弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成18年12月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成17年(ワ)第16722号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成18年9月21日
判決
東京都港区〈以下略〉
原告株式会社東北新社
訴訟代理人弁護士森伊津子
同高後元彦
同小川憲久
同槐惟成
群馬県桐生市〈以下略〉
被告株式会社三共
東京都渋谷区〈以下略〉
被告株式会社ビスティ
東京都渋谷区〈以下略〉
被告フィールズ株式会社
上記被告ら3名訴訟代理人弁護士水谷直樹
同岩原将文
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告株式会社三共は,原告に対し,金10億円及びこれに対する平成17年
8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告らは,原告に対し,連帯して金1億円並びにこれに対する平成17年8
月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,別紙映画著作物目録記載の各映画(以下「本件映画」と総称し,そ
のうち,同目録記載の各映画を個別に指すときは,末尾に,当該映画の番号を
付記して「本件映画1」のように表記する。)の著作権を有すると主張する原
告が,被告株式会社三共(以下「被告三共」という。),被告株式会社ビステ
ィ(以下「被告ビスティ」という。)及び被告フィールズ株式会社(以下「被
告フィールズ」という。)に対して,主位的に,被告三共において,本件映画
の中の一部の映像を複製又は翻案した映像を用いてパチンコゲーム機を製造,
販売し,被告ビスティにおいて,被告三共から提供を受けた同映像を用いてパ
チスロゲーム機を製造し,被告フィールズにおいて,同パチスロゲーム機を販
売し,それぞれ本件映画の複製権又は翻案権を侵害しているとして,不法行為
に基づく損害賠償(パチンコゲーム機による侵害については,被告三共の単独
不法行為(民法709条)として10億円(著作権法114条3項),パチス
ロゲーム機による侵害については,被告らの共同不法行為(719条1項)と
して1億円,いずれも一部請求である。)及び不法行為後である訴状送達の日
(平成17年8月29日)から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損
害金の支払を,予備的に,上記パチンコゲーム機及びパチスロゲーム機には,
別紙被告商品表示目録記載の各表示(以下「被告表示」と総称し,そのうち,
同目録記載の各表示を個別に指すときは,末尾に,当該表示の番号を付記して,
「被告表示1」のように表記する。)が使用されているところ,同表示は,原
告の商品表示として著名ないし周知である別紙原告商品表示目録記載の各表示
(以下「原告表示」と総称し,そのうち,同目録記載の各表示を個別に指すと
きは,末尾に,当該表示の番号を付記して,「原告表示1」のように表記す
る。)と同一であり,又は少なくとも類似しており,被告表示を使用する行為
は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号又は2号の不正競
争行為に該当するとして,同法4条に基づき,損害賠償(不競法5条3項1号,
金額及び一部請求であることは主位的請求と同様である。)及び不正競争行為
後である訴状送達の日(平成17年8月29日)から支払済みに至るまで年5
分の割合による遅延損害金の連帯支払を請求している事案である。
1争いのない事実等(証拠によって認定した事実は末尾にその証拠番号を摘示
した。)
()当事者1
ア原告は,平成13年4月1日,形式上の存続会社株式会社センテスタジ
オが実質上の存続会社株式会社東北新社を合併するとともに株式会社東
北新社に商号変更した株式会社であるところ,合併前の株式会社東北新
社は,平成11年1月1日,株式会社東北新社フィルム(昭和36年4
月1日設立)が株式会社東北新社(昭和54年8月30日設立)等を吸
収合併して成立した株式会社であった。
原告は,映画,テレビ番組,ビデオソフト,ゲームソフト,コンピュー
ターグラフィックソフト等の各種ソフトウェアの企画,制作,輸出入,
販売等を業務としている。(弁論の全趣旨)
イ被告三共は,パチンコ機等遊戯具の製造,販売等を業務とする株式会社
である。
ウ被告ビスティは,パチンコ機及び遊戯具の製造,販売等を業務とする株
式会社である。
エ被告フィールズは,遊戯機械の販売及びメンテナンス,キャラクター商
品の企画,開発等,並びに著作権等の取得,管理及び利用許諾等を業務
とする株式会社である。
()著作権譲渡の契約2
原告,P2(以下「P2」という。),株式会社ウエスト・ケープ・コー
ポレーション(以下「ウエスト・ケープ」という。)及び株式会社ボイジャ
ーエンターテインメント(以下「ボイジャーエンターテインメント」とい
う。)は,平成8年12月20日,本件映画を含む映画の著作権の譲渡等を
内容とする契約(以下「甲3契約」といい,その契約書を「甲3契約書」と
いう。)を締結し,同契約により,原告は,P2から,本件映画の著作権の
譲渡を受けた(甲3。なお,P2が,本件映画の製作者として本件映画の著
作権を取得したか否かの点,及び甲3契約が譲渡の対象として翻案権も含め
ていたかの点については,争いがある。)。
()著作権登録3
原告は,平成9年11月19日,本件映画についての著作権の移転の登録
をした。
本件映画の著作権登録原簿上には,本件映画の著作権が,平成9年7月4
日に,P2からP3(以下「P3」という。)へ,同年11月19日に,P
3から原告に譲渡された旨の記載がある。また,上記登録原簿の「登録の原
因及びその発生年月日並びに登録すべき権利に関する事項」欄には,上記各
譲渡のいずれにも,著作権法27条及び28条に規定する権利の譲渡があっ
た旨の記載がある。(甲1の1ないし9,2)
()原告とP1間の合意4
原告とP1(以下「P1」という。)は,平成11年1月25日付けで,
「宇宙戦艦ヤマト等に関する合意書」と題する合意書(乙4。以下「乙4合
意書」といい,乙4合意書に係る合意を「乙4合意」という。)を作成し,
これに記名,押印した。
乙4合意書4条の記載は次のとおりである。
ア1項
「甲は,乙の対象作品に関する上記の権利の行使が円滑に行われるよう
に,全面的に協力する。」
イ2項
「乙は,甲がヤマト作品に関連する新作の企画を希望する場合,これに
全面的に協力する。ただし,甲は,乙に対し事前に企画内容の詳細を通知
し,説明する。」
()被告らの行為5
ア被告三共は,平成16年11月ころから,別紙被告商品目録記載1のパ
チンコゲーム機(以下「被告パチンコゲーム機」という。)を製造し,全
国のパチンコホールに販売している。
被告パチンコゲーム機は,前面にパチンコ装置,液晶画面等を備え,背
面には,映像面,音声面を含めパチンコゲームの展開を生起させ,制御す
るためのソフトウェアを格納したを含む数個のマイクロコンピューROM
ターが装着され,全体として一体を成している。
被告パチンコゲーム機の液晶画面上には,パチンコゲームの進行に伴っ
て,上記に収録されたプログラムに基づいて抽出された影像についROM
てのデータが液晶画面上の指定された位置に順次表示されることによって,
全体が動きのある連続的映像となって表示される。この映像は,被告パチ
ンコゲーム機が操作されない状態における待機映像,通常のプレイの状態
における映像,大当たりとなった状態における映像から構成される。
被告パチンコゲーム機には,別紙被告商品目録記載1の4機種があるが,
これらの機種の液晶画面上に上映される映像は,共通している(被告パチ
ンコゲーム機の液晶画面上に上映される映像を,以下「被告パチンコ映
像」という。)。
イ被告ビスティは,平成17年3月以前から,別紙被告商品目録記載2の
パチスロゲーム機(以下「被告パチスロゲーム機」といい,被告パチンコ
ゲーム機と被告パチスロゲーム機を併せて,以下「被告商品」という。)
を製造し,被告フィールズは,被告パチスロゲーム機を,平成17年3月
から,全国のパチンコホールに販売している。
被告パチスロゲーム機は,前面にパチスロ装置,液晶画面等を備え,背
面には,映像面,音声面を含めパチスロゲームの展開を生起させ,制御す
るためのソフトウェアを格納したを含む数個のマイクロコンピューROM
ターが装着され,全体として一体を成している。
被告パチスロゲーム機の液晶画面上には,パチスロゲームの進行に伴っ
て一定の動画映像が上映されるが,同映像は,パチスロゲーム機が操作さ
れない状態における待機映像,通常のプレイの状態における映像,大当た
りとなった状態における映像から構成される(被告パチスロゲーム機の液
晶画面上に上映される映像を,以下「被告パチスロ映像」といい,被告パ
チンコ映像と被告パチスロ映像を併せて,以下「被告映像」という。)。
被告パチスロ映像は,被告三共が制作し,被告ビスティに提供したもの
である。
()別紙対比表1ないし306
本件映画は,別紙対比表1ないし30の「被侵害映像」欄に掲載された最
上段の写真と最下段の写真の区間に対応する動画映像を含んでいる(これら
の動画映像を,以下「本件映画被侵害主張部分」という。)。
被告パチンコ映像は,別紙対比表1ないし14の「侵害映像」欄に掲載さ
れた最上段の写真と最下段の写真の区間に対応する動画映像を含んでおり,
被告パチスロ映像は,別紙対比表15ないし30の「侵害映像」欄に掲載さ
れた最上段の写真と最下段の写真の区間に対応する動画映像を含んでいる
(これらの動画映像を,以下「被告映像侵害主張部分」という。)。
()被告表示の使用7
被告パチンコ機の液晶画面の右側部分には,被告表示7が,被告パチスロ
ゲーム機の筐体前面下部には,被告表示8が,それぞれ付されている(甲6
及び12の各1及び2)。
また,被告表示1,3及び5は,被告パチンコ映像中に,被告表示2,4
及び6は,被告パチスロ映像中に,それぞれ表示される(甲8及び13の各
1及び2)。
2争点
()著作権に基づく請求の可否1
アP2は,本件映画の映画製作者として,著作権法29条1項に基づき,
本件映画の著作権を取得したか。
イ原告は,甲3契約により,本件映画の翻案権を取得したか。
ウ被告映像は,本件映画を複製又は翻案したものといえるか。
エ原告は,被告製品について,本件映画の著作権の権利行使をすることが
できるか。
()不競法に基づく請求の可否2
()損害額3
3争点に対する当事者の主張
()P2は,本件映画の映画製作者として,著作権法29条1項に基づき,1
本件映画の著作権を取得したか(争点()ア)について1
(原告)
ア本件映画は,既存の確立した映画製作会社が製作したものではない。当
時,比較的無名であったP2が,その構想を練り,企画書を作成し,スタ
ッフの人選をし,内容面にも関与し,また,資金的工面もするとの我が国
では比較的珍しい「アメリカ型プロデューサー」の方式で製作したもので
ある。
すなわち,本件映画の製作の経緯は,次のとおりであった。
P2は,本件映画1の企画書をよみうりテレビに持ち込み,同テレビ局
が昭和49年10月から放映するよう交渉をした。本件映画1は,実際に
テレビ放映されたが低視聴率であったため,P2は,赤字を背負い込むこ
とになった。しかし,P2は,更に自らの資金を投入して劇場用の「宇宙
戦艦ヤマト」を製作した上,上映先となる映画館回りをする等の努力をし
て,配給会社のない自主上映を実現した。P2は,上記各映画の製作に当
たっても,P1その他のスタッフの人選及び体制作りを自ら行った。
上記事実は,P2とP1との間で,本件映画の著作者が誰であるかが争
われた東京地裁平成11年(ワ)第20820号事件(以下「P1P2訴
訟」という。)の判決(以下「P1P2訴訟判決」という。)の判決内容
からも裏付けられる。すなわち,P1P2訴訟判決は,本件映画1の著作
者の認定において,「被告(P2)は,本件企画書を持ち込んで,よみう
りテレビと交渉した結果,同局において,昭和49年10月6日から,週
1回全39回(39話)を放映することが決まった。」,「被告は,ジェ
ネラル・プロデューサーに就任して,製作に関して決定権限を一元化する
体制を整え,被告の企画方針を実現するためのスタッフを選定することに
した。」,「被告は,自身が製作のすべてに関与し,全体的な観点から具
体的な指示,決定を行うべく,すべての決定権限を集中させる体制を採っ
た。そして,被告は,練馬区桜台にスタジオを借り,常駐して製作を続け
ることにした。」と判示している。
イこの点,甲3契約書別紙(一)の本件映画の「製作者」欄には,株式会社
オフィス・アカデミー(以下「オフィス・アカデミー」という。)及びウ
エスト・ケープが表示されているが,上記各会社は,いずれもP2のダミ
ー会社であり,その実態はP2個人であるから,対外的にはこれらの会社
が本件映画の映画製作者として表示されていても,実態はP2個人が本件
映画の映画製作者である。
ウしたがって,P2は,本件映画の構想立案,企画書作成に始まり,本件
映画の製作に主導的役割を果たし,かつ,自らの経済的危険と負担におい
て本件映画を製作した者であるから,本件映画の映画製作者に該当するこ
とは明らかである。
なお,観念的には,著作者としてのP2が,映画製作者としての同人と
の間の参加約束に基づいて本件映画の製作に参加し,その結果,本件映画
の著作権は,著作権法29条1項に基づき,映画製作者としてのP2に帰
属した。
(被告ら)
本件映画の製作者は,オフィス・アカデミー又はウエスト・ケープであり,
その著作権は,本件映画の共同著作者であるP1とP2が製作に参加するこ
とを約していたので,その完成と同時に製作者であるオフィス・アカデミー
又はウエスト・ケープに帰属したものであり,P2が映画製作者として本件
映画の著作権を取得したとはいえない。
()原告は,甲3契約により,本件映画の翻案権を取得したか(争点()イ)21
について
(原告)
ア(ア)甲3契約書1条において,譲渡の「対象権利」を「対象作品に対す
る著作権および対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする一
切の権利」と定義しているところ,この「対象作品の全部又は一部のあ
らゆる利用を可能にする・・・権利」が翻案権を含むものであることは
当然である。
したがって,甲3契約書には,翻案権は譲渡の目的として「特掲」さ
れている。
(イ)この点,被告らは,「全ての著作権」,「一切の権利」の類の記載
がされていたとしても,それは「特掲」に該当しない旨主張するが,本
件においては,「対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にす
る」との修飾が付された「一切の権利」が譲渡の対象として掲げられて
いるのであるから,被告らの主張には根拠がない。
イまた,著作権法61条2項は,推定規定であり,譲渡の目的として翻案
権が著作権を譲渡する契約中に「特掲」されているか否かは,翻案権譲渡
の成否の判定において決定的ではない。
すなわち,当事者間においては,翻案権譲渡の意思の合致があれば翻案
権は移転するものであるところ,「特掲」はこの当事者間の意思の有無の
判定の際に働く推定である。したがって,仮に「特掲」がなされていると
いえない場合であっても,他の事実から翻案権譲渡についての当事者間の
意思の合致が客観的に明らかであるときには,翻案権は移転する。
しかるところ,本件においては,まず,原告とP2間の交渉の経緯,P
2とP3間及びP3と原告間の著作権譲渡証書(及び単独申請承諾書)の
記載からして,原告とP2間において,翻案権譲渡の合意があったことは
客観的に明らかである。
ウしたがって,甲3契約において,本件映画の翻案権は譲渡の対象となっ
ていたといえる。
(被告ら)
本件映画の翻案権は,甲3契約において,譲渡の対象となっていなかっ
た。理由は以下のとおりである。
ア翻案権を譲り受けたといい得るためには,著作権法61条2項により,
その旨を特掲する必要があるが,甲3契約書には,何らその旨の特掲がさ
れていない。
譲渡契約書中に,譲渡対象の権利について「全ての著作権」,「一切の
権利」等の記載がされていたとしても,これは上記の「特掲」に当たらな
い。
イ甲3契約書10条には,「対象作品に登場するキャラクターを使用し新
たな映像作品を制作する権利は乙に留保される」と規定されているところ,
この「対象作品に登場するキャラクターを使用して新たな映像作品を制作
する権利」とは,本件映画の翻案権を意味するから,本件映画の翻案権が
P2に留保されていることは,上記条項により明記されていることになる。
ウ原告の主張によれば,原告は,著作権管理業務に豊富な経験を有してお
り,しかも,甲3契約を締結するに当たっては,旧ヤマト作品と新作との
権利関係が錯綜しないように特に留意していたとのことであり,また,弁
護士に甲3契約書の作成を依頼したとのことである。
したがって,翻案権の譲渡を受けることになっていたというのであれば,
当然にその旨が特掲されているはずであるところ,上述したとおり,最終
的に締結された甲3契約書中には,その旨の特掲が全くされていない。
エP2からP3への,また,P3から原告への本件映画の著作権の各譲渡
証書は,取引の実体を反映していない虚偽の譲渡証書であるにすぎず,無
効というべきものであるから,上記各譲渡証書に翻案権が譲渡の対象とし
て記載されていたとしても,これを根拠に,甲3契約において翻案権が譲
渡の対象となっていたということはできない。
すなわち,本件映画の著作権登録がP3へと移転していたことは,原告
にとっては予想外のことであったため,P2に問い合わせをしたところ,
同人から,P3への移転登録は「預けてあるだけ」という回答を得たとの
ことであり(甲第30号証4頁20ないし28行),このことから,P2
からP3への移転登録は,移転の実体を伴わない架空の登録であることは
明らかである。したがって,P2がP3に対して移転登録を行う際に提出
した上記譲渡証書は,取引の実体を反映しない架空の内容が記載された文
書であるにすぎない。
()被告映像は,本件映画を複製又は翻案したといえるか(争点()ウ)につ31
いて
(原告)
ア対比の対象
別紙対比表1ないし30のうち,それぞれの対比表の本件映画被侵害主
張部分と被告映像侵害主張部分を対比する。
なお,以下では,本件映画被侵害主張部分における宇宙戦艦ヤマトの艦
首に設けられた発射口から発射される光線や同光線を発射するための装置
を,「波動砲」ということがある。また,被告映像侵害主張部分における
戦艦様の飛行物体の艦首に設けられた発射口から発射される光線や同光線
を発射するための装置を,「大ヤマト砲」ということがある。
イ被告パチンコ映像との対比
(ア)別紙対比表1の対比
別紙対比表1の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表1部
分」という。)と別紙対比表1の被告映像侵害主張部分(以下「被告映
像対比表1部分」といい,そのうち,「侵害映像1」欄に対応するもの
を「被告映像対比表1横バージョン部分」といい,「侵害映像2」欄に
対応するものを「被告映像対比表1正面バージョン部分」という。)は,
いずれも,後記(イ)ないし(オ)の映像の順番で上映されている点で共通
している。また,後記(イ)ないし(オ)で主張するとおり,それぞれの映
像の表現も本質的に同一である。
したがって,被告映像対比表1部分は,いずれも,本件映画対比表
1部分の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なく
とも翻案物である。
(イ)別紙対比表2の対比
a別紙対比表2の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表2
部分」という。)と別紙対比表2の被告映像侵害主張部分(以下「被
告映像対比表2部分」といい,そのうち,「侵害映像1」欄に対応す
るものを「被告映像対比表2横バージョン部分」といい,「侵害映像
2」欄に対応するものを「被告映像対比表2正面バージョン部分」と
いう。)とでは,縦長楕円形の艦首発射口を有する艦首部が極端に大
きくデフォルメされて描かれていること,発射口の内部が明るく輝い
て描かれていること,発射口底部が他の部分に比して輝きを増してい
くこと,背景が宇宙空間として暗青色に描かれ,艦体が暗灰色系統で
描かれていること,艦首発射口に向かって明るい光の粒子が動いてい
く様子が描かれていることにおいて,表現の態様上,被侵害映像と共
通している。また,看者の注意は,全体として暗く描かれた中で明る
く描かれた発射口とそれに向かって動く明るい光の粒子に向けられる
のであり,これから受ける印象も両映像に共通する。
b(a)この点,被告らは,本件映画対比表1部分においては,艦首斜
め前方の視点から静止した艦首を描いており,波動砲を看者以外の
者に向けているとの印象であるが,被告映像対比表1正面バージョ
ン部分は,遊技者の視点から艦首を正面に向けて移動させながら描
いており,大ヤマト砲を遊技者に向けているとの印象であると主張
する。
しかし,看者の注意は,全体として暗く描かれた中で明るく描か
れた発射口とそれに向かって動く明るい光の粒子に向けられるので
あり,相対的に暗く描かれた艦体の向きに向けられるのではないか
ら,映像から受ける印象も,艦体の向きにかかわらず,エネルギー
が艦首発射口に集中する印象であるところ,この点は,前記aのと
おり,上記両映像に共通する。
(b)また,被告らは,本件映画対比表1部分では光の粒子の動きが
直線的に描かれているが,被告映像対比表1部分では,光の粒子は
渦巻状に引き寄せられるように描かれていると主張する。
しかし,被告映像対比表1部分の光の粒子は,渦巻状であるにせ
よ,艦首発射口に向かって動いていくのであり,基本的運動方向は,
本件映画対比表1部分と共通している。したがって,被告らの上記
の指摘の点は,同一性,類似性否定の根拠とはならない。
(c)また,被告らは,本件映画対比表1部分においては艦首内部に
「大」字型の回転部材が存在することを指摘するが,同部材の存在
は映像上必ずしも明瞭ではなく,些細な差異にすぎない。
cしたがって,被告映像対比表2部分は,いずれも,本件映画対比表
2部分の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なく
とも翻案物である。
(ウ)別紙対比表3の対比
別紙対比表3の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表3部
分」という。)と別紙対比表3の被告映像侵害主張部分(以下「被告映
像対比表3部分」といい,そのうち,「侵害映像1」欄に対応するもの
を「被告映像対比表3横バージョン部分」といい,「侵害映像2」欄に
対応するものを「被告映像対比表3正面バージョン部分」という。)と
では,暗い背景の中に画面の大部分を占めて金色に輝く円筒形の部材が
描かれていること,この部材が画面右から左に移動する様子が描かれて
いること,そして,この部材が対向して設置されている別の部材に接続
する様子が描かれていることにおいて,表現態様及び基本的構成が共通
している。また,看者の注意は,暗い背景の中に描かれた円筒形の部材
とその動きに向けられるのであるから,映像から受ける印象も共通する。
したがって,被告映像対比表3部分は,いずれも,本件映画対比表3
部分の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも
翻案物である。
(エ)別紙対比表4の対比
a別紙対比表4の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表4
部分」という。)と別紙対比表4の被告映像侵害主張部分(以下「被
告映像対比表4部分」といい,そのうち,「侵害映像1」欄に対応す
るものを「被告映像対比表4横バージョン部分」といい,「侵害映像
2」欄に対応するものを「被告映像対比表4正面バージョン部分」と
いう。)とでは,暗い背景の中に縦長楕円形の発射口が大きく黄白色
系統に明るく浮き上がって描かれていること,この発射口の輝きは当
初は発射口内部に限られているが,それが発射口を越えて拡大する一
瞬の様子が描写されていることにおいて,表現態様が共通している。
b(a)被告らは,上記両映像は,発射口の光の形状及びこれが一旦収
縮するか否かの点で異なると主張するが,このような相違点は,上
記の共通性に比べれば,非本質的な相違にすぎない。
(b)また,被告らは,上記両映像は,艦体描写の視点,波動砲ない
し大ヤマト砲が向けられる対象が異なると主張する。
しかし,看者の注意は,全体として暗い背景の中に明るく浮き上
がった発射口とその輝きの変化に向けられるのであり,相対的に暗
く描かれた艦体の向きに向けられるのではないから,上記相違にか
かわらず,両映像から受ける印象は同じである。
(c)被告らは,相違点として,本件映画では,発射口の光が一旦収
縮するのに対し,被告映像においては,光線が放射状に一方的に拡
大していくように描かれている点を指摘するが,原告が対比対象と
して特定した本件映画は,本件映画対比表4部分であり,被告らの
上記の指摘は,原告が対比対象として特定した部分と異なった部分
を対象として対比をしており,失当である。
cしたがって,被告映像対比表4部分は,いずれも,本件映画対比表
4部分の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なく
とも翻案物である。
(オ)別紙対比表5の対比
a別紙対比表5の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表5
部分」という。)と別紙対比表5の被告映像侵害主張部分(以下「被
告映像対比表5部分」といい,そのうち,「侵害映像1」欄に対応す
るものを「被告映像対比表5横バージョン部分」といい,「侵害映像
2」欄に対応するものを「被告映像対比表5正面バージョン部分」と
いう。)とでは,暗い背景の中で輝度の高い光線が発射される様子が
描かれていること,この光線が炎状に描かれていること,この光線が
次第に画面の大部分を占めるように拡大していくように描かれている
ことにおいて,表現態様が共通している。また,上記両映像において,
看者の注意を惹くのは,暗く表現された艦体の有無ではなく,輝いて
描かれた光線であり,その拡大であるから,映像から受ける印象も,
共通している。
b(a)被告らは,上記両映像は,光線の表現が,その形状,色彩等の
点で相違すると主張するが,上記aの共通性からすれば,被告ら主
張の上記相違は非本質的なものにすぎない。
(b)被告らは,被告映像対比表5部分では,光線はパチンコ機の大
当りを決定するための図柄を表示する背景領域として描かれている
が,本件映画対比表5部分では,光線は武器として描かれていると
主張する。
しかし,映像の同一性,類似性を判定するに当って重要なのは,
表現自体であるところ,上記両映像の表現態様は,上記aのとおり
炎状の光線が画面全体に拡大していく様の描写である点で共通して
いる以上,被告らの指摘する上記の点は,非本質的な相違である。
cしたがって,被告映像対比表5部分は,いずれも,本件映画対比
表5部分の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少
なくとも翻案物である。
(カ)別紙対比表6の対比
a別紙対比表6の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表6
部分」という。)と別紙対比表6の被告映像侵害主張部分(以下「被
告映像対比表6部分」という。)とでは,暗青色の背景の中に艦首先
端上端の円形切れこみと艦首大型発射口を備えた艦首が極端に大きく
デフォルメされた艦体が宇宙空間を航行する様子が描かれていること,
同艦体が右舷前方下方から仰角で描かれていること,艦体の上部が暗
灰色系統に下部が暗赤色系統に彩色されていること,同艦体周囲を飛
行物体が飛び交い艦体後部等で爆発が生ずる様子が描かれていること
において,共通する。
b被告らは,艦体が攻撃を受け爆発及び炎上する位置並びに爆発の規
模等が異なるから,艦体の表現形態,映像から受ける印象が異なると
主張する。
しかし,被告らの指摘する上記の点は極めて軽微な差異にすぎない。
cしたがって,被告映像対比表6部分は,本件映画対比表6部分の複
製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物
である。
(キ)別紙対比表7の対比
a別紙対比表7の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表7
部分」という。)と別紙対比表7の被告映像侵害主張部分(以下「被
告映像対比表7部分」という。)とでは,全体として暗い背景の中に
艦首先端上端の円形切れこみと艦首大型発射口を備えた艦首が極端に
大きくデフォルメされて描かれていること,この艦体が画面右奥から
接近し左舷を見せて右に旋回する印象を与えた後画面奥に去っていく
様子が描かれていること,画面奥に去っていく際に艦体像が次第に縮
小していく映像として描かれていること,艦体の上部が暗灰色系統に
下部が暗赤色系統に彩色されていること,艦尾のロケットエンジン,
補助エンジンが輝いて描かれていること,艦尾の尾翼が放射状に描か
れていることにおいて,表現態様が共通する。また,看者が受ける印
象も,暗い宇宙を航行する宇宙戦艦ヤマトの孤独と速力であり,この
点も,上記両映像は共通する。
b(a)被告らは,被告映像対比表7部分は,地球に帰還する場面であ
り,背景に地球が描かれているのに対し,本件映画対比表7部分は,
周囲に何も存在していない宇宙空間を航行する場面である点で相違
すると主張する。
しかし,艦体が航行する様子が描かれた映像が本件映画対比表7
部分の複製物であることは明らかであり,この結論が画面上に地球
が描かれることによって影響を受けるべき理由もないから,被告ら
の上記主張は失当である。
(b)被告らは,艦体の尾翼の数,艦体が浮遊している印象か飛行し
ている印象かの点で,上記両映像は相違する旨主張する。
しかし,被告らの指摘する上記の相違点は,些細なものにすぎな
い。全体として暗い画面の中で,尾翼の数は必ずしも明瞭に認識さ
れるものではなく,また,艦体が浮遊している印象か否かなどは,
一方的,主観的印象にすぎない。
(c)被告らは,上記両映像は,注視点(看者が画面上で注目する箇
所,以下同じ。)が艦体側面にあるか艦橋にあるかの点でも相違す
る旨主張する。
しかし,両映像とも,基本的に艦体が左舷を看者に見せながら看
者の前を右に旋回するとの基本的動きにおいて完全に共通している
以上,被告らの指摘する上記の点も,些細な差異にすぎない。
cしたがって,被告映像対比表7部分は,本件映画対比表7部分の複
製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物
である。
(ク)別紙対比表8の対比
a別紙対比表8の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表8
部分」という。)と別紙対比表8の被告映像侵害主張部分(以下「被
告映像対比表8部分」という。)とでは,全体として変形T字型を成
す一対のアンテナ様物体を艦橋最上部に有する艦橋部正面像が画面正
面奥から接近する様子が,この艦橋像の拡大によって描かれ,最終段
階ではこの艦橋正面像が画面を満たすように描かれていること,宇宙
空間であることを示す全体として暗い背景の中で艦体が相対的に明る
く描かれていることにおいて,共通する。したがって,上記両映像は,
映像の基本的構成も,映像から受ける印象(艦体の力強さ)も,共通
している。
b(a)被告らは,上記両映像では,艦首及び甲板が描かれているか否
かの相違がある旨主張する。
しかし,看者の注意は,艦橋に向けられるのであるから,艦橋の
ほかに艦首や甲板が表現されているか否かは,非本質的な差異にす
ぎない。
(b)被告らは,上記両映像では,艦体の明暗表現が異なる旨主張す
るが,艦体の明暗表現の絶対的相違は,背景の明るさとの相対的関
係によるものであって,相対的に艦橋が背景に比して明るく表現さ
れているとの基本的表現態様,印象において,両映像は,共通であ
る。
cしたがって,被告映像対比表8部分は,本件映画対比表8部分の複
製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物
である。
(ケ)別紙対比表9の対比
a別紙対比表9の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表9
部分」という。)と別紙対比表9の被告映像侵害主張部分(以下「被
告映像対比表9部分」という。)とでは,艦首先端上端円形切れこみ
と艦首発射口を備えた艦首部が大きくデフォルメされて描かれている
こと,宇宙空間であることを示す全体として暗い背景のなかで相対的
に明るい暗灰色系統に艦体が彩色されていること,この艦体が看者に
向かって接近してくる様子が艦体像の拡大によって描かれ,最終段階
では艦首部が看者にのしかかるように描かれていることにおいて,共
通しており,映像の基本的構成に基本的差異はない。
b(a)被告らは,上記両映像では,主翼の有無の点で相違する旨主張
する。
しかし,両映像において,看者の注意を惹くのは,艦体自体の表
現とその動きであるところ,両映像とも,上記の点は共通しており,
主翼は,副次的付加的要素にすぎない。しかも,被告映像対比表9
部分では,艦首部が暗灰色系統で暗い背景の中で浮き出して描かれ
ているのに対して,主翼は黒色系統で背景との区別も定かでない。
(b)被告らは,本件映画のうち,対比すべき部分を,艦体が画面奥
から画面手前に向けて航行して来るに従って艦首が徐々に画面下方
に消え去り,最終的には艦橋がアップになる部分であるとしている
が,対比の対象をこのように特定するのは,原告の特定した対比対
象と大きく異なり,不当である。
cしたがって,被告映像対比表9部分は,本件映画対比表9部分の複
製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物
である。
(コ)別紙対比表10の対比
a別紙対比表10の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表
10部分」という。)と別紙対比表10の被告映像侵害主張部分(以
下「被告映像対比表10部分」という。)とでは,艦首先端上端の円
形切れこみと艦首大型発射口を備えた艦体が正面から描かれているこ
と,同艦体を飛行物体がかすめて飛ぶ様子が描かれていること,宇宙
空間であることを示す暗い背景の中に惑星様の天体の一部が描かれて
いることにおいて共通する。
b(a)被告らは,上記両映像では,艦体が小判形状であるか否かの点,
主翼や補助中央部の補助エンジンの有無の点で相違する旨主張する
が,被告映像対比表10部分は,艦体の輪郭全体が判然としておら
ず,主翼等も暗い背景に埋没して判然としないから,上記の相違点
は,上記aの共通点に比較して些細な差異にすぎない。
(b)被告らは,上記両映像では,艦体の動き,飛行物体が艦体の周
囲を飛行している印象か,看者に向かって飛行してくる印象かにお
いて,相違する旨主張するが,両映像から受ける印象は,宇宙空間
を背景とする艦体と群舞する飛行物体との相対的スピード感の相違
の点にあるのであるから,被告らが指摘する上記相違点は本質的な
ものではない。
(c)被告らは,上記両映像では,飛行物体が看者に向かって飛行し
てくる状態で描かれているかの点で相違する旨主張するが,両映像
とも,飛行物体は艦体の周囲を群舞しており,被告らの上記主張は
失当である。
cしたがって,被告映像対比表10部分は,いずれも,本件映画対比
表10部分の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少
なくとも翻案物である。
(サ)別紙対比表11の対比
別紙対比表11の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表1
1部分」という。)と別紙対比表11の被告映像侵害主張部分(以下
「被告映像対比表11部分」という。)とでは,全体として遠近法を強
調しており,基本的構図及びこれに起因する映像から受ける印象が共通
する。また,上記両映像は,床には,手前に艦長席,前方にその他の者
の席が置かれ,その中間の床中央部に1個の装置が配置され,これを挟
んで2席が置かれている様子が描かれている点で共通する。
したがって,被告映像対比表11部分は,本件映画対比表11部分の
複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物
である。
(シ)別紙対比表12の対比
別紙対比表12の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表1
2部分」という。)と別紙対比表12の被告映像侵害主張部分(以下
「被告映像対比表12部分」という。)とでは,描かれている人物が熟
年の男性であること,この男性が,金色の徽章と金色の顎紐が付き,大
きな山の部分が白色,その他の部分が黒色の軍帽を,目深に被っている
こと,顔面一杯に白色系統の鬚を生やしていること,この人物が大きな
襟(赤色),左胸の碇のマーク(金色),両肩の肩章(金色)を有する
ユニフォームを着用していること,白色系統のマフラーを首に巻いてい
ることにおいて,表現の構成が同一であり,かつ,これら構成部分の形
状と配色も同一であるから,表現態様も同一である。
したがって,被告映像対比表12部分は,本件映画対比表12部分の
複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物
である。
(ス)別紙対比表13の対比
a別紙対比表13の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表
13部分」という。)と別紙対比表13の被告映像侵害主張部分(以
下「被告映像対比表13部分」という。)とでは,描かれている人物
が,はげ頭で(しかも,頭頂部が瘤状に隆起し,また,耳の上には毛
髪が残っている。),頭が大きく(頭部の縦の長さが胴体の長さの1
/2より大),「八」字眉で,眼鏡をかけ,目は点で表現され,口が
出ている中年男性である点,服装も少なくとも部分的には白で表現さ
れている点,一方の腕を上げる動作が描かれている点で共通する。
b(a)被告らは,上記両映像の相違点として,人物の顔の輪郭(洋ナ
シ形かひょうたん型か),眉(細いか太いか),眼鏡の形状(大き
いか小さいか),目と眼鏡の関係(目が眼鏡に納まっているか否
か),鼻の形状(山形か団子か)及び口の形状(顔の輪郭をはみ出
しているか否か),服装(医療関係者の服装か作業服か)を指摘す
るが,これらの相違点は,いずれも些細なものにすぎない。
(b)被告らは,上記両映像では,人物の背景,状況が異なる旨主張
する。しかし,人物の表現上の基本的特徴が共通であって両映像が
少なくとも類似している限り,一方の映像は他方の映像の複製物
(又は翻案物)なのであって,場面が異なることは,同一性及び類
似性を否定するに足りない。
cしたがって,被告映像対比表13部分は,本件映画対比表13部分
の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻
案物である。
(セ)別紙対比表14の対比
a別紙対比表14の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表
14部分」という。)と別紙対比表14の被告映像侵害主張部分(以
下「被告映像対比表14部分」という。)とでは,全体が小太りで寸
胴のロボットの映像であること,頭部が半球形で目が離れていること,
寸胴の胴体に手がついていること,頭部,胴体及び下半身が時に分離
して独自の動きをする(しかも,接合部には歯型がある。)ことにお
いて,共通する。
b被告らは,上記両映像では,頭部及び胴部におけるアナログ計器及
びホースの存否,下半身における足状のものの存否,並びに頭部及び
胴部の形状において相違する旨主張するが,これらの相違点は,いず
れも些細なものにすぎない。
cしたがって,被告映像対比表14部分は,本件映画対比表14部分
の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻
案物である。
ウ被告パチスロ映像との対比
(ア)別紙対比表15の対比
前記イ(ア)での主張と同様の理由により,別紙対比表15の被告映像
侵害主張部分(以下「被告映像対比表15部分」といい,そのうち,
「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表15待機映像部
分」といい,「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表15
大ヤマト砲発射部分」という。)は,いずれも,別紙対比表15の本件
映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表15部分」という。)の複
製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物で
ある。
(イ)別紙対比表16の対比
前記イ(イ)での主張と同様の理由により,別紙対比表16の被告映像
侵害主張部分(以下「被告映像対比表16部分」といい,そのうち,
「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表16待機映像部
分」といい,「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表16
