弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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      主文
   被告人を懲役3年に処する。
   未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
      理由
(犯罪事実)
  被告人は,神奈川県警察官で,横浜市a町b区c番地所在の神奈川県B警察署
に警務課管理係員として勤務し,法令により拘禁された者を看守する職務に従事し
ていた者であるが,殺人等の罪により起訴されて同署の留置場に勾留中であったC
と職務を通じて個人的交際を深めていたところ,同留置場において,いずれも被拘
禁者を看守する職務に従事していた際,かねてから複製して所持していた合かぎを
使い,女子房居室内に入り込むなどして,法令により拘禁されていた同女を姦淫す
ることを企て,
第1 平成13年12月29日午前零時30分ころ,上記の合かぎを使用して同留
置場○号室の扉を開けて同室内に入り込み,同所において,法令により拘禁されて
いるC(当36歳)のズボンなどを脱がせて下半身を裸にした上,同女を姦淫し,
第2 平成14年1月1日午前2時30分ころ,上記第1と同様の方法で同室内に
入り込み,同所において,同女のズボンなどを脱がせて下半身を裸にした上,同女
を姦淫し,
第3 同月7日午前2時30分ころ,上記第1と同様の方法で同室内に入り込み,
同所において,同女のズボンなどを脱がせて下半身を裸にした上,同女を姦淫し,
第4 同日午前3時30分ころ,上記第1と同様の方法で同室内に入り込み,同所
において,同女のズボンなどを脱がせて下半身を裸にした上,同女を姦淫し,
第5 同月10日午前1時30分ころ,上記第1と同様の方法で同室内に入り込
み,同所において,同女のズボンなどを脱がせて下半身を裸にした上,同女を姦淫
し,
第6 同月19日午前2時30分ころ,上記の合かぎを使用して同室の扉を開け,
同女を同室横の回廊に連れ出し,同所において,同女のズボンなどを脱がせて下半
身を裸にした上,同女を姦淫し,
第7 同日午前3時30分ころ,上記第6と同様の方法で同女を同室横の回廊に連
れ出し,同所において,同女のズボンなどを脱がせて下半身を裸にした上,同女を
姦淫し,
もってそれぞれ同女に陵虐の行為をした。
(証拠の標目) 略
(法令の適用)略
(量刑の事情)
本件は,判示のとおり,神奈川県警察に勤務し,看守の職務に従事する警察官であ
った被告人が,その職務中,留置場において,被拘禁者である被害者を前後7回に
わたり姦淫したという特別公務員暴行陵虐の事案である。
被告人は,北海道内の公立高校を卒業した後,神奈川県警察官に採用され,平成○
年○月からはB警察署警務課管理係の看守となり,本件当時は,被拘禁者の監視及
び出し入れ,留置場全般の監視警戒並びに場外との連絡等に当たっていたほか,被
拘禁者の生活全般の面倒を見るなどの職務に従事していた。他方,被害者は,大韓
民国国籍の女性であるところ,平成13年6月に傷害罪等の事件で逮捕,勾留さ
れ,同署の女子房に収監されていたが,その後,殺人罪等により起訴されたことな
どから引き続き同房に拘禁されていた。被告人は,同年9月ころから,衣類の購入
等を依頼する旨の手紙を受け取るようになるなど被害者との接触が増えていたとこ
ろ,その翌月,同房の女性が突然病死したことにショックを受け,精神的に不安定
になっていた被害者の相談に応ずるなどするうち,次第に好意を抱くようになり,
処遇細則に違反した便宜を図るなどして個人的交際を深めていたが,年末に至って
同房者が釈放となり,女子房内の被拘禁者が被害者のみとなったことをよいこと
に,被拘禁者と性的関係を持つことが重大な職務規律違反であり,懲戒免職をまぬ
かれないことを認識しながら,結局,欲望を抑えることができないまま本件各犯行
に及んだものであって,犯行に至る経緯や動機に酌むべきものはまったくない。被
