、乙1号証のコンプレッションメンバーでシールを保持する構
成を適用することができないとする理由も見当たらない。
 また、控訴人は、乙1号証の構造は、ばね27を弁室内に設置することを前提と
するものであるから、ばね27を弁室から出して設置する場合には適用することが
できないと主張するが、乙1号証の構造は必ずしもばね27を弁室内に設置するこ
とをを前提とするものと認めることはできないから、この点に関する控訴人の主張
は採用することができない。
(3) 相違点②について、控訴人は、乙6号証の感温ばね19は、弁ばね16
〔第1調整スプリング〕の付勢力を調整するためだけに作用し、弁体を反弁体方向
に付勢するものではないから、本件考案の第2調整スプリングに相当するものでは
なく、乙6号証に相違点②に係る構成が示されているとはいえないと主張する。な
るほど、乙第6号証の第1図に図示された実施例では、感温ばね19自体は弁体を
反弁体方向に付勢することはできないと認められるが、同号証には「弁ばね及び感
温ばねはダイアフラムを介して弁体を付勢するに限らず、弁体を直接付勢するよう
にしてもよい。」(乙6号証14頁12ないし14行)として、弁体7を感温ばね
で付勢するという技術も記載されていることが認められ、この技術における感温ば
ね19は弁体を反弁体方向に付勢するという機能においては第2調整スプリングに
相当するということができるから、これを前提として、乙6号証に相違点②に係る
構成と共通する構成が示されているとした原審の判断に誤りはない。このように、
乙6号証には、ばね受け具の内外にばね(弁ばね16と感温ばね19〔第1調整ス
プリングと第2調整スプリング〕)を配置するとの構成が示されている
と認められるのであり、この構成を乙17号証記載の発明に適用することは、当業
者であれば極めて容易に着想することができ、その適用に困難はないものと認めら
れる。 
 また、控訴人は、乙6号証の考案において感温ばね19の受け座である係合部2
2がボデー2自身に設けられているから、係合部21を備えたばね受け具をボデー
2に設置することは不可能であるとも主張するが、乙6号証の考案のボデー2を上
下に分割すれば設置が不可能であるということはできず(乙6号証には、ボデーが
一体構造のものに限定される旨の記載はない。)、本件考案についてもカバーが一
体構造でなければならない必然性はない(本件考案のカバーが一体構造であること
は、構成要件とされていない。)から、乙6号証の構成を乙17号証記載の発明に
適用することに障害があるということはできない。
  (4) 以上によれば、本件考案は、原審判断のとおり、上記各証拠に記載された
ものに基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものというべきであ
り、実用新案法3条2項の無効理由を有することが明らかである。
 したがって、請求項1項に係る本件実用新案権に基づく本件請求は権利濫用に当
たるので、棄却されるべきである。
 4 結論
 以上のとおりであるから、その余の点を判断するまでもなく、控訴人の請求はい
ずれも理由がない。よって、控訴人の控訴は理由がないから、本件控訴を棄却する
こととし、主文のとおり判決する。
 東京高等裁判所第18民事部
     裁判長裁判官  永   井   紀   昭
裁判官  塩   月   秀   平
裁判官  古   城   春   実
(別紙)
物件目録1,2
別紙図 本件考案  第1図
    乙17号証 FIG1
    乙1号証  図1
    乙6号証  第1図

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