大ヤマト砲発射部分」という。)は,いずれも,別紙対比表16の本件
映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表16部分」という。)の複
製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物で
ある。
(ウ)別紙対比表17の対比
前記イ(ウ)での主張と同様の理由により,別紙対比表17の被告映像
侵害主張部分(以下「被告映像対比表17部分」といい,そのうち,
「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表17待機映像部
分」といい,「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表17
大ヤマト砲発射部分」という。)は,いずれも,別紙対比表17の本件
映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表17部分」という。)の複
製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物で
ある。
(エ)別紙対比表18の対比
前記イ(エ)での主張と同様の理由により,別紙対比表18の被告映像
侵害主張部分(以下「被告映像対比表18部分」といい,そのうち,
「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表18待機映像部
分」といい,「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表18
大ヤマト砲発射部分」という。)は,いずれも,別紙対比表18の本件
映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表18部分」という。)の複
製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物で
ある。
(オ)別紙対比表19の対比
前記イ(オ)での主張と同様の理由により,別紙対比表19の被告映像
侵害主張部分(以下「被告映像対比表19部分」といい,そのうち,
「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表19待機映像部
分」といい,「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表19
大ヤマト砲発射部分」という。)は,いずれも,別紙対比表19の本件
映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表19部分」という。)の複
製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物で
ある。
(カ)別紙対比表20の対比
a別紙対比表20の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表
20部分」という。)と別紙対比表20の被告映像侵害主張部分(以
下「被告映像対比表20部分」という。)とでは,全体として暗い画
面中で暗いながらも相対的に浮き出すように砲身が描かれていること,
各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること,それら砲身が上方に立
ち上がる様子が仰角で描かれていることにおいて,表現態様が共通す
る。また,看者の受ける印象も,薄暗い中で仰角で描かれた主砲の威
圧感と力強さであり,両映像で共通である。
b被告らの指摘する,砲身全体,砲塔を含んで描かれているか否か,
艦橋と主砲の距離感等における相違点は,薄暗い画面においては,看
者の注意を惹き付けるものではなく,些細なものにすぎない。
cしたがって,被告映像対比表20部分は,本件映画対比表20部分
の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻
案物である。
(キ)別紙対比表21の対比
a別紙対比表21の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表
21部分」という。)と別紙対比表21の被告映像侵害主張部分(以
下「被告映像対比表21部分」という。)とでは,全体として暗い画
面中で暗いながらも相対的に浮き出すように砲身が描かれていること,
各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること,砲身が仰角で描かれて
いること,この砲身から青白色の輝度の高い光線が3条発射される様
子が描かれていること,発射時に青白色の爆焔が描かれていること,
発射時の青白色の光線によって艦本体が一瞬明るく照らされる様子が
描かれていることにおいて,表現態様が共通する。また,看者の注意
は,暗い画面の中で唯一明るい3条の光線に向けられるのであり,そ
れらから受ける印象は,仰角で描かれた主砲の威力であり,この点も
両映像で共通する。
b被告らの指摘する,砲身全体,砲塔を含んで描かれているか否か,
主砲,艦橋の表現態様等における相違点は,薄暗い画面においては,
明るい3条の光線が描かれる以上,看者の注意を惹き付けるものでは
なく,些細なものにすぎない。
cしたがって,被告映像対比表21部分は,本件映画対比表21部分
の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻
案物である。
(ク)別紙対比表22の対比
a別紙対比表22の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表
22部分」という。)と別紙対比表22の被告映像侵害主張部分(以
下「被告映像対比表22部分」という。)とでは,全体として暗い中
で小砲塔が暗灰色に薄暗く浮かび上がり唯一明るい映像として活発に
動く破線が表現されていること,小砲塔がドーム型に描かれているこ
と,この小砲塔の回転に伴って明るい破線が動く様子が描かれている
ことにおいて,表現態様が共通する。また,看者の注意も,暗い画面
の中で唯一明るい破線に向けられるのであり,その受ける印象も,単
に小砲塔の旋回に伴う破線の動きのみでなく,同一破線上の光の明滅
から生ずるリズム感もあり,この点でも,上記両映像は共通する。
b上記両映像は,全体として暗い画面中で明滅する光が描かれる以上,
被告らの指摘する,画面構成,視点の相違等は,看者の注意を惹き付
けるものではなく,些細な相違にすぎない。
また,両映像は,リズム感の上では,大差ないのであるから,被告
らの指摘するスピード感の相違なるものも,両映像の同一性,類似性
を否定するに足るものではない。
cしたがって,被告映像対比表22部分は,本件映画対比表22部分
の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻
案物である。
(ケ)別紙対比表23の対比
a別紙対比表23の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表
23部分」という。)と別紙対比表23の被告映像侵害主張部分(以
下「被告映像対比表23部分」という。)とでは,暗青色の背景の中
に艦首先端上端円形切れこみと艦首大型発射口を備えた艦首が極端に
大きくデフォルメされて描かれていること,喫水下のバルジも大きく
デフォルメして描かれていること,この艦体には主艦橋のほか艦底部
にも艦橋が描かれていること,この艦体は上半部を灰色系統に下半部
を暗赤色系統に彩色されていること,この艦体が右舷を見せながら画
面右方向を向いて宇宙空間を航行する様子が画面の大半を占めるよう
に描かれていることにおいて,共通する。
b被告らは,被告映像対比表23部分は,艦体が三角形に描かれてい
るのに対し,本件映画対比表23部分は,艦体が台形に描かれている
ことから,艦体の表現態様を異にすると主張するが,苦し紛れの言い
逃れにすぎない。
また,艦体航行態様の相違点として被告らが指摘する点も,上記a
の基本的な共通性に照らし,非本質的な差異にすぎない。
cしたがって,被告映像対比表23部分は,本件映画対比表23部分
の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻
案物である。
(コ)別紙対比表24の対比
別紙対比表24の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表2
4部分」という。)と別紙対比表24の被告映像侵害主張部分(以下
「被告映像対比表24部分」という。)とでは,暗く描かれた宇宙空間
を背景として艦首先端上端の円形の切れこみと艦首大型発射口を備えた
艦首が極端に大きくデフォルメされて描かれていること,主艦橋が3層
に表現されていること,艦体上半部が暗灰色系統に下半部が暗赤色系統
に彩色されていること,この艦体が画面右奥から左手前に左舷を見せな
がら横切る様子が若干仰角気味に次第に拡大していく映像として描かれ
ていることにおいて共通する。
したがって,被告映像対比表24部分は,本件映画対比表24部分の
複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物
である。
(サ)別紙対比表25の対比
別紙対比表25の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表2
5部分」という。)と別紙対比表25の被告映像侵害主張部分(以下
「被告映像対比表25部分」という。)とでは,暗く描かれた宇宙空間
を背景として上半部が暗灰色系統に下半部が暗赤色系統に彩色された艦
体が画面正面を左舷を見せながら横切る様子が左舷から若干仰角気味に
描かれ,引き続き,この艦体が艦尾に放射状の尾翼を備え艦尾にロケッ
ト噴射口様の形状のメインエンジン1基と補助エンジンを有する艦体像
となって,これらエンジンを輝かせながら画面奥に去っていく様子が次
第に縮小する映像として描かれていること,この艦体の進行方向に地球
が描かれていることにおいて,共通する。
したがって,被告映像対比表25部分は,本件映画対比表25部分の
複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくとも翻案物
である。
(シ)別紙対比表26の対比
別紙対比表26の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表2
6部分」という。)と別紙対比表26の被告映像侵害主張部分(以下
「被告映像対比表26部分」という。)とでは,前記イ(サ)で挙げた共
通点のほかに,被告映像対比表26部分には,側壁が描かれており,こ
の点でも共通する。
したがって,前記イ(サ)で主張したとおり,被告映像対比表26部分
は,本件映画対比表26部分の複製物であり,仮に,複製物とはいえな
いとしても,少なくとも翻案物である。
(ス)別紙対比表27の対比
a別紙対比表27の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表
27部分」という。)と別紙対比表27の被告映像侵害主張部分(以
下「被告映像対比表27部分」という。)とでは,全体として暗青色
を基調とする画面の中で艦体を灰色系統の色彩で表現していること,
画面上部には,上部に建築物が描かれた半球形の天体が,下部には艦
体前半部が,俯瞰的に描かれていること,主砲が3門描かれているこ
と,この主砲が天体に照準を定める様子が描かれていることにおいて,
基本的表現態様が共通する。また,看者の注意は,天体と主砲との関
係に向けられるのであり,この印象は両映像に共通である。
b(a)被告らが指摘する,艦体,主砲と天体とが重なるか否かの点,
視点の相違,これらによる印象の差異,砲身の放熱カバーの有無の
点,天体下半部の表現上の差異は,上記aの共通点に比較すれば,
いずれも些細な差異にすぎない。
(b)被告らは,被告映像対比表27部分は,遊技者による停止ボタ
ン操作により異なる映像が展開されることをもって,同一性,類似
性否定の根拠の一つとする。
しかし,被告映像対比表27部分においては,実際に本件映画対
比表27部分と同一の映像が展開される以上,被告映像対比表27
部分は,本件映画対比表27部分の複製物といえるのであり,被告
映像対比表27部分が,遊技者のボタン操作によっていることは,
上記侵害の事実に影響しない。
cしたがって,被告映像対比表27部分は,本件映画対比表27部
分の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少なくと
も翻案物である。
(セ)別紙対比表28の対比
前記イ(シ)での主張と同様の理由により,別紙対比表28の被告映像
侵害主張部分(以下「被告映像対比表28部分」という。)は,別紙対
比表28の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表28部分」
という。)の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少な
くとも翻案物である。
(ソ)別紙対比表29の対比
前記イ(ス)での主張と同様の理由により,別紙対比表29の被告映像
侵害主張部分(以下「被告映像対比表29部分」という。)は,別紙対
比表29の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表29部分」
という。)の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少な
くとも翻案物である。
(タ)別紙対比表30の対比
前記イ(セ)での主張と同様の理由により,別紙対比表30の被告映像
侵害主張部分(以下「被告映像対比表30部分」という。)は,別紙対
比表30の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表30部分」
という。)の複製物であり,仮に,複製物とはいえないとしても,少な
くとも翻案物である。
(被告ら)
ア被告パチンコ映像との対比
(ア)別紙対比表1の対比
本件映画の波動砲発射場面と被告パチンコ映像の大ヤマト砲発射場面
とでは,個々の場面を検討すれば,後記(イ)ないし(ケ)のとおり,同一
であるとも,類似しているともいえない。また,全体的な一連の流れを
検討した場合にも,基本的な構成,表現態様,表現目的が異なっており,
同一であるとも,類似しているともいえない。
(イ)別紙対比表2の「正面バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画のうちの別
紙A2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A2映像」とい
う。)と,被告パチンコ映像のうちの別紙B2−1の静止画に対応す
る動画映像部分(以下「B2−1映像」という。)である。
b対比
(a)A2映像においては,艦首の斜め前方の視点から,艦首を静止
させた状態で,艦首の発射口に光の粒子が直線状に集まっていく状
態が描かれているのに対して,被告映像においては,画面に対峙す
る遊技者の視点で,視点に対して斜めを向いていた艦首を正面に向
けて移動させながら,発射口に光の粒子が渦巻き状に引き寄せられ
る状態が描かれている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的構成を異にしている。
また,映像から受ける印象についても,A2映像においては,発
射口底部に光の固まりが形成されていく様子を客観的に眺めている
との印象を受けるのに対して,B2−1映像においては,看者(遊
技者)自身に対して大ヤマト砲の照準を合わせて描いているとの印
象を受け,両映像は,映像から受ける印象をも異にしている。
(b)A2映像においては,発射口内部が,暗黒からオレンジ色,オ
レンジ色から底部の黄変部を除いて暗転,と変遷していくのに対し
て,B2−1映像においては,発射口は常に明るい状態のままであ
る。
したがって,両映像は,発射口内部の明暗表現を異にしている。
(c)A2映像においては,発射口内部は,等間隔のリブを備えるほ
かは空洞であり,発射口に光の粒子が直線状に引き寄せられるよう
に表現されている。これに対して,B2−1映像においては,発射
口内部には,「大」字形状の部材を備え,「大」字形状の部材の回
転により,光の粒子が渦巻き状に引き寄せられるように表現されて
いる。
したがって,両映像は,発射口内部の構造,及び光の粒子が発射
口に引き込まれる際の表現態様を異にしている。
(d)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)また,原告が上記両映像の共通点として指摘している点につい
ては,先行する漫画,アニメーション作品及びプラモデルの外箱等
において,ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず,両映
像を対比するに当たって,格別に重要な部分であるとはいえない。
すなわち,縦長楕円形の艦首発射口を有する艦首部が大きくデフ
ォルメされて描かれていることについては,乙第37号証の4,乙
第69号証(55頁),乙第68号証の1(2,3頁)に,背景が
宇宙空間として暗青色に描かれ,艦体が暗灰色系統で描かれている
ことについては,乙第68号証の1(10頁),乙第69号証(5
5頁)に,発射口の内部が明るく輝いて描かれていることについて
は,乙第68号証の1(9ないし12頁),乙第68号証の2(6
ないし9頁),乙第70号証に,それぞれ表現されている。
(ウ)別紙対比表2の「横バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,A2映像と,被告パ
チンコ映像のうちの別紙B2−2の静止画に対応する動画映像部分
(以下「B2−2映像」という。)である。
b(a)A2映像においては,艦首を静止させた状態で,艦首の暗黒の
発射口に光の粒子が直線状に集まっていく状態が,艦首の斜め前方
の固定された視点で描かれている。
これに対して,B2−2映像においては,当初から発光している
発射口が,光の粒子を吸い込むに従って更に光に満ち溢れていく状
態が,艦首の斜め前方から徐々に発射口に近づいていく視点で描か
れている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的構成を異にしている。
(b)A2映像においては,当初暗かった発射口が光の粒子を吸い込
むに従って,吸い込まれた光が凝縮し発射口底部が黄変していき,
底部に光の固まり(黄色発光球体)が形成されていくとの印象を受
ける。
これに対して,B2−2映像においては,当初から発光している
発射口が光の粒子を吸い込むに従って,発射口が輝きを増していき,
発射口が溢れるほどの光に満ち溢れていくとの印象を受けるととも
に,艦首に徐々に近づきながら描くことにより,発射口に引き寄せ
られるとの印象を受ける。
したがって,上記両映像は,映像から受ける印象を基本的に異に
している。
(c)A2映像においては,発射口内部が,暗黒からオレンジ色,オ
レンジ色から底部の黄変部を除いて暗転,と変遷していくのに対し
て,B2−2映像においては,発射口は常に明るい状態のままであ
る。
また,A2映像においては,発射口の内部構造が明確に描かれて
いるのに対して,B2−2映像においては,発射口に満ち溢れた光
により内部構造は描かれていない。
したがって,上記両映像は,発射口内部の表現態様を異にしてい
る。
(d)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
前記(イ)cのとおり。
(エ)別紙対比表3の「正面バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表3部
分と,被告パチンコ映像のうちの別紙B3−1の静止画に対応する動
画映像部分(以下「B3−1映像」という。)である。
b対比
(a)対向配置される部材が,本件映画対比表3部分においては,シ
リンダー様部材とピストン様部材であるのに対して,B3−1映像
においては,釣鐘状突起物が複数形成された円筒様部材と,6個の
円筒状突起物が形成された円筒様部材である。
したがって,上記両映像は,対向配置される部材の形状を全く異
にしている。
(b)本件映画対比表3部分においては,ピストン様部材が,シリン
ダー様部材に向かってゆっくりと移動して押し込まれる状態が描か
れており,ピストン様部材がシリンダー様部材に接続され,動力が
ゆっくりと伝達されるという印象を受ける。
これに対して,B3−1映像においては,円筒状突起物が形成さ
れた円筒様部材が,高速で回転しながら,他方の円筒様部材に向
かって高速で移動し,激しく衝突,発光する状態が描かれており,
衝突により大きなエネルギーが生み出されているという印象を受け
るものである。
したがって,上記両映像は,対向配置されている部材の動きが相
互に異なり,その結果として,映像から受ける印象を全く異にして
いる。
(c)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概括的
事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現されて
いるかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異なる。
(オ)別紙対比表3の「横バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表3部
分と,被告パチンコ映像のうちの別紙B3−2の静止画に対応する動
画映像部分(以下「B3−2映像」という。)である。
b対比
前記(エ)で主張したのと同じ理由により,本件映画対比表3部分と
B3−2映像とは,同一であるとも,類似しているともいえない。
(カ)別紙対比表4の「正面バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画のうちの別
紙A4の静止画に対応する動画映像部分(以下「A4映像」とい
う。)と,被告パチンコ映像のうちの別紙B4−1の静止画に対応す
る動画映像部分(以下「B4−1映像」という。)である。
b対比
(a)A4映像においては,艦体の斜め前方の離れた視点から,艦体
全体が描かれるとともに,発射口の黄白色をした円が膨張及び収縮
を繰り返す状態が描かれており,看者以外の何者かに波動砲を発射
しようとしているとの印象を受ける。
これに対して,B4−1映像においては,艦体全体は描かれてお
らず,画面に対峙する遊技者の視点で,画面中央に正面を向いた艦
首の発射口が大きく描かれるとともに,膨張,収縮を繰り返すこと
なく発射口の光の一方的な拡大が描かれており,看者(遊技者)自
身に対して,大ヤマト砲を発射しようとしているとの印象を受ける。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成及び映像から受
ける印象を基本的に異にしている。
(b)A4映像においては,発射口の光(黄白色をした円)が一旦膨
張した後に収縮するように描かれているのに対して,B4−1映像
においては,発射口の光が一方的に拡大していくように描かれてお
り,両映像は発射口における光線の表現態様を基本的に異にしてい
る。
(c)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)原告は,被告らの対比の主張は,原告が特定した対比対象と異
なる部分を対象としてされており,失当である旨主張する。
しかし,被告らが,対比の対象とした部分は,対比を行う上で不
可欠な部分であるから,原告の上記主張は失当である。
(c)また,原告が上記両映像の共通点として指摘している点につい
ては,先行する漫画,アニメーション作品及びプラモデルの外箱等
において,ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず,両映
像を対比するに当たって,格別に重要な部分であるとはいえない。
すなわち,暗い背景の中に縦長楕円形の発射口が大きく黄白色系
統に浮き上がって描かれていることについては,乙第68号証の1
(11頁),乙第68号証の3(4頁),乙第70号証,乙第71
号証に,発射口の輝きが,当初は発射口内部に限られているが,そ
れが発射口を越えて拡大する様子が描写されていることについては,
乙第68号証の1(3,4,8,10ないし12頁),乙第68号
証の2(2,3頁)に,それぞれ表現されている。
(キ)別紙対比表4の「横バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,A4映像と,被告パ
チンコ映像のうちの別紙B4−2の静止画に対応する動画映像部分
(以下「B4−2映像」という。)である。
b対比
(a)A4映像においては,発射口の光(黄白色をした円)が,一旦
膨張した後に収縮する状態が繰り返して描かれており,一旦状ON
態(光の膨張)になったものが,再び状態(光の収縮)になOFF
ることが表現されている。
これに対して,B4−2映像においては,発射口から5本の太い
ON白色の光線が,放射状に一方的に拡大する状態が描かれ,一旦
状態(光の膨張)になったものが,再び状態(光の収縮)にOFF
なることはなく表現されている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成を異にしている。
(b)A4映像においては,膨張したエネルギーを繰り返し凝縮,集
中させ,発射に備えているとの印象を受ける。
これに対して,B4−2映像においては,臨界点に達したエネル
ギーが,多方向に弾け出したとの印象を受ける。
したがって,両映像は,映像から受ける印象を異にしている。
(c)A4映像においては,発射口の光(黄白色をした円)が,円形
状を維持したまま,膨張,収縮する様子が描かれている。
これに対して,B4−2映像においては,発射口周辺に拡大した
光の中から5本の白色光線が現れ,放射状に一方的に拡大する様子
が描かれている。
したがって,両映像は,発射口の光の表現態様を異にしている。
(d)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
前記(カ)cのとおり。
(ク)別紙対比表5の「正面バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表5部
分と,被告パチンコ映像のうちの別紙B5−1の静止画に対応する動
画映像部分(以下「B5−1映像」という。)である。
b対比
(a)本件映画対比表5部分においては,艦体の斜め前方の視点から,
艦体が描かれるとともに,青白色の光線が発射され,発射された光
線が攻撃対象物に向かって一直線に進み,光線の先頭が攻撃対象物
に命中する状態が描かれている。
これに対して,B5−1映像においては,そもそも艦体が描かれ
ておらず,画面に対峙する遊技者の視点から,画面中央に正面を向
いて大きく描かれた艦首の発射口から,5本の白色光線が高速回転
しながら画面全体を白色光で満たしている状態が描かれた後,白色
光の中心から順次図柄が生み出されてくる状態が描かれている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成を異にしている。
(b)本件映画対比表5部分においては,艦体が光線を画面左側に向
けて発射し,攻撃対象物に命中したとの印象であるのに対し,B5
−1映像においては,画面全体が一方的に白色光で満たされるとと
もに,発射された光線の中から順次パチンコ機の大当りを決定する
ための図柄が生み出されてくるとの印象を与えるものであり,両映
像は,映像から受ける印象を異にしている。
(c)本件映画対比表5部分においては,紫色の炎状最外層,寒色系
の青色で表現された中間層及び白色の最内層の3層から成る光線が
発射される状態が描かれている。
これに対して,B5−1映像においては,層の区別がない暖色系
の白色で表現された5本の光線が高速で回転しながら発射され,画
面全体を白色光で満たす状態が描かれている。
したがって,上記両映像は,光線の表現態様を基本的に異にして
いる。
(d)本件映画対比表5部分においては,発射された光線が,攻撃対
象物へ向かって一直線に進み,対象物に命中する状態が描かれてお
り,対象物を攻撃する武器として描かれている。
これに対して,B5−1映像においては,画面全体に拡がった光
線の中から順次図柄が生み出されるように描かれており,光線は,
パチンコ機における大当りを決定するための図柄を表示する背景領
域を形成するためのものとして描かれている。
したがって,上記両映像は,映像における光線の役割,位置付け
を異にしている。
(e)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)また,原告が上記両映像の共通点として指摘している点につい
ては,先行する漫画,アニメーション作品及びプラモデルの外箱等
において,ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず,両映
像を対比するに当たって,格別に重要な部分であるとはいえない。
すなわち,暗い背景の中で輝度の高い光線が発射される様子が描
かれていること,及びこの光線が炎状に描かれていることについて
は,乙第37号証の1,乙第37号証の5,乙第68号証の1(5
ないし7,12ないし17頁),乙第68号証の2(13ないし1
5頁),乙第70号証に,光線が,次第に画面の大部分を占めるよ
うに拡大していくように描かれていることについては,乙第68号
証の2(4,5頁)に,それぞれ表現されている。
(ケ)別紙対比表5の「横バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表5部
分と,被告パチンコ映像のうちの別紙B5−2の静止画に対応する動
画映像部分(以下「B5−2映像」という。)である。
b対比
(a)本件映画対比表5部分においては,艦体の斜め前方の視点から,
艦体が描かれるとともに,青白色の光線が発射され,発射された光
線が攻撃対象物に向かって一直線に進み,光線の先頭が攻撃対象物
に命中する状態が,発射された光線の先頭側及び攻撃対象物を注視
点として描かれている。
これに対して,B5−2映像においては,艦体は基本的に描かれ
ておらず,画面のほぼ全体に5本の相互に絡まった光線の束が,画
面斜め方向に流れる状態が描かれた後,画面のほぼ全体に拡がった
光線の束から,順次図柄が生み出されてくる状態が,発射された光
線の途中部分及び光線の中から生み出される図柄を注視点として描
かれており,光線により図柄が生み出されてくるとの印象を受ける。
したがって,上記両映像は,映像の基本的構成を異にしている。
また,本件映画対比表5部分においては,艦体が光線を画面左側
に向けて発射し,攻撃対象物に命中したとの印象であるのに対し,
B5−2映像においては,画面のほぼ全体に拡がった光線の束から,
順次図柄が生み出されてくる状態が描かれており,光線により図柄
が生み出されてくるとの印象を与えるものであり,両映像は,映像
から受ける印象をも異にしている。
(b)本件映画対比表5部分においては,紫色の炎状最外層,寒色系
の青色で表現された中間層及び白色の最内層の3層から成る光線が
発射される状態が描かれている。
これに対して,B5−2映像においては,層の区別がない暖色系
の白色で表現された5本の光線が相互に絡まり,更に太い光線の束
となって,うねりながら発射される状態が描かれている。
したがって,上記両映像は,光線の表現態様を基本的に異にして
いる。
(c)本件映画対比表5部分においては,発射された光線が,攻撃対
象物へ向かって一直線に進み,対象物に命中した状態が描かれてお
り,対象物を攻撃する武器として描かれている。
これに対して,B5−2映像においては,光線が画面のほぼ全体
を満たすように拡がり,その光線の中から順次図柄が生み出されて
くる状態が描かれており,光線は,対象物を攻撃する武器としてで
はなく,パチンコ機における大当りを決定するための図柄を表示す
る背景領域を形成するためのものとして描かれている。
したがって,上記両映像は,映像における光線の役割,位置付け
を異にしている。
(e)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
前記(ク)cのとおり。
(コ)別紙対比表6の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表6
部分と,被告パチンコ映像のうちの別紙B6の静止画に対応する動
画映像部分(以下「B6映像」という。)である。
b対比
(a)本件映画対比表6部分においては,艦体後部が大きく炎上し,
攻撃がされていない状況において,艦体後部で継続的に爆発が発生
し,艦橋付近まで炎が拡大して大きく炎上していく状態が描かれて
いる。
これに対して,B6映像においては,艦体側面に攻撃を受け,そ
の衝撃で艦体が振動するとともに,攻撃を受けた箇所で小規模な炎
が一瞬生じるものの,その炎はすぐに消え去り,消失してしまう状
態が描かれている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成を異にしている。
(b)本件映画対比表6部分においては,艦体後部が大きく炎上し,
これとともに艦体後部で爆発が継続して発生し,艦橋付近まで炎が
拡大していく状態が描かれており,危機的な状態との印象を受ける。
これに対して,B6映像においては,攻撃は受けたものの,小規
模な炎が一瞬生じるだけで,ダメージを全く負っていない状態が描
かれており,艦体に格別の危険はないとの印象を受ける。
したがって,上記両映像は,映像から受ける印象を異にしている。
(c)本件映画対比表6部分においては,艦体側面に主翼や円盤を備
えておらず,また,艦首に対して艦橋を比較的大きく描いており,
艦首と艦橋がそれほど離れていない態様にて描かれている。
これに対して,B6映像においては,補助エンジンを有する大き
な主翼や円盤を艦体側面に備えており,また,艦首に対して艦橋を
極端に小さく描いており,艦橋が艦首のはるか後方に存在する態様
にて描かれている。
したがって,上記両映像は,艦体の表現態様を異にしている。
(d)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)また,原告が上記両映像の共通点として指摘している点につ
いては,先行する漫画,アニメーション作品及びプラモデルの外
箱等において,ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず,
両映像を対比するに当たって,格別に重要な部分であるとはいえ
ない。
すなわち,暗青色の背景の中に艦首先端上端の円形の切れこみと
艦首大型発射口を備えた艦首を極端に大きくデフォルメした艦体が
宇宙空間を航行する様子が描かれていることについては,艦体を撮
影する際の一般的な手法としても定着していた上に,乙第37号証
の4,乙第39号証の1,乙第40号証,乙第42号証,乙第44
号証の1,乙第72号証(2頁)に,艦体が右舷前方下方から仰角
で描かれていることについても,艦体を撮影する際の一般的な手法
として定着し,乙第39号証の1,乙第40号証に,艦体の上部が
暗灰色系統に,下部が暗赤色系統に彩色されていることについては,
戦艦等において一般的に採用され,乙第69号証(58頁),乙第
73号証に,同艦体周囲を飛行物体が飛び交い,艦体後部等で爆発
が生ずる様子が描かれていることについては,乙第52号証(6な
いし9頁),乙第76号証(2ないし4頁)に,それぞれ表現され
ている。
(サ)別紙対比表7の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表7
部分と,被告映像対比表7部分である。
b対比
(a)本件映画対比表7部分においては,艦体が画面右奥から左手前
へ向けて航行してくるに従って,艦体側面が画面中央に拡大して描
かれた後,艦体が画面左奥に向けて航行していく状態が,艦体斜め
後方の視点から仰角の角度で描かれ,周囲に何も存在していない暗
黒の宇宙空間を斜め方向に航行して消えていく場面が描かれている。
これに対して,被告映像対比表7部分においては,艦体が画面奥
左寄り中央から画面手前へ向けて航行してくるに従って,艦橋が画
面中央に拡大して描かれた後,艦体が画面奥の地球に向けて航行し
ていく状態が,艦体真後ろ上方の視点から俯角の角度で描かれ,艦
体が地球に帰還する場面が描かれているものであり,画面奥の地球
に向かう艦体を,斜め後方からではなく,真後ろからの視点で描く
ことで,地球に帰還する印象を強く与えている。
したがって,上記両映像は,描かれている場面及び映像の基本的
な構成を異にしている。
(b)本件映画対比表7部分における艦体は,メインエンジンと補助
エンジンとを艦尾にのみ備え,相互に120度の角度で開いた3本
の尾翼を備えているのに対して,被告映像対比表7部分における艦
体は,主翼を備え,かつ,その主翼に補助エンジンを備えているほ
か,相互に90度の角度で開いた4本の尾翼を備えており,両映像
は,艦体の基本構成を異にしている。
また,本件映画対比表7部分においては,艦体が斜め後方から仰
角の角度で艦底が見えるように描かれているため,飛行体が浮遊し
ているような印象を与えるのに対して,被告映像対比表7部分にお
いては,主翼を有する艦体が,真後ろから俯角の角度で描かれてい
るため,飛行機が飛行しているような印象を与えている。
したがって,上記両映像は,艦体の基本構成及び該映像から受け
る印象を異にしている。
(c)本件映画対比表7部分においては,艦体が画面手前に来たとき
に,艦体側面が注視点となるように描かれている。
これに対して,被告映像対比表7部分においては,艦体が画面手
前に来たときに,艦橋が注視点となるように描かれている。
したがって,上記両映像は,映像における注視点を異にしている。
(d)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)また,原告が上記両映像の共通点として指摘している点につ
いては,先行する漫画,アニメーション作品及びプラモデルの外
箱等において,ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず,
両映像を対比するに当たって,格別に重要な部分であるとはいえ
ない。
すなわち,全体として暗い背景の中に艦首先端上端の円形切れこ
みと艦首大型発射口を備えた艦首が大きくデフォルメして描かれて
いることについては,乙第37号証の4,乙第39号証の1,乙第
40号証,乙第42号証,乙第44号証の1,乙第72号証(2
頁)に,艦体の上部が暗灰色系統に,下部が暗赤色系統に彩色され
ていることについては,戦艦等において一般的に採用されていた上
に,乙第69号証(58頁),乙第73号証に,艦尾のロケットエ
ンジン,補助エンジンが輝いて描かれていること,及び艦尾の尾翼
が放射状に描かれていることについても,乙第37号証の3,乙第
46号証,乙第47号証,乙第69号証(90頁)に,艦体が画面
右奥から接近し,左舷を見せて右に旋回する印象を与えた後,画面
奥に去っていく様子が描かれていること,及び画面奥に去っていく
際に,艦体像が次第に縮小していく映像として描かれていることに
ついても,乙第68号証の1(18ないし21頁),乙第74号証,
乙第75号証に,それぞれ表現されている。
(シ)別紙対比表8の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表8
部分と,被告映像対比表8部分である。
b対比
(a)本件映画対比表8部分においては,艦体が画面手前方向に航行
してくるに従って,艦首上部中央が画面中央に拡大され,その後画
面下方に消え去っていく状態が,艦首前下方の視点から仰角の角度
で描かれている。
これに対して,被告映像対比表8部分においては,艦体が画面手
前方向にゆっくり航行してくる途中に,艦体や背景とは関連なく,
画面上に文字を表示するための白色光が,画面中央部に発生して画
面全体に拡大し,その後白色光の中から遊技者(看者)に対するメ
ッセージ「チャンスタイム100回」が現れる状態が,甲板上方の
視点から俯角の角度で描かれている。
また,本件映画対比表8部分においては,暗黒の背景の中に,艦
体が暗灰色に暗く描かれ,惑星のごく一部を除き,全体的に暗い色
調で目立たない態様にて表現されている。
これに対して,被告映像対比表8部分においては,暗青色の背景
の中に,艦体がメタリック調,かつ,光に照らされて描かれ,艦体
背後に星雲が輝いて描かれるとともに,画面中央部に拡大する白色
光及び白色光の中から現れた文字が輝いて描かれ,全体的に明るい
色調でメリハリのある態様にて表現されている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成を異にしている。
(b)本件映画対比表8部分においては,艦首越しに艦橋が見える状
態(1コマ目)から艦首が消え去り艦橋のみがアップになる状態
(6コマ目)までが,35フレーム(約1秒)で表現されている。
これに対して,被告映像対比表8部分においては,艦橋の大きさ
が画面の縦幅の約半分の状態(1コマ目)から画面の縦幅と同等と
なる(6コマ目)までに,378フレーム(約12秒)を要して表
現されており,非常にゆっくりと移動していることが表現されてい
る。
したがって,上記両映像は,航行速度の表現態様を基本的に異に
している。
(c)本件映画対比表8部分においては,全体的にほの暗く描かれて
おり,背後の惑星から離脱した艦体が暗い色調のまま静かにかつ急
