弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人国枝鎌三の上告趣意は、末尾に添えた別紙記載の通りである。
 (一) 本件第一審判決は公訴事実第一の甲罪と同第二の乙罪とを併合罪として
被告人に懲役八月を科したのであるが、原審に至り被告人に甲罪犯行後丙罪につき、
また乙罪犯行後丁罪につきそれぞれ確定判決があつたことがわかつたので、原判決
は甲丙二罪を併合罪として甲罪につき懲役三月を、また乙丁二罪を併合罪として乙
罪につき懲役五月を科した。論旨第一点はその点をとらえて、原判決は旧刑訴法第
四〇三条不利益変更禁止の規定に違反する、と非難するしかしながら右法条に「原
判決ノ刑ヨリ重キ刑ヲ言渡ス」というのは、主文における科刑が原判決より重い意
味であるから、本件のごとく第二審判決の刑が合計して第一審の刑と同様懲役八月
である以上、不利益変更があつたと言い得ず、また論旨の言うような、懲役刑が単
一である場合と二個となつた場合とで「被告人の利益に重大なる関係あり、即実際
上の取扱において非常の差異の生ずる」ということは、刑の執行、仮出獄、時効等
についても考えられないところであつて、いずれにせよ論旨は理由がない。
 (二) 論旨第二点は、原審には証拠調を経由しない前科調書によつて被告人の
前科の事実を認定した違法があると非難する。しかし、原判決において被告人の前
科に関する事実を述べているのは、刑法第四五条後段の併合罪の関係を認定するた
めの資料であり、この事実は旧刑訴法第三六〇条第一項の「罪トナルベキ事実」で
はないのであるから、必ずしも公判廷で証拠調を経た証拠によつてこれを認定する
ことを要しないのであつて、論旨は理由がない。
 (三) 論旨第三点は、原判決後被告人の前科が執行猶予期間の満了によつて刑
の言渡の効力を失つたということを理由として原判決の刑が緩和せらるべきものと
するのであるが、論旨は結局量刑不当の主張に帰し、上告の適法な理由にならない。
 よつて、旧刑訴法第四四六条に従い、主文の通り判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
 検察官 堀忠嗣関与
  昭和二五年九月五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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