弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
       理   由
本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。
 按ずるに、労働委員会の救済命令に対し使用者が取消訴訟を提起すると共に執行
停止の申立をなした場合、右執行停止の申立の取扱いに関して種々の見解の存する
ところではある。特に労働委員会の申立により受訴裁判所が緊急命令を発した場
合、執行停止の申立が認容されることは事実上あり得ないところであろう。しか
し、救済命令の取消訴訟に関して行政事件訴訟法第二五条の執行停止の規定の適用
を除外すべき法令上の根拠がなく、また緊急命令に対しては抗告が許されていない
以上、右行政事件訴訟法の条文に基づいて保護を求めようとする使用者の権利はみ
だりに害さるべきものではない。従つて、たとい緊急命令が先行する場合であつて
も、執行停止の申立を受けた裁判所は右緊急命令に拘束されて当然に執行停止申立
を却下すべきではなく、行政事件訴訟法の定める執行停止の要件を検討してその当
否を判断すべきであり、執行停止の申立を受けた受訴裁判所又はその抗告審におい
て右申立を認容したときは先の緊急命令は以後その効力を停止されたと同様の結果
となるか或は労働組合法第二七条第八項後段によつて取消変更を免れないものと解
すべきである。されば原審が「緊急命令を発したときは救済命令に対する執行停止
は当然に却下を免れない」との理由で抗告人の申立を却下したことは妥当を欠く嫌
いがあると云わざるを得ない。
 そこで抗告人の申立につき行政事件訴訟法第二五条の執行停止の要件の有無を判
断するに、本件記録を精査し全疎明資料を検討するも、抗告人の職員であるA(同
人が抗告人の経営に直接関与する管理職の立場にあるとの疎明はない)を原職に復
帰させることによつて、ただちに抗告人の金融機関としての信用を失墜させ或いは
職員間の不信を招き、抗告人に回復の困難な損害が生ずるものとはたやすく認める
ことができない。従つて抗告人の執行停止の申立は失当であつて却下を免れない。
 よつて原決定は結局その結論において相当であり、本件抗告はその理由がないこ
とに帰するので、民事訴訟法第四一四条第三八四条第九五条第八九条を適用し、主
文のとおり決定する。
(裁判官 牛尾守三 後藤文彦 右田尭雄)
(別紙)
 抗告の趣旨
 原決定を取消す。
 相手方が島労委昭和四三年(不)第一号益田市益田農業協同組合不当労働行為事
件につき、昭和四四年一二月一九日付にてなした「被申立人益田市益田農業協同組
合は、申立人石西地区農協労働組合の執行委員Aに対して行つた昭和四二年七月一
七日付の解雇を取り消し、原職に復帰させ、解雇の翌日から原職に復帰するまでの
間に同人が受けるはずであつた諸給与相当額を支払わなければならない。」との救
済命令中復職命令の執行は、抗告人(原告)相手方(被告)間の松江地方裁判所昭
和四五年(行ウ)第一号地方労働委員会の命令取消請求事件の本案判決が確定する
まで、これを停止する。
との裁判を求める。
 抗告の理由
一、抗告人は、昭和四二年七月一七日、抗告人農協職員Aに対し、就業規則第五七
条第二号により同日付で解雇する旨通知した。
 ところが、相手方委員会は、右Aの所属する石西地区農協労働組合(代表者執行
委員長B)の不当労働行為救済の申立に基き、昭和四四年一二月一九日、抗告人に
よる右解雇を不当労働行為であるとして、前記抗告の趣旨記載のごとき救済命令を
発せられた。
二、しかしながら、抗告人が前記Aを解雇処分に付した具体的事由は訴状記載のと
おりであり、累積的傾向がみとめられ、かつ、その一つ一つの行為は相手方委員会
の云われるように軽微なとはいいがたく、とくに、金銭処理についての批難にあた
いする行為であつて、信用業務にたずさわる金融機関の職員としては、適格性を欠
くものといわねばならない。
 解雇事由(1)乃至(4)の件につき、その発生、或は発見当時に厳重訓戒、注
意、或は始末書を徴し、将来をいましめ、その反省を求めて処分保留の形をとつて
いたが、昭和四二年六月、またしも旅行友の会貯金の件が発生し、特にこの件につ
いては、一般に金融機関の職員の横領等不正行為の多くが、とかく本件のようなこ
とからはじまり勝ちであつて、農協会員の不信感につながり、それが預金取扱いの
機関として耐へられない実情を杞憂したため、抗告人はやむなく解雇したものであ
る。
 右の次第で、その解雇は正当であり、不当労働行為に当らない、したがつて右救
済命令は抗告人として耐えられない事情にある。
三、右のように、右Aの行為は金銭にまつわる行為の累積をしめし本件のほかに
も、昭和三九年二月二六日宿直をしていないのに宿直日誌に宿直した如く記入し
て、宿直料を受領し、常直者Cに対し擬装工作が行われたこともみとめられる。
 抗告人農協としては、本案判決確定に至るまでの給与相当額の支払については、
やぶさかではないが、事態の調整をまたず直ちにAを原職に復帰させることは、農
協会員の職員もふくめての心事に農協不信感を惹起する危険が多大である。
四、原決定は、「被申立人の別途緊急命令の申立にもとづいて、申立人に対し、A
を原職に復帰させる内容を包含する救済命令に従うべき旨の緊急命令を発している
のであるから、前記救済命令のうち原職復帰を命ずる部分についての執行停止を求
める本件申立は却下のほかはない。」と判示するが、緊急命令自体取消されるべき
ものと思料する。
五、よつて原決定は失当であるから、抗告の趣旨記載の裁判を求めるため本抗告に
及んだ次第である。
なお、抗告の理由については更に準備書面を提出する用意がある。

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