速に接近してきており,全体として地味な印象を受ける。
これに対して,被告映像対比表8部分においては,艦体が当初か
ら光に照らされており,これに加えて「チャンスタイム100回」
の文字の周囲から発せられる光により,艦体が更に明るく照らされ
る状態が描かれ,光により艦体を際立たせて描かれている。このた
め,艦体が非常にゆっくりと移動していることと相まって,全体と
して非常に華やかな印象を受ける。
したがって,上記両映像は,艦体の明暗表現及び映像から受ける
印象を異にしている。
(d)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)また,原告が上記両映像の共通点として指摘している点につい
ては,先行する漫画,アニメーション作品及びプラモデルの外箱等
において,ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず,両映
像を対比するに当たって,格別に重要な部分であるとはいえない。
すなわち,艦体の艦橋正面像が,艦橋像の拡大により,最終段階
では画面全体を満たすように描かれることについては,艦体を撮影
する際の一般的な手法として定着していた上に,乙第41号証(8
ないし11頁),乙第43号証(2,3頁),乙第72号証(3
頁),乙第76号証(5頁)に,宇宙空間であることを示す暗い背
景の中で,艦体が相対的に明るく描かれることについても乙第44
号証の1,乙第44号証の2に,それぞれ表現されている。
(ス)別紙対比表9の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画のうちの別
紙A9の静止画に対応する動画映像部分(以下「A9映像」とい
う。)と,被告パチンコ映像のうちの別紙B9の静止画に対応する動
画映像部分(以下「B9映像」という。)である。
b対比
(a)A9映像においては,艦体が画面奥から画面手前に向けて航行
してくるに従って,艦首が徐々に画面下方に消え去った後,艦橋が
アップになって強調され,更には艦橋が視点の下方を通過していく
状態が描かれている。
これに対して,B9映像においては,艦体正面の視点から,艦体
が画面奥から画面手前に向けてゆっくり航行してくるに従って,艦
首発射口がアップになって強調されるとともに,航行してくる途中
に,艦体や背景とは関連なく,画面中央部に文字を表示するための
光の帯が発生し,その後,光の帯の中から遊技者(看者)に対する
メッセージ「」が現れ,艦体(艦首発射口)がその文字に衝FEVER
突する直前で停止する状態が描かれている。
また,A9映像においては,暗黒の背景の中に,艦体が暗灰色及
び暗赤色に暗く描かれ,惑星のごく一部を除き,全体的に暗い色調
で目立たない態様にて表現されている。
これに対して,B9映像においては,暗青色の背景の中に,艦首
発射口及び主翼の補助エンジンが輝いて描かれ,艦体背後に星雲が
輝いて描かれるとともに,画面中央部に発生する光の帯及び光の帯
から現れた文字が輝いて描かれており,全体的に明るい色調でメリ
ハリのある態様にて表現されている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成を異にしている。
(b)A9映像においては,略正五角形の艦体上に,三角形状の艦橋
が描かれている。
これに対して,B9映像においては,下記に示すように,八の字
型の艦体の左右に,三角形状の巨大な翼が描かれているが,艦橋は
全く描かれていない。
したがって,上記両映像は,艦体の基本的な構成及び表現態様が
全く異なっている。
(c)A9映像においては,1コマ目から8コマ目までの約6秒の間
に,艦体全体が描かれた状態(1コマ目)から艦橋のみがアップと
なり消え去る状態(78コマ目)までが描かれている。,
これに対して,B9映像においては,1コマ目から8コマ目まで
の約6.5秒の間に,艦首発射口の大きさが画面の縦幅の1/5程
度の状態(1コマ目)から画面の縦幅の1/3程度の状態(8コマ
目)となるまでが描かれており,艦体が非常にゆっくりと移動して
いることが表現されている。
したがって,上記両映像は,航行速度の表現態様を異にしている。
(d)A9映像においては,全体的に暗い色調の中で,背後の惑星か
ら離脱した艦体が,暗い色調のまま静かにかつ急速に接近した後,
看者の下を通過していく様子が描かれており,全体として地味な印
象を受ける。
これに対して,B9映像においては,全体的に明るく照らされた
中で,艦体が非常にゆっくりと移動しており,稲妻を伴った光の帯
が画面中央に発生した後,「」の文字が輝き,この文字かFEVER
ら発せられる光により,艦体自体が明るく照らされており,全体と
して非常に華やかな印象を受ける。
したがって,上記両映像は,映像から受ける印象を異にしている。
(e)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)原告は,B9映像の艦体においては,主翼が明確に描かれてい
ないから,主翼の有無は副次的な要素にすぎない旨主張する。
しかし,B9映像においては,左右の主翼のほぼ中央部に,明る
く光る補助エンジンが描かれており,特に画面右部分は背景が明る
く輝いているため,右側部分の主翼について明確に確認することが
できるから,原告の上記主張は根拠を欠いている。
(c)原告は,被告らが,対比部分の対象とした本件映画の部分は,
原告が対比の対象として特定している範囲を越えている旨主張する。
しかし,動画においては,一連の映像から受ける印象を基に対比
すべきであるところ,本件映画対比表9付近の部分においては,画
面奥に比較的小さく描かれた艦体が,徐々に手前に向けて航行し,
艦首が画面下方に消え去り,最終的には艦橋がアップになることに
よって,看者の真下を艦体が通過することを印象付けている点にお
いて,表現上の特徴を有している。
したがって,被告らが指摘をした本件映画中の上記一連のコマ部
分は,対比を行う上で不可欠な部分であり,上記コマ部分に対応す
る映像の有無は,同一性ないし類似性を判断する上で不可欠という
べきであり,原告の上記主張は理由がない。
(d)また,原告が上記両映像の共通点として指摘している点につい
ては,先行する漫画,アニメーション作品及びプラモデルの外箱等
において,ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず,両映
像を対比するに当たって,格別に重要な部分であるとはいえない。
すなわち,艦首先端上端に円形の切れこみと艦首発射口を備えた
艦首部が大きくデフォルメされて描かれていることについては,乙
第37号証の4,乙第39号証の1,乙第40号証,乙第42号証,
乙第44号証の1,乙第72号証(2頁)に,宇宙空間であること
を示す全体として暗い背景の中で,相対的に明るい暗灰色系統に艦
体が彩色されていることについては,乙第44号証の1,乙第44
号証の2に,艦体が看者に向かって接近してくる様子が,艦体像の
拡大によって描かれ,最終段階では艦首部が看者にのしかかるよう
に描かれていることについては,乙第41号証(8ないし11頁)
に,それぞれ表現されている。
(セ)別紙対比表10の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表1
0部分と,被告パチンコ映像のうちの別紙B10の静止画に対応す
る動画映像部分(以下「B10映像」という。)である。
b対比
(a)本件映画対比表10部分においては,画面を上下に2分し,下
半分に暗緑色の天体が大きく描かれるとともに,画面中央部に艦体
が天体と宇宙空間の境界線に重なるように,艦底を天体側に向けて
描かれており,天地を逆転させることなく表現されている。
これに対して,B10映像においては,画面の左上角部分に,青
白く輝く地球が画面の3分の1程度を占めるように斜線を画して描
かれるとともに,画面中央部に艦体が,地球と宇宙空間の境界線に
重なることなく,甲板側を地球に向けて小さく描かれており,天地
を逆転させて表現されている。
また,本件映画対比表10部分においては,宇宙空間を移動する
ことなく浮遊,静止している艦体の周りを,複数の飛行機が様々な
方向に飛行している状態が描かれている。
これに対して,B10映像においては,艦体が宇宙空間を画面奥
から画面手前に向けて航行してくるとともに,艦体から発射された
炎状の物体のすべてが軌跡を残しつつ,画面手前方向に向かって来
る状態が描かれている。
さらに,本件映画対比表10部分においては,暗青色の宇宙空間
の中に,天体が暗緑色に描かれるとともに,艦体も薄暗く描かれ,
全体として暗い色調で目立たない態様にて表現されている。
これに対して,B10映像においては,暗青色の宇宙空間の中に,
地球が青白く輝いて描かれ,明るく輝く艦首発射口や補助エンジン
を含め艦体が明るく描かれるとともに,艦体から発射された炎状の
物体の軌跡も明るく描かれ,全体的に明るい色調でメリハリのある
態様にて表現されている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成を全く異にして
いる。
(b)本件映画対比表10部分においては,艦体が,艦体正面から,
艦橋部分を除きほとんど凹凸のない小判形状で描かれている。
これに対して,B10映像においては,艦体は,艦橋が描かれて
いない一方で,左右に伸びた主翼及び主翼中央部の補助エンジンを
有し,凹凸のある形状で描かれている。
したがって,上記両映像は,艦体の表現態様を全く異にしている。
(c)本件映画対比表10部分においては,薄暗い宇宙空間の中で,
艦体が天体の上方に浮遊,静止しているとの印象を受ける。
これに対して,B10映像においては,艦体が青白く輝く地球の
横を,画面手前方向へ航行して来るとの印象を受ける。
したがって,上記両映像は,映像から受ける印象を異にしている。
(d)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)原告は,B10映像においては,艦体の輪郭や主翼は判然とし
ない旨主張するが,B10映像においては,背景である暗黒の宇宙
に対して,主翼中央部の補助エンジンと左右の主翼が,白色で明確
に描かれており,また,看者の注意を惹くように描かれており,十
分に確認可能である。
(c)また,原告が上記両映像の共通点として指摘している点につい
ては,先行する漫画,アニメーション作品及びプラモデルの外箱等
において,ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず,両映
像を対比するに当たって,格別に重要な部分であるとはいえない。
すなわち,艦首先端上端円形切れこみと艦首大型発射口を備えた
艦体が正面から描かれていることについては,乙第37号証の4,
乙第41号証(8頁),乙第72号証(2頁)に,艦体を飛行物体
がかすめて飛ぶ様子が描かれていることについては,乙第76号証
(2ないし4頁)に,宇宙空間であることを示す暗い背景の中に,
惑星様の天体の一部が描かれていることについては,乙第69号証
(55,90頁)に,それぞれ表現されている。
(ソ)別紙対比表11の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表1
1部分と,被告映像対比表11部分である。
b対比
(a)本件映画対比表11部分においては,前方正面上方には,中央
に向かって狭まっていく逆台形状の上方パネル,同中央には,中央
に向かって狭まっていく太い格子を複数有する窓,同下方には,中
央に向かって狭まっていく台形状の床が描かれるとともに,左右に
は,中央に向かって狭まっていく三角形状の側壁が描かれており,
全体として奥行き感のある構図で描かれている。
これに対して,被告映像対比表11部分においては,上部には,
長方形状の上方パネル,中央には,格子を有しない長方形状の中央
パネル,下部に長方形状の床が描かれ,左右の側壁は描かれておら
ず,全体として奥行き感のない平面的な構図で描かれている。
また,本件映画対比表11部分は,暗青色や茶系色を基調とした,
全体的に暗い色調で描かれているのに対して,被告映像対比表11
部分は,発光した青色系の色を基調とした,全体的に明るい色調で
描かれており,両映像は全体的な色調を異にしている。
さらに,被告映像対比表11部分においては,艦橋内部が,半透
明化された状態で上方から下方に移動している図柄の後方に描かれ
ており,これに対して,本件映画対比表11部分においては,艦橋
内部が半透明化された図柄を介することなく描かれている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成を異にしている。
(b)本件映画対比表11部分においては,上方パネル,格子を有す
る窓及び床のすべてが,全体的に暗い中に描かれており,また,そ
れぞれの境界を明確に区切って描かれていることから,閉鎖的な室
内にいるような印象を受ける。
これに対して,被告映像対比表11部分においては,上方パネル,
前方パネル及び床のすべてが,青く発光して描かれており,また,
それぞれの境界を明確に区切ることなく一体的に描かれていること
から(前方パネルに格子がないのも区切りなく表現するためであ
る。),全体として開放的な空間の印象を受ける。
したがって,上記両映像は,上方パネル,前方パネル及び床の表
現態様において異なっており,映像から受ける印象を異にしている。
(c)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告は,上記両映像では,遠近法が強調されている点が共通し
ていると主張するが,被告映像対比表11部分においては,遠近法
が強調されているとはいえない。
(b)原告は,上記両映像では,床には,手前に艦長席,前方にその
他の者の席が置かれ,その中間の床中央部に一個の装置が配置され,
これを挟んで2席が置かれている様子が描かれていることにおいて
も,共通している旨主張する。
しかし,原告の指摘する上記の点は,先行する映画,アニメーシ
ョン作品である,乙第48号証(3頁),乙第68号証の4(2,
3頁),乙第76号証(6頁)に,一般的に表現されており,上記
両映像を対比するに当たって,重要な事項であるとはいえない。
(c)また,原告は,P1P2訴訟において,本件訴訟の乙第93号
証の152頁に記載されている,P1作成に係る艦橋内部の図柄に
ついて,「丁5152ページには,第一艦橋・ラフ稿のP1図柄
が存在するが,同P1図柄は曖昧模糊としており,著作物性を有し
得ない。また,同ページの第一艦橋・天井及び時計・ラフ稿のP1
図柄の表現は,明らかに本件映画対比表11部分中の表現と異なっ
ている。」と主張し,上記の図柄と本件映画対比表11部分とは非
類似であると主張している。
ところで,上記の図柄には,原告が,本件映画対比表11部分と
被告映像対比表11部分との間の共通点として指摘している点がそ
のまま表現されており,それにもかかわらず,原告は,上記の図柄
と本件映画対比表11部分は非類似であると主張していることから,
本件映画対比表11部分と被告映像対比表11部分とが類似してい
ないことが裏付けられる。
(タ)別紙対比表12の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画のうちの
別紙A12の静止画に対応する動画映像部分(以下「A12映像」
という。)と,被告映像対比表12部分である。
b対比
(a)A12映像における艦長は,垂れ下がった帽子,顔面全体にわ
たり一体的かつ丸みを帯びた輪郭で生えた真っ白な鬚,襟に張りが
ない服装をしており,このことからおおらかな印象を与えるととも
に,襟が大きく開いており,顔全体がどの角度からでも見えること
から,開放的な印象を与え,全体として慈父のような人物として描
かれている。
これに対して,被告映像対比表12部分における艦長は,上部が
大きく張りを持って膨らんだ帽子,襟に張りを持った服装をしてお
り,このことから神経質な印象を与えており,これとともに,口髭
と顎鬚に分離したギザギザした輪郭をもったくすんだ灰色の鬚,大
きな襟がほぼ目の高さまで覆いかぶさり,ほぼ正面からしか顔をみ
ることができない服装をしていることから,閉鎖的で近寄り難い人
物として描かれている。
したがって,上記両映像は,人物に関する印象を基本的に異にし
ている。
(b)A12映像においては,艦長は,ゆっくりと立ち上がり口を開
く様子が描かれており,冷静に意見を述べているとの印象を受ける。
これに対して,被告映像対比表12部分(映像)においFEVER
ては,手を体の横に下げた状態で,口を開くことも身動きすること
もなく佇んでいる様子が描かれており,緊迫した状況を静かに見
守っているとの印象を受ける。
したがって,上記両映像は,映像から受ける印象を基本的に異に
している。
(c)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
原告が指摘している上記両映像の共通点は,先行するアニメーショ
ン作品である乙第49号証において,一般的に表現されていたものに
すぎず,両映像の対比において,さほど重要であるとはいえない。
(チ)別紙対比表13の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表1
3部分と,被告映像対比表13部分である。
b対比
本件映画対比表13部分における医師と被告映像対比表13部分に
おける医師とでは,顔の輪郭,眉の形状,鼻の形状,口の形状,かけ
ている眼鏡の形状及び眼鏡と目との位置関係,服装が異なっており,
全く別人との印象を受ける。
また,本件映画対比表13部分においては,書斎風の部屋で酒を飲
んでいる様子が描かれているのに対して,被告映像対比表13部分に
おいては,機械室で佇んでいる様子が描かれている。
したがって,上記両映像は,描かれている人物及び場面を基本的に
異にしており,同一であるとも,類似しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)本件映画対比表13部分における医師のキャラクターは,P1
が作成したものであるところ,本件映画対比表13部分に先行して
P1が作成した同一作品中で,本件映画対比表13部分における医
師とほぼ同一のキャラクターと,被告映像対比表13部分における
医師とほぼ同一のキャラクターが,それぞれ全く別個の人物として
描き分けられている(乙39の2,3)。
(ツ)別紙対比表14の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表1
4部分と,被告映像対比表14部分である。
b対比
(a)本件映画対比表14部分においてのロボットは,頭部や胴体に
アナログ計器を有し,背面と肘部分とがホース様部材で接続され,
アナログ的で現代のロボットとの印象を受ける。
これに対して,被告映像対比表14部分においてのロボットは,
アナログ計器を有することもなければ,各部がホース様部材で接続
されていることもなく,更には下半身に人間の足状のものを有して
いないため,常に浮遊しているような,未来的なロボットであると
の印象を受ける。
したがって,上記両映像は,ロボットの基本的な構成及び印象を
異にしている。
(b)本件映画対比表14部分においては,頭部が胴体よりも幅狭か
つ縦長であり,頭頂部が鶏冠状の3つの部分で分断され,その左右
部分は斜面状にガラスで覆われるとともに,正面中央部に3つのア
ナログ計器が縦に配置され,下部左右端にアンテナ状のものが設け
られている。
これに対して,被告映像対比表14部分においては,頭部が胴体
と同幅かつ横長であり,頭頂部に小さな帽子状の突起物が形成され,
該突起物の左右に眼球状のものが設けられ,その下部に鼻様のもの
が設けられており,頭頂部左右部分のガラス,アナログ計器,アン
テナ状のものは設けられていない。
したがって,上記両映像は,頭部の形状,構成を基本的に異にし
ている。
(c)本件映画対比表14部分においては,下半身が全体として人間
の下半身状であり,人間同様に2本の足状のものが設けられ,地面
を歩くというような印象を受ける。
これに対して,被告映像対比表14部分においては,下半身が,
人間の下半身状ではなく円錐状であり,人間の足状のものが設けら
れておらず,常に浮遊しているような印象を受ける。
したがって,上記両映像は,下半身の形状,構成及び印象を異に
している。
(d)本件映画対比表14部分においては,当初,隙間なく接合され
ていた頭部,胴体及び下半身が,それまでの接合状態が解除されて
完全に分離し,頭部及び胴体がそれぞれ独立した物体として,別々
の方向へ飛んでいく状態が描かれている。これに対して,被告映像
対比表14部分においては,頭部,胴体及び下半身の間には常時隙
間が存在し,この隙間の量が変化することにより,身をよじる状態
が描かれている。
このため,本件映画対比表14部分においては,頭部,胴体及び
下半身が完全に分離し,頭部及び胴体が,全く別個の物体を形成し
ているとの印象を受ける。これに対して,被告映像対比表14部分
においては,頭部,胴体及び下半身の間の隙間の量は変化するもの
の,頭部,胴体及び下半身が完全分離することはなく,不即不離の
関係を保ちつつ,1個のロボットを形成しているとの印象を受ける。
したがって,上記両映像は,頭部,胴体,下半身が分離する際の
表現態様及び映像から受ける印象を異にしている。
(e)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)寸胴の胴体に手足がついていることや,ロボットの頭,胴及び
下半身が分離することは,いずれもアイデアにすぎない。
(c)寸胴の胴体に手足が付いてるロボットは,先行作品である乙第
50号証(3頁)に,頭部,胴部及び下半身が分離するロボットも,
先行作品である乙第51号証に表現されており,一般的なものであ
る。
イ被告パチスロ映像との対比
(ア)別紙対比表15の対比
本件映画の波動砲発射場面と被告パチスロ映像の大ヤマト砲発射場面
とでは,個々の場面を検討すれば,後記(イ)ないし(ケ)のとおり,同一
であるとも,類似しているともいえないが,全体的な一連の流れを検討
した場合にも,基本的な構成,表現態様,表現目的が異なっており,同
一であるとも,類似しているともいえない。
(イ)別紙対比表16の「待機映像」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画のうちの別
紙A16の静止画に対応する動画映像部分(以下「A16映像」とい
う。)と,被告パチスロ映像のうちの別紙B16−1の静止画に対応
する動画映像部分(以下「B16−1映像」という。)である。
b対比
前記ア(イ)と同じ理由により,A16映像とB16−1映像は,同
一であるとも,類似しているともいえない。
(ウ)別紙対比表16の「大ヤマト砲発射確定バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,A16映像と,被告
パチスロ映像のうちの別紙B16−2の静止画に対応する動画映像部
分(以下「B16−2映像」という。)である。
b対比
前記ア(ウ)と同じ理由により,A16映像とB16−2映像は,同
一であるとも,類似しているともいえない。
(エ)別紙対比表17の「待機映像」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表17
部分と,被告映像対比表17待機映像部分である。
b対比
前記ア(エ)と同じ理由により,本件映画対比表17部分と被告映像
対比表17待機映像部分は,同一であるとも,類似しているともいえ
ない。
(オ)別紙対比表17の「大ヤマト砲発射確定バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表17
部分と,被告映像対比表17大ヤマト砲発射部分である。
b対比
前記ア(エ)と同じ理由により,本件映画対比表17部分と被告映像
対比表17大ヤマト砲発射部分は,同一であるとも,類似していると
もいえない。
(カ)別紙対比表18の「待機映像」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画のうちの別
紙A18の静止画に対応する動画映像部分(以下「A18映像」とい
う。)と,被告パチスロ映像のうちの別紙B18−1の静止画に対応
する動画映像部分(以下「B18−1映像」という。)である。
b対比
前記ア(カ)と同じ理由により,A18映像とB18−1映像は,同
一であるとも,類似しているともいえない。
(キ)別紙対比表18の「大ヤマト砲発射確定バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,A18映像と,被告
パチスロ映像のうちの別紙B18−2の静止画に対応する動画映像部
分(以下「B18−2映像」という。)である。
b対比
前記ア(キ)と同じ理由により,A18映像とB18−2映像は,同
一であるとも,類似しているともいえない。
(ク)別紙対比表19の「待機映像」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画のうちの別
紙A19−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A19−1映
像」という。)と,被告パチスロ映像のうちの別紙B19−1の静止
画に対応する動画映像部分(以下「B19−1映像」という。)であ
る。
b対比
(a)A19−1映像においては,艦体の斜め前方の離れた視点から,
艦体全体が描かれるとともに,青白色の光線が艦首部の黄白色の光
の球体を打ち破って,これと直交する方向に繰り返し短い周期で強
弱をつけて発射される状態が描かれている。
これに対して,B19−1映像においては,そもそも艦体が描か
れておらず,画面に対峙する遊技者の視点から,画面中央に正面を
向いて大きく描かれた艦首の発射口から,5本の白色光線が相互に
絡まりながら,画面全体を,一方的に白色光で満たした後,原作者
名等が表示される。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成を異にしている。
(b)A19−1映像においては,艦体の画面左側の対象物を,光線
で攻撃しているとの印象であるのに対し,B19−1映像において
は,発射口に対峙する看者に向けて光線が発射され,画面全体が
真っ白になっていくことにより,看者に命中したとの印象を与える
ものである。
したがって,上記両映像は,映像から受ける印象を異にしている。
(c)A19−1映像においては,暖色系の黄白色の光の球体の中心
部を突き破るように,寒色系の青白色の光線が,短い周期で強弱を
つけて,繰り返し発射される状態が描かれており,寒暖や強弱とい
う正反対の表現を組み合わせて表現がされている。
これに対して,B19−1映像においては,5本の白色光線が,
相互に絡まりながら,画面全体を白色光で満たす状態が描かれてお
り,一方的に発射される様子が表現されている。
したがって,上記両映像は,光線の表現態様を基本的に異にして
いる。
(d)A19−1映像においては,発射された光線が,攻撃対象物へ
向かって一直線に進み,命中した状態が描かれており,対象物を攻
撃する武器として描かれている。
これに対して,B19−1映像においては,大ヤマト砲の発射は,
原作者名等を表示する前段階として,画面を白色光で満たす(ホワ
イトアウトさせる。)ための画面切り換え手段として描かれている。
したがって,上記両映像は,映像における光線の役割及び位置付
けを異にしている。
(e)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論は,前記ア(ク)で主張したとおりである。
(ケ)別紙対比表19の「大ヤマト砲発射確定バージョン」の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画のうちの別
紙A19−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A19−2映
像」という。)と,被告パチスロ映像のうちの別紙B19−2の静止
画に対応する動画映像部分(以下「B19−2映像」という。)であ
る。
b対比
(a)A19−2映像においては,艦体全体を描き,青白色の光線が
艦首部の黄白色の光の球体を打ち破って,これと直交する方向に繰
り返し短い周期で強弱をつけて発射される状態が描かれている。
これに対して,B19−2映像においては,艦体は基本的には描
かれておらず,画面のほぼ全体に,5本の光線が相互に絡まった光
線の束が画面斜め方向に流れる状態が描かれている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的構成を異にしている。
(b)A19−2映像においては,収縮した黄白色の光の球体を,青
白色の光線が突き破った上で,繰り返し短い周期で,強弱をつけて
発射される状態が描かれており,一旦状態(光の球体の形成,ON
発射後の強の状態)になったものが,再び状態(光の球体がOFF
突き破られる,発射後の弱の状態)になることが表現されている。
これに対して,B19−2映像においては,放射状に拡大した5
本の太い白色の光線が相互に絡まって,更に太い光線の束となって,
うねりながら発射し続けられることが描かれており,一旦状態ON
となったものは,その後に状態となることなく表現されていOFF
る。
また,A19−2映像においては,光の球体を暖色系の黄白色,
突き破って発射される光線を寒色系の青白色とし,光の寒暖のコン
トラストを強調して描かれているのに対して,B19−2映像にお
いては,光線はすべて黄白色で統一されて描かれている。
したがって,上記両映像は,光線の表現態様を基本的に異にして
いる。
(c)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論は,前記ア(ケ)で主張したとおりである。
(コ)別紙対比表20の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表20
部分と,被告映像対比表20部分である。
b対比
(a)本件映画対比表20部分においては,主砲の砲身の先端部分の
みが,発射口を強調した態様で,画面下半分に薄暗く描かれている
ところ,各砲身が,画面中央奥に薄暗く描かれた艦橋の前方を横切
りながら,上方に大きく立ち上がり,左側に3本,右側に3本の各
砲身の一部が,左右対称かつ画面全体にわたって配置されるように
移動していく様子が描かれている。これに対して,被告映像対比表
20部分においては,画面右奥に艦橋全体が明るく描かれ,その左
側に,砲身のみならず砲台を含む1基の砲塔全体が,光のコントラ
ストを強調して画面中央に描かれており,この砲身が艦橋を横切る
ことなく,わずかに上方に立ち上がるように移動する様子が描かれ
ている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成を異にしてい
る。
(b)本件映画対比表20部分においては,全体として光を強調する
ことなく,同系色で薄暗く目立たない態様で描かれているとの印象
を受けるのに対し,被告映像対比表20部分においては,全体とし
て光のコントラストを強調した態様で描かれているとの印象を受け
る。
したがって,上記両映像は,映像から受ける印象を基本的に異に
している。
(c)本件映画対比表20部分においては,2基の主砲の,砲身全体
ではなく,一部のみが描かれており,艦橋を挟んでほぼ左右均等に
薄暗く描かれているのに対して,被告映像対比表20部分において
は,砲塔,砲身を含め,1基の主砲全体を画面中央に大きく描き,
その後方にもう1基の主砲を小さく描くことで,前方の主砲をより
強調しており,また,光を受けている部分とそうでない部分とで光
の明暗のコントラストを強調して描き分けている。
また,本件映画対比表20部分においては,最初は,2基の主砲
の各砲身の大きさはばらばらであったが,砲身が艦橋前方を横切っ
て大きく上方に移動することにより,ほぼ同程度の大きさに描かれ,
2基の主砲が,艦橋を挟んでほぼ左右対称な位置に移動し,画面全
体に配置される状態が描かれているのに対して,被告映像対比表2
0部分においては,画面中央に描かれた1基の主砲の砲身が,若干
上方に移動する様子が描かれているにすぎない。
さらに,本件映画対比表20部分においては,艦体正面から艦橋
と砲身の一部のみが描かれているため,艦橋と主砲との距離感を認
識できないのに対して,被告映像対比表20部分においては,艦体
略左斜め前方から,主砲の後方に艦橋が描かれるとともに,主砲と
艦橋との間の甲板上の物体が描かれているため,艦橋と主砲との距
離感を認識できる表現となっている。
したがって,上記両映像は,主砲及び艦橋の表現態様を基本的に
異にしている。
(d)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が,上記両映像において共通していると主張している部分
は,各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること,それらが上方に
立ち上がるという程度の概括的事項であるにすぎない。本件におい
ては,これらが具体的にどのように表現されているのかが,本来検
討すべき対象というべきであり,このような観点から両映像を対比
した場合には,両映像は,上記bのとおり,基本的に相違している
ものであり,同一であるとも,類似しているともいえない。
(b)また,原告が指摘している上記両映像の共通点については,先
行する映画,アニメーション作品中において,ごく一般的に表現さ
れていたものにすぎず,両映像を対比するに当たって,格別重要な
部分であるとはいえない。
すなわち,全体として暗い画面中で,相対的に浮き出すように砲
身が描かれていること,及び各砲塔に3門ずつの砲身が描かれてい
ることについては,乙第52号証(2,3頁),乙第53号証,乙
第72号証(4ないし6頁)に,砲身が上方に立ち上がる様子が仰
角で描かれていることについては,乙第72号証(7ないし9頁)
に,薄暗い中で仰角の主砲の威圧感と力強さが描かれていることは,
乙第41号証(6頁)に,それぞれ表現されていた。
(サ)別紙対比表21の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表21
部分と,被告映像対比表21部分である。
b対比
(a)本件映画対比表21部分においては,主砲の砲台部分及び砲身
の根本の部分が艦首に隠れた状態にあり,砲身の一部分のみが,艦
体正面からの視点で,艦首及び艦橋の一部とともに薄暗く描かれて
いる。
これに対して,被告映像対比表21部分においては,砲身の一部
分のみではなく,砲身及び砲台を含む砲塔全体が画面中央に大きく,
光り輝く艦橋及び甲板とともに,艦体の左斜め前方からの視点で描
かれている。
また,本件映画対比表21部分においては,主砲から球形の光が
広がり,その後に左右交互に,長い光線が左右斜め上方に発射され
る状態が描かれている。
これに対して,被告映像対比表21部分においては,光線が左右
交互に発射されることはなく,前方中央の主砲から,上方に光線が
発射される様子が,発射口を強調して描かれている。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成を異にしている。
(b)本件映画対比表21部分においては,左右の主砲から交互に光
線が発射される状態が描かれているのに対して,被告映像対比表2
1部分においては,前側の主砲から光線が発射される状態のみが描
かれている。
また,本件映画対比表21部分においては,発射に先立ち,砲身
から暖色系の黄白色を帯びた球形の光が広がり,その後に3本の砲
身からそれぞれ黄白色の光線が発射されるのに対して,被告映像対
比表21部分においては,球形の光が形成されることはなく,画面
の約半分を覆う巨大な光が炸裂すると同時に,3本の砲身から寒色
系の青白色の光線が発射されている。
さらに,被告映像対比表21部分においては,光線を発射する主
砲に近接した視点から,画面手前に向かって発射される光線が描か
れているため,本件映画対比表21部分とは異なり,看者の頭上を
発射された光線が横切っていくかのような,臨場感溢れる印象を受
ける映像となっている。
したがって,上記両映像は,光線発射時の表現態様を異にしてお
り,映像から受ける印象をも異にしている。
(c)本件映画対比表21部分においては,艦体外の艦首前方の位置
から描かれているため,艦橋等に比較して,主砲が特に強調されて
いるとの印象を受けないのに対して,被告映像対比表21部分にお
いては,艦体左斜め前方の主砲に近接した位置から描かれているた
め,艦橋等に比較して,画面中央の主砲が大きく強調されていると
の印象を受ける。
また,本件映画対比表21部分においては,砲身の発射口からは
光線が発射され,看者の注意を惹くように描かれているが,艦橋は
終始薄暗く,看者の注意を惹くようには描かれていない。これに対
して,被告映像対比表21部分においては,発射される光線と同様
に,艦橋の窓も光り輝いて描かれているため,艦橋も光線と同様に,
看者の注意を惹くように描かれている。
また,本件映画対比表21部分においては,艦体正面から艦橋と
砲身のみが,両方ともに同様に薄暗く描かれているため,艦橋と主
砲との距離感を認識することができない。
これに対して,被告映像対比表21部分においては,艦体左斜め
前方から,主砲とともに,その後方に艦橋が描かれており,主砲と
艦橋との間の甲板上の物体が描かれているため,艦橋と主砲との距
離感を認識できる表現となっている。
したがって,上記両映像は,主砲及び艦橋の表現態様を異にして
いる。
(d)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c(a)原告が上記両映像に共通していると主張している部分は,暗い
画面の中に3門の砲身が描かれており,砲身から青白色の輝度の高
い光線が発射され,明るく照らされるという程度の概括的事項にす
ぎない。本件においては,これが具体的にどのように表現されてい
るのかが,本来検討すべき対象というべきであり,このような観点
から上記両映像を対比した場合には,上記bのとおり,両映像は,
映像の基本的な構成,発射時の表現態様,主砲及び艦橋の表現態様
において,基本的に異なっており,相互に同一であるとも,類似し
ているともいえない。
(b)原告が上記両映像の共通点として指摘している点については,
先行する漫画,映画,アニメーション作品中において,ごく一般的
に表現されていたものにすぎず,A19−2映像と被告映像を対比
するに当たって,格別重要な部分であるとはいえない。
すなわち,全体として暗い画面中で相対的に浮き出すように砲身
が描かれていること,各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること,
砲身が仰角で描かれていることについては,乙第41号証(6頁)
乙第52号証(2,3頁),乙第53号証,乙第72号証(4ない
し6頁)に,砲身から輝度の高い光線が3条発射される様子が描か
れていることについては,乙第37号証の1(3,4頁),乙第4
1号証(2,3頁)に,発射時に爆焔が描かれていること,発射時
の光線によって,艦体本体が一瞬明るく照らされる様子が描かれて
いることについては,乙第52号証(4頁)に,それぞれ表現され
ていた。
(シ)別紙対比表22の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表22
部分と,被告パチスロ映像のうちの別紙B22の静止画に対応する動
画映像部分(以下「B22映像」という。)である。
b対比
(a)本件映画対比表22部分においては,艦体外の固定的な視点で,
艦体上に設置された多数の薄暗く描かれた小砲塔から,爆焔等を伴
うことなく,暖色系の地味な橙色の細い光線を,順次淡々と発射し
ている状態を描いているのに対して,B22映像においては,画面
の下半分に小砲塔1基をコントラストを強調しつつ大きく描き,パ
チンコ機の遊技者側からの視点で,当該小砲塔が大きな爆焔を伴い
ながら,寒色系の青白色の太い光線を発射している状態が描かれて
いる。
したがって,上記両映像は,画面構成,光線発射の態様,色調,
明暗及び視点のいずれの点においても,映像の基本的な構成を異に
し,その結果として,本件映画対比表22部分からは,発射シーン
が客観的に描かれているとの印象を受けるのに対して,B22映像
からは,パチンコ機の遊技者自身が参加して,画面上に大きく描か
れた小砲塔から光線を発射しているとの印象を受けるもので,映像
から受ける印象をも異にしている。
(b)本件映画対比表22部分においては,艦体外の固定的な視点か
ら,多数の小砲塔が同一方向にゆっくり旋回しながら(具体的には,
光線発射の方向が,左上方(1コマ目)から真上(4コマ目)まで
の約45度旋回するのに,からまでの53フ01:13:28:1101:13:30:04
レーム(約2秒)を要している。),光線を発射している状態が描
かれており,スピード感に乏しい映像となっているのに対して,B
22映像においては,画面の下半部に大きく描かれた小砲塔が,高
速で旋回しながら(具体的には,光線発射の方向が,左上方(1コ
マ目)から約45度旋回するのに,からまで01:01:02:0301:01:02:11
の8フレーム(約0.27秒)しか要しておらず,小砲塔が,本件
映画対比表22部分の約7倍の速度で旋回していることが明らかで
ある。),光線を発射している状態が描かれており,スピード感溢
れる映像となっている。
また,発射された光線自体についてみた場合にも,本件映画対比
表22部分においては,画面のおおよそ縦幅分の4分の1相当を移
動するのに,10フレーム(約0.3秒)を要しており,これを,
画面の縦幅分を移動する場合に換算すると,40フレーム(約1.
