弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴人が当審で追加した訴えをいずれも却下する。
三 控訴費用は、控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が控訴人に対し平成一〇年一二月二四日付けでした原判決別紙物件目
録記載の自動車に係る移転登録及び抹消登録の各申請の受理拒否処分を取り消す。
3 控訴人が現在において2記載の自動車の真正な所有者であることを確認する。
4 被控訴人が平成九年一月二一日付けでした2記載の自動車についての抹消登録
回復処分が無効であることを確認する。
二 被控訴人
1 控訴棄却
2 控訴人が当審で追加した訴え(第一、一、3及び4の請求に係る訴え)につ
き、訴え却下
第二 事案の概要
一 本件は、原判決別紙物件目録記載の自動車(本件自動車)の所有者であると主
張する控訴人が、被控訴人に対し、本件自動車について、所有名義人である株式会
社チーフカーズ(チーフカーズ)から控訴人への移転登録を申請するとともに当該
移転登録後の抹消登録を申請したところ、右各申請の受理をいずれも拒否されたた
め、各申請の受理拒否処分の取消しを求めた事案である。原判決は、控訴人の請求
を棄却したので、これに対して控訴人が不服を申し立てたものである。
 なお、控訴人は、当審において、中間確認の訴えとして、控訴人が本件自動車の
所有者であること及び被控訴人がした本件自動車についての抹消登録回復処分が無
効であることの各確認を求める訴えを追加した。
二 当事者の主張は、原判決の該当欄記載のとおりであるから、これを引用する。
第三 当裁判所の判断
一 まず、控訴人が当審で追加した訴えの適法性について検討する。
 中間確認の訴えは、本来の請求に対して先決関係にある法律関係の存否につい
て、その訴訟手続内で確認を求める訴えである。これは、先決関係にある法律関係
については、終局判決の理由中で判断がされても、そのままでは既判力を生じない
ことから、別訴による不経済や判断の不統一という不利益を避けるため、これを訴
訟物として追加し、既判力を得られるようにしたものである。したがって、追加さ
れた訴えが中間確認の訴えとして許されるためには、当該訴えの目的となる法律関
係が訴訟の進行の中で争われたものでなければならず、かつ、争いとなった法律関
係の成立又は不成立が、本来の訴
訟の目的たる権利又は法律関係に対し先決関係にあって、その判断が訴訟の勝敗に
影響を与えることが必要である。
 これを本件についてみると、本来の請求は移転登録及び抹消登録の各申請の受理
拒否処分の取消しを求めるものであって、その訴訟物は受理拒否処分の違法性であ
る。そして、処分の具体的な違法事由として争点となっているのは、控訴人のした
申請について「申請が方式に適合しない」事由があるかどうか、すなわち、控訴人
のした申請に法令に定める添付書面が添付されていたかどうかである(添付されて
いたにもかかわらず「申請が方式に適合しない」事由があるとして受理拒否処分が
されれば、その処分は違法である。一方、添付されていなければ「申請が方式に適
合しない」としてされた受理拒否処分は適法である。)。したがって、控訴人が本
件自動車の所有者であるかどうかや本件自動車についての抹消登録回復処分が無効
であるかどうかは、本来の訴訟の目的たる権利又は法律関係に対し先決関係にある
ものとはいえない。
 そうすると、控訴人が本件自動車の所有者であること及び被控訴人がした本件自
動車についての抹消登録回復処分が無効であることの各確認を求める訴えは、本来
の訴訟に対して中間確認の訴えとなる要件を欠き、不適法といわざるを得ない。な
お、控訴人が本件自動車の所有者であることの確認を求める訴えは民事訴訟である
から、本来の訴訟と同種の訴訟手続であるとの要件を欠き、この点でも不適法であ
る。
二 次に、本来の請求についてみる。
 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次に記載
するほか、原判決の理由記載と同一であるからこれを引用する。
 自動車の登録手続を定める自動車登録令(登録令)一四条一項によれば、登録の
申請をする者は、申請書に同項各号の書面を添えて提出しなければならないとされ
ており、同項一号には「登録の原因を証する書面」が、三号には「代理人により登
録の申請をするときは、その権限を証する書面」が挙げられている。また、登録令
一六条一項によれば、申請書には、やむを得ない場合を除き、同項に定める印鑑証
明書を添付しなければならないとされている。
 右の「登録の原因を証する書面」とは、必ずしも譲渡証明書(道路運送車両法三
三条)に限られるものではない。譲渡証明書は、自動車の登録の申請に際して、自
動車の所有権の有無の確認を容易に行うた
め設けられた制度であるが、そうであるからといって、自動車の所有権を有するこ
とを他の方法で証明することを許さないものではない。しかし、登録の申請の審査
は、申請書の記載及び添付書面のみを資料として行われる書面審査であるから、登
録の原因を証する書面も、所有権を有することを一義的に明らかにするものでなけ
ればならない。
 本件において、控訴人は、移転登録申請書に特別売却調書を添付して提出してお
り、控訴人は、これが登録の原因を証する書面に当たると主張する。
 しかし、乙五の四によれば、控訴人が提出した特別売却調書には、動産競売と本
件自動車の所有名義人であるチーフカーズとのつながりを示す記載は何らみられな
いことが認められる(乙五の四は、特別売却調書の一部であるが、乙一の六によれ
ば、特別売却調書全体を提出したとしても、同調書の当事者目録に債務者Aの記載
がみられるだけである。)。そうすると、特別売却調書では、控訴人が代表者を務
める有限会社プラトンがチーフカーズから本件自動車を承継取得したことを証明す
るものとは認められず、また、有限会社プラトンが本件自動車を即時取得した余地
があるとしても、その要件をすべて証明しているとも認められない。したがって、
特別売却調書では、登録の原因を証する書面として十分ではない。
 さらに、移転登録申請書には、登録令一四条一項三号の書面(チーフカーズを代
理する権限を証する書面)及び登録令一六条一項の印鑑証明書も添付されていな
い。
 右によれば、控訴人の移転登録申請は、添付すべき書面が欠けており、これを、
「申請が方式に適合しない」として受理を拒否した処分に違法な点はない。また、
移転登録を前提とする抹消登録申請を、「申請が方式に適合しない」として受理を
拒否した処分にも違法な点はない。
 結局、控訴人はチーフカーズを相手方とする勝訴判決(おそらく相手方は口頭弁
論に欠席し、迅速に判決を得られるものと考えられる。)を取得して、移転登録の
申請をするほかないものといわざるを得ない。
三 したがって、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由
がない。また、控訴人が当審で追加した訴えは、中間確認の訴えとして不適法であ
るから、これを却下すべきである。
 よって、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第一九民事部
裁判長裁判官 淺生重機
裁判官 菊池洋一
裁判官 江口とし子

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