弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人等六名の弁護人東中光雄の上告趣意第一点について。
 所論は要するに原審が被告人Aを除く爾余の五名について第一審判決を量刑軽き
にすぎるとして破棄し、自ら何ら事実の取調をしないで右各被告人に不利益に刑を
変更したのは刑訴四〇〇条但書の規定に違反するものである。該規定は控訴審が破
棄自判し得ることを例外的に認めているがその場合には、殊に被告人に不利益に刑
を変更するような場合には、必ず自ら事実の取調をなすことを要する、即ちその限
りにおいて、直接審理をなし、口頭弁論を経た上でなければ許されないものである
と前提して、こと茲に出でなかつた原判決は直接審理主義、口頭弁論主義に反する
として憲法三一条、三七条違反を主張する。
 記録を調べてみると原審は右五名の被告人について第一審判決を量刑軽きにすぎ
るとして破棄し、右各被告人に不利益に刑を変更していること、原審はみずから何
らの事実の取調をもなしていないことは所論のとおりである。しかし、控訴審が検
察官からの第一審判決の量刑は不当であるとの控訴趣意に基き第一審判決の量刑の
当不当を審査するにあたつては、常に控訴審みずから事実の取調をしなければなら
ないものではなく、訴訟記録及び第一審において取り調べた証拠によつてその量刑
の不当なことが認められるときは、控訴審みずから事実の取調をしないで第一審判
決の刑より重い刑を言渡しても刑訴四〇〇条但書に反するものではないこと既に当
裁判所の判例とするところである(昭和二七年(あ)第四二二三号、同三一年七月
一八日大法廷判決、集一〇巻七号一一七三頁)から、所論違法の主張は勿論、違憲
の主張も理由がないこと右判例の趣旨に徴して明らかである。
 同第二点について。
 所論は違憲をいうけれども所論被告人の各自供調書が供述の任意性を欠くものと
認むべき資料は存しないので所論違憲の主張は前提を欠き理由がない。(第一、二
審判決は、被告人等の司法警察員に対する各供述調書は全部証拠として挙示してい
ない。検察官調書(被告人B、C、D三名分)を挙示しているが、これらが任意性
を欠くとは認められない。)
 同第三点について。
 所論は事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないものであつて適法な上告理由
に当らない。(原審の支持する第一審判決判示第一及び同第二事実の各関係被告人
の所為が所論の如く違法性が阻却され、乃至責任が阻却されるとは認められない。)
 被告人B本人の上告趣意第一について。
 所論の理由なきことは弁護人東中光雄の上告趣意第一点について述べたところに
よつて明らかである。
 なお所論「公平な裁判」でないから違憲である、との非難があたらないことは、
しばしば当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判
決)に示されたところに徴して明らかである。
 同第二について。
 所論は憲法三八条違反をいうけれども、第一、二審判決は被告人Bの司法警察員
に対する供述調書はこれを証拠としていないし、また証人の供述その他多くの証拠
によつて事実を認定しているのであるから、所論違憲の主張は前提を欠き採用でき
ない。
 同第三について。
 所論は事実誤認の主張であつて適法な上告理由とならない。
 被告人C本人の上告趣意について。
 所論のうち原審が書面審理で第一審判決の刑よりも重い刑を被告人に言渡したの
は、違憲、違法である旨主張する部分は、弁護人東中光雄の上告趣意第一点につい
て述べたと同じ理由によつて採用できない。爾余の論旨は憲法違反の語を用いては
いるが実質は事実誤認、量刑不当の主張をいでないものであつて適法な上告理由と
ならない。(なお、被告人等の司法警察員に対する各供述調書は任意性を欠く旨主
張するけれども第一、二審判決は、右調書を証拠として挙示してはいないこと前述
のとおりである。)
 被告人D本人の上告趣意一について。
 所論は弁護人東中光雄の上告趣意第一点について上に述べたと同じ理由によつて
採用できない。
 同二について。
 所論は事実誤認の主張に帰し適法な上告理由とならない。
 被告人E本人の上告趣意第一について。
 所論の理由なきことは弁護人東中光雄の上告趣意第一点について前に述べたとこ
ろによつて明らかである。
 同第二について。
 所論は事実誤認の主張であつて適法な上告理由とならない。(なお、司法警察員
に対する所論各供述調書は任意性がない旨主張する点があるけれども、第一、二審
判決はこれを証拠として挙示していないこと前述のとおりである。)
 同第三について。
 所論は量刑不当の主張に帰し適法な上告理由とならない。
 被告人A本人の上告趣意について。
 所論のうちには憲法三八条違反をいう点があるけれども、第一、二審判決は司法
警察員に対する所論各供述調書はこれを証拠として挙示していないし、また証人の
証言その他の多くの証拠によつて事実を認定していること上に述べたとおりである
から、右違憲の主張はその前提を欠くものであり、爾余の論旨は事実誤認の主張で
ある。論旨は採用できない。
 被告人F本人の上告趣意第一について。
 所論の理由なきことは弁護人東中光雄の上告趣意第一点について前に述べたとこ
ろによつて明らかである。
 同第二について。
 所論は事実誤認の主張であつて適法な上告理由とならない。(なお被告人B、同
C、同Dの検察官に対する所論各供述調書が所論の如く任意性を欠くと認むべき資
料の存しないこと上述のとおりである。)
 同第三について。
 所論は量刑不当の主張であつて適法な上告理由とならない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三四年六月九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