3秒)を要することになるのに対して,B22映像においては,画
面の縦幅分を移動するのに10フレーム(約0.3秒)しか要して
いない。
したがって,上記両映像者は,映像のスピード感を異にしており,
看者に与える印象が基本的に異なっている。
(c)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c(a)原告が上記両映像に共通していると主張している内容は,小砲
がドーム型に描かれていること,ドーム型の小砲塔から明るい破線
が発射されることという程度の概括的事項にすぎない。本件におい
ては,これらが具体的にどのように表現されているのかが,本来検
討すべき対象というべきであるが,このような観点から両映像を対
比した場合には,上記bのとおり,両映像は,相互に同一であると
も,類似しているともいえない。
(b)また,原告が指摘している上記両映像の共通点は,先行する漫
画,映画,アニメーション作品等において,ごく一般的に表現され
ていたものにすぎず,両映像を対比するに当たって,格別重要な部
分であるとはいえない。
すなわち,全体として暗い中で,小砲塔が暗灰色に薄暗く浮かび
上がり,明るい映像として活発に動く破線が表現されていることに
ついては,乙第37号証の2,乙第48号証(2頁),乙第50号
証に,小砲塔がドーム型に描かれていることについても,ドーム型
の小砲塔は,艦体において一般的なものであった上,乙第37号証
の2,乙第43号証(4,5頁),乙第54号証ないし56号証に,
小砲塔が回転すること,及びこれに伴って明るい破線が動く様子が
描かれることについては,乙第76号証(7ないし10頁)に,そ
れぞれ表現されていた。
(ス)別紙対比表23の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表23
部分と,被告映像対比表23部分である。
b対比
(a)本件映画対比表23部分においては,艦体が,艦体右斜め前下
方の視点から艦体の丸みを強調して描かれているため,以下に示す
ように,艦体が,奥行きをそれほど感じさせない台形状で表現され
ている。
これに対して,被告映像対比表23部分においては,艦首右斜め
前方の視点から遠近法に忠実に描かれているため,艦体が奥行きを
強く感じさせる三角形状に表現されている。
また,本件映画対比表23部分においては,艦首に対して艦橋が
比較的大きく描かれており,艦首と艦橋がそれほど離れていない態
様にて描かれている。
これに対して,被告映像対比表23部分においては,艦首に対し
て艦橋が極端に小さく描かれており,艦橋が艦首のはるか後方に存
在する態様にて描かれている。
したがって,上記両映像は,艦体の表現態様を異にしている。
(b)本件映画対比表23部分においては,暗青色の背景の中,画面
中央の艦体が徐々に拡大して描かれることで,艦体が画面手前方向
へ航行してくる様子が表現されている。
これに対して,被告映像対比表23部分においては,多数の星が
輝く暗青色の宇宙空間において,画面左奥に星雲,画面中央手前に
艦体がそれぞれ描かれるとともに,惑星が左へ移動することに伴っ
て,艦体側面の明暗が変化する様子が描かれており,艦体が右方向
へ移動している様子が表現されている。
また,本件映画対比表23部分においては,艦体が若干拡大表示
されるだけであるため,低速で航行しているとの印象を受ける。
これに対して,被告映像対比表23部分においては,星や惑星が
次々と画面上を移動するため,艦体が高速で航行しているとの印象
を受ける。
したがって,上記両映像は,航行の表現態様及び映像から受ける
印象を異にしている。
(c)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)また,原告が上記両映像の共通点として指摘している点につい
ては,先行する漫画,アニメーション作品及びプラモデルの外箱等
において,ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず,両映
像を対比するに当たって,格別に重要な部分であるとはいえない。
すなわち,前記ア(サ)c(b)で主張したことに加え,喫水下のバ
ルジが大きくデフォルメされて描かれていることについても,実在
の戦艦等において一般的に採用されていた上に,乙第39号証の1,
乙第44号証の1,乙第72号証(10頁)に,艦体が右舷を見せ
ながら,画面右方向を向いて宇宙空間を航行する様子が,画面の大
半を占めるように描かれていることについては,乙第44号証の1,
乙第74号証(7,9頁),乙第77号証に,艦底部にも艦橋が描
かれていることについても,飛行船においてはごく一般的であった
上に,乙第86ないし88号証に,それぞれ表現されている。
(セ)別紙対比表24の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画のうちの
別紙A24の静止画に対応する動画映像部分(以下「A24映像」
という。)と,被告パチスロ映像のうちの別紙B24の静止画に対
応する動画映像部分(以下「B24映像」という。)である。
b対比
(a)A24映像においては,周囲に何も存在していない宇宙空間を,
薄暗く描かれた艦体のみが航行している場面が,仰角気味の視点で
描かれている。
これに対して,B24映像においては,太陽と艦体との間に存在
する惑星の影に隠れていた艦体が,画面手前側に航行するに従い,
惑星の影を脱して,太陽の光に照らされ,次第に明るく輝きながら
姿を現す場面が,光のコントラストを強調して,俯角の視点で描か
れている。
したがって,上記両映像は,描かれている場面及び映像の基本的
な構成を異にしている。
(b)A24映像においては,艦体の航行速度が,視点からの距離に
関係なく,ほぼ等速で画面上を移動するように描かれている。
これに対して,B24映像においては,艦体の航行速度が,視点
に近づくにつれて画面上を徐々に速くなるように描かれており,よ
り現実に近い表現態様となっている。
したがって,上記両映像は,航行シーンの速度表現の態様を基本
的に異にしている。
(c)A24映像においては,艦体が画面手前に近づいて来たときに,
艦体側面が注視点(看者が画面上で注目する箇所)となるように描
かれている。
これに対して,B24映像においては,艦体が画面手前に近づい
て来たときに,艦橋が注視点となるように描かれている。
したがって,上記両映像は,映像における注視点を異にしている。
(d)A24映像においては,艦体には翼,円盤等がなく,船の形状
そのものとして描かれているのに対して,B24映像においては,
艦体側面前方に巨大な円盤,艦体側面後方に巨大な翼が備わってお
り,飛行物体を想起させる形状として描かれている。
また,A24映像においては,艦体全体が薄暗く描かれており,
細部まで十分認識できないように描かれているのに対して,B24
映像においては,艦橋等の自ら発光している部位のほか,太陽の光
を受けて輝いて描かれており,細部まで十分認識できるように,コ
ントラストを強調して描かれている。
したがって,上記両映像は,艦体の構成及び表現態様を異にして
いる。
(e)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論
(a)原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は,いずれも概
括的事項であるにすぎず,原告指摘の点が具体的にどのように表現
されているかを検討すれば,上記bのとおり,両映像で大きく異な
る。
(b)また,原告が上記両映像の共通点として指摘している点につい
ては,先行する漫画,アニメーション作品及びプラモデルの外箱等
において,ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず,両映
像を対比するに当たって,格別に重要な部分であるとはいえない。
すなわち,前記ア(サ)c(b)で主張したことに加え,主艦橋が3
層で表現されていることについては,既存の戦艦大和を初めとして,
数多くの艦体において,実際に採用されており(乙43。原告自
身も,「宇宙戦艦ヤマト」は,実在していた「旧日本海軍戦艦大和
を改造して建造された」ものであることを認めている。),艦体
が画面右奥から左手前に左舷を見せながら横切る様子が若干仰角気
味に次第に拡大していく映像として描かれていることについては,
乙第41号証(4ないし6頁),乙第94号証,乙第95号証に,
それぞれ表現されている。
(ソ)別紙対比表25の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表25
部分と,被告パチスロ映像のうちの別紙B25の静止画に対応する動
画映像部分(以下「B25映像」という。)である。
b対比
前記ア(サ)と同じ理由により,本件映画対比表25部分とB25映
像は,同一であるとも,類似しているともいえない。
(タ)別紙対比表26の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表26
部分と,被告映像対比表26部分である。
b対比
(a)本件映画対比表26部分と,被告映像対比表26部分では,基
本的構図が異なる。
(b)本件映画対比表26部分は,暗青色や茶系色といった,全体的
に暗い目立たない色調で描かれているのに対して,被告映像対比表
26部分は,発光した青色を基調とした,全体的に明るい色調で描
かれており,上記両映像は全体的な色調を異にしている。
したがって,上記両映像は,基本的構図,色調といった映像の基
本的な構成を異にしている。
(c)本件映画対比表26部分においては,上方パネル,格子を有す
る窓及び床のすべてが,全体的に暗い中に描かれており,また,そ
れぞれの境界を明確に区切って描かれていることから,閉鎖的な室
内にいるような印象を受ける。
これに対して,被告映像対比表26部分においては,上方パネル,
前方パネル及び床のすべてが,青く発光して描かれており,また,
それぞれの境界を明確に区切ることなく一体的に描かれていること
から(前方パネルに格子がないのも区切りなく表現するためであ
る。),全体として広がりのある空間の印象を受ける。
したがって,上記両映像は,上方パネル,前方パネル及び床の表
現態様において異なっており,全体から受ける印象を異にしている。
(d)本件映画対比表26部分における上方パネルは,床に対して大
きく傾斜するように描かれているのに対して,被告映像対比表26
部分における上方パネルは,天井と一体となり,かつ,床と平行に
近い面として描かれており,両映像は,上方パネルの表現態様を異
にしている。
(e)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c原告の主張に対する反論は,前記ア(ソ)で主張したとおりである。
(チ)別紙対比表27の対比
a以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表27
部分と,被告パチスロ映像のうちの別紙B27の静止画に対応する動
画映像部分(以下「B27映像」という。)である。
b対比
(a)本件映画対比表27部分においては,左舷斜め後方の視点から,
艦首,2基の主砲が天体の一部に重なる態様で描かれているのに対
して,B27映像においては,画面中央手前に艦首及び主砲が,岩
石と重なることなく描かれている。
また,本件映画対比表27部分においては,暗青色の背景の中に,
天体が暗灰色に描かれるとともに,艦体が灰青色に暗く描かれ,全
体的に暗い色調で目立たない態様にて描かれているのに対して,B
27映像においては,艦体がメタリック調,かつ,輝いて描かれる
とともに,多数の輝く星が描かれており,全体的に明るい色調でメ
リハリのある態様にて表現されており,全体の色調が異なっている。
また,本件映画対比表27部分においては,艦体が主砲の照準を
天体に合わせる状態が客観的に描かれているとの印象を受けるのに
対して,B27映像では,パチスロ機の遊技者の視点で,画面中央
奥に描かれた天体に対して,遊技者自身が主砲を発射しているとの
印象を受ける。
また,本件映画対比表27部分においては,艦首が天体に大きく
重なるように描かれており,艦体と天体とがかなり接近していると
の印象を受けるのに対して,B27映像においては,艦首が岩石と
重なることなく描かれており,艦体と岩石とが離れているとの印象
を受ける。
したがって,上記両映像は,映像の基本的な構成及び映像から受
ける印象を異にしている。
(b)本件映画対比表27部分においては,3基の砲塔が,砲身のみ
ならず砲台をも含めて描かれているのに対して,B27映像におい
ては,1基の砲塔が,砲台は描かれずに砲身のみが大きく描かれて
おり,その根本の部分には本件映画対比表27部分の砲身には存在
していない放熱カバーを備えている。
また,本件映画対比表27部分においての天体は,下半分が滑ら
かな半球形であり,かつ,上部に多数の構造物が描かれており,天
体都市との印象を受けるのに対して,B27映像においての岩石は,
下半分が大きな凹凸を伴った円錐形であり,かつ,上部には構造物
も描かれておらず,巨大な岩石との印象を受ける。
したがって,両映像は,砲身の構成,攻撃対象物の形状及び印象
を異にしている。
(c)本件映画対比表27部分は,あらかじめ展開の決まった映像で
あり,しかも,主砲が発射される場面は描かれていないのに対して,
B27映像は,あらかじめ展開の決まった映像ではなく,3つの停
止ボタンの操作順序や操作間隔により,光線を発射する砲身の順序
や発射間隔が変化し,遊技者の操作手順により,異なる映像が展開
される。
したがって,両映像は,映像展開を異にしている。
(d)以上の相違からすれば,上記両映像は,同一であるとも,類似
しているともいえない。
c(a)原告が上記両映像の共通点として主張している部分は,艦体が
灰色系統の色彩で表現されていること,半球形の天体に対して艦体
が俯瞰的に描かれており,天体に照準を定めていること等という程
度の概括的事項であるにすぎない。本件においては,これらが具体
的にどのように表現されているのかを検討すべきであり,このよう
な観点から両映像を対比した場合には,両映像は,上記bのとおり,
基本的に相違しているから,同一であるとも,類似しているともい
えない。
なお,原告は,上記両映像は,灰色系統の色彩で表現されている
こと,及び,上部に構築物が描かれている半球形の天体が画面上部
に描かれていることにおいても共通していると主張している。しか
し,B27映像においては,艦体はメタリック調,かつ,輝いて描
かれており,背景とのコントラストを強調して描かれている。また,
B27映像における攻撃対象は,上部に構築物が存在しておらず,
半球形でもない。したがって,原告の上記主張は,B27映像を正
確に捉えた上でのものではなく,失当である。
(b)原告が指摘する上記両映像の共通点は,先行する漫画,映画,
アニメーション作品等において,ごく一般的に表現されていたもの
にすぎず,両映像を対比するに当たって,格別検討すべき重要な部
分であるとはいえない。
すなわち,画面上部に半球形の天体が,下部に艦体前半部が俯瞰
的に描かれていることについては,乙第68号証の4(4頁),乙
第69号証(55頁)に,主砲が3門描かれ,この主砲が天体に照
準を定める様子が描かれていることについては,乙第52号証(4
頁)に,それぞれ表現されていた。
(ツ)別紙対比表28の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,A12映像と,被告
映像対比表28部分である。
b対比
前記ア(タ)と同じ理由により,A12映像と被告映像対比表28部
分は,同一であるとも,類似しているともいえない。
(テ)別紙対比表29の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表29
部分と,被告映像対比表29部分である。
b対比
前記ア(チ)と同じ理由により,本件映画対比表29部分と被告映像
対比表29部分は,同一であるとも,類似しているともいえない。
(ト)別紙対比表30の対比
a対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は,本件映画対比表30
部分と,被告映像対比表30部分である。
b対比
前記ア(ツ)と同じ理由により,本件映画対比表30部分と被告映像
対比表30部分は,同一であるとも,類似しているともいえない。
()原告は,被告製品について,本件映画の著作権の権利行使をすることが4
できるか(争点()エ)について1
(被告ら)
ア乙4合意書4条2項の意味
(ア)原告とP1との間で,平成11年1月25日,乙4合意が締結され
たが,乙4合意書4条2項は,「乙(原告)は,甲(P1)がヤマト作
品に関連する新作の企画を希望する場合,これに全面的に協力する。た
だし,甲は,乙に対し事前に企画内容の詳細を通知し,説明する。」と
定めており,同条項により,原告は,P1が原告に対して,事前に企画
内容を通知して,説明した場合には,P1が作成する,「宇宙戦艦ヤマ
ト」に関する一連の映画(以下「宇宙戦艦ヤマト作品」という。)に関
連する新作について,全面的に協力する義務を負っている。
(イ)これに対して,原告は,乙4号証中の4条2項の条項は,原告とP
1との協力関係を一般的に定めたものにすぎないと主張する。
しかし,同条項は,もともとの原案では,P1が宇宙戦艦ヤマト作品
に関連する新作を作成するに当たって,原告から「同意を得る必要があ
る。」と記載されていたものであって,単なる協力関係を一般的に定め
たとか,精神的,営業政策的観点から作成された取り決めなどとはいえ
ないものであった。ところが,上記条項中の「同意を得る必要があ
る。」の部分が,P1からの要求により削除されて,「説明する。」と
訂正され,宇宙戦艦ヤマト作品に関連する新作に関しては,原告に対す
る事前の説明を行った場合には原告の許諾を必要とするものではない旨
改められた上で,合意がされたものである。
したがって,原告の上記主張は失当である。
イ乙4合意書4条2項が定めている協力義務は,原告がP1に対して,P
1だけでなく,P1から,直接,間接に利用許諾を得た第三者に対しても,
権利行使をしないことを約している内容である。
理由は以下のとおりである。
(ア)原告が,乙4合意書4条2項によりP1に対して負う義務は,宇宙
戦艦ヤマト作品の新作である「大銀河シリーズ大ヤマト零号」(以下
「大ヤマト作品」という。)に関する協力義務であるところ,当該新作
が完成した場合には,それが映像作品であることから,これをP1自身
が上映することよりも,第三者による映画館での上映や放送局を通じて
の放送が行われることが通常であり,また,第三者に対して,別途二次
的利用が許諾されることも少なくないことから,P1の新作は,完成後
に,製作者以外の第三者によって様々な態様で利用されることが,当然
のように予定されていた。
そうすると,乙4合意書4条2項が定めている協力義務は,P1に対
する直接の協力を含んでいることだけでなく,新作完成後の第三者によ
る上映,放送や映像作品としての販売,第三者に対する二次的利DVD
用の許諾に伴う第三者による各種製品の製造,販売等に対しても,著作
権侵害等を理由とする権利行使や,その他の妨害,干渉を行わないこと
を,その内容として当然包含しているというべきである。
(イ)原告が,P1以外の者に対して,乙4合意書4条2項の制約は受け
ないとすると,何のために協力義務を約定したのかが不明となる。
(ウ)乙4合意書4条2項ただし書は,当初,「(原告の)同意を得る必
要がある。」と記載されていたが,「(原告に)通知,説明する。」と
変更され,その上で,乙4合意が合意されたのであるが,P1以外の者
が同条項の制約を受けないとすると,このように乙4合意書の文言を変
更した趣旨も,実質的に没却されてしまう。
(エ)P1は,宇宙戦艦ヤマト作品の新作を自由に制作できる立場と同新
作の完成後の自由な利用を確保するために乙4合意を締結したものであ
るところ,P1以外の者が乙4合意4条2項の制約を受けないとすると,
P1において自由に宇宙戦艦ヤマト作品の新作を制作等できるとの立場
の確保も,実質的に無意味となる。
ウ被告映像の基となった大ヤマト作品の制作については,ベンチャーソフ
ト社がP1に代わって,原告に対して,その旨の説明をしているから,原
告は,大ヤマト作品に対して,本件映画の著作権に基づく権利行使をする
ことはできない。そして,被告らは,大ヤマト作品の利用につき,ベンチ
ャーソフト社から許諾を受け,大ヤマト作品に基づき被告映像を制作した
のであるから,原告は,被告映像に対しても,本件映画の著作権に基づく
権利行使をすることができない。
エさらに,本件映画に登場するキャラクターや艦隊等の絵画の著作権は,
P1に帰属しており,P2に帰属していなかった以上,甲3契約によって,
原告がこれを取得するということもあり得ず,したがって,原告は,本件
映画の著作権に基づき,上記キャラクターや艦隊を使用している被告映像
に対して,権利行使することはできない。
(原告)
ア乙4合意書4条2項の意味
乙4合意書4条2項は,原告とP1との協力関係を一般的に定めたもの
にすぎず,P1に対して,宇宙戦艦ヤマト作品に関連する新作の制作を包
括的に許諾したものではない。
理由は以下のとおりである。
(ア)乙合意書4条2項の文言が,一般的協力条項にすぎないことは,そ
の文言から明らかである。
(イ)乙4合意書4条2項末尾は,当初の「その同意を得る必要がある」
との記載が,「説明する」と修正されたが,これは,原告とP1との良
好な協力関係を定める同条において,対決的で法律的な「同意を得る」
などとする記述がそぐわないからであって,当然のことにすぎない。仮
に,同項を,原告が,P1らに対して,宇宙戦艦ヤマト作品の新作につ
いて,権利行使しないことを約したものと解釈するのであれば,これに
対する相当の対価があって当然であるところ,そのような対価はない。
イまた,乙4合意書は,原告とP1との間の債権債務関係を規定したにす
ぎないのであるから,仮に,乙4合意書4条2項を,原告がP1に対して,
宇宙戦艦ヤマト作品の新作を制作することを包括的に許諾したものと解し
たとしても,被告らは,原告に対して,同条項に基づく権利を有していな
い。
ウしたがって,乙4合意を根拠に,原告が本件映画の著作権に基づき被告
製品に対して権利行使をすることが許されないと解することはできない。
()不競法に基づく請求の可否(争点())について52
(原告)
ア原告表示
(ア)原告は,平成8年12月20日に締結した甲3契約により,P2か
ら,本件映画の著作権のほか,宇宙戦艦ヤマト作品の商品化権を譲り受
け,それ以後,上記商品化権に基づき,宇宙戦艦ヤマト作品の商品化に
関心のある複数の企業に対し,原告表示の使用を許諾して,一定の許諾
料を得る商品化事業を展開してきた。
原告表示は,原告が原告表示の使用を許諾した商品(以下「原告許諾
商品」という。)の商品表示として著名であり,少なくとも周知である。
なお,被告表示1ないし6は,被告映像のうちの一部分の映像である
が,このような映像も商品表示になり得る。
(イ)被告らは,原告表示が,①原告自ら,原告表示を付した商品を製造,
販売していないこと,②原告許諾商品には,原告の出所表示が付されて
いないこと,③原告表示を付した同一種類の商品を,複数の企業が製造,
販売していることを根拠として,その出所として原告を表示していない
旨主張する。
aしかし,原告表示は,原告許諾商品を表示するものであるところ,
この場合,不競法関係規定上の保護法益は,このような意味での商品
表示を付された商品についての市場開拓,育成,その一環としての当
該商品表示の希釈化防止等の事業活動に投下された人員,資本とこれ
による正当な利益であり,このことは,商品を自ら直接製造,販売し
ている場合と何ら選ぶところはない。
したがって,この点に関する被告らの主張は失当である。
bまた,原告表示が,原告の商品表示というためには,原告許諾商品
と原告との関連性が明らかとなっていれば足り,原告許諾商品に原告
自身を具体的に特定するための表示は必要ではない。
しかも,最高裁昭和56年(オ)第1166号同59年5月29日第
三小法廷判決・民集38巻7号920頁(以下「NFL事件判決」と
いう。)が判示するとおり,商品の出所先たる「他人」には,「特定
の表示に関する商品化契約によって結束した同表示の使用許諾者,使
用権者及び再使用権者のグループのように,同表示の持つ出所識別機
能,品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的
のもとに結束しているものと評価することのできるようなグループも
含まれる」ところ,原告が,上記「使用許諾者」に該当することは明
らかである。
したがって,この点に関する被告らの主張は失当である。
c同一種類の商品について,複数の製造,販売者に原告表示の許諾を
していることが,不競法の保護の障害となることはあり得ない。
したがって,この点に関する被告らの主張は失当である。
(ウ)また,被告らは,NFL事件判決を引用して,ライセンス先を1業
種1社と定めること,厳格な商品の品質管理,証紙の添付,広告等の要
件を満たさなければ不競法2条1項1号,2号の「他人」と認定され得
ないとし,原告はこの要件を満たしていないとする。
しかし,上記判決は,これらの点について,経緯的,叙述的に触れて
いるだけであって,これらを規範的に「他人」性の要件として定立して
いるものでないことは,同判決自体から明らかであるから,被告らの上
記主張は失当である。
(エ)被告らは,原告は,原告表示の希釈化防止に何ら努めていないと主
張するが,原告は,原告表示の希釈化防止に努めてきており,被告らの
上記主張は失当である。
イ原告表示の著名性,周知性
(ア)宇宙戦艦ヤマト作品は,昭和49年のテレビ放送及びその後の劇場
公開によって全国民的人気を博した。
具体的には,宇宙戦艦ヤマト作品は,昭和49年から翌50年にかけ
てのテレビ放送によって熱心なファンを獲得し,昭和52年の劇場公開
によって観客動員数230万人を記録して社会現象とまでいわれた空前
のブームを巻き起こした。このブームは,一時的な現象に止まることな
く,後続作品は観客動員数400万人にも達した。こうして,宇宙戦艦
ヤマト作品は,1970年代から80年代にかけて一時代を画する作品
となったが,その後現在に至るも,繰り返しテレビ放映されるなど高い
人気を保っている。
(イ)また,宇宙戦艦ヤマトは,キャラクターとしても,極めて高い知名
度を得ている。特に,社会人男子の間においては,現在も,キャラクタ
ーとしての宇宙戦艦ヤマトは,知名率第2位を誇っているのである。
そして,原告表示は,1980年代後半から宇宙戦艦ヤマト関連商品
であることを表示するものとして継続的かつ独占的に使用されて今日に
至っている。
(ウ)以上より,原告表示は,遅くとも原告が甲3契約を締結した平成8
年12月までには全国的規模で著名性,周知性を獲得し,その後現在に
至るも,これを維持していることが明らかである。
ウ原告表示と被告表示の類似性
(ア)原告表示1と被告表示1及び2との類似性
a原告表示1のうち,「宇宙戦艦」は「ヤマト」を修飾する説明的な
語句であるから,原告表示1の要部は,「ヤマト」の部分である。こ
のことは,宇宙戦艦ヤマト作品中には,「ヤマトよ永遠に」のように,
「宇宙戦艦」という語句を伴わない作品もあるが,そのような作品で
も宇宙戦艦ヤマト作品であることを何人も疑わないことからも明らか
である。
被告表示1,2の「大」の文字は,それ自体は一般的形容詞にすぎ
ない。また,被告表示1の「2」の記号は,それ自体は単なる序数字
にすぎず,被告三共が被告パチンコゲーム機に先行して製造,販売し
たパチンコゲーム機「大ヤマト」との識別のための記号にすぎない。
したがって,被告表示1,2において遊技者ないし需要者の注意を特
に惹くのは,「ヤマト」の部分であって,これが要部である。
そこで,原告表示1と被告表示1,2を比較するに,被告表示1,
2の「ヤマト」の表示は,原告表示1の「ヤマト」の表示と同様にカ
タカナ書きをするのみでなく,書体も墨書風の書体である上,「ヤ」
と「ト」が大きく「マ」が小さく表記され,「マ」が「ヤ」と「ト」
の中間に嵌まり込む配置をとっており,原告表示1とその形態も類似
している。また,この「ヤマト」は,明らかに宇宙戦艦ヤマト作品を
想起させるものであって,観念において,原告表示1と同一である。
したがって,被告表示1,2のロゴマークは,全体としても,原告
表示1のロゴマークと類似している。
b被告らは,「ヤマト」のカタカナ表記が多種多様に使用されている
として具体例を挙げる。
しかし,被告らが挙げる具体例の内,「ヤマト車検」,「ヤマト査
定」,「ヤマトと音頭の瀬戸」(乙13の1,13の2,13の5)
以外のものはいずれも「ヤマト」の字体,表記態様が異なっている。
他方,上記の3つの表記は,「マ」が相対的に小さく「ヤ」,「ト」
の中にはめ込まれている点において原告表示1に類似しているところ,
これらは,いずれも宇宙戦艦ヤマトの艦体類似のイラストを伴ってい
るか(乙13の2,13の5)又はこのような表示を使用している業
者の用いている表示(乙13の1)である。このことは,すなわち,
原告表示1の「ヤマト」の表示が一般的な表示ではなく,逆に,宇宙
戦艦ヤマト作品との関連性において使用するものとの一般的認識があ
ることを示すものであり,つまり,この「ヤマト」の表示が要部であ
ることを明らかに示しているのである。
(イ)原告表示2と被告表示3ないし8との類似性
a被告表示3ないし8において,遊技者ないし需要者の注意を特に惹
く点は,艦首部に先端上端円形切れこみと楕円形の巨大な発射口を備
えていること,艦首部が大きくデフォルメされていること,艦尾に放
射状の尾翼とロケット型噴射口を備えていること,及び全体として旧
日本海軍戦艦大和をモデルとしていることであり,これらが被告表示
3ないし8の要部である。
しかるに,被告表示3ないし8は,原告表示2と上記の要部につい
て類似している。
また,被告表示3ないし8の艦体も「ヤマト」の称呼を有しており,
この称呼は明らかに宇宙戦艦ヤマト作品を想起させるものであって,
観念において,原告表示2と同一である。
したがって,被告表示3ないし8は,全体としても,原告表示2と
類似している。
b(a)被告らは,原告表示2()と被告表示3,4,7,8とは,①1
艦体が,巨大な円盤と巨大な翼を伴っているか否か,②艦首発射口
が,黄金色に輝いているか否か,また,花びら状の蓋で覆われてい
るか否かで異なり,これにより艦体の全体構成,印象が異なること
を挙げる。
しかし,上記aの共通点に比して,上記相違点は,非本質的な相
違にすぎない。しかも,被告表示8は,巨大な円盤と巨大な翼が他
のものによってほとんど覆われていて目立たず,その他の被告表示
も,円盤及び翼は目立った存在ではない。
したがって,被告らの上記主張は失当である。
(b)被告らは,原告表示2()と被告表示5,6は,①艦体側面が2
表示されているか否か,②尾部の表示の態様の点で,全体構成,印
象が異なる旨主張する。
しかし,上記相違点は,前記aの共通点に比較すれば,非本質的
なものにすぎない。
したがって,被告らの上記主張は失当である。
エ被告許諾商品との混同
被告商品は,その識別上の本質的要素として,宇宙戦艦ヤマト作品との
関連性を用い,そのために原告表示に類似する表示を随所に使用している。
しかも,その商品識別のために「ヤマト」という称呼を用い,また,「宇
宙戦艦ヤマト」の主題歌,主題曲そのものを流しており,さらに,液晶画
面上にも,「西暦3199年・・・」などの宇宙戦艦ヤマト作品の設定を
想起させるテロップを流している。
その結果として,被告商品は,遊技者ないし需要者の間において,宇宙
戦艦ヤマト作品の関連作品であると誤認されており,遊技者ないし需要者
の間には,原告許諾商品と被告商品との混同が生じている。
(被告ら)
原告は,以下の理由から,不競法に基づき,被告商品について,損害賠償
請求をすることはできない。
ア原告表示
原告表示は,宇宙戦艦ヤマト作品の映像中から特定の映像を抽出したも
のであるところ,映像作品において,再生途中に一時的に登場することが
あるにすぎない特定の映像を,当該作品の商品表示であるということはで
きないから,原告表示は,商品等表示といえない。
イ原告表示の出所
原告表示は,以下の理由から,その出所として原告を示すものというこ
とはできない。
(ア)原告は,宇宙戦艦ヤマト作品の著作権者として,第三者に対して,
宇宙戦艦ヤマト作品について利用許諾を行うことはあるが,宇宙戦艦ヤ
マト作品を複製してビデオテープ又はとして販売することも,原DVD
告表示を付して玩具や書籍等を販売することについても,直接何ら関与
していない。
(イ)原告表示の出所が原告であると認識されるためには,原告表示の出
所が原告であることを当該商品上において客観的に認識可能でなくては
ならない。
原告許諾商品には,原告の名称や当該商品が原告の許諾商品であるこ
とを示す表示はない。他方で,原告から利用許諾を受けている第三者は,
自己の商品上に自己の出所を示す表示を積極的に付している。
したがって,需要者としては,原告表示が付された商品を一見した場
合に,これらの商品が,原告表示の使用を許諾された企業の商品である
と理解するにすぎず,原告の商品であるとは何ら認識しない。
(ウ)原告は,原告表示を複数の企業に許諾し,複数の企業が,原告表示
を付して商品を製造,販売している。
そうすると,原告表示を付した同一種類の商品が,それぞれ複数の企
業から製造,販売されていることになるから,これらの個別の商品にお
いて,原告表示により個別の出所を特定することはできない。
(エ)NFL事件判決は,許諾元企業が許諾先企業に対して表示の使用許
諾をなすに際して,①ライセンス先を一業種一社と定めていること,②
ライセンシーはライセンサーによる商品の厳格な品質管理に服すること,
③ライセンシーの商品上には,ライセンサーの商号及び許諾商品である
旨を表示した証紙が貼付されること,④ライセンシーは商品化事業に携
わる者であることにつき積極的に広告を行うこと等の条件が課されてい
る場合に,初めて「商品化契約によって結束した同表示の使用許諾者,
使用権者,再使用権者のグループ」が,不競法所定の「他人」となり得
ることを判示している。
(オ)原告は,原告表示の希釈化防止に何ら努めていない。
ウ原告表示と被告表示の類似性
(ア)原告表示1と被告表示1及び2との類似性
「宇宙戦艦ヤマト」は,実在の「戦艦大和」を改造したものであるか
ら,原告表示1の「宇宙戦艦ヤマト」も,実在の「戦艦大和」に由来し,
「宇宙戦艦」の漢字表記部分の「大和」を,カタカナ表記の「ヤマト」
に変更して,「戦艦」の文字の冒頭に「宇宙」の2文字を付加したこと
により構成されているものである。
また,これまで数多くの企業が,「ヤマト」という語句を社名やサー
ビス名等として使用してきており,原告のみがその使用を独占できるも
のではない。
したがって,原告表示は,全体として一連一体のものとして認識する
ことが相当であり,その一部である「戦艦ヤマト」や「ヤマト」が要部
となることは,基本的にはないと解することが相当である。
一方,被告表示1,2の「大ヤマト」は,4文字のみから成る名称で
あり,全体が一連一体の名称である。
そこで,原告表示1と被告表示1,2を対比すると,両映像は,明ら
かに外観において類似しておらず,また,称呼,観念においても類似し
ているとはいえない。
(イ)原告表示2()と被告表示3,4,7,8との類似性1
被告表示3,4,8の艦体には,巨大な円盤と巨大な翼が左右の弦側
に設けられているが,原告表示2()の艦体には,これらが艦体に備え1
られておらず,艦体の基本的な構成を異にしている。
また,被告表示3,4,7,8では,艦首前方の発射口の部分が黄金
色に輝いているか,又は花びら状の蓋で覆われているが,原告表示2
()の艦体は,当該発射口の部分は暗黒のままである。1
したがって,原告表示2()と被告表示3ないし8とは,艦体の全体1
構成においても,また,これから受ける印象においても,基本的に異な
り,類似していない。
(ウ)原告表示2()と被告表示5,6との類似性2
被告表示5,6は,真後ろから見た艦体が描かれているだけであり,
艦体の側面が全く描かれておらず,左斜め後方から艦体左舷も含めて描
かれている原告表示2()とは,全体の構成も,印象も大きく異なって2
おり,また,被告表示5,6では,最後尾のメインエンジンの大きな噴
射口に接する周辺部に,相互に90度の角度をなす4つの補助エンジン
の噴射口が描かれており,これら4つの補助エンジンが存在する部分か
ら,4本の尾翼が相互に90度の角度で放射状に延びているのに対して,
