弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人Aを懲役7年及び罰金300万円に,被告人Bを懲役5年及び罰
金100万円に,被告人Cを懲役4年及び罰金100万円に,被告人Dを
懲役3年及び罰金50万円に処する。
被告人A,被告人B及び被告人Dに対し,各未決勾留日数中160日
を,被告人Cに対し,未決勾留日数中50日をそれぞれその懲役刑に算入
する。
被告人らにおいてその罰金を完納することができないときは,いずれの
被告人についても,それぞれ金1万円を1日に換算した期間,その被告人
を労役場に留置する。
被告人4名から,奈良県香芝警察署で保管中の大麻草296袋(奈良地
方検察庁葛城支部平成29年領第104号符号5-1,6ないし114,
119-1,120ないし142,146ないし170,171-1,1
72-1,173-1,174-1,175-1,176-1,177-
1,178-1,179ないし296)並びに同支部で保管中の乾燥大麻
草1袋(同年領第94号符号1-1)及び大麻草7袋(同年領第94号符
号2-1,3-1,4-1,5-1,6-1,7-1,8-1)を,被告
人Bから,同支部で保管中の大麻草4袋(同年領第22号符号1ないし
3,同年領第82号符号1)及び覚せい剤7袋(同年領第22号符号4な
いし10)を没収する。
訴訟費用中,被告人Bの国選弁護人に関する部分は同被告人の負担と
し,被告人Dの国選弁護人に関する部分は同被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
第1被告人4名は,共謀の上,
1営利の目的で,みだりに,平成28年7月頃から同年10月26日までの
間,和歌山県伊都郡a町大字b字c番地所在の倉庫において大麻草を挿し木
して根付かせ,水や肥料を与え,照明器具で光を照射するなどして,大麻草
1万1167本(奈良地方検察庁葛城支部平成29年領第104号符号5-
1,6ないし114,119-1,120ないし142,146ないし17
0,171-1,172-1,173-1,174-1,175-1,17
6-1,177-1,178-1,179ないし296はその鑑定残量)を
育成し,もって大麻を栽培し
2みだりに,同年10月26日,同所において,
営利の目的で,大麻である植物片約2460.3グラム(同支部平成29
年領第94号符号1-1,2-1,3-1,4-1,5-1,6-1,7-
1はその鑑定残量)を所持し
前同様の植物細片約158.3グラム(同支部平成29年領第94号符号
8-1はその鑑定残量)を所持し
第2被告人Bは,みだりに,
1同日,同所において,大麻である植物片約43.69グラム(奈良地方検察
庁葛城支部平成29年領第82号符号1はその鑑定残量)を所持し
2同月27日,大阪府豊中市d町e丁目f番g号の被告人方において,覚せい
剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩の結晶約3.511グラム
(同支部平成29年領第22号符号4ないし10はその鑑定残量)及び大麻
である植物片約164.93グラム(同支部平成29年領第22号符号1な
いし3はその鑑定残量)を所持し
たものである。
(証拠の標目)
省略
(累犯前科)
被告人Bは,平成23年2月22日神戸地方裁判所で詐欺未遂,詐欺の各罪によ
り懲役2年に処せられ,平成24年12月23日その刑の執行を受け終わったもの
であり,この事実は検察事務官作成の前科調書(乙19)によって認める。
被告人D
反の罪により懲役1年8月に処せられ,平成24年4月25日その刑の執行を受け
終わり,その後犯した同罪により,平成26年3月14日同裁判所岸和田支部で
懲役2年4月に処せられ,平成28年6月13日その刑の執行を受け終わったもの
であり,これらの事実は検察事務官作成の前科調書(乙34)
判決書謄本(乙37)によって認める。
(法令の適用)
罰条判示第1の1の所為について(被告人4名)
刑法60条,大麻取締法24条2項,1項
判示第1の2の所為について(被告人4名)
判示第2の1の所為について(被告人B)
大麻取締法24条の2第1項
判示第2の2の所為について(被告人B)
大麻所持の点は大麻取締法24条の2第1項
覚せい剤所持の点は覚せい剤取締法41条の2第1項
科刑上一罪の処理判示第1の
判示第2の2の大麻所持と覚せい剤所持について(被告人
B)
いずれも1個の行為が2個の罪名に触れる場合であ
るから,刑法54条1項前段,10条により1罪とし
て重い以下の罪の刑で処断
判示第2の2については覚せい剤所持の罪
刑種の選択判示第1の1及び2の各罪について(被告人4名とも)
いずれも懲役刑及び罰金刑を併科
累犯加重被告人Bについて
刑法56条1項,57条(再犯)
被告人Dについて
刑法59条,56条1項,57条(3犯)
併合罪加重被告人A,同C及び同D(判示第1の1及び2の各罪)
被告人B(判示第1の1及び2,同第2の1及び2の各
罪)
いずれも刑法45条前段の併合罪
懲役刑については同法47条本文,10条により重い
(Bについては刑及び犯情の最も重い)判示第1の1
の罪の刑に法定の加重
罰金刑については同法48条2項により判示第1の1
及び2の各罪所定の罰金の多額を合算
未決算入刑法21条(被告人4名とも懲役刑に算入)
労役場留置刑法18条(被告人4名とも金1万円を1日に換算)