告人は,被害者を姦淫することを企てると,単独で看守の職務に従事する夜間から
早朝にかけての時間帯をねらい,当直勤務員に対しては規定どおり留置場内の巡視
を行っているかのように装う工作をするなどした上,かねてから無断で複製してい
た留置場の合かぎを使用して被害者の房内に入り込み,あるいは被害者を房外に連
れ出すなど,看守の立場にあることを利用し,まさに,その職務中に犯行に及んだ
のみならず,ひとたび犯行に及んだ後は,発覚するまで被害者に対する姦淫行為を
繰り返していたのであって,犯行の態様は大胆かつ執ようで,破廉恥きわまりない
ものであり,まことに悪質といわなければならない。看守の立場にありながら被拘
禁者を姦淫するというとうてい許しがたい犯行に及んだばかりか,被害者の歓心を
買い,あるいは被害者との関係を維持するために,接見禁止中の被害者と手紙等の
やり取りをしたり,許可されていないし好品等の差し入れをしたりするなどの違反
行為を頻繁に繰り返しており,警察官としての自覚を欠き,遵守すべき規律を大き
く踏み外した被告人は厳しい非難を甘受せざるを得ないというべきである。また,
被告人は,上司から被害者に対する特別な扱いをやめるよう注意された際,判示第
1の犯行に及んだことを申告したものの,被害者に対しては関係を結んだのは1回
のみであると話すよう口止めを図るなど犯行後の事情にも見過ごしがたいものがあ
る。さらに,本件は,折しも度重なる神奈川県警察の不祥事が指弾され,警察官が
一丸となって信頼回復に努めている最中における犯行であり,留置場内において看
守が被拘禁者を姦淫するという破廉恥な犯行が,社会に対して強い衝撃と驚がくを
与え,警察官,ひいては刑事司法作用に対する国民の信頼を著しく失墜させたのみ
ならず,日夜精勤に励む警察官の士気にも大きな影響を及ぼしたことなどの犯行の
社会的影響も本件の量刑に当たり軽視することは許されないというべきである。
以上のような事情に照らすと,被告人の刑事責任はまことに重いといわなければな
らない。
したがって,本件当時は被害者も被告人に対して好意を持っており,もとより犯罪
の成否に影響を及ぼすものではないが,被害者は被告人と肉体関係を結ぶことに同
意していたことがうかがえ,また,被告人が被害者に対して暴行や脅迫を加えたよ
うなことはないこと,自首に該当するものではないものの,前記のとおり,被告人
は判示第1の犯行については上司に申告していること,被告人の親族が証人として
出廷し,被告人の日ごろのまじめな生活と本件各犯行とのかい離に戸惑いながら
も,今後も親族一同で被告人の更生に協力し,その家族を支えていきたいと証言し
ていること,被告人が扶養しなければならない病弱な妻と子どもがいること,本件
が社会の強い関心を集め,被告人は,新聞等のマスコミで実名報道された上,当然
のことながら懲戒免職処分を受けるなど相応の社会的制裁を受けていること,被告
人は,20年以上にわたって職務に精励し,その勤務ぶりは優秀警察官として表彰
されたこともあったほどであり,また,家庭においては病弱な妻の面倒を見るな
ど,まじめな生活を送っていたのであって,前科前歴はまったくないこと,被告人
は,本件各犯行を素直に認め,被害者への謝罪の意を表しているとともに,欲望に
溺れた自らの愚行が警察官やその職務遂行に対する信頼を大きく揺るがせ,家族に
言いしれぬ苦しみを与えたことをあらためてかみしめ,反省を深めていることなど
の被告人に有利な事情をできる限りしんしゃくしても,刑の執行を猶予することは
考えられず,本件については,被告人を懲役3年の実刑に処するのが相当であると
判断した次第である。
よって,主文のとおり判決する。
 (求刑 懲役5年)
平成14年8月9日
横浜地方裁判所第三刑事部
 
              裁判長裁判官   志  田     洋
   裁判官   小  林  康  男
裁判官   佐  竹  真  紀

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