原告表示2()では,メインエンジンの大きな噴射口の真下に,2つの2
補助エンジンの小さな噴射口が描かれているだけであり,尾翼について
も,相互に120度の角度で開いた3本が備えられているだけであり,
上記2つの小さな噴射口が存在している位置とは全く異なる位置から外
側に延びている。
したがって,原告表示2()と被告表示5,6とは,全体の構成にお2
いても,これから受ける印象についても大きく異なり,類似していない。
エ小括
原告表示は,前記イ,ウで主張したように,その出所として原告を示す
ものとは認められず,また,原告表示と被告表示とは類似していないから,
原告許諾商品と被告商品との間に混同も生じない。
オ権利行使をしないことの合意
また,原告は,前記()で主張したように,乙4合意書により,P1に3
対して,事前の通知,説明がなされた場合には,宇宙戦艦ヤマト作品に関
連する新作の作品に対して,全面的に協力し,宇宙戦艦ヤマト作品の権利
行使をしないことを合意した。
したがって,原告は,P1が関与して作成された大ヤマト作品につき利
用許諾を受けている被告らに対して,著作権のみならず,不競法に基づく
請求も行うことはできない。
()損害額(争点())について63
(原告)
ア被告パチンコゲーム機による損害
被告三共は,既に被告パチンコゲーム機を,少なくとも20万台,製造,
販売している。
被告パチンコゲーム機の1台当りの販売価格は,20万円を下らない。
被告パチンコゲーム機に対する著作物利用許諾料は,販売価格の5パー
セントが相当であるから,被告パチンコゲーム機に対する著作物利用許諾
料は,少なくとも1台当たり1万円を下らない。
したがって,被告三共が被告パチンコゲーム機を製造,販売することに
より,原告が被った著作物利用許諾料相当損害額合計は,20億円を下ら
ない(著作権法114条3項。予備的に,不競法5条3項1号)。
原告は,そのうち,10億円を請求する。
イ被告パチスロゲーム機による損害
被告ビスティは,既に被告パチスロゲーム機を,少なくとも1万台,製
造し,被告フィールズは,被告パチスロゲーム機を,同数販売し,また,
被告三共は,被告パチスロゲーム機の侵害映像を制作して被告ビスティに
その使用を許した。
被告パチスロゲーム機の1台当りの販売価格は,38万円を下らない。
被告パチスロゲーム機に対する著作物利用許諾料は,販売価格の5パー
セントが相当であるから,被告パチスロゲーム機に対する著作物利用許諾
料は,少なくとも台当たり1万9000円を下らない。1
したがって,被告らの上記の行為によって原告が被った著作物利用許諾
料相当損害額合計は,1億9000万円を下らない(著作権法114条3
項。予備的に,不競法5条3項1号)。
原告は,そのうち,1億円を請求する。
(被告ら)
否認する。
第3当裁判所の判断
1P2は,本件映画の映画製作者として,著作権法29条1項に基づき,本件
映画の著作権を取得したか(争点()ア)について1
原告は,本件映画には,著作権法29条1項の映画製作者と参加約束が存在
することを前提として,本件映画の映画製作者として本件映画の著作権を取得
したP2から,甲3契約に基づき,本件映画の著作権の移転を受けた旨主張す
るのに対し,被告らは,本件映画の製作者は,P2ではなく,オフィス・アカ
デミー又はウエスト・ケープであり,原告は,本件映画の著作権を取得してい
ない旨主張するので,以下,P2が本件映画の映画製作者であったか否かにつ
いて検討する。
()本件映画の製作の経緯1
証拠(甲3,4,37ないし39)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の
各事実が認められ,これに反する証拠はない。
ア宇宙戦艦ヤマト作品について
(ア)本件映画1について
本件映画1は,全26話のテレビ放送用アニメーションシリーズであ
り,昭和49年10月から昭和50年3月まで,よみうりテレビ系列の
全国ネットでテレビ放送された。
本件映画1の企画の立案,企画書の作成,スタッフの人選,及びテレ
ビ放映の実現についてのテレビ局との交渉は,P2が行った。また,本
件映画の監督は,映画における表示では補助参加人P1とされていたが,
その制作に当たっての実質的な監督業務は,P2が行った。
(イ)本件映画1以外の宇宙戦艦ヤマト作品について
本件映画1のテレビにおける上記放送の視聴率は低迷したが,熱心な
漫画ファンやSFファンには,高く評価され,シリーズの放送終了後,
次第にその魅力が広く伝わるようになり,人気が出てきたため,本件映
画1に基づいて劇場用の「宇宙戦艦ヤマト」が製作された(昭和52年
8月6日製作)。同映画は,昭和52年8月に劇場公開され,観客動員
数が約230万人,興行収入が約21億円に達し,興行的に大きな成功
を収めたため,劇場用映画である本件映画2が製作され(昭和53年8
月5日製作),東映洋画系劇場で,昭和53年8月に劇場公開されたが,
同映画も,観客動員数が約400万人,興行収入が約43億円に達し,
興行的に更なる成功を収めた。そして,同年10月14日には,テレビ
用アニメである本件映画3が製作され,同月から昭和54年4月まで,
テレビ放送された。さらに,同年7月には,本件映画3の続編として,
テレビ用アニメの「宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ち」がテレビ放送さ
れ,昭和55年8月には,劇場用の「ヤマトよ永遠に」が劇場公開され,
その観客動員数は約220万人に達し,興行収入として約25億円をあ
げた。その後,同年10月から昭和56年4月までの間,テレビ用アニ
メの本件映画4がテレビ放送され,昭和58年3月には,劇場用の「宇
宙戦艦ヤマト完結編」が劇場公開され,その観客動員数は約160万
人に達し,興行収入として約21億円をあげた。
イ甲3契約書の記載
原告,P2,ウエスト・ケープ及びボイジャーエンターテインメント
との間で,平成8年12月20日,甲3契約が締結されたが,甲3契約
書の内容は後記2のとおりであり,同契約書には,譲渡の対象権利であ
る「対象作品」を記載した「別紙(一)」が添付されている。その別紙
(一)は,「A項:現存作品」,「B項:将来作品」,「制作年月日」,
「製作者名」,「著作者名」,「原作者名」,「著作権者」及び「利用
の制限」の各欄のある表となっており,「A項:現存作品」欄には,3
9作品の作品名が記載され(この39作品を以下「甲3契約対象作品」
という。),本件映画もそこに含まれている。そして,本件映画に対応
する「製作者名」欄には,「オフィス・アカデミー」,「著作権者」欄
には,「P2」との各記載がある。なお,甲3契約書のウエスト・ケー
プの記名捺印欄には,代表取締役としてP2の記載がある。
()以上の事実を前提に判断する。2
ア著作権法2条1項10号は,映画製作者について,「映画の製作に発意
と責任を有する者」と規定しているところ,同規定は,映画の製作には,
通常,相当な製作費が必要となり,映画製作が企業活動として行われるこ
とが一般的であることを前提としているものと解されることから,映画製
作者とは,自己の責任と危険において映画を製作する者を指すと解するの
が相当である。そして,映画の製作は,企画,資金調達,制作,スタッフ
等の雇入れ,スケジュール管理,プロモーションや宣伝活動,配給等の複
合的な活動から構成され,映画を製作しようとする者は,映画製作のため
に様々な契約を締結する必要が生じ,その契約により,多様な法律上の権
利を取得し,また,法律上の義務を負担する。したがって,自己の責任と
危険において製作する主体を判断するに当たっては,これらの活動を実施
する際に締結された契約により生じた,法律上の権利,義務の主体が誰で
あるかが重要な要素となる。
そこで,検討するに,前記()で認定したとおり,P2は,本件映画11
の制作を企画し,スタッフの人選やテレビ局とのテレビ放映についての交
渉を行っているが,本件証拠中には,上記スタッフやテレビ局と契約を締
結した主体がP2であったと認めるに足る証拠はない。また,本件映画1
のための資金の調達についても,本件証拠上,P2が自己の名義で資金調
達をしたものと認めるに足りない。
かえって,甲3契約書に添付された「別紙(一)」の,本件映画1の「製
作者」欄には,前記()のとおり,オフィス・アカデミーの社名が記載さ1
れているところ,P2がP1P2訴訟において提出した陳述書(甲38)
には,「映画の著作物の“製作”というのは“作品の制作”実務のことだ
けをいうのではなく,企画制作を行って出来上がった作品の上映される劇
場の確保等配給,又は,テレビの放映される番組の決定等『営業』,“制
作費”“宣伝費”“一般管理費”等を含む『資金の負担』,『損益の責
任』を持って『作品の制作』を行うことをいうのであります。これを“映
画会社”,“テレビ局”に所属をして行うのではなく,私のように“個人
の責任”,“個人の会社”に於いて行った場合に,“製作者”と言われる
のであって,」と記載されており(43頁),同記載によれば,P2は,
映画製作者の法的意味を十分に認識した上で,「制作」と「製作」を明確
に区別して使用していることが認められることから,P2は,上記別紙
(一)の「製作者」は「映画製作者」を意味すること,したがって,甲3契
約締結に当たっては,本件映画1の映画製作者は,オフィス・アカデミー
であると認識していたことが認められる。
なお,上記の別紙(一)の,本件映画1の「著作権者」欄には,P2の名
前が記載されているが,例えば,P2が映画製作者であるオフィス・アカ
デミーから,本件映画1の著作権の譲渡を受けた場合もあり得るから,上
記「著作権者」欄の記載があるからといって,上記別紙(一)の「製作者」
を映画製作者を意味すると解することが必ずしも不合理ということはでき
ない。
したがって,P2が本件映画1の映画製作者であると認めることはでき
ない。
また,本件映画2ないし4については,その製作の経緯についての証拠
が全く提出されていない。しかも,本件映画2及び3については,本件映
画1と同様,甲3契約書に添付された,上記別紙(一)の本件映画2及び3
の「製作者」欄にオフィス・アカデミーの社名が記載され,本件映画4に
ついても,上記「製作者」欄にウエスト・ケープの社名が記載されている
ことからすれば,P2は,甲3契約締結に当たり,本件映画2ないし4の
映画製作者はオフィス・アカデミー又はウエスト・ケープであると認識し
ていたものと認められる。したがって,P2が,本件映画2ないし4の映
画製作者であると認めることはできない。
イこの点,P2がP1P2訴訟において提出した陳述書(甲38,39)
には,「すべての責任はプロデューサー(製作制作者)である<私>が負
うことになり,赤字も背負い,次のテレビシリーズの企画もなく,本当に
悲惨な状態でした。」(甲38の57頁),「私は,『宇宙戦艦ヤマト』
という作品について,自分が“発想”,“企画”して,自己の資金で製作
を行い,且つ,制作に当たって『適正なる人材』を,その資質を理解して
各部門に起用し,」(甲38の58頁),「私は『宇宙戦艦ヤマト』を劇
場で上映する決意をし,これで失敗すれば私自身二度と立ち上がれなくな
るかもしれないという背水の陣で『宇宙戦艦ヤマト』の制作を開始したの
です。・・・私は,完成した劇場版『宇宙戦艦ヤマト』をもって映画館を
回り,上映させて欲しいと頼みました。最終的には,配給会社のない自主
上映という形でしたが,東急が上映してくれることになりました。」(甲
39の17頁),「低視聴率で終わり忘れられた作品を,私が辛抱強く,
お金をかけて,一文無しになるのも覚悟で劇場作品として配給をして,
『宇宙戦艦ヤマト』を有名にした」(甲39の40,41頁)との各記載
があるが,上記記載のみからは,P2個人が,スタッフ,テレビ局や映画
配給会社との契約を締結するなどの権利,義務の主体となっていたと認め
ることはできない。むしろ,前記アで認定したとおり,甲3契約書に添付
された別紙(一)には,本件映画の映画製作者はオフィス・アカデミーであ
る旨の記載があること,上記のP2の陳述書(甲39)によれば,オフィ
ス・アカデミーはP2が映画製作のために設立した個人会社であると推測
されるところ,このように映画製作のための株式会社が存在しているので
あれば,映画製作のための各種契約は,その代表者個人で締結するのでは
なく,会社が主体となって締結するのが一般的であることからすると,P
2の上記陳述書のうちの法的責任及び経済的負担に係る部分の記載は,P
2が個人の立場ではなく,オフィス・アカデミーの代表者としての立場で
記載したものと推測される。
()まとめ3
以上のとおり,本件証拠上,本件映画の映画製作者がP2であると認める
ことはできない。そして,原告は,映画製作者として本件映画の著作権を取
得したP2から,甲3契約により,本件映画の著作権の譲渡を受けたと主張
するのみで,映画製作者がオフィス・アカデミーなどP2以外の者である場
合に,その者から著作権の譲渡を受けた旨の主張,立証をしていないのであ
るから,結局,原告の本件映画の著作権の取得は認められない。
2原告は,甲3契約により,本件映画の翻案権を取得したか(争点()イ)に1
ついて
前記1で判示したように,そもそも,本件証拠上,P2が本件映画の映画製
作者であると認めることはできず,したがって,原告が,甲3契約により,本
件映画の著作権を取得したものと認めるに足りないが,念のため,P2が本件
映画の映画製作者であったか,又は,P2が本件映画の映画製作者から本件映
画の著作権の譲渡を受けていたものと仮定した上,争点⑴イについて,検討す
る。
()甲3契約締結に至る経緯等1
証拠(甲1の1ないし4,2,3,30,31の1ないし9,32の1及
び2,33)並びに弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められ,これに
反する証拠はない。
ア原告は,平成8年9月ころから,P2との間で,宇宙戦艦ヤマト作品等
の著作物の著作権を譲り受けるための交渉を始め,同年12月20日,同
交渉がまとまり,同日付けで,甲3契約を締結した。なお,甲3契約書の
草案は森伊津子弁護士(以下「森弁護士」という。)が作成した。
イ甲3契約書には,次のとおりの条項がある。
(ア)前文
「株式会社東北新社フィルム(以下「甲」という,P2(以下
「乙」という),株式会社ウエスト・ケープ・コーポレーション
(以下「丙」という),株式会社ボイジャーエンターテインメント
(以下「丁」という)とは,以下のとおり合意した。」
(イ)「第1条定義
本書において用いられるとき下記の用語は下記の意味を有する。
1.現存作品
本書に添付され本書の一部を成す別紙(一)のA項記載の映像
著作物をいう。
2.将来作品
本書に添付された本書の一部を成す別紙(一)のB項記載の内
容を有する作品であって,甲乙協議の上決定する制作費で乙が完
成させる映像著作物をいう。
3.対象作品
現存作品および将来作品をいう。
4.対象権利
対象作品に対する著作権および対象作品の全部又は一部のあら
ゆる利用を可能にする一切の権利。
6.既存契約
乙または丙丁などが1996年9月10日以前に対象作品つき
締結した契約であって,本書に添付され本書の一部を成す別紙
(二)に列記され,その内容が同表記載のものである契約をい
う。」
(ウ)「第2条譲渡
乙は甲に対し,対象権利および権利行使素材の所有権の一切を,本
書の日付をもって譲渡し,甲は乙からこれを譲り受けた。但し,対象
権利と権利行使素材のうち将来作品に関するものについては,それら
の完成を条件に乙は甲に対し譲り渡し甲は乙からこれを譲り受け
た。」
(エ)「第4条既存契約譲渡
乙は甲に対し既存契約の契約上の地位を本契約締結日を有効日とし
て譲渡し,甲はこれを譲り受ける。既存契約の当事者が乙でない場合
には,乙は,これらの者に上記譲渡をさせる。
乙は既存契約の当事者に既存契約の相手方に対し可能な限り速やか
に,ただし遅くとも1997年2月28日までに,乙から甲への同契
約上の地位の譲渡を通知し,その通知書の副本に相手方の同意を示す
調印を取得して甲に交付する。既存契約の当事者が乙でない場合には,
乙は,これらの者に上記通知および交付をさせる。」
(オ)「第5条著作権登録
乙は,現存作品に関する著作権の乙から甲に対する譲渡についての
著作権登録を本契約締結日から三か月以内に行う。」
(カ)「第6条対価
甲は,乙に対して,本契約上行われる一切の譲渡その他の乙の義務
履行に対する対価として金円(消費税別)を分割して以450,000,000
下の期日に乙の指定する銀行口座への振込みにより支払う。
支払期日本契約締結時円175,000,000
(ただしうち円については,乙は,甲よ100,000,000
り既に受領済みであることを確認する。)
本契約締結時から1か月後円75,000,000
本契約締結時から2か月後円75,000,000
本契約締結時から6か月後円75,000,000
本契約締結時から8か月後円50,000,000
(キ)「第7条追加対価の額と支払
1.甲は乙に対し,第6条記載の対価の追加対価として下記の金額
を支払う。
『下記()()及び()の合計が円を越えたとき,そ123450,000,000
の超過部分の50%の金額。』
()対象権利の利用から発生するもの。1
甲の総収入(万一,1996年9月11日以降本契約締結時
までの間に乙が対象作品につき得た収入(下記()によるもの2
を除く)があるときは,これを甲の収入とするよう,乙は甲に
対し,収受した金員を本契約締結日から7日以内に引き渡す)
の75%から,利用に伴い必要な第三者への配分金及び諸費用
を控除した額。
()既存契約から発生するもの。2
甲の総収入(本契約締結日以降第4条の通知の到達日以前に
発生する乙の収入は,これを甲の収入とするよう,乙は甲に対
し,収受した金員を製造原価を差し引いて14日以内に引き渡
す)の85%から,利用に伴い必要な第三者への配分金及び諸
費用(販売契約の場合は製造原価を含む)を控除した額。
()将来作品に関するもの。3
甲の総収入から甲乙協議の上決定し乙が支出した制作費を控
除した額の85%から,利用に伴い必要な他社への配分金及び
諸費用を控除した額(甲乙協議の上決定した制作費分は乙によ
るリクープのため甲からすみやかに乙に支払われる)。
2.甲は,四半暦年中に発生した追加対価を,四半暦年終了後1か
月以内に乙の指定する預金口座への振り込みにより,支払う。」
(ク)「第9条保証および免責
1.乙は,甲に対し,下記を保証する。
()本契約締結時において乙が対象権利を専有(本書に添付さ1
れ本書の一部を成す別紙(一)のA項記載の利用制限を除く)
していること。但し,将来作品に関する権利については,作品
完成時に専有するにいたり,専有権と同時に甲に移転出来るも
のであること。
()本契約締結時において権利行使素材の所有権を有しており,2
これにつき何ら制限物権が存在しないこと。
()現存作品につき一切の権利行使素材が存在しており,将来3
作品については存在し得るにいたること,そして,甲の対象権
利の行使に何らの支障がないこと。
()甲による対象権利の全部又は一部の行使が第三者の権利を4
何ら侵害せず,第三者に対する支払を何ら要しないこと。但し,
本書に添付され本書の一部を成す別紙(三)記載の第三者への
支払義務を除く。また,既存契約に基づく義務として,本書添
付の本書の一部を成す別紙(二)記載の内容(相手方,権利の内
容,期間,要支払額,支払日)の制約の存在を甲は承認する。
()既存契約以外の契約が対象作品に関して有効に存在してい5
ないこと。
2.乙は甲に対し下記の免責をする。
万一,甲の対象権利の行使および権利行使素材の利用に関し,
甲又は甲の被許諾者が第三者より異議を申し立てられ又は請求を
受けたときは,これにより生じた損害および費用の一切を,合理
的範囲の弁護士費用を含めて,乙は甲に甲の請求後速やかに支払
い,甲に何らの負担迷惑をかけない。
(ケ)「第10条キャラクター使用作品
対象作品に登場するキャラクター(人物,メカニック等の名称,デ
ザインを含む)を使用し新たな映像作品(但し,キャラクター使用以
外の行為で対象作品の著作権を侵害しないものに限る)を制作する権
利は乙に留保されるものとし,その場合のM/D権その他の権利の運
用については別途協議とする。但し,乙は制作の一か月前までにその
内容の詳細を書面で甲に通知する。」
(コ)「第12条連帯保証
丙および丁は,本契約に基づく乙の甲に対する一切の債務の履行に
つき乙と連帯してその履行の責に任ずる。乙,丙および丁は,丙およ
び丁が本契約を締結することにつき,取締役会の承認を取得済みであ
ることを甲に対し確認する。」
(サ)別紙(一)
前記1のとおり。
(シ)別紙(二)
甲3契約書に添付された別紙(二)は,「既存契約一覧表」という表
題の一覧表であって,同表には,「契約相手先」,「作品名」,「許
諾権利」,「条件(MG,ロイヤリティ%,掛率)」,「契約期間」,
「MG残金」及び「96.11.20現在のリクープ残」の欄があり,
「契約相手先」欄には,「バンダイビジュアル」,「日本コロンビ
ア」等が記載され,「作品名」欄には,宇宙戦艦ヤマト作品等が記載
され,「許諾権利」欄には,「ビデオグラム独占販売」,「LD独占
販売」,「DVD化権」,「ビデオカセット化権」,「音楽原盤,キ
ャラクター」,「プラモデル」等が記載されている。
(ス)別紙(三)
甲3契約書に添付された別紙(三)は,「配分金一覧表」という表
題の一覧表であって,同表には,「対象控除%(素材−出庫,経
費)」,「P2」,「宇宙戦艦ヤマトシリーズのM/D,ゲーム化権
のP2とP1の印税配分」,「P1」,「脚本家連盟」等の欄があり,
「対象控除%(素材−出庫,経費)」欄には,別紙(一)の「A項
:現存作品」の欄に記載された著作物名と同一の著作物名が記載され,
「宇宙戦艦ヤマトシリーズのM/D,ゲーム化権のP2とP1の印税
配分」欄の宇宙戦艦ヤマト作品に対応する部分には,「作品毎の契約
のため,現在明確な取決めがない。従って,P2が責任をもって両者
分を10∼15%の間で1997年2月28日迄に協議の上決定す
る。」との記載がある。
ウ上記イのとおり,甲3契約対象作品の著作権譲渡登録が,甲3契約締結
日から3か月以内に行うことと合意されたことから,原告は,平成9年3
月に至り,上記著作物の著作権の譲渡登録の手続をしようとしたところ,
甲3契約対象作品のうち,本件P3経由著作物の著作権については,平成
8年11月25日付けで,P2からP3への譲渡登録がされていることが
判明した(なお,本件映画は,本件P3経由著作物に含まれている。)
(甲1の1ないし4,30,31の1ないし9)。
そこで,原告は,P2に,上記の譲渡登録がされていることについての
説明を求めたところ,P2から,宇宙戦艦ヤマト作品の著作権はP3に預
けてあるだけであるとの説明を受けたことから,森弁護士と相談し,その
結果,本件P3経由著作物の著作権については,P3から原告へ譲渡登録
をする形をとることとし,その旨P2に連絡して,P2の合意を得た(甲
30)。
その後,原告は,P3に対して,甲3契約対象作品のうち,本件P3経
由著作物についての,平成9年3月26日付け著作権譲渡証書(本件P3
譲渡証書)2通を作成させ,同人からその交付を受け,P2に対しては,
甲3契約対象作品のうち,本件P3経由著作物以外の著作物についての,
平成9年3月26日付け著作権譲渡証書(以下「本件P2譲渡証書」とい
う。)を作成させ,同人からその交付を受けた。そこで,原告は,平成9
年3月26日,文化庁長官に対し,上記各著作権譲渡証書を添付資料とし
て,甲3対象作品についての著作権譲渡登録の申請をし,その結果,平成
9年11月19日付けで,本件P3経由著作物については,P3から原告
への著作権譲渡登録が,それ以外の甲3対象作品については,P2から原
告への著作権譲渡登録がそれぞれされた(甲1の1ないし4,31,32
の1及び2,33)。
エ本件P3譲渡証書には,2通とも,譲渡人(登録義務者)の欄にP3の
記名捺印が,譲受人(登録権利者)の欄に原告の記名捺印があり,「下記
の各著作物の著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含
む)を平成8年12月20日に譲渡したことに相違ありません。」との記
載がある(甲32の1及び2)。
本件P2譲渡証書には,譲渡人(登録義務者)の欄にP2の記名捺印が,
譲受人(登録権利者)の欄に原告の記名捺印があり,「下記の各著作物の
著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)を平成8
年12月20日に譲渡したことに相違ありません。」との記載がある(甲
33)。
カ本件P3経由著作物の一部である宇宙戦艦ヤマトシリーズの著作権登録
原簿には,P2からP3への著作権譲渡の欄には,「この著作物について
平成八年十一月二十五日,左記の者の間に著作権(著作権法第二十七条及
び第二十八条に規定する権利を含む)の譲渡があった。」との記載,P3
から原告への著作権譲渡の欄には,「この著作物について平成八年十二月
二十日,左記の者の間に著作権(著作権法第二十七条及び第二十八条に規
定する権利を含む)の譲渡があった。」との記載がある(甲1の1ないし
4)。
()前記()で認定した事実を前提にして,以下,甲3契約において,本件映21
画の翻案権も譲渡の対象となっていたか否かについて検討する。
ア著作権法61条2項は,「著作権を譲渡する契約において,第二十七条
又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないとき
は,これらの権利は,譲渡した者に留保されたものと推定する。」と規定
するところ,これは,著作権の譲渡契約がなされた場合に直ちに著作権全
部の譲渡を意味すると解すると著作者の保護に欠けるおそれがあることか
ら,二次的な利用権等を譲渡する場合には,これを特に掲げて明確な契約
を締結することを要求したものであり,このような同項の趣旨からすれば,
上記「特掲され」たというためには,譲渡の対象にこれらの権利が含まれ
る旨が契約書等に明記されることが必要であり,契約書に,単に「すべて
の著作権を譲渡する」というような包括的な記載をするだけでは足りず,
譲渡対象権利として,著作権法27条や28条の権利を具体的に挙げるこ
とにより,当該権利が譲渡の対象となっていることを明記する必要がある
というべきである。
原告は,著作権法61条2項の「特掲」があったというためには,翻案
権が当該譲渡の目的に含まれていることを終局的一義的文言で記載する必
要はなく,翻案権も譲渡の目的に含まれていることを十分認識できる程度
の記載で足りる旨主張するが,上記の説示に照らして,同主張が採用でき
ないことは明らかである。
そこで,甲3契約書に翻案権譲渡の特掲があったといえるかについて検
討するに,前記()のとおり,甲3契約書には,「対象権利および権利行1
使素材の所有権の一切を・・・譲渡し」(2条)との記載,及び「対象権
利」の定義として,「対象作品に対する著作権および対象作品の全部又は
一部のあらゆる利用を可能にする一切の権利」(1条の4)との記載があ
るのみであり,「著作権法27条の権利」又は「翻案権」等の文言を具体
的に挙げて明記して,同権利を譲渡する旨の記載はない。
したがって,甲3契約書には,翻案権を譲渡の目的とする特掲があった
ということはできず,また,契約書に明記はしないが譲渡の対象に含まれ
る旨が合意されたなどの特段の事情も認められないから,著作権法61条
2項により,甲3契約において,本件映画の翻案権は,著作権を譲渡した
者,すなわちP2に留保されたものと推定される。
イ原告は,前記()で認定した甲3契約締結における事情を基に,甲3契1
約において,甲3契約対象作品の翻案権も譲渡された旨を主張する。
しかしながら,以下の理由により,甲3契約によって原告が翻案権を取
得したと認めることはできない。
(ア)まず,甲3契約締結当時,原告のように映画,テレビ,ビデオソフ
トなどの企画,制作,販売等を行い,映像に関わる著作権を日常的に処
理する業界においては,高額な対価支払を伴う著作権の譲渡契約を行う
場合,当該譲渡の対象である著作権に翻案権を含めて契約を締結すると
きには,著作権法61条2項の規定が存在する以上,作成される契約書
に翻案権が譲渡対象となる旨の特掲がなされていることが一般的である
と推測される。
また,本件においては,甲3契約書の草案の作成に原告側の弁護士が
関与しており,このように弁護士などの法律専門家が譲受人側として著
作権譲渡契約書の作成に関与する場合,譲渡の対象に翻案権も含める旨
の合意が成立しているにも関わらず,その特掲のない契約書を作成し,
又は,そのような契約書に署名をすることは,通常,想定し難いという
べきである。
しかも,前記()エのとおり,原告が,P3から本件P3経由著作物1
の著作権譲渡登録をするために,弁護士が関与してP3に作成させた本
件P3譲渡証書には,著作権法27条及び同法28条の権利が譲渡対象
に含まれていることの特掲があり,本件P2譲渡証書にも,同様の特掲
があったのであるから,原告及びその代理人弁護士は,著作権法61条
2項の内容を十分理解し,翻案権の譲渡を受ける場合には,その旨の特
掲の必要性を十分認識していたものと認められ,それにもかかわらず,
甲3契約書に,翻案権譲渡の特掲がなかった以上,当該契約において翻
案権の譲渡がなかったものと推測せざるを得ない。
(イ)原告は,甲3契約書9条2項について,P2は,対象権利の行使に
関して原告が第三者から異議を申し立てられ,請求をされることがない
ことを保証する旨規定していることから,P2は,甲3契約により,対
象作品のあらゆる利用を第三者から異議を述べられずに行うことが可能
な権利を譲渡したことになるところ,そのような権利保証をすることは,
翻案権の譲渡をせずしては不可能である旨主張する。
しかしながら,甲3契約書9条2項の上記文言は,前記()イ(ク)の1
とおりであり,P2から原告に譲渡された「対象権利の行使」に関して,
原告が第三者から異議等を受けた場合に,P2がそれに関する一切の費
用負担等を行うことを約するものであり,本件映画に即していえば,映
画に関する著作権を行使して複製や上映などをした場合に,第三者から
異議を受けたときを念頭においたものと解することも可能であって,上
記文言が,原告に翻案権があることを常に前提とするとは限らないから,
原告の上記主張は,その前提において誤りがあり,採用することができ
ない。
(ウ)原告は,本件P3譲渡証書は,P3から一旦P2に交付された後,
P2から原告に交付されたものであるところ,本件P3譲渡証書には,
譲渡の対象に著作権法27条及び同法28条に規定する権利が含まれる
旨の特掲があるのであるから,P2は,本件P3譲渡証書の上記記載内
容を認識しており,甲3契約において,上記権利も譲渡の対象とする意
思を有していた旨主張する。
しかしながら,本件P3譲渡証書は,前記()ウ認定のとおり,原告1
がP3に作成させて同人から交付を受けたものと認められ,P2が本件
P3譲渡証書の具体的な記載内容を認識していたということができない
以上,原告の上記主張は,その前提において誤りである。また,確かに,
本件P3譲渡証書には,前記()エのとおり,著作権法27条及び同法1
28条の権利が譲渡対象に含まれていることの特掲があるが,同証書は,
甲3契約に利害関係がなく,P2に依頼されて著作権登録原簿上の権利
者となっていたにすぎないP3が,原告の依頼により作成したものであ
り,前記()ウで判示した本件P3譲渡証書作成に関する状況からする1
と,同証書は,原告の利益のために作成されたものと認められ,した
がって,その内容も,原告の希望を反映したものとなると考えられるこ
とから,本件P3譲渡証書に,上記特掲があるからといって,それが甲
3契約締結当時における,当事者間の意思を反映したものであるという
ことはできない。
いずれにしても,原告の上記主張を採用する余地はない。
この点,P4陳述書には,本件P3譲渡証書は,P3が一旦P2に交
付したものを,P2が原告に交付したものであり,P2は,本件P3譲
渡証書の記載内容を認識し,同内容の譲渡証書を交付することを承諾し
ていた旨の記載がある。
しかしながら,仮に,上記権利も譲渡対象に含まれることについてP
2の承諾を得ていたのであれば,P3から原告への譲渡証書ではなく,
本件P3経由著作物の著作権登録原簿上の著作権をP2に戻すとともに,
P2から原告への上記特掲のある譲渡証書を作成するのが,上記特掲の
必要性を認識していた原告にとって確実であり,通常とるべき手段であ
ると考えられるところ,実際には,P3から原告への譲渡証書である本
件P3譲渡証書が作成されるにとどまり,上記の通常とるべき手段が行
われなかったことについての合理的な説明はないから,P4陳述書の上
記記載部分は採用できない。
(エ)なお,甲3契約により,原告が権利取得の対価として支払義務を
負った金額は,4億5000万円であるが,前記1()で判示したよう1
に,甲3契約対象作品の中に含まれている宇宙戦艦ヤマト作品は,その
最初の作品である本件映画1が昭和49年に製作され,昭和58年に劇
場公開された「宇宙戦艦ヤマト完結編」までの,合計8作のシリーズ作
品であり,劇場公開された4本の作品は,21億円ないし43億円と巨
額の興行収入をもたらし,また,宇宙戦艦ヤマト作品は,日本中に空前
のブームを引き起こしたものであることが認められ,このように,甲3
契約対象作品の中に,極めて著名な映画である宇宙戦艦ヤマト作品が含
まれていることからすると,同作品が,甲3契約締結時においては,テ
レビ放映ないし劇場公開がされてから13年ないし22年が経っている
ことを考慮しても,甲3契約対象作品の複製権の対価が4億5000万
円であることが,不自然であるということはできない。
ウ以上のとおり,甲3契約においては,本件映画の翻案権は譲渡の対象
となっていたと認めることはできず,甲3契約によって原告が本件映画
の翻案権を取得したと認めることはできない。
3被告映像は,本件映画を複製又は翻案したといえるか(争点()ウ)につい1

前記1で判示したとおり,P2は本件映画の映画製作者と認めることはでき
ず,したがって,原告は,甲3契約により,本件映画の著作権を取得したもの
とは認められないが,念のため,P2が本件映画の映画製作者であったか,又
は,P2が本件映画の映画製作者から本件映画の著作権の譲渡を受けていたも
のと仮定して,争点()ウについても検討する。ただし,前記2で判示したよ1
うに,原告が,甲3契約によって,P2から本件映画の著作権の譲渡を受けた
と仮定したとしても,甲3契約の譲渡の対象となった著作権は複製権のみであ
り,翻案権は対象となっていなかったのであるから,以下では,被告映像が本
件映画の複製権を侵害するか否かについて検討する。
()本件映画の内容について1
証拠(甲1の1ないし4,4,37,38)及び弁論の全趣旨によれば,
本件映画の内容は,次のとおりであると認められる。
本件映画1は,地球が,異星人からの攻撃により放射能に汚染され,地表
の大部分は溶岩に覆われて地表に棲息する生物は絶滅したが,人類は,地下
都市を築いて生き続けていたところ,地表の放射能が次第に地下を浸食して
きたため,地下都市も,あと1年で放射能に汚染される状態となったという
設定のもと,放射能汚染消去装置の部品と設計図を求めて,宇宙の遙か彼方
のイスカンダル星まで往復するために,かつて海底に沈没していた戦艦大和
を改造して建造された宇宙戦艦ヤマトが,イスカンダル星への往復の途中で,
数々の戦闘を繰り返しながら,侵略者に立ち向かっていくという物語である。
宇宙戦艦ヤマトは,戦闘の際,その最大の兵器である,艦首から発射される
波動砲のほか,主砲,パルスレーザー砲等を使用する。
本件映画2ないし4も,設定は異なるものの,宇宙戦艦ヤマト及びその乗
組員が,地球ないし人類を滅亡から救出するために,困難に立ち向かう物語
となっている。
⑵本件映画の被侵害主張部分における映像について
証拠(甲9の1,14の1),上記⑴で認定した本件映画の内容及び弁論
の全趣旨によれば,本件映画被侵害主張部分に描かれている艦船は,宇宙戦
艦ヤマトであること,その艦首にある穴は波動砲の発射口であること,その
波動砲発射口から発射される光線様のものは波動砲であることが認められる。
⑶本件映画と被告映像との対比
証拠(甲9の1,14の1)及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおり認
められる。
ア被告映像対比表1正面バージョン部分は,本件映画対比表1部分の複製
物といえるか。
被告映像対比表1正面バージョン部分は,戦艦様の飛行物体の艦首部の
発射口から,大量の光線が発射される様子を描いた動画映像であるが,そ
の重要な構成部分である映像が,被告映像対比表2正面バージョン部分,
被告映像対比表3正面バージョン部分,被告映像対比表4正面バージョン