没収主文の乾燥大麻草及び大麻草について
大麻取締法24条の5第1項本文(判示第1の1及
び2の罪に係る大麻草等については被告人4名か
ら,判示第2の1及び2の罪に係る大麻草について
は被告人Bから没収)
主文の覚せい剤について
覚せい剤取締法41条の8第1項本文(被告人Bか
ら没収)
訴訟費用被告人B及び同Dについて
刑事訴訟法181条1項本文(負担)
(量刑の理由)
本件は,被告人4名による営利目的での大麻の栽培と営利及び非営利の目的によ
る大麻の所持,被告人Bによる大麻所持1件と大麻及び覚せい剤所持1件からなる
事案である。
大麻栽培の犯行は,床面積が各階400平方メートル以上もある2階建ての倉庫
を借り受け,約4000万円もかけて,その倉庫に電気工事をして多数の照明設備
や空調設備を施し,水道工事をして水を出せる場所を増やすなどして,光や温度,
水の管理をしたうえで,設置したビニールハウスの中などで,苗木の育成,苗木を
幼木に育成,幼木を成木に育成といった3段階に分け,合計で1万本以上の大麻草
を栽培していたものである。極めて計画的かつ組織的で,稀に見る大規模な犯行と
いえる。また,被告人らがこの倉庫で所持していた大麻草の量は,2500グラム
を超えており,その大半の2400グラム余りが営利目的によるものであった。違
法薬物の害悪を社会に広範囲に拡散させる危険性が高く,悪質というほかない。
被告人Aは,前記多額の金銭を出して電気工事や水道工事を業者に行わせて電気
や水道の利用契約を締結し,被告人BやDらに指示してビニールハウスを設置する
などして大麻栽培の準備をした上,ほぼ毎日のように上記倉庫に詰めて,大麻草の
挿し木や選定,花の収穫・乾燥による商品化などの作業を行い,被告人BやDに指
示して水やりなどの作業をさせていたもので,前記大麻栽培や所持の犯行の首謀者
で中心的役割を果たしており,被告人4名の中で最も責任が重いが,公判廷で反省
の弁を述べ,社会復帰後は仕事を真面目にし,二度と犯罪をしない旨誓い,更生の
意欲を示していること,その帰りを待つ内妻等の家族がいること,暴力団組織から
除籍され,現在ではかかわりを持っていないこと,前科がないことなどの酌むべき
事情も認められるので,これらも併せ考慮した上で,主文の刑を量定した。
次に,被告人B及びDは,前記のとおり,被告人Aに指示されて,準備行為を手
伝い,週に5日程度訪れて,大麻の栽培に必要な水やりなどを行うなどし,被告人
Aから月額30万円程度の報酬を得ていたもので,同被告人に比べれば従属的であ
るものの,本件大麻栽培等において同等の重要な役割を果たしている。しかも,両
被告人とも,前記のとおり累犯前科があり,服役して矯正教育を受けたのに,上記
犯行に及んでいる。特に,被告人Dは,前刑出所後わずか2週間ほどで上記犯行に
及んでいる。被告人Bも同Dも,規範意識は希薄というほかない。しかし,被告人
Bは,上記犯行に加え,単独でも大麻の単純所持と大麻及び覚せい剤所持の各犯行
を重ねているところ,それぞれの犯行における大麻や覚せい剤の所持量は少なくな
いのであって,これらに照らせば,同被告人の罪責は被告人Aのそれに次いで重く,
被告人Dの罪責は被告人Bのそれよりも軽いといえる。そこで,この両被告人の罪
責を前提にした上で,被告人Bについては,同被告人が公判廷で反省の弁を述べ,
犯した罪の重さを受け止めて,社会復帰後は二度と薬物にかかわらない旨誓い,更
生の意欲を示していることなど,また,被告人Dについても,同被告人が公判廷で
反省の弁を述べ,社会復帰後は正業に就いて収入を得るように努める旨誓い,更生
の意欲を示していること,同被告人の母も社会復帰後の同被告人を支える旨公判廷
で誓っていること,その帰りを待つ幼い子供がいることなど,それぞれに酌むこと
のできる事情も認められるので,これらも考え合わせたうえで,この両被告人の刑
を量定した。
被告人Cは,週に2ないし3回程度前記倉庫を訪れ,大麻の栽培に関して被告人
Aの相談に乗り,同被告人から大麻が病気にかかったと聞くと,農薬を自腹で購入
して被告人Bや同Dに散布させるなどもし,被告人Aから合計で40万円から50
万円の報酬を得ていたもので,本件大麻栽培等の犯行では関与の程度が低く,被告
人4名の中では最も罪責が軽いものの,犯罪自体の重大性に加え,被告人Cには平
成24年1月に詐欺罪で懲役1年2月,3年間執行猶予に処せられた前科があるこ
となどにも鑑みると,同被告人についても実刑は免れない。しかし,同被告人につ
いても,公判廷で反省の弁を述べ,今後二度と薬物にかかわらず,犯罪を犯さない
旨誓っていること,内妻も再犯防止に協力する旨公判廷で誓っていること,病気を
患っていることなどの酌むべき事情も認められるので,これらも併せ考慮した上で,
主文の刑を量定した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑・被告人Aにつき懲役10年及び罰金300万円
被告人Bにつき懲役7年及び罰金100万円
被告人Cにつき懲役6年及び罰金100万円
被告人Dにつき懲役5年及び罰金50万円
被告人4名から判示第1の1及び2の罪に係る大麻草の没収
被告人Bから判示第2の1の罪に係る大麻草並びに判示第2の2の罪に係
る大麻草及び覚せい剤の没収)
平成29年6月22日
奈良地方裁判所葛城支部
裁判官奥田哲也

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