部分及び被告映像対比表5正面バージョン部分である。一方,本件映画対
比表1部分は,宇宙戦艦ヤマトの艦首部の発射口から,波動砲が発射され
る様子を描いた動画映像であるが,その重要な構成要素である映像は,本
件映画対比表2部分,本件映画対比表3部分と極めて類似した映像,本件
映画対比表4部分と極めて類似した映像,本件映画対比表19部分と極め
て類似した映像である。
そして,後記イないしエのとおり,被告映像対比表2正面バージョン部
分,被告映像対比表3正面バージョン部分及び被告映像対比表4正面バー
ジョン部分は,それぞれ,本件映画対比表2部分,本件映画対比表3部分
及び本件映画対比表4部分の複製物ということはできず,また,後記で判
示する被告映像対比表5正面バージョン部分と本件映画対比表19部分と
の各表現内容及び表現形式を比較すれば,被告映像対比表5正面バージョ
ンは,本件映画対比表19部分の複製物ということはできない。
このように,被告映像対比表1正面バージョン部分の重要な構成要素で
ある4つの映像部分は,いずれも,本件映画対比表1部分の重要な構成要
素である4つの映像部分の複製物ということはできないから,被告映像対
比表1正面バージョン部分は,本件映画対比表1部分の複製物ということ
はできない。
イ被告映像対比表1横バージョン部分は,本件映画対比表1部分の複製物
といえるか。
被告映像対比表1横バージョン部分は,前記アと同様の理由により,本
件映画対比表1部分の複製物ということはできない。
ウ被告映像対比表2正面バージョン部分は,本件映画対比表2部分の複製
物といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表2部分
本件映画対比表2部分は,約2秒間の動画映像であり,暗青色の宇
宙空間を背景に,宇宙戦艦ヤマトの艦首部に設置された波動砲発射口
内部で,無数のオレンジ色の光の粒子が奥の方へ吸い込まれていき,
それに伴い発射口内部の色が変化する様子が,波動砲発射口の左斜め
前方の位置から,波動砲発射口を拡大して描かれたものである。
視点は一定で,移動せず,また,発射口の大きさも終始一定である。
発射口は,画面を見る者には照準を合わせていない。
画面の8割強を艦首部の一部が占めており,その中心部に波動砲発
射口が描かれ,同発射口は画面の4割程度を占めている。画面の2割
弱を占める背景には,暗青色の宇宙空間が描かれている。艦首部は,
発射口以外は,ほとんど描かれておらず,喫水線下の部分も描かれて
いない。
波動砲発射口の内部には,内壁に等間隔のリブが存在しており,最
奥部にプロペラ様のものがあるという構造が明確に描かれている。
波動砲発射口内部では,発射口の出口部分から無数のオレンジ色の
光の粒子が発射口奥部に,直線状に,引き寄せられていき(この光の
粒子の発生源は,発射口内部に限定されており,発射口外部から発射
口内に入ってくるものはない。),発射口内部の色は,当初,暗いオ
レンジ色であるのが,徐々にオレンジ色の明るさが増していき,最奥
部は,最終的には,黄色に変色するが,最奥部以外の部分は,途中で
明るさが減じ,暗いオレンジ色に戻る。
b被告映像対比表2正面バージョン部分
被告映像対比表2正面バージョン部分は,約1秒余りの動画映像で
あり,宇宙空間を背景にして,画面の中央部にある戦艦様の飛行物体
の艦首部の黄白色に発光した発射口に向かって,画面全体から無数の
白色の光の粒子が吸い込まれていく様子が,発射口を中心にして描か
れている。
視点は,当初,艦首部のやや右側にあるが,正面に移動し,それと
ともに,艦首部が徐々に拡大されるように描かれている。発射口は,
画面を見る者に照準を合わせている。
発射口は,当初,画面の1割程度を占める大きさであるが,その後,
画面の2割足らずを占める大きさとなる。
画面には,艦首部の上端部は映っておらず,発射口の下の赤色の部
分の一部が描かれている。また,両側部には,半円盤状の翼様のもの
が設置され,その翼様のものが明確に描かれている。
背景の左奥には,明るい水色をした,惑星の一部と思われるものが
描かれている。
発射口内部は,黄白色に発光しており,内部の様子は明確には認識
できないが,ヒトデのような形,又は「大」の字のような形をした部
材が取り付けられているのが見える。発射口は,常に明るい状態のま
まである。
また,発射口に向かって画面全体から吸い込まれる白色の光の粒子
は,発射口内部の発光部分に渦を巻くようにして吸い寄せられている。
(イ)対比
本件映画対比表2部分と被告映像対比表2正面バージョン部分とは,
前記(ア)のとおり,画面の中心部に,宇宙空間を背景にして,戦艦の艦
首に存在する発射口の内部が発光している様子が描かれていること,そ
の発光部分は,映像の中で,中心的に描かれていること,発光部分の中
心部に向かって光の粒子が移動していく様子が描かれていることが共通
している。
しかしながら,証拠(乙37の4,69)によれば,本件映画が制作
された時点で,先端に穴の空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を
描いた画像,先端に穴の空いた戦艦が海上を航行している様子を描いた
画像,先端部から光線を発している飛行物体を描いた画像,及び宇宙空
間を暗青色に描く画像が存在していることが認められ,このことから,
先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体が暗青色の宇宙空間
を航行するという映像や,そのような飛行物体が先端部の発射口から光
線を発射する前段階として,発射口部分が発光することを描いた映像も,
特に目新しい表現ということはできない。また,飛行物体の先端部に設
置された発射口が発光するのを描く際に,その発射口を中心に描くこと
も,ありふれた表現方法である。そして,戦艦が宇宙空間を飛行するこ
と自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間を艦船又は飛行体
が進んで行くという表現は,上記同様,特徴あるものとはいえない。
したがって,上記両映像の上記共通点のうち,宇宙空間を背景にして,
戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が中心に描かれ
ている部分は,両映像にとって特徴的な表現ということはできず,この
点が共通することが,両映像の同一性の判断において,大きな意味を有
するということはできない。そして,宇宙空間を背景にして,戦艦の艦
首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具体的な表現形
式については,前記(ア)のとおり,大きく異なる。
また,発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部
分は,ありふれた表現ということはできないが,その具体的な表現形式
は,前記(ア)のとおり,大きく異なっている。
さらに,その他の表現形式も,前記(ア)の認定から明らかなように,
大きく異なっている。
以上の事実を総合考慮すると,被告映像対比表2正面バージョン部分
と本件映画対比表2部分との間に,同一性は認められないというべきで
ある。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表2正面バージョン部分は,本件映画対比
表2部分の複製物ということはできない。
エ被告映像対比表2横バージョン部分は,本件映画対比表2部分の複製物
といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表2部分
本件映画対比表2部分の表現内容及び表現形式は,前記ウ(ア)で判
示したとおりである。
b被告映像対比表2横バージョン部分
被告映像対比表2正面バージョン部分は,1秒弱の動画映像であり,
宇宙空間を背景にして,画面の中央部左よりにある戦艦様の飛行物体
の艦首部の黄白色に発光した発射口に向かって,発射口の外部から無
数の白色の光の粒子が吸い込まれていく様子が,発射口を中心にして
描かれている。
視点は,当初,艦首部の左側にあるが,発射口に接近しながら,や
や正面よりに移動している。発射口は,画面を見る者には照準を合わ
せていない。
発射口の大きさは,当初は,余り大きくないが,徐々に拡大してい
き,最終的には画面の1割程度を占める大きさとなる。
画面には,艦首部が映っているが,画面奥に,艦橋もわずかに見え
る。飛行物体の喫水線下の部分は描かれていない。
発射口内部は,黄白色に発光しており,内部の様子は全く認識でき
ない。
また,発射口内部の発光部分に向かって,主に,発射口の正面方向
から,帯状に,白色の粒子が吸い寄せられるが,その他の場所からも,
白色の粒子が若干吸い寄せられている。
(イ)対比
本件映画対比表2部分と被告映像対比表2横バージョン部分とは,前
記(ア)のとおり,画面の概ね中心部に,宇宙空間を背景にして,戦艦の
艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が,艦船の左側の位置
から描かれていること,その発光部分は,映像の中で,中心的に描かれ
ていること,発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していく様子
が描かれていることが共通している。
しかしながら,前記ウで判示したとおり,艦首の先端部に光線の発射
口を設置した飛行物体が,その発射口から光線を発射する前段階として,
その発射口部分が発光することを描いた映像は,特に目新しい表現とい
うことはできない。また,飛行物体の艦首に設置された発射口が発光す
るのを描く際に,その発射口を中心に描くこと,また,その際の視点を
艦首の左側とすることも,ありふれた表現方法である。そして,戦艦が
宇宙空間を飛行すること自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙
空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は,上記同様,特徴あ
るものとはいえない。
したがって,上記両映像の上記共通点のうち,宇宙空間を背景にして,
戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が中心に描かれ
ている部分は,両映像にとって特徴的な表現ということはできず,この
点が共通することが,両映像の同一性の判断において,大きな意味を有
するということはできない。そして,宇宙空間を背景にして,戦艦の艦
首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具体的な表現形
式は,前記(ア)のとおり,大きく異なる。
また,発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部
分は,ありふれた表現ということはできないが,その具体的な表現形式
は,前記(ア)のとおり,大きく異なっている。
さらに,その他の表現形式も,前記(ア)の認定から明らかなように,
大きく異なっている。
以上の事実を総合考慮すると,被告映像対比表2横バージョン部分と
本件映画対比表2部分との間に,同一性は認められないというべきであ
る。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表2横バージョン部分は,本件映画対比表
2部分の複製物ということはできない。
オ被告映像対比表3正面バージョン部分は,本件映画対比表3部分の複製
物といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表3部分
本件映画対比表3部分は,約1秒間の動画映像であり,画面左奥側
にシリンダー様部材が,画面右側手前側にピストン様部材が,それぞ
れ対向して配置されており,上記シリンダー様部材の中心部には,上
記ピストン様部材の直径と同程度の直径の円筒状の中空部分があり,
同中空部分に上記ピストン様部材が,回転することなく,徐々に押し
込まれていく様子が描かれている。
上記シリンダー様部材の断面は,台座に半円が乗ったような形状を
しており,所々に光った計器様の円形の部材が配置されている。
上記シリンダー様部材の中空部分及びピストン様部材は,光に照ら
されているように,濃いオレンジ色に着色され,また,上記シリンダ
ー部材のその余の部分は,同様に薄いオレンジ色に着色されている。
上記ピストン状部材が上記シリンダー様部材の中空部分に押し込まれ
ても,画面の明るさに変化はない。
b被告映像対比表3正面バージョン部分
被告映像対比表3正面バージョン部分は,約1秒間の動画映像であ
り,画面右奥側の部材が,回転しながら,画面左手前側の部材に向
かっていき,衝突する様子が描かれている。
画面右奥側には,先端に合計5個の円筒状突起物が設置された円筒
状部材が,画面左手前側には,釣り鐘状の突起物が複数設置された円
筒状部材が,それぞれ対向して配置されており,右奥側の円筒状部材
と左手前側の円筒状部材の各中心部は,細長い円柱状の部材で連結さ
れている。
そして,右奥側に配置された円筒状部材が高速で回転しながら,左
手前側の円筒状部材の方向に高速で移動し,右奥側の円筒状部材に設
置された5個の円筒状突起物が,左手前側の円筒状部材に設置された
複数の釣り鐘状の突起物に激しく衝突し,その際に,強く発光する。
画面は,当初,点灯された室内程度の明るさであるが,上記円筒状
突起物が上記釣り鐘状の突起物に衝突すると,その衝突部分である画
面中央部やや左よりの部分が白色に発光し,その後,その発光が,大
きくなり,画面のほとんどの部分が,白色の発光部分で満たされてい
く。
(イ)対比
本件映画対比表3部分と被告映像対比表3正面バージョン部分とは,
前記(ア)のとおり,画面の右側と左側に,部材が対向して配置され,両
部材が近づく様子が描かれている点で共通するが,この共通点は,極め
て抽象的なものであるから,両映像の同一性の有無の判断においては,
大きな意味を有しない。
そして,上記両映像間の複製権侵害の有無の判断においては,両映像
の具体的な表現形式の比較が重要であるところ,その部分は,前記(ア)
の認定から明らかなように,大きく相違する。
以上の事実を総合考慮すると,被告映像対比表3正面バージョン部分
と本件映画対比表3部分との間に,同一性は認められないというべきで
ある。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表3正面バージョン部分は,本件映画対
比表3部分の複製物ということはできない。
カ被告映像対比表3横バージョン部分は,本件映画対比表3部分の複製物
といえるか。
被告映像対比表3横バージョン部分は,被告映像対比表3正面バージョ
ン部分とほぼ同一の映像であるから,前記オと同じ理由により,被告映像
対比表3横バージョン部分は,本件映画対比表3部分の複製物とはいえな
い。
キ被告映像対比表4正面バージョン部分は,本件映画対比表4部分の複製
物といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表4部分
本件映画対比表4部分は約3秒間の動画映像であり,宇宙空間を背
景にして,宇宙戦艦ヤマトの艦首部の波動砲発射口から,波動砲が発
射される様子が描かれている。
発射口は,画面を見る者に照準を合わせていない。
前半部分は,宇宙戦艦ヤマトの艦首部が,同戦艦の左斜め前方の位
置から,艦首部が拡大され,同部が画面の中心部付近に位置するよう
に描かれている。艦首の発射口は,当初,画面全体の約10分の1程
度の大きさで,内部は,最奥部が黄白色に,その余の部分はオレンジ
色に発光しており,内壁に等間隔のリブや多数の光の粒子が存在して
いることが認識できるが,途中で,最奥部の黄白色の光の強度が増す
とともに,オレンジ色部分が黄白色に変化していき,発射口内部の様
子がはっきりとは分からなくなると,画面が切り替わる。
画面が切り替わると,宇宙戦艦ヤマト全体が,同じく左斜め前方の,
離れた位置から,艦首の発射口が画面の中心部付近に位置するように
描かれている。発射口は,当初,空洞の状態であるが,途中で黄白色
に発光し,続いて,その光が徐々に強まっていくとともに,大きくな
り,最終的には,画面の約8割程度を占め,宇宙戦艦ヤマトを覆い隠
すようになる。
b被告映像対比表4正面バージョン部分
被告映像対比表4正面バージョン部分は,約1秒間の動画映像であ
り,宇宙空間を背景に,戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から光線
が発射される様子が,発射口の正面の位置から描かれている。
画面中央部に,画面全体の10分の1程度の大きさで,発射口が描
かれている。発射口は,画面を見る者に照準を合わせている。
発射口は,最初は,その全体が白色に発光しているが,画面全体か
ら,多数の白色の光の粒子が吸い寄せられながら,徐々に発光が弱ま
り,発射口の奥の方へ減退していき,発射口内部の手前付近の様子が
ある程度認識できるようになると,今度は,逆に,発射口内部の発光
部分が拡大していき,画面全体が白色の光で満たされる。さらに,そ
の後,白色の光が収縮し,その白色部分の周囲から,等間隔で5本の
帯状の光線が発せられている状態になり,次いで,帯状の光線が乱れ
飛ぶようにして,画面全体が白色の光で満たされるようになる。
白色の発光部分が,発射口内部ないしその周辺にとどまっている状
況においては,画面には,艦首部の上端部は映っておらず,発射口の
下の赤色の部分の一部,両側部に設置された半円盤状の翼様のもの,
背景の左奥に明るい水色をした惑星の一部と思われるものが,それぞ
れ映っている。
(イ)対比
本件映画対比表4部分と被告映像対比表4正面バージョン部分とは,
前記(ア)のとおり,宇宙空間を背景に,戦艦の艦首の発射口から光線が
発射され,その発光部分が拡大していく様子が描かれている点で共通し
ている。
しかしながら,前記ウで判示したとおり,本件映画が制作された時点
で,先端に穴が空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いた画像,
先端に穴の空いた戦艦が海上を航行している様子を描いた画像,先端部
から光線を発している飛行物体を描いた画像が存在していることが認め
られ,このことから,先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物
体が,その発射口から光線を発射するという映像は,特に目新しい表現
ということはできない。しかも,宇宙空間を戦艦が飛行すること自体は,
アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで
行くという表現は,上記同様,特徴あるものとはいえない。さらに,飛
行物体から発射された光線が拡大するように描くことも,ありふれた表
現である。しかも,上記の共通点は極めて抽象的なものにとどまる。
したがって,上記両映像の上記共通点は,両映像にとって特徴的な表
現ということはできず,この点が共通することが,両映像の同一性の判
断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の事実を総合考慮すると,本件映画対比表4部分と被告映像対比
表4正面バージョン部分との間に同一性は認められないというべきであ
る。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表4正面バージョン部分は,本件映画対比
表4部分の複製物ということはできない。
ク被告映像対比表4横バージョン部分は,本件映画対比表4部分の複製物
といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表4部分
本件映画対比表4部分の表現内容及び表現形式は,前記キ(ア)で判
示したとおりである。
b被告映像対比表4横バージョン部分
被告映像対比表4横バージョン部分は,約1秒間の動画映像であり,
宇宙空間を背景に,戦艦様の飛行物体の艦首部から光線が発射される
様子が,艦首部の左側の位置から描かれている。
画面中央部やや左よりの部分に,画面全体の10分の1程度の大き
さで,発射口が描かれている。発射口は,画面を見る者に照準を合わ
せていない。
発射口は,最初は,その全体が白色に発光していたが,発射口の前
方から,白色の光の粒子が帯状に吸い寄せられながら,徐々に発光が
強まるとともに,拡大していき,最終的には,画面全体が白色の光で
満たされるようになる。
白色の発光部分が,発射口内部ないしその周辺にとどまっている段
階では,画面上に,艦首部が映っているが,画面奥に,艦橋もわずか
に見える。飛行物体の喫水線の下部分は映っていない。
発射口内部は,黄白色に発光しており,内部の様子は全く認識でき
ない。
(イ)対比
本件映画対比表4部分と被告映像対比表4横バージョン部分とは,前
記(ア)のとおり,宇宙空間を背景に,戦艦の艦首の発射口から光線が発
射され,その発光部分が拡大していく様子が,艦首部の左側の位置から
描かれている点で共通している。
しかしながら,前記キで判示したとおり,先端部に存在する発射口か
ら光線を発する飛行物体が,その発射口から光線を発射するという映像
は,特に目新しい表現ということはできず,しかも,戦艦に宇宙空間を
飛行させること自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間を艦
船又は飛行物体が進んで行くという表現は,上記同様,特徴あるものと
はいえない。さらに,飛行物体から発射された光線が拡大するように描
くことも,ありふれた表現である。
したがって,上記両映像の上記共通点は,両映像にとって特徴的な表
現ということはできず,この点が共通することが,両映像の同一性の判
断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の事実を総合考慮すると,本件映画対比表4部分と被告映像対比
表4横バージョン部分との間に,同一性は認められないというべきであ
る。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表4横バージョン部分は,本件映画対比表
4部分の複製物ということはできない。
ケ被告映像対比表5正面バージョン部分は,本件映画対比表5部分の複製
物といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表5部分は,約4秒間の動画映像であり,宇宙空間を
背景に,宇宙戦艦ヤマトの艦首部の波動砲発射口から発射された波動
砲の様子が,同戦艦の左斜め前方の位置から描かれている。
画像は,当初,宇宙戦艦ヤマトの艦首部のみが映っているが,発射
口から波動砲が発射されると,視点は,対象から遠ざかり,宇宙戦艦
ヤマト全体が映るようになり,その後,勢いよく発射された波動砲及
びその先端部に移り,相当の距離を移動していく波動砲の行き先を追
いかけていき,それに伴い,宇宙戦艦ヤマトは画面から消えていく。
なおも,視点は,波動砲の行き先を追いかけ,徐々に対象に近づき,
波動砲の先端を捉えると,波動砲が画面のほとんどを占めるようにな
る。その直後に,それまで直進していた波動砲が,突然,遠景として
急上昇する場面が描かれ,さらに,再び波動砲に近づいて対象が拡大
され,波動砲ないし宇宙戦艦ヤマトに向かってくる敵のミサイル様の
ものを波動砲が包み込み,焼き尽くそうとしている様子が拡大されて
描かれている。
波動砲は,発射口内及びその周辺にとどまっているときは,略円形
状で,中心部が白色,その周辺部が水色に発光しているが,発射され
ると,帯状となり,中心部が白色,その両端部が青色に発光し,さら
に,その両端部に,紫色の炎状のものが描かれている。
b被告映像対比表5正面バージョン部分
被告映像対比表5正面バージョン部分は,約2秒間の動画映像であ
り,戦艦様の飛行物体の艦首部に設置された発射口から大量の光線が
発射されている状態が,真正面の位置から描かれている。
画面は,当初,そのほとんどが白色に発光しており,発光部分が回
転している状況が,わずかに認識できる状態であるが,途中から,い
くつかの帯状の光線が回転しているように描かれるようになり,画面
の中心部から,人の上半身が飛び出してくる。
当該映像部分だけからは,どのような場面が描かれているかは分か
らないが,前後の映像から,真正面の視点から,宇宙空間を背景にし
て,画面の中央に位置する戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から,
画面を見る者に向かって,白色に発光する光線が大量に勢いよく発射
されている状況が描かれた画像であることが分かる。
(イ)対比
本件映画対比表5部分と被告映像対比表5正面バージョン部分とは,
前記(ア)のとおり,宇宙空間を背景にして,戦艦の艦首部に設置された
発射口から光線が勢いよく大量に発射されている状況が描かれている点
で共通する。
しかしながら,前記キで判示したとおり,宇宙空間を背景に,先端部
に存在する発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は,特に目新
しい表現ということはできない。また,その光線が大量に発射されてい
るように描くことも,ありふれた表現形式である。さらに,戦艦に宇宙
空間を飛行させること自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空
間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は,上記同様,特徴ある
ものとはいえない。
したがって,上記両映像の上記共通点のうち,宇宙空間を背景に,先
端部に存在する発射口から大量の光線を発する戦艦が描かれている点は,
両映像にとって特徴的な表現ということはできず,この点が共通するこ
とが,両映像の同一性の判断において,大きな意味を有するということ
はできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表5正面バージョン部分は,本件映画対比
表5部分の複製物ということはできない。
コ被告映像対比表5横バージョン部分は,本件映画対比表5部分の複製物
といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表5部分
本件映画対比表5部分の表現内容及び表現形式は,前記ケ(ア)で判
示したとおりである。
b被告映像対比表5横バージョン部分
被告映像対比表5横バージョン部分は,約3秒間の動画映像であり,
戦艦様の飛行物体の艦首部に設置された発射口から,大量の光線が発
射されている状態が描かれている。
画面の中央部は,当初,画面の約8割程度を占める大きさの白色の
発光部分が描かれているが,その後,当該白色の発光部分の左側から,
画面左方向に大量の光線が発射されると,視点が,発光部分から一旦
遠ざかり,光線が発射されている状態が描かれ,次に,視点が徐々に
発光部分に近づきながら,光線の行き先を追うようになり,その後再
び,発光部分が画面のほとんどすべてを占めるようになり,その状態
が暫く続くと,画面右側の発光部分の中から,数多くのキャラクター
の絵が,次々と飛び出してきて,画面左側に移動し,消滅していく。
上記映像部分は,当該部分だけでは,どのような場面の映像である
かは判別できないが,前後の映像から,上記白色の光は,戦艦様の飛
行物体の艦首部の発射口から発射された光線であること,背景が宇宙
空間であることが分かる。
(イ)対比
本件映画対比表5部分と被告映像対比表5横バージョン部分とは,前
記(ア)のとおり,宇宙空間を背景に,戦艦の艦首の発射口から光線が発
せられている点,その光線が画面の右側から左側に向かって大量に発射
されている点,視点が光線の行き先を追っている点で共通している。
しかしながら,前記キで判示したとおり,宇宙空間を背景に,先端部
に存在する発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は,特に目新
しい表現ということはできない。また,その光線が大量に発射されてい
るように描くことも,ありふれた表現形式である。また,戦艦に宇宙空
間を飛行させること自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間
を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は,上記同様,特徴あるも
のとはいえない。
したがって,上記両映像の上記共通点のうち,宇宙空間を背景に,先
端部に存在する発射口から大量の光線を発する戦艦が描かれている点は,
両映像にとって特徴的な表現ということはできず,この点が共通するこ
とが,両映像の同一性の判断において,大きな意味を有するということ
はできない。
そして,両映像の表現形式には,前記(ア)の認定から明らかなように,
大きな相違があるのであるから,視点が光線の行き先を追っていくとい
う点で表現形式が共通しているということを考慮しても,両映像が同一
であるということはできないというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表5横バージョン部分は,本件映画対比表
5部分の複製物ということはできない。
サ被告映像対比表6部分は,本件映画対比表6部分の複製物といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表6部分
本件映画対比表6部分は,約2秒間の動画映像であり,宇宙空間を
飛行中の宇宙戦艦ヤマトが,攻撃を受け,艦体の後部が爆発し,炎上
している様子が,同戦艦の右斜め前方の位置から描かれている。
宇宙戦艦ヤマトは,戦艦の形状をしており,艦首部に発射口が設置
され,同発射口は発光しておらず,艦首部の先端上端部には円形の切
れ込みがあり,喫水線付近で上下に色分けされて,上部は灰色,下部
は赤色となっており,艦体中央部の後ろ寄りの部分には艦橋が見え,
側面に,翼様のものは設置されていない。
宇宙戦艦ヤマトの艦首部は,特段,強調されて描かれてはいない。
攻撃の態様としては,宇宙戦艦ヤマトの周りを,複数の戦闘機が飛
行し,その戦闘機により攻撃を受けているように描かれている。宇宙
戦艦ヤマトでは,上記の攻撃により,艦尾部付近から,赤色や黄白色
の非常に大きな炎と煙が生じており,大きな爆発で甚大な被害を受け
ているように描かれている。
背景は,暗青色で,全体的に暗い。
b被告映像対比表6部分
被告映像対比表6部分は,約1秒間の動画映像であり,宇宙空間を
飛行中の戦艦様の飛行物体が,艦体の右側部分に攻撃を受けている様
子が,当該飛行物体の前方右側の位置から描かれている。
飛行物体は,概ね戦艦の形状をしており,艦首部に発射口が設置さ
れ,同発射口は白色に発光しており,艦首部の先端上端部には円形の
切れ込みがあり,喫水線付近で上下に色分けされて,上部は灰色,下
部は赤色となっており,艦体後部には艦橋がわずかに見え,側面中部
に,半円盤状の翼様のものが,その後方に,通常の戦闘機の翼様のも
のが,それぞれ設置されている。半円盤状の翼様のものの側面前方部
分には,4か所に,白色に発光している部分があり,戦闘機の翼様の
ものには,白色に発光した補助エンジン様のものが1つ設置されてい
る。
飛行物体の艦首部は,飛行物体全体の構図としては,極端に大きく
強調されて描かれている。
攻撃の態様としては,画面左側から飛来してくる何条もの光線が,
飛行物体の右側の,主に半円盤状の翼様のものの前方部分に当たり,
当該部分には,爆発により白色に発光した炎が生じるが,その炎はす
ぐに消え去り,上記攻撃による被害は小規模なものにとどまっている
ように描かれている。上記炎の画面上に占める大きさの割合は,本件
映画対比表6部分における炎の大きさの割合の10分の1程度である。
飛行物体の周りには,戦闘機は飛行していない。
背景は,所々に,白色に発光している部分があるため,全体的に明
るい。
(イ)対比
本件映画対比表6部分と被告映像対比表6部分とでは,前記(ア)のと
おり,宇宙空間を飛行する戦艦が,攻撃を受け,その部分に爆発による
炎が生じている様子が,戦艦の右側前方の位置から描かれている点,そ
の戦艦の艦首部には発射口が設置されている点,艦首部の先端上端部に
は円形の切れ込みがあり,喫水線付近で上下に色分けされて,上部は灰
色,下部は赤色となっている点,戦艦には艦橋がある点で共通する。
しかしながら,前記ウのとおり,本件映画が制作された時点で,先端
に穴が空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いた画像が存在し
ていたことが認められ,そのような表現形式はありふれており,また,
証拠(乙40)によれば,本件映画が制作された時点で,戦艦の艦首部
の先端上端部に円形の切れ込みがある映像も存在していたことが認めら
れ,そのような表現形式もありふれたものである。さらに,証拠(乙7
3)によれば,昭和35年5月に発売された戦艦大和のプラスチック模
型は,宇宙戦艦ヤマトの艦首に発射口があることを除けば,宇宙戦艦ヤ
マトと類似した形態及び色彩をしていることが認められ(宇宙戦艦ヤマ
トの形状及び色彩は,戦艦大和ないし一般的な戦艦の形状及び色彩に基
づいて制作され,これに艦首の発射口を設けたものと認められる。),
したがって,宇宙戦艦ヤマトの形状及び色彩は,艦首に発射口がある点
を除いて,ありふれたものであり,上記共通点の,艦橋が設置され,そ
の前方に主砲が設置されており,喫水線付近で上下に色分けされ,上部
は灰色に,下部は赤色となっている点もありふれた表現形式というべき
である。
しかも,戦艦を宇宙空間を飛行させること自体は,アイデアにすぎず,
また,暗青色の空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は,上
記同様,特徴あるものとはいえない。
さらに,戦艦が攻撃を受けている様子を描くこと,それを戦艦の右側
前方の位置から描くこと,攻撃を受けた場所から炎が生じるように描く
ことは,ありふれた表現形式である。
したがって,上記両映像の上記共通点は,いずれも両映像にとって特
徴的な表現ということはできず,この点が共通することが,両映像の同
一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表6部分は,本件映画対比表6部分の複製
物ということはできない。
シ被告映像対比表7部分は,本件映画対比表7部分の複製物といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表7部分
本件映画対比表部分7部分は,宇宙戦艦ヤマトが宇宙空間を飛行し
ている様子が描かれた約10秒間の動画映像である。
上記映像部分は,何もない宇宙空間を宇宙戦艦ヤマトが,画面の中
央やや右寄りの部分から近づいて来て,次いで,画面の中央やや左寄
りの部分の奥の方向へ遠ざかって行く様子が描かれたものである。最
初の場面では,宇宙戦艦ヤマトの艦首部,左舷及び艦橋が左斜め前方
の離れた位置から描かれているが,宇宙戦艦ヤマトがそのままの状態
で画面に近づいて来て,左舷部が拡大され,画面全体を左舷部が占め
るようになり,その後,視点が,宇宙戦艦ヤマトの左後方に徐々に移
動して,画面を見る者の目の前を通過して行くような印象を与え,さ
らに,視点が,宇宙戦艦ヤマトの左斜め後方まで移動すると,その位
置から,宇宙戦艦ヤマトが,画面の中央よりやや左よりの奥の方へ,
遠ざかって行く様子が描かれている。
宇宙戦艦ヤマトの形状は,艦首部に発射口が設置され(発射口は発
光していない。),発射口が設置されている以外は,通常の戦艦と同
様の形状であり,艦首部の先端上端部に円形の切れ込みがあり,喫水
線付近で上下に色分けされ,上部は灰色に,下部は赤色となっており,
艦体中央部の後ろよりの部分には艦橋があり,艦橋の前には主砲が設
置されている。艦体の側面に,翼様のものは設置されていない。宇宙
戦艦ヤマトの艦尾は円形をしており,全体がメインエンジンの噴出口
となっており,同噴出口はオレンジ色に発光している。また,艦尾の
底部には,補助エンジンの噴出口が2つ設置されており,同噴出口も
オレンジ色に発光している。艦尾には,相互に120度の角度に開い
た3本の尾翼が設置されている。
背景は,暗青色で,全体的に暗く描かれている。
b被告映像対比表7部分
被告映像対比表7部分は,戦艦様の飛行物体が宇宙空間を飛行して
いる様子が描かれた約27秒間の動画映像である。
上記映像部分は,宇宙空間を,戦艦様の飛行物体が,画面の中央部
辺りから,近づいて来て,次いで,画面の中央部の方向へ遠ざかって
行く様子が描かれたものであり,最初の場面では,飛行物体の艦首部,
左舷及び艦橋が,左斜め前方の,それらが全部見渡せる程度にやや離
れた位置から描かれていたが,飛行物体がそのままの状態で画面に近
づいて来て,艦橋部分がある程度拡大され,その後,視点が飛行物体
の左後ろへ徐々に移るように移動し,画面を見る者の目の前を通過し
ていくような印象を与え,視点が飛行物体の真後ろの位置まで移動す
ると,その位置から,飛行物体が,画面の中央の奥の方へ,遠ざかっ
て行く様子が描かれている。視点が飛行物体の真後ろにくると,まず,
画面中央奥に,画面の概ね4分の1を占める程度の大きさで,人間の
上半身が現れ,その後,上記の人間の映像は消え,代わりに,画面中
央奥に,飛行物体に一部が隠れた状態で,地球が現れ,飛行物体が地
球に向かっているという印象を受けるように描かれている。
飛行物体は,概ね戦艦の形状をしており,艦首部に発射口が設置さ
れ,同発射口は白色に発光しており,艦首部の先端上端部には円形の
切れ込みがあり,喫水線付近で上下に色分けされ,上部は灰色に,下
部は赤色となっており,艦体後部には艦橋があり,艦橋の前には,主
砲が設置され,側面中部に,半円盤状の翼様のものが,その後方に,
通常の戦闘機の翼様のものが,それぞれ設置されている。
上記飛行物体の艦尾は,円形をしており,全体がメインエンジンの
噴出口となっており,同噴出口は,前方に人間の姿が現れているとき
は,白色の発光が点滅し,人間の姿が消えると,黄白色に発光するよ
うになる。また,上記飛行物体の両側面に大きな主翼が設置されてお
り,同飛行物体を真後ろから見ると戦闘機ないし飛行機のように見え
る。艦尾の上部と底部に,補助エンジンの噴出口が,それぞれ2つず
つ設置され,上記各翼にも,各1つずつ補助エンジンの噴出口が設置
されており,いずれの噴出口も黄白色に発光している。さらに,艦尾
には,相互に90度の角度に開いた4本の尾翼が設置されている。
背景は,暗青色であるが,飛行物体が画面に向かって近づいて来る
場面では,一部,光が当たっているように,明るくなっている部分が
ある。また,飛行物体が,遠ざかって行く場面では,途中から,画面
奥にある地球の上部付近の宇宙空間から白色の発光が生じ,その発光
部分が大きくなり,画面全体を覆うと,今度は,縮小し,最終的に,
発光部分に「完」という文字が現れる。
(イ)対比
本件映画対比表7部分と被告映像対比表7部分とは,前記(ア)のと
おり,宇宙空間を戦艦が画面に近づいて来て,その後,奥へ遠ざかっ
て行く様子が描かれている点,視点が変化していき,最終的には戦艦
の後ろの位置から描写している点,艦首部に発射口が設置され,艦首
部の先端上端部には円形の切れ込みがあり,喫水線付近で上下に色分
けされ,上部は灰色に,下部は赤色となっており,艦体後部には艦橋
があり,艦橋の前には,主砲が設置されている点,戦艦の艦尾の全体
がエンジンの噴出口となっており,同部分が発光している点で共通し
ている。
しかしながら,前記ウのとおり,本件映画が制作された時点で,先
端に穴が空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いた画像が存
在していたことが認められ,そのような表現形式は,ありふれたもの
であり,また,前記サのとおり,戦艦の艦首部の先端上端部に円形の
切れ込みを描くことも,ありふれた表現形式である。さらに,前記サ
のとおり,宇宙戦艦ヤマトの上記形状及び色彩は,艦首に発射口があ
る点を除いて,ありふれたものであり,上記共通点の,艦橋とその前
方に主砲が設置されており,喫水線付近で上下に色分けされ,上部は
灰色に,下部は赤色となっている点もありふれた表現形式というべき
である。
また,証拠(乙37の3,46,68の1,69,75)よれば,
本件映画が制作された時点で,飛行物体の後部の全面がエンジンの噴
出口となっている画像が存在していたことが認められ,このような表
現も,特に目新しい表現ということはできない。
しかも,戦艦を宇宙空間を飛行させること自体は,アイデアにすぎ
ず,また,暗青色の空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現
は,上記同様,特徴あるものとはいえない。
したがって,上記両映像に上記共通点が存在することが,両映像の
同一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のう
ちの具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異
なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはでき
ないというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表7部分は,本件映画対比表7部分の複
製物ということはできない。
ス被告映像対比表8部分は,本件映画対比表8部分の複製物といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表8部分
本件映画対比表8部分は,宇宙空間を背景にして,宇宙戦艦ヤマト
の艦橋が,前方の位置から,見上げるようにして描かれた,約1秒間
の動画映像である。
上記映像部分は,最初,画面中央に,艦首の先端上端部越しに艦橋
及びその前方にある主砲が描かれており,主砲は,艦首先端上端部に
ある円形の切れ込みの部分から見えている。その後,視点が艦橋の方
向に直進するように移動し,艦橋が徐々に拡大されていき,最終的に
は,艦首先端上端部は画面下方に消え去り,画面一杯に,艦橋が映し
出される。
艦橋には,一対のアンテナ様の物体及び翼様の物体が左右に設置さ
れている。
背景は,暗青色の宇宙空間であり,艦橋の後方に,土星様の惑星が
画面の5分の1程度の大きさで描かれている。同惑星の上方部分は,
光に照らされているように明るいが,画面全体は,暗く描かれている。
b被告映像対比表8部分
被告映像対比表8部分は,宇宙空間を背景にして,戦艦様の飛行物
体の艦橋及びその前方の甲板が,前方の位置から俯瞰して描かれた約
2秒間の動画映像である。
上記映像部分は,最初,画面中央に,艦橋の正面上方から,艦橋部
分とその前方の甲板が俯瞰して描かれており,艦首部分は画面上現れ
ない。その後,視点が艦橋の方向に直進するように移動し,艦橋部分
が徐々に拡大されていき,それに伴い,艦橋の最上部付近から白色の
光が生じ,その発光部分が次第に拡大していき,画面のほとんどが発
光部分で覆われるようになると,今度は,発光部分が縮小していき,
艦橋の最上部付近に「チャンスタイム」という文字が,その下の艦橋
の最下部付近に「100回」との文字が現れる。
艦橋には,一対のアンテナ様の物体及び翼様の物体が左右に設置さ
れている。
背景は,艦橋の最上部付近から光が生じる以前は,暗青色の宇宙空
間であるが,一部に白色に発光している部分があり,また,艦橋が光
に照らされているように,非常に明るく描かれており,全体的に明る
い。その後,艦橋の最上部付近から光が生じて以降は,画面全体が非
常に明るくなる。
(イ)対比
本件映画対比表8部分と被告映像対比表8部分とでは,暗青色の宇宙
空間を背景にして,戦艦の艦橋が,前方の位置から描かれている点,視
点が艦橋にあり,艦橋が徐々に拡大されていく点,艦橋には,一対のア
ンテナ様の物体及び翼様の物体が左右に設置されている点で共通する。
しかしながら,証拠(乙43,72,76)によれば,本件映画が制
作される以前にも,艦橋の左右にアンテナ様の物体や翼様の物体が設置
されている画像が存在していることが認められ,したがって,上記共通
部分のうち,艦橋に一対のアンテナ様の物体及び翼様の物体を左右に設
置して描いた点は,ありふれた表現形式である。また,艦橋を前方の位
置から描き,艦橋を徐々に拡大していくことは,ありふれた表現形式で
あり,宇宙空間を暗青色に描くことも,前記のとおり,ありふれた表現
形式である。さらに,戦艦を宇宙空間を飛行させること自体は,アイデ
アにすぎず,また,暗青色の空間を艦船又は飛行物体が進んで行くとい
う表現は,上記同様,特徴あるものとはいえない。
したがって,上記両映像に上記共通点が存在することが,両映像の同
一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表8部分は,本件映画対比表8部分の複製
物ということはできない。
セ被告映像対比表9部分は,本件映画対比表9部分の複製物といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表9部分
本件映画対比表9部分は,暗青色の宇宙空間を背景に,宇宙戦艦ヤ
マトが,画面中央奥から,画面を見る者に向かって直進してくる様子
が,宇宙戦艦ヤマトの前方正面から,同戦艦を見上げる角度で描かれ
た,3秒弱の動画映像である。
上記映像部分は,最初,画面の中央の上半面部分に宇宙戦艦ヤマト
が描かれ,その後,徐々に,宇宙戦艦ヤマトが画面を見る者に向かっ
て,上から降りてくるように接近し,艦首部及びその奥の艦橋が拡大
され,最終的には,艦首部のうち発射口より上の部分と,艦首越しに
艦橋が,画面の約3分の1程度を占める大きさで,前方下方の位置か
ら描かれるようになる。発射口は発光していない。
宇宙戦艦ヤマトは,艦首部に発射口が設置されているが,その点を
除けば,概ね普通の戦艦の形状をしており,艦首部の上端部には,円
形の切れ込みが,中央部に1つ,その左右対称の位置に各1つ,描か
れており,喫水線付近を境に色分けがされており,上部は灰色に,下
部は赤色に着色されている。
艦橋には,一対のアンテナ様の物体及び翼様の物体が左右に設置さ
れている。
映像部分の最終場面では,上記の艦首部の先端上端部の中央の切れ
込み部分から,主砲らしきものが見える。
背景は,暗青色の宇宙空間であり,艦橋の後方に,土星様の惑星が
画面の5分の1程度の大きさで描かれている。同惑星の上方部分は光
に照らされているように明るいが,画面全体は,暗く描かれている。
b被告映像対比表9部分
被告映画対比表9部分は,宇宙空間を背景に,戦艦様の飛行物体が,
画面中央奥から,画面を見る者に向かって直進して来る様子が,当該
飛行物体の前方正面の,飛行物体と同じ高さの位置から描かれた6秒
余りの動画映像である。
上記映像部分は,最初,白色に発光した発射口が画面の中心となる
ように,画面の中央部に,戦艦様の飛行物体の艦首部のうち,喫水線
下のバルジの下端部分を除いたすべての部分が描かれているが,その
後,画面右側から左側に稲妻が落ちるように,画面の中段部が激しく
白色に発光し,その発光度が増して,飛行物体のうちの喫水線より上
の部分が全く見えなくなり,その後,その発光が収まるとともに,発
光部分が「FEVER」という文字に変化する。その文字の後ろに飛
行物体が見えるようになり,そのころから,飛行物体は,徐々に,画
面に接近してきて,最終的には,発射口とその周辺部分が画面一杯に
描かれるようになる。上記の「FEVER」という文字が画面に現れ
た後も,少量ではあるが,稲妻様の光は発生している。
戦艦様の飛行物体は,艦首部に発射口が設置されており,その発射
口が白色に発光しており,艦首部の上端部には,円形の切れ込みが,
中央部に1つ,その左右対称の位置に各1つ,描かれており,喫水線
付近を境に色分けがされており,上部は灰色に,下部は赤色に着色さ
れている。艦体の左右の側面には,前方に半円盤状の翼様のものと,
その後方に戦闘機の翼様のものが設置されている。また,翼様のもの
には,白色に発光した補助エンジンが各1個ずつ設置されている。
戦艦様の飛行物体は,発射口と補助エンジン部分を除いて,薄暗く
描かれ,白色に発光した発射口と補助エンジンが,かなり目立つよう
に描かれている。
艦橋と主砲は,画面上現れない。
背景の宇宙空間は,稲妻様の光が生じる以前は,所々が明るく描か
れているが,稲妻様の光が生じた以降は,画面が全体的にかなり明る
く描かれている。
(イ)対比
本件映画対比表9部分と被告映像対比表9部分とは,宇宙空間を背景
に,戦艦が,画面中央奥から,画面を見る者に向かって直進して来る様
子が,前方正面から描かれている点,戦艦の艦首部に発射口が設置され
ており,艦首部の上端部には,円形の切れ込みが,中央部に1つ,その
左右対称の位置に各1つ,描かれており,喫水線付近を境に色分けがさ
れており,上部は灰色に,下部は赤色に着色されている点で共通してい
る。
しかしながら,前記のとおり,先端に穴が空いた飛行物体が宇宙を航
行している様子を描いたこと,艦首先端上端部に円形の切れ込みを描い
たこと,艦体を喫水線付近を境に色分けし,上部は灰色に,下部は赤色
に着色した点は,いずれも,ありふれた表現形式であり,また,艦体が
画面に向かって直進して来る様子を,その正面の位置から描くこともあ
りふれている。さらに,戦艦を宇宙空間を飛行させること自体は,アイ
デアにすぎず,また,暗青色の空間を艦船又は飛行物体が進んで行くと
いう表現は,上記同様,特徴あるものとはいえない。
したがって,上記両映像に上記共通点が存在することが,両映像の同
一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表9部分は,本件映画対比表9部分の複製
物ということはできない。
ソ被告映像対比表10部分は,本件映画対比表10部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表10部分
本件映画対比表10部分は,黄緑色の惑星の上方の宇宙空間で停止
している宇宙戦艦ヤマトと,その周辺を飛行している戦闘機の様子が,
宇宙戦艦ヤマトの前方の位置から描かれた約3秒弱の動画映像である。
上記映像部分では,宇宙戦艦ヤマトは,画面中央に,画面の約10
分の1程度の大きさで描かれ,停止しており,その前方及び後方から,
複数の戦闘機が現れ,宇宙戦艦ヤマトの周りを飛行しているように描
かれている。
上記戦闘機は,後部にあるエンジン噴出口及びその周辺が黄白色に
発光しているが,排気を噴出していない。
宇宙戦艦ヤマトは,艦首部に発射口が設置されているが,それ以外
は通常の戦艦と同じ形状であり,喫水線付近で色分けがされ,喫水線
付近の上部は灰色に,下部は赤色に着色され,艦首部の先端上端部に
は,円形の切れ込みが,中央に1つ,その左右対称の位置に各1つ存
在し,翼は設置されていない。また,艦橋も描かれており,発射口は
発光していない。
背景は宇宙空間であるが,画面の下側6割には,黄緑色の惑星の一
部が描かれており,その惑星の地表部分の様子がある程度描かれてい
るため,宇宙戦艦ヤマトは,惑星上空の近距離の位置で停泊している
ように描かれている。
b被告映像対比表10部分
被告映像対比表10部分は,宇宙空間を,画面の若干右側に向かっ
て直進している戦艦様の飛行物体と,その周辺を飛行している戦闘機
の様子が,戦艦様の飛行物体の前方の位置から描かれた1秒弱の動画
映像である。
上記映像部分では,戦艦様の飛行物体は,画面の中央の奥から,画
面を見る者の若干右側に向かって直進しており,同飛行物体の後ろか
ら,複数の戦闘機が,黄白色に発光した非常に大量の排気を噴出しな
がら,飛行物体を追い抜いて行く様子が描かれている。戦艦様の飛行
物体の大きさは,概ね画面の約20分の1程度である。そして,上記
戦闘機から噴出された排気の軌跡は,長く明確に描かれ,上記映像部
分の終盤の場面では,上記排気の面積が大きくなり,戦艦様の飛行物
体と同程度の大きさに描かれている。
戦艦様の飛行物体は,艦首部に発射口が設置され,同発射口は白色
に発光しており,艦首部の先端上端部に円形の切れ込みがあり,喫水
線付近で色分けがされ,喫水線付近の上部は灰色に,下部は赤色に着
色されている。上記飛行物体には,左右の側面に大きな翼が設置され
ているが,艦橋は描かれていない。
背景は,宇宙空間であるが,画面左上角の,画面全体の3分の1を
占める程度の部分には,地球様の水色と白色の混ざった惑星の一部が
描かれている。
(イ)対比
本件映画対比表10部分と被告映像対比表10部分とは,宇宙空間に
おいて,戦艦とその周辺を飛行する戦闘機が,戦艦の前方の位置から描
かれている点,背景に惑星の一部が描かれている点,戦艦の形状として,
その艦首部には発射口があり,艦首部の先端上端部には円形の切れ込み
があり,喫水線付近で色分けがされ,喫水線付近の上部は灰色に,下部
は赤色に着色されている点が共通している。
しかしながら,前記のとおり,艦首先端上端部に円形の切れ込みを描
いたこと,艦体を喫水線付近を境に色分けし,上部は灰色に,下部は赤
色に着色した点は,いずれも,ありふれた表現形式であり,また,艦体
を正面から描くこと,背景に惑星の一部を描くこともありふれている。
さらに,戦艦を宇宙空間を飛行させること自体は,アイデアにすぎず,
また,暗青色の空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は,上
記同様,特徴あるものとはいえない。
したがって,上記両映像に上記共通点が存在することが,両映像の同
一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表10部分は,本件映画対比表10部分
の複製物ということはできない。
タ被告映像対比表11部分は,本件映画対比表11部分の複製物といえる
か。
本件映画対比表11部分は,本件映画対比表26部分と同一の映像であ
り,被告映像対比表11部分は,被告映像対比表26部分と極めて類似す
る映像であるところ,被告映像対比表26部分は,後記ヤのとおり,本件
映画対比表26部分の複製物といえない。そして,被告映像対比表11部
分は,被告映像対比表26部分に比べて,側壁の有無,前面のパネルの形
状等において,更に本件映画対比表11部分(及び本件映画対比表26部
分)との共通点が少なくなり,それに対応して,相違点が多くなるのであ
るから,被告映像対比表11部分は,当然,本件映画対比表11部分の複
製物ということはできない。
チ被告映像対比表12部分は,本件映画対比表12部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表12部分
本件映画対比表12部分は,室内の黒い壁を背景に,黒色のコート
様のユニフォームを着て,軍帽を目深に被り,口を動かして,話をし
ている体格のよい熟年男性が描かれた8秒余りの動画映像である。
上記映像部分では,最初,男性の顔が拡大され,正面から若干左に
ずれた位置から描かれ,次に,画面が切り替わり,男性が椅子に腰掛
けている様子が,その肩より上の部分について描かれ,その後,男性
が椅子から立ち上がり,立った状態の男性の,胸部から上の部分が正
面から描かれている。
男性の顔は,帽子に隠れていない部分では,目,頬骨,鼻,耳以外
は,白い髭で覆われており,下唇にも髭が生えているため,唇は全く
見えない。男性の髭は,口髭と顎髭が分離しておらず,顔の輪郭に
沿った形をしており,短い。この顔の大部分を覆っている髭部分は,
印象が強い。
帽子は,上部が白色,下部が黒色であり,中央に金色の徽章と金色
の顎紐が付いている。
コート様のユニフォームは,黒色で,左前に合わせるようになって
おり,合わせ部分が大きく,左の胸部分に金色の碇様の図形が描かれ
ている。両肩には金色の肩章が付いており,襟は大きく,折り返され
て肩に被さっており,折り返された裏地部分は,白く縁取られた赤色
である。男の襟元からは,白いスカーフ様のものが見えている。
b被告映像対比表12部分
被告映像対比表12部分は,青色の背景の屋内で,青色のコート様
のユニフォームを着て,軍帽を目深に被り,手を下に垂らした状態で
直立して,口を終始閉じている体格のよい熟年男性が,男性の右前方
から描かれている約19秒間の動画映像である。
上記映像部分では,最初,男性の胴体部分しか描かれていないが,
すぐに視点が男性の顔の方へ移動して,男性の胸部より上の部分が描
かれるようになり,以後,その状態が続く。
男性の顔は,灰色の口髭と顎髭が生えているが,下唇は髭に覆われ
ておらず,耳は,コート様のユニフォームの襟部分に隠れて見えない。
男性の顎髭は,下方に若干伸びている。また,髭で覆われている部分
が,本件映画対比表12部分で描かれている男性よりも少ないことか
ら,鼻や口部分の印象が強くなっている。
帽子は,上部が白色,下部が黒色であり,中央に金色の徽章と金色
の顎紐が付いている。帽子の上部の白色の部分は,丸くふくらんだよ
うな形をしている。
コート様のユニフォームは,身体の中央からやや右側にずれた位置
でボタンで留めるようになっており,左の胸部に金色の碇様の図形が
描かれている。両肩には金色の肩章が付いており,襟は大きく,立ち
上がった部分が男性の顔の半分程度を覆うほどの高さがあり,折り返
された裏地部分は,白く縁取られた赤色である。男性の襟元から,白
いスカーフ様のものが見える。
(イ)対比
本件映画対比表12部分と被告映像対比表12部分とは,前記(ア)の
とおり,屋内で,コート様のユニフォームを着て,軍帽を目深に被り,
体格のよい熟年男性が描かれている点,画面の後半の場面では,頭,顔
及び肩ないし胸の付近が映っている点,男性の顔には口髭と顎髭が生え
ている点,帽子は,上部が白色,下部が黒色であり,中央に金色の徽章
と金色の顎紐が付いている点,両肩に肩章が付いている点,コート様の
ユニフォームの襟は大きく,折り返された裏地部分が白く縁取られた赤
色である点,襟元から白いスカーフ様のものが見える点で共通する。
しかしながら,上記両映像中に描かれている男性には,前記(ア)のと
おりの相違点があるが,アニメーション映画の登場人物は,顔や服装と
いった細部の違いから,相当に異なった印象を受けることが多いものと
解されるところ,上記のような顔(とりわけ髭の分量から受ける印象)
や服装に大きな違いがあれば,別人として認識されると解される。また,
その他の表現形式や,上記の共通する表現形式における具体的な表現形
式において,前記(ア)の認定で明らかなように,両映像は大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表12部分は,本件映画対比表12部分
の複製物ということはできない。
ツ被告映像対比表13部分は,本件映画対比表13部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表13部分
本件映画対比表13部分は,約10秒間の動画映像であり,室内で,
眼鏡をかけ,頭髪のほとんどない男性が,椅子に腰掛けて,画面には
映っていない者に対して話しかけながら,湯飲み茶碗で日本酒を飲ん
でいる様子が,男性の右斜め前方から描かれている。
男性の人相は,①頭頂部が比較的尖った下ぶくれの輪郭で,髪の毛
は,耳の上の辺りだけにわずかに生えており,②口が大きく誇張され,
③目は黒い点であり,④小さな丸いフレームの眼鏡をかけており,⑤
眼鏡は,ずれ落ちて,目が眼鏡の上に露出しており,⑥鼻は,山型を
し,⑦眉毛は,細く,長い八の字の形をしている。
男性の右横には,小さな金属製の机があり,男性は,椅子に腰掛け
て,右の肘を机の上に載せている。机の上には,日本酒の一升瓶が置
いてある。
男性は,左手で日本酒を飲もうとし,一口飲む前に,舌なめずりを
するように長い舌をほおの辺りまで出し,飲み終わると,右手で口を
拭うような仕草をする。
男性は,半袖の白色の服を着ており,左胸部に赤色の十字の図形が
描かれており,襟元は赤く着色されている。
男性の背後には,本棚があり,百科事典のような体裁の本が並んで
いる。
b被告映像対比表13部分
被告映像対比表13部分は,眼鏡をかけて頭髪のほとんどない男性
が,右手を肩の位置まで挙げて立っている様子が,ほぼ正面から描か
れた約9秒間の動画映像である。
男性は,最初の1秒間に,体を全く動かさない状態のままで,画面
左側から右側に移動する。
男性の人相は,①頭頂部は尖っておらず,下ぶくれの輪郭で,髪の
毛は,耳の上の辺りだけにわずかに生えており,②口は大きいが,誇
張されておらず,③目は黒い点であるが,眼鏡の奥に描かれており,
④普通の大きさの,角が丸味を帯びた四角いフレームの眼鏡をかけて
おり,⑤眼鏡はずれ落ちておらず,⑥鼻は,団子鼻であり,⑦眉毛は,
短く,太い八の字の形をしている。
男性は,挨拶をするように,右手を肩の位置まで挙げて,手のひら
を画面を見る者の方に向けている。
男性は,袖をまくった緑色のジャンパーを,前を開けて羽織り,内
側に着ている白いTシャツが見えている。
(イ)対比
本件映画対比表13部分と被告映像対比表13部分とは,前記(ア)の
とおり,頭髪がほとんどなく,眼鏡をかけた男性が描かれている点,そ
の男性の口が大きい点で共通するが,上記(ア)の認定から明らかなよう
に,その他の表現形式や,上記の共通する表現形式のうちでも具体的な
表現形式は,大きく異なる。特に,眼鏡の形や大きさ,鼻の形,口部分
の形状において,両映像の男性の人相が大きく異なり,両人物は,アニ
メーション映画の登場人物としては完全に別人と認識されるものといえ
る。
したがって,両映像が同一であるということはできないというべきで
ある。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表13部分は,本件映画対比表13部分の
複製物ということはできない。
テ被告映像対比表14部分は,本件映画対比表14部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表14部分
本件映画対比表14部分は,約2秒間の動画映像であり,室内にお
いて,赤色をした人型のロボットが,頭部,胴部,下半身の3つのパ
ーツに分離する様子が,正面から描かれている。
ロボットは,青色の壁と茶色の床を背景として,画面上にすべての
部分が入るように描かれており,途中で,頭部が分離して,浮遊し始
め,続いて,胴部が右側に回転した後,左側に回転して元の位置に戻
り,その後,胴部が下半身と分離して,浮遊し始める。
ロボットの頭部は,半球状をしており,頭頂部に3つの大きな鶏冠
状の突起物があり,両側面はガラスで覆われ,そのガラスの中に円形
の目が付いている。頭部の正面中央部には,円形の計器が3つ付いて
おり,その両側にも小さな円形の計器がそれぞれ1つずつ付いている
が,これらの計器は,ときどき,白色や黄色に発光する。鼻に相当す
るものはない。頭部の最下部には,多数の小さな長方形の黄色いパネ
ル様のものが一列の帯状に付いており,同パネル様の部分は,ときど
き発光する。また,頭部の両側面の下部から,1本ずつ短いアンテナ
が出ている。
胴部には腕が付いており,手には5本の指がある。胴部の中央部に
は,円形の計器が1つ,その下に黄色の部品が2つ,更にその下に小
さな白色の部品が5つ,それぞれ付いている。
下半身には,人と同様の太い足が付いている。
b被告映像対比表14部分
被告映像対比表14部分は,ロボットが,両腕を振りながら,頭部,
胴部,下半身の3つのパーツを分離したり,一体となったりを繰り返
して踊っている様子が,正面から描かれた約12秒間の動画映像であ
る。
ロボットは,頭部,胴部,下半身部分とに分離され,いずれのパー
ツも,その大部分がオレンジ色をしている。
ロボットの頭部は,半球状をしており,頭頂部に小さな突起物があ
り,両側面に円形の青色の目が付いており,鼻の位置が黄色に色分け
されている。頭部には,計器様のものは一切付いていない。頭部の最
下部には,多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状
に付いている。
胴部には,腕が付いており,手には,指様のものが付いているが,
具体的な形状は不明確である。胴部の中央部分には,緑色の円形のも
のがあり,その左右に小さな白色の突起物が付いている。胴部には,
計器様のものは一切付いていない。胴部の最下部には,多数の小さな
長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。
下半身は,人間の足の代わりに半球状のものが付いている。下半身
の最上部には,多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の
帯状に付いている。
(イ)対比
本件映画対比表14部分と被告映像対比表14部分とは,前記(ア)の
とおり,頭部,胴部,下半身の3つのパーツから成るロボットが,3つ
のパーツに分離する場面が正面から描かれた点,ロボットの頭部が半球
状をしており,両側面に円形の目が付いており,その最下部には,多数
の小さな長方形のパネル様のものが一列の帯状に付いている点,胴部に
は腕が付いている点において共通する。
しかしながら,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式
のうちの具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく
異なる。特に,両映像のロボットの形状が大きく異なり,両ロボットは,
アニメーション映画に登場するロボットとしては完全に別のロボットと
認識されるものといえる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表14部分は,本件映画対比表14部分の
複製物ということはできない。
ト被告映像対比表15待機映像部分は,本件映画対比表15部分の複製物
といえるか。
前記アと同様の理由により,被告映像対比表15待機映像部分は,本件
映画対比表15部分の複製物ということはできない。
ナ被告映像対比表15大ヤマト砲発射部分は,本件映画対比表15部分の
複製物といえるか。
前記アと同様の理由により,被告映像対比表15大ヤマト砲発射部分は,
本件映画対比表15部分の複製物ということはできない。
ニ被告映像対比表16待機映像部分は,本件映画対比表16部分の複製物
といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表16部分
本件映画対比表16部分は,本件映画対比表2部分と同一であり,
前記ウ(ア)aで判示したとおりである。
b被告映像対比表16待機映像部分
被告映像対比表16待機映像部分は,約0.1秒の動画映像であり,
暗青色の宇宙空間を背景にして,画面の中央部にある戦艦様の飛行物
体の艦首部の光線の発射口が黄白色に発光しており,その発光部分に
向かって,画面全体から無数の白色の光の粒子が吸い込まれていく様
子が,発射口が拡大されて,正面から描かれている。
上記映像部分では,正面からの視点が移動せず,発射口の大きさは
終始一定である。
発射口は,画面全体の約3分の1程度を占めており,発射口の周辺
以外の艦首部は,ほとんど画面に映っていない。発射口は,画面を見
る者に照準を合わせている。
飛行物体の左右底部の両側面には,半円盤状の翼様のものが設置さ
れており,翼様のものの前面には,緑色に発光している小さな部材が
複数付いているため,翼様のものの存在は明確に認識できる。
発射口内部は,奥の部分が白色に強く発光し,その周辺部分が黄白
色に弱く発光しており,内部の様子は明確には認識できない。発射口
は,常に明るい状態のままである。
また,発射口に向かって画面全体から吸い込まれる白色の光の粒子
は,発射口内部に渦を巻くようにして吸い寄せられている。
(イ)対比
本件映画対比表16部分と被告映像対比表16待機映像部分とは,前
記(ア)のとおり,画面の中心部に,宇宙空間を背景にして,戦艦の艦首
に存在する発射口の内部が発光している様子が,発射口が拡大されて,
描かれている点,発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していく
様子が描かれている点で共通している。
しかしながら,前記のとおり,宇宙空間を飛行する飛行物体の艦首に
発射口を設けること,その発射口が発光することを描くことは,特に目
新しい表現形式ということはできない。そして,戦艦が宇宙空間を飛行
すること自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間を艦船又は
飛行物体が進んで行くという表現は,上記同様,特徴あるものとはいえ
ない。さらに,宇宙空間を暗青色に描くこと,発射口を拡大して描くこ
とも,ありふれた表現形式である。
したがって,上記両映像の上記共通点のうち,宇宙空間を背景にして,
戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が,発射口を拡
大して描かれている部分は,両映像にとって特徴的な表現ということは
できず,この点が共通することが,両映像の同一性の判断において,大
きな意味を有するということはできない。そして,宇宙空間を背景にし
て,戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具
体的な表現形式については,前記(ア)のとおり,大きく異なる。
また,発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部
分は,ありふれた表現ということはできないが,その具体的な表現形式
は,前記(ア)のとおり,大きく異なっている。
さらに,その他の表現形式も,前記(ア)の認定から明らかなように,
大きく異なっている。
以上の事実を総合考慮すると,被告映像対比表16待機映像部分と本
件映画対比表16部分との間に同一性は認められないというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表16待機映像部分は,本件映画対比表1
6部分の複製物ということはできない。
ヌ被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分は,本件映画対比表16部分の
複製物といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表16部分
本件映画対比表16部分は,本件映画対比表2部分と同一であり,
前記ウ(ア)aで判示したとおりである。
b被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分
被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分は,暗青色の宇宙空間を背
景に,戦艦様の飛行物体の艦首部の黄白色に発光した発射口に向かっ
て,画面全体から無数の黄白色の光の粒子が吸い込まれていく様子が,
発射口を中心にして,艦首部のやや左側の位置から描かれた約6秒間
の動画映像である。
視点は,一定の位置にあり,移動しないが,発射口は,徐々に拡大
され,最終的には,画面全体の約3分の1程度を占める。発射口は,
画面を見る者に照準を合わせていない。
画面の右側上の奥に,黄白色に点灯された艦橋が見えるが,翼様の
ものは映っていない。
黄白色の光の粒子は,画面全体から大量に発射口に吸い寄せられて
いき,画面全体に,黄白色の粒子が充満している。
(イ)対比
本件映画対比表16部分と被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分と
は,前記(ア)のとおり,画面の中心部に,宇宙空間を背景にして,戦艦
の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が,発射口を中心に
描かれている点,発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していく
様子が描かれている点で共通している。
しかしながら,前記のとおり,宇宙空間を飛行する飛行物体の艦首に
発射口を設けること,その発射口が発光することを描くことは,特に目
新しい表現形式ということはできない。そして,戦艦が宇宙空間を飛行
すること自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間を艦船又は
飛行物体が進んで行くという表現は,上記同様,特徴あるものとはいえ
ない。さらに,宇宙空間を暗青色に描くこと,発射口を中心にして描く
ことも,ありふれた表現形式である。
したがって,上記両映像の上記共通点のうち,宇宙空間を背景にして,
戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が,発射口を中
心にして描かれている部分は,両映像にとって特徴的な表現ということ
はできず,この点が共通することが,両映像の同一性の判断において,
大きな意味を有するということはできない。そして,宇宙空間を背景に
して,戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の
具体的な表現形式については,前記(ア)のとおり,大きく異なる。
また,発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部
分は,ありふれた表現ということはできないが,その具体的な表現形式
は,前記(ア)のとおり,大きく異なっている。
さらに,その他の表現形式も,前記(ア)の認定から明らかなように,
大きく異なっている。
以上の事実を総合考慮すると,被告映像対比表16大ヤマト砲発射部
分と本件映画対比表16部分との間に同一性は認められないというべき
である。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分は,本件映画対
比表16部分の複製物ということはできない。
ネ被告映像対比表17待機映像部分は,本件映画対比表17部分の複製物
といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表17部分
本件映画対比表17部分は,本件映画対比表3部分と同一であり,
前記オ(ア)aで判示したとおりである。
b被告映像対比表17待機映像部分
被告映像対比表17待機映像部分は,約1秒間の動画映像であり,
画面右奥側の部材が,回転しながら,画面左手前側の部材に向かって
いき,衝突する様子が描かれている。
画面右奥側には,先端に合計5個の円筒状突起物が設置された円筒
状部材が,画面左手前側には,釣り鐘状の突起物が複数設置された円
筒状部材が,それぞれ対向して配置されている。
右奥側に配置した円筒状部材の中心部から細長い円柱状の部材が突
出してきて,同部材は,左手前側の円筒状部材の中心部まで伸び,こ
れと連結する。そして,右奥側に配置された円筒状部材が高速で回転
しながら,左手前側の円筒状部材の方に移動しようとすると,画面が
切り替わり,操縦席と推測される場所に設置された操縦用レバーのサ
イドボタンを右手の親指で押す様子が拡大されて描かれ,その後,画
面が元に戻り,右奥側の円筒状部材に設置された5個の円筒状突起物
が,高速で回転しながら,左手前側の円筒状部材の方向に移動し,同
部材に設置された複数の釣り鐘状の突起物に激しく衝突し,その際に,
強く発光する。
画面は,当初,点灯された室内程度の明るさであったが,上記円筒
状突起物が上記釣り鐘状の突起物に衝突すると,その衝突部分である
画面中央部が白色に発光する。
(イ)対比
本件映画対比表17部分と被告映像対比表17待機映像部分とは,前
記(ア)のとおり,画面の右側と左側に,部材が対向して配置され,両部
材が近づく様子が描かれている点で共通するが,この共通点は,極めて
抽象的なものであるから,両映像の同一性の有無の判断においては,大
きな意味を有しない。
そして,上記両映像間の複製権侵害の有無の判断においては,両映像
の具体的な表現形式の比較が重要であるところ,その部分は,前記(ア)
の認定から明らかなように,大きく相違する。
以上の事実を総合考慮すると,被告映像対比表17待機映像部分と本
件映画対比表17部分との間に,同一性は認められないというべきであ
る。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表17待機映像部分は,本件映画対比表1
7部分の複製物ということはできない。
ノ被告映像対比表17大ヤマト砲発射部分は,本件映画対比表17部分の
複製物といえるか。
被告映像対比表17大ヤマト砲発射部分は,被告映像対比表17待機映
像部分とほぼ同一の映像であるから,前記ネと同じ理由により,被告映像
対比表17大ヤマト砲発射部分は,本件映画対比表17部分の複製物とは
いえない。
ハ被告映像対比表18待機映像部分は,本件映画対比表18部分の複製物
といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表18部分
本件映画対比表18部分は,本件映画対比表4部分と同一であり,
前記キ(ア)aで判示したとおりである。
b被告映像対比表18待機映像部分
被告映像対比表18待機映像部分は,約0.1秒間の動画映像であ
り,暗青色の宇宙空間を背景に,戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口
から光線が発射される様子が,発射口の正面の位置から描かれている。
画面中央部に,画面全体の3分の1弱の大きさで,発射口が描かれ
ており,発射口の周辺以外の艦首部は,ほとんど画面に映っていない。
発射口は,画面を見る者に照準を合わせている。
発射口は,最初,白色に発光し,その発光の影響で,画面全体が白
色の光で満たされているが,次第に,発光部分が収縮して発射口内部
に収まっていき,全体の状況が明確になり,戦艦様の飛行物体の形状
が認識できるようになる。そして,発光部分が更に収縮して,発射口
の奥の中心部に収まり,発射口内が,奥の中心部の黄白色の発光に照
らされているような状態となり,その後,発射口の奥から,外部に向
かって黄白色の光の粒子が放出され,引き続き,発射口から大量の黄
白色の光線が発射される。発射口から発射された光線は,当初は円形
であるが,その後,5方向に帯状に伸びていくようになる。
飛行物体の左右底部の両側面には,半円盤状の翼様のものが設置さ
れており,翼様のものの前面には,緑色に発光している小さな部材が
複数付いているため,翼様のものの存在は明確に認識できる。
(イ)対比
本件映画対比表18部分と被告映像対比表18待機映像部分とは,前
記(ア)のとおり,暗青色の宇宙空間を背景に,戦艦の艦首の発射口から
光線が発射される様子が描かれている点で共通している。
しかしながら,前記のとおり,先端部に存在する発射口から光線を発
する飛行物体が,その発射口から光線を発射するという映像は,特に目
新しい表現ということはできない。そして,宇宙空間を戦艦が飛行する
こと自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間を艦船又は飛行
物体が進んで行くという表現は,上記同様,特徴あるものとはいえない。
しかも,上記の共通点は極めて抽象的なものにとどまる。
したがって,上記両映像の上記共通点は,両映像にとって特徴的な表
現ということはできず,この点が共通することが,両映像の同一性の判
断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の事実を総合考慮すると,本件映画対比表18部分と被告映像対
比表18待機映像部分との間に,同一性は認められないというべきであ
る。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表18待機映像部分は,本件映画対比表1
8部分の複製物ということはできない。
ヒ被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分は,本件映画対比表18部分の
複製物といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表18部分
本件映画対比表18部分は,本件映画対比表4部分と同一であり,
前記キ(ア)aで判示したとおりである。
b被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分
被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分は,暗青色の宇宙空間を背
景に,画面中央に位置する,戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から
光線が発射される様子が,飛行物体の左斜め前方の位置から描かれた
約1秒弱の動画映像である。
視点は,固定されており,また,対象に接近したり,離れたりもし
ない。発射口は,画面を見る者に照準を合わせていない。
画面の最初では,艦首部の周辺が黄白色に発光しているが,その後,
発光部分が5つの方向に分かれ,それぞれが帯状になって拡大してい
き,画面の枠部分まで届くと,回転して,画面のすべてが黄白色に発
光する。
飛行物体は,全体が描かれており,艦橋が画面右奥に見えるが,明
るく照らされて,目立つように描かれている。また,飛行物体の左側
面に半円盤状の翼様のものが設置されており,翼様のものの前面には,
緑色に発光している小さな部材が複数付いている。
(イ)対比
本件映画対比表18部分と被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分と
は,前記(ア)のとおり,暗青色の宇宙空間を背景に,戦艦の艦首の発射
口から光線が発射される様子が描かれている点で共通している。
しかしながら,前記のとおり,先端部に存在する発射口から光線を発
する飛行物体が,その発射口から光線を発射するという映像は,特に目
新しい表現ということはできない。そして,宇宙空間を戦艦が飛行する
こと自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間を,艦船又は飛
行物体が進んで行くという表現は,上記同様,特徴あるものとはいえな
い。しかも,上記の共通点は極めて抽象的なものにとどまる。
したがって,上記両映像の上記共通点は,両映像にとって特徴的な表
現ということはできず,この点が共通することが,両映像の同一性の判
断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の事実を総合考慮すると,本件映画対比表18部分と被告映像対
比表18大ヤマト砲発射部分との間に,同一性は認められないというべ
きである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分は,本件映画対
比表18部分の複製物ということはできない。
フ被告映像対比表19待機映像部分は,本件映画対比表19部分の複製物
といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表19部分
本件映画対比表19部分は,約2秒間の動画映像であり,宇宙空間
を背景に,宇宙戦艦ヤマトの艦首部の波動砲発射口から発射された波
動砲の様子が描かれている。
上記映像部分は,宇宙戦艦ヤマト全体が,その左斜め前方の,離れ
た位置から,艦首の発射口が画面の中心部付近に位置するように描か
れている。
発射口からは,黄白色の光が発せられており,この光は,最初は,
画面の3分の1程度を占め,宇宙戦艦ヤマトの3分の1程度を覆い隠
しているが,徐々に拡大していき,画面の6割程度を占めるまで拡大
すると,収縮し,発射口を覆い隠す程度の大きさの時点で,その中央
部から青白い光線が,勢いよく先端部を拡大しながら発射される。光
線の先端が画面の左端に達すると,その先端部は,画面の左端と発射
口との中間地点付近まで戻り,その後,再び画面の左端まで拡大して
から,上記中間地点付近まで戻った後,また,画面の左端まで拡大し,
画面左端に達すると,宇宙戦艦ヤマトが画面の右方向へ移動する(す
なわち,視点が光線の先端方向へ移動する。)。それとともに,上記
光線の画面に占める割合が高くなり,上記光線は,最終的に画面の7
割程度を占めるようになり,光線が大量に発せられている様子が描か
れる。
b被告映像対比表19待機映像部分
被告映像対比表19待機映像部分は,戦艦様の飛行物体の艦首部の
発射口から発射された大量の光線の様子が,発射口の正面から描かれ
た4秒弱の動画映像である。
前半部分では,白色に発光した光線が,5方向に分かれ,それぞれ
が帯状に回転しながら伸びていく様子が,視点を発射口から徐々に離
しながら描かれている。その後,それぞれの帯状の光線が,回転方向
に折れ曲がり,更に回転しながら1つの円形の発光体となり,画面全
体が白色に発光した状態が続いた後,最終的に,水色を帯びた白色に
変化する。
画面上は,終始,発光した大量の光線のみが映っているため,どの
ような場面を描いているのか,上記映像部分だけでは分からないが,
前後の映像から,戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から大量に光線
が発射された状況と推測できる。
(イ)対比
本件映画対比表19部分と被告映像対比表19待機映像部分とでは,
前記(ア)のとおり,戦艦の艦首部の発射口から大量に発射された発光し
た光線の状況が描かれている点で共通している。
しかしながら,前記のとおり,宇宙空間を背景に,先端部に存在する
発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は,特に目新しい表現と
いうことはできない。さらに,その光線が大量に発射されているように
描くことも,ありふれた表現形式である。そして,戦艦に宇宙空間を飛
行させること自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間を,艦
船又は飛行物体が進んで行くという表現は,上記同様,特徴あるものと
はいえない。
したがって,上記両映像の上記共通点のうち,宇宙空間を背景に,先
端部に存在する発射口から大量の光線を発する戦艦が描かれている点は,
両映像にとって特徴的な表現ということはできず,この点が共通するこ
とが,両映像の同一性の判断において,大きな意味を有するということ
はできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表19待機映像部分は,本件映画対比表1
9部分の複製物ということはできない。
ヘ被告映像対比表19大ヤマト砲発射部分は,本件映画対比表19部分の
複製物といえるか。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表19部分
本件映画対比表19部分は,前記フ(ア)aで判示したとおりである。
b被告映像対比表19大ヤマト砲発射部分
被告映像対比表19大ヤマト砲発射部分は,5秒弱の動画映像であ
り,宇宙空間を背景に,戦艦様の飛行物体の艦首部に設置された発射
口から大量に勢いよく発射された黄白色に発光した光線の様子が描か
れている。
上記映像部分の最初の場面では,黄白色に発光した光線の発射元と
なる部分が,画面中央右よりの部分に,画面の5分の1程度の大きさ
の円形状に描かれており(戦艦様の飛行物体は,発光部分に隠れて見
えない。),そこから,画面左側の端まで,画面の3分の2程度の太
さの帯状の光線が伸びており,その後,光線の発射元の部分は,画面
の右奥の方向へ徐々に移動していき(すなわち,視点が光線の先端部
に移っていき),それに伴い,上記の黄白色の光線が,火炎放射器か
ら発せられる火炎のように波を打ち,勢いよく大量に発せられている
状況が描かれ,最終的には,画面のほぼすべての部分が黄白色の光で
覆われる。
画面上には,戦艦様の飛行物体は映らないが,前後の映像から,戦
艦様の飛行物体の艦首部の発射口から大量に光線が発射された状況と
推測できる。
(イ)対比
本件映画対比表19部分と被告映像対比表19待機映像部分とでは,
前記(ア)のとおり,宇宙空間を背景に,戦艦の艦首部の発射口から大量
に勢いよく発射された光線の状況が描かれている点,描写対象が光線の
発せられている元の部分から光線の先端部へと移っていく点で共通して
いる。
しかしながら,前記のとおり,宇宙空間を背景に,先端部に存在する
発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は,特に目新しい表現と
いうことはできない。また,その光線が大量に勢いよく発射されている
ように描くことも,ありふれた表現形式である。しかも,戦艦に宇宙空
間を飛行させること自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間
を,艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は,上記同様,特徴ある
ものとはいえない。
したがって,上記両映像の上記共通点のうち,宇宙空間を背景に,先
端部に存在する発射口から大量の光線を発する戦艦が描かれている点は,
両映像にとって特徴的な表現ということはできず,この点が共通するこ
とが,両映像の同一性の判断において,大きな意味を有するということ
はできない。
そして,両映像の表現形式には,前記(ア)の認定から明らかなように,
大きな相違があるから,描写対象が光線の発射元の部分から光線の先端
部へと移っていくという点で表現形式が共通していることを考慮しても,
両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表19待機映像部分は,本件映画対比表1
9部分の複製物ということはできない。
ホ被告映像対比表20部分は,本件映画対比表20部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表20部分
本件映画対比表20部分は,約1秒間の動画映像であり,宇宙空間
を背景に,宇宙戦艦ヤマトの主砲が立ち上がる様子が描かれている。
上記映像部分では,宇宙戦艦ヤマトの2基の主砲とその背後の艦橋
部分が,主砲を拡大して発射口を中心に,正面のかなり接近した位置
から描かれているため,砲台部分は画面に入っておらず,映像の前半
は,砲身の下部の一部は画面に現れていない。また,画面全体に明暗
はなく,青色系の薄暗い色で描かれている。
主砲は,画面の手前側と奥側にそれぞれ1基配置され(奥側の主砲
は手前側の主砲より若干高い位置にある。),1基の砲台に3門の砲
身が取り付けられており,手前側の3門の砲身は,若干,画面の左上
方向を向き,奥側の3門の砲身は,若干,画面の右上方を向いており,
その背後の画面中央部分に艦橋が配置された構図となっている。手前
側と奥側の主砲の大きさは,ほぼ同じである。
そして,艦橋を中心にして,左右対称に近い形で,まず,右奥側の
3門の砲身が右上方に向かって立ち上がり,同砲身がある程度立ち上
がると,今度は,左手前側の3門の砲身が左上方に立ち上がる。
b被告映像対比表20部分
被告映像対比表20部分は,宇宙空間を背景に,戦艦様の飛行物体
の主砲が立ち上がる様子が描かれた,1秒弱の動画映像である。
上記映像部分では,左斜め前方の位置から,戦艦様の飛行物体の3
門の砲身を有する1基の主砲が,画面中央に大きく描かれており,そ
のすぐ後ろに,1基の主砲が,手前の主砲に比べてかなり小さく描か
れ,更に後方の右に寄った位置に艦橋が描かれている。手前の主砲は,
すべての部分が画面に入っているが,後ろの主砲は,手前の主砲の陰
に隠れており,最初の場面では,2門の砲身しか見えない。艦橋は,
光に照らされたように,明るく描かれているが,その他の部分は,濃
紺色で描かれている。
そして,手前の主砲の3門の砲身は,上方に立ち上がり,それとと
もに,後方の主砲の砲身が上方にわずかに移動する。
(イ)対比
本件映画対比表20部分と被告映像対比表20部分とは,前記(ア)の
とおり,宇宙空間を背景に,戦艦の主砲が上方に立ち上がる様子が,主
砲が拡大されて描かれた点,その主砲は,1基の砲台に3門の砲身が設
置されている点,主砲の後ろに艦橋が描かれている点で共通する。
しかしながら,前記のとおり,宇宙空間に戦艦を飛行させること自体
は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間を,艦船又は飛行物体が
進んで行くという表現は,特徴あるものとはいえない。そして,戦艦に,
3門の砲身を有する主砲を描くこと,及びその主砲が立ち上がることは,
極めてありふれた表現形式である。また,主砲を正面から大きく描くこ
と,その主砲の後ろに艦橋を描くこともありふれた表現形式である。
したがって,上記共通点は,上記両映像にとって,特徴的な表現とい
うことはできず,この点が共通することが,両映像の同一性の判断にお
いて,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表20部分は,本件映画対比表20部分の
複製物ということはできない。
マ被告映像対比表21部分は,本件映画対比表21部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表21部分
本件映画対比表21部分は,約2秒の動画映像であり,宇宙空間を
背景に,宇宙戦艦ヤマトの主砲が発射される様子が描かれている。
上記映像部分では,正面下方の接近した位置から,艦首部の先端上
部部分,2基の主砲及び艦橋が描かれている。艦橋は,画面中央部に
薄暗く描かれ,その左側手前と右奥側に,それぞれ1基の砲台とその
砲台上の3門の砲身から成る主砲が設置されている。左手前側の3門
の砲身は,画面左上方を向き,右奥側の3門の砲身は,画面右上方を
向いており,艦橋を中心に概ね左右対称の形となっている。左側の砲
身に比べ,右側の砲身は小さく,両方の砲身とも,その根元部分が艦
首部分に隠れている。
そして,まず,右奥側の3門の砲身から,1つの巨大な白色に発光
した光線(発射時の爆焔を表すように,光線の根元の部分が大きな円
形になっており,この円形部分により砲身の上方の3分の1部分が隠
れている。)が発射され,その後,その巨大な円形の発光部分が割れ
て,3門の砲身の先端部が現れ,各砲身からは,それぞれ砲身の直径
と同じ径の光線が発射され,その光線の発射が止むと,左手前側の砲
身から,同じ態様で光線が発射される。
b被告映像対比表21部分
被告映像対比表21部分は,宇宙空間を背景にして,戦艦様の飛行
物体の主砲が発射される様子が描かれた1秒弱の動画映像である。
上記映像部分では,戦艦様の飛行物体が,その主砲を中心にして,
左斜め前方の位置から描かれている。主砲は,手前に1基の砲台及び
上方を向いた3門の砲身が大きく,その後方に1基の砲台が小さく,
それぞれ描かれており,さらに,その右後方に,艦橋が,光に照らさ
れたように,明るく描かれている。
そして,まず,画面中央部が明るくなり,その直後に手前の主砲の
3門の砲身から青白色に発光した光線が発射され,続いて,艦橋の右
側から3条の白色の光線が発射され,その際,画面が明るくなる。
(イ)対比
本件映画対比表21部分と被告映像対比表21部分とは,前記(ア)の
とおり,宇宙空間を背景にして,戦艦の主砲から白色の光線が発射され
る様子が描かれた点,主砲は,1基の砲台に3門の砲身が設置されてい
る点で共通する。
しかしながら,宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は,アイデアに
属し,また,海中又は宇宙空間を,艦船又は飛行物体が,進んで行くと
いう表現は,特徴あるものとはいえない。そして,戦艦に,3門の砲身
を有する主砲を描くこと,及びその主砲から光線が発射される様子を描
くことは,極めてありふれた表現形式である。
したがって,上記両映像の上記共通点は,いずれも,両映像にとって
特徴的な表現ということはできず,この点が共通することが,両映像の
同一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表21部分は,本件映画対比表21部分の
複製物ということはできない。
ミ被告映像対比表22部分は,本件映画対比表22部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表22部分
本件映画対比表22部分は,約2秒間の動画映像であり,宇宙空間
を背景にして,宇宙戦艦ヤマトに設置された多数の小砲から光線が発
射される様子が描かれている。
上記映像部分では,多数の小砲から,間欠的な破線状の光線が一斉
に発射されている様子が,小砲の正面からの視点で描かれている。
小砲の設置された砲塔は,いずれもドーム型をしており,画面上は
9基の砲塔が描かれている。各砲塔は,上下3段に,上段に2基,中
段に3基,下段に4基の砲塔が配置され,上段と下段の各砲塔には2
門の砲身が,中段の各砲塔には4門の砲身が設置されている。いずれ
の砲身も,画面の左斜め上方を向いている状態から真上を向いている
状態へ徐々に旋回し,同じ速度で,同じ動きをする。砲身から発射さ
れる光線はオレンジ色をしており,発射時に発射口の爆焔は発生せず,
砲塔の一部分が,爆焔のために発光することもない。
b被告映像対比表22部分
被告映像対比表22部分は,宇宙空間を背景にして,複数の小砲か
ら光線が発射される様子が描かれた約1秒間の動画映像である。
上記映像部分では,主に2基の小砲から,間欠的な破線状の光線が,
発射されている様子が,小砲の手前上方の非常に接近した位置から描
かれているため,画面上,小砲の設置された砲塔の一部しか見えない
が,ドーム型をしていることが推測され,各砲塔には各2門の砲身が
設置されている。
中心的に描かれた手前の砲塔は,左右へと高速で旋回し,各砲身は,
それぞれ別の動きをしている。砲身から発射される光線は白色であり,
発射時には,発射口から白色に発光する爆焔が生じ,また,光線の速
度は,本件映画対比表22部分における光線の速度に比べて,高速で
ある。さらに,奥側の小砲の砲塔の一部分は,光線の発射時の爆焔の
ため,白色に発光している。
(イ)対比
本件映画対比表22部分と被告映像対比表22部分とは,前記(ア)の
とおり,宇宙空間を背景に,間欠的な破線状の光線を発射している小砲
が描かれている点,同小砲の砲塔はドーム型をしている点,1基の砲塔
に2門の砲身が設置されているものがある点で共通する。
しかしながら,乙第37号証の2によれば,宇宙空間において,間欠
的な破線状の光線を発射している小砲を描いている画像が,本件映画の
制作の前に既に存在していたことが認められ,また,証拠(乙54ない
し56)によれば,戦艦の小砲の砲塔がドーム型であること,1基の砲
塔に砲身が2門設置されていることも一般的であると認められる。
したがって,上記両映像の上記共通点は,いずれも,両映像にとって
特徴的な表現ということはできず,この点が共通することが,両映像の
同一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表22部分は,本件映画対比表22部分の
複製物ということはできない。
ム被告映像対比表23部分は,本件映画対比表23部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表23部分
本件映画対比表23部分は,青白い宇宙空間を宇宙戦艦ヤマトが飛
行していく様子が,同戦艦の右斜め前方から描かれた約6秒間の動画
映像である。
宇宙戦艦ヤマトは,最初,画面の中央やや左よりの地点から右端か
ら4分の1程度のところまでの範囲で描かれているが,徐々に拡大す
る。背景は,青白い宇宙空間であり,惑星や白色の粒子が宇宙戦艦ヤ
マトの背後を移動していくことはない。
宇宙戦艦ヤマトは,艦首部に発射口があり,艦橋が甲板の後部に設
置されており,喫水線付近のところで上下に色分けされ,上部は灰色
に,下部は赤色となっている。艦首部の先端の上端部には,円形の切
れ込みがある。
また,艦首部及び喫水下のバルジが,強調されて大きく描かれてい
る。
b被告映像対比表23部分
被告映像対比表23部分は,青白い宇宙空間を戦艦様の飛行物体が,
飛行していく様子が,飛行物体の右斜め前方の位置から描かれた約1
6秒間の動画映像である。
上記飛行物体は,終始,画面の左端から右端の近くまでを占める大
きさで描かれているが,左右に揺れ,背景にある白色の光の粒子や青
色の惑星が画面左奥の方向へ移動していくことから,飛行物体が,画
面右手前の方向に向かって飛行していることが分かる。
戦艦様の飛行物体は,艦首部に白色の発射口があり,艦橋が甲板の
後部に設置されており,喫水線付近のところで上下に色分けされ,上
部は灰色に,下部は赤色となっており,側面に大きな翼様のものが設
置されている。艦首部の先端の上端部には,円形の切れ込みがある。
また,艦首部及び喫水下のバルジが強調されて大きく描かれている。
画面の左端中央部分には,円形の星雲様のものが明るく描かれてい
る。
(イ)対比
本件映画対比表23部分と被告映像対比表23部分とは,前記(ア)の
とおり,宇宙空間を背景にして,戦艦が,同戦艦の右斜め前方の位置か
ら描かれている点,戦艦には,艦首部に発射口があり,艦橋が甲板の後
部に設置されており,喫水線付近のところで上下に色分けされ,上部は
灰色に,下部は赤色となっている点が共通する。
しかしながら,前記のとおり,上記共通点のうち,戦艦の形状及び色
彩として,艦橋が甲板の後部に設置され,喫水線付近で上下に色分けさ
れ,上部は灰色に,下部は赤色として描くこと,艦首部の先端の上端部
に円形の切れ込みを入れることは,ありふれた表現形式というべきであ
る。また,前記のとおり,艦首部に発射口のある戦艦が特に目新しい表
現ということはできない。戦艦をその右斜め前方から描くことも,あり
ふれた表現形式である。さらに,宇宙空間に戦艦を飛行させること自体
は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進
んで行くという表現は,特徴あるものとはいえない。
したがって,上記両映像に上記共通点が存在することが,両映像の同
一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表23部分は,本件映画対比表23部分の
複製物ということはできない。
メ被告映像対比表24部分は,本件映画対比表24部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表24部分
本件映画対比表部分24部分は,宇宙戦艦ヤマトが宇宙空間を飛行
し,画面を見る者に接近して通過しようとしている様子が,宇宙戦艦
ヤマトの左斜め前方の位置から描かれた約2秒間の動画映像である。
上記映像部分は,何もない宇宙空間を,宇宙戦艦ヤマトが,画面の
右上方の奥から近づいて来て,左側面部が徐々に拡大され,画面のほ
とんどを占めるようになり,画面を見る者に,宇宙戦艦ヤマトが目の
前を通過しようとしている印象を与える。通過の際,艦体の側面部分
が画面の中心に大きく描かれるため,同部分が特に注目される。
宇宙戦艦ヤマトは,艦首部に発射口が設置されている(発射口は発
光していない。)ことを除けば,通常の戦艦と同様の形状であり,艦
首部の先端上端部に円形の切れ込みがあり,喫水線付近で上下に色分
けされ,上部は灰色,下部は赤色となっており,艦体中央部の後方に
艦橋があり,艦橋の前には主砲が設置されている。艦体の側面に,翼
様のものは設置されていない。
背景は,暗青色で,全体的に暗く描かれている。
b被告映像対比表24部分
被告映像対比表24部分は,戦艦様の飛行物体が宇宙空間を飛行し,
画面を見る者に接近して通過しようとしている様子が,飛行物体の左
斜め前方の位置から描かれた約3秒間の動画映像である。
戦艦様の飛行物体は,画面中央奥から,左手前に向かって,画面を
見る者に近づいて来るように飛行して,徐々に大きくなり,最終場面
では,画面の下半分を占めるように描かれ,その時点では,同飛行物
体が,見下ろすような角度から描かれているため,画面を見る者に,
同飛行物体が,目の前の下方の直近を通過しようとしている印象を与
える。同飛行物体の通過の際,主砲及び艦橋部分が画面の中心に大き
く描かれるため,同部分が注目される。
上記飛行物体の後方には,画面中央部分に,大きな惑星の右下4分
の1程度が描かれ,また,同惑星の右側に,その陰に左半分が隠れて
いる状態で,小さな惑星が描かれ,両惑星の右端の一部にのみ光が当
たっている。大きな惑星の光が当らない部分は,背景の宇宙空間と同
じ暗青色であり,輪郭が不明確である。両惑星は,映像の進行に伴い,
右方向へ移動し,小さな惑星は,途中で画面から外れる。
上記飛行物体には,艦首部に黄色に発光した発射口があり,艦橋が
甲板の後部に,主砲が艦橋の前に,それぞれ設置されており,喫水線
付近で上下に色分けされ,上部は灰色に,下部は赤色となっており,
また,側面に大きな翼様のものが設置されている。画面上は,艦首部
の先端上端部に円形の切れ込みがあるか否かは分からない。さらに,
飛行物体は,画面を見る者に近づいて来ると,光に照らされているよ
うに明るく描かれている。
(イ)対比
本件映画対比表24部分と被告映像対比表24部分とは,前記(ア)の
とおり,宇宙空間をゆっくりと飛行している戦艦が,画面を見る者の近
くを通過しようとしている様子が,同戦艦の左斜め前方の位置から描か
れている点,戦艦が徐々に大きくなり,画面を見る者に,戦艦が自分の
直近を通過しようとしている印象を与えるように描かれている点,戦艦
の艦首部に発射口があり,艦橋が甲板の後部に,主砲が艦橋の前に,そ
れぞれ設置されており,喫水線付近で上下に色分けされ,上部は灰色に,
下部は赤色となっている点で共通する。
しかしながら,前記のとおり,上記共通点のうち,戦艦の形状及び色
彩として,艦橋が甲板の後部に設置されており,喫水線付近で上下に色
分けされ,上部は灰色に,下部は赤色として描くことは,ありふれた表
現形式というべきである。また,前記のとおり,艦首部に発射口のある
戦艦が特に目新しい表現ということはできない。さらに,宇宙空間に戦
艦を飛行させること自体は,アイデアに属し,また,海中又は宇宙空間
を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は,特徴あるものとはいえ
ない。
そして,戦艦が宇宙空間を飛行している様子を,その左斜め前方の位
置から,戦艦が画面を見る者の近くを通過して行くように描き,その際,
戦艦が近づいて来るに従って大きくなり,画面を見る者としては,戦艦
が自分の直近を通過していく印象を持つように描くことも,ありふれた
表現形式である。
したがって,上記両映像に上記共通点が存在することが,両映像の同
一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表24部分は,本件映画対比表24部分の
複製物ということはできない。
モ被告映像対比表25部分は,本件映画対比表25部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表25部分
本件映画対比表25部分は,宇宙戦艦ヤマトが,宇宙空間を飛行し,
画面を見る者の近くを通過し,遠ざかって行く様子が描かれた約11
秒間の動画映像である。
上記映像部分は,最初の場面では,画面全体を宇宙戦艦ヤマトの左
側面部の一部分が占めるように,宇宙戦艦ヤマトの左側面部が拡大し
て描かれ,その後,視点が,宇宙戦艦ヤマトの左後方に徐々に移動し
て,宇宙戦艦ヤマトが画面を見る者の目の前を通過して行くような印
象を与える。さらに,視点が,宇宙戦艦ヤマトの左斜め後方,真後ろ
へと移動して,宇宙戦艦ヤマトが,画面の中央奥へ向かい,右側に多
少傾いて遠ざかって行く様子が描かれている。
宇宙戦艦ヤマトの左後方部分が映った場面で,地球が,画面左側か
ら現れ,上記の視点の移動に伴い,地球も画面の中央部へ移動し,宇
宙戦艦ヤマトが真後ろの位置から描かれた場面では,その背景として,
画面の約3分の1の大きさの地球が描かれている。
宇宙戦艦ヤマトは,通常の戦艦と同様の形状であり,喫水線付近で
上下に色分けされ,上部は灰色,下部は赤色となっており,艦体中央
部の後方に艦橋が設置され,艦橋は点灯されていない。艦体の側面に,
翼様のものは設置されていないが,艦体の左側面後方の部分に,白色
の碇型のマークが記されている。艦尾は,円形をして,全体がメイン
エンジンの噴出口となっており,同噴出口は,オレンジ色に発光して
いる。また,艦尾の底部には,補助エンジンの噴出口が2つ設置され
ているが,同噴出口は発光していない。艦尾には,相互に120度の
角度に開いた3本の尾翼が設置されている。
背景は,暗青色で,全体的に暗く描かれている。
b被告映像対比表25部分
被告映像対比表25部分は,戦艦様の飛行物体が,宇宙空間を飛行
し,画面を見る者の近くを通過し,遠ざかって行く様子が描かれた約
12秒間の動画映像である。
上記映像部分では,飛行物体の左側面部が,同飛行物体の左斜め前
方の位置から拡大して描かれた場面から始まり,飛行物体が,画面に
向かって進むと,視点は,艦橋に向かって移動し,艦橋が拡大される
と,視点が,艦橋の側面部,艦橋の後部,後部甲板,艦尾へと移動し,
飛行物体が画面を見る者の目の前を通過していくような印象を与える。
さらに,視点が,飛行物体の真後ろの位置に移動して,飛行物体が,
画面の中央奥へ向かい,艦体を左右に傾けずに遠ざかって行く様子が
描かれている。
飛行物体の後方部分が映った場面で,地球と思われる天体が画面の
左側から現れ,上記の視点の移動に伴い,同天体も画面の中央部へ移
動し,飛行物体が真後ろの位置から描かれた場面では,その背景とし
て,画面の約3分の1の大きさの上記天体が描かれている。
飛行物体は,艦首部に発射口が設置されていることを除いて,概ね
戦艦の形状をしており,同発射口は白色に発光し,喫水線付近で上下
に色分けされ,上部は灰色,下部は赤色となっている。艦体後部には
艦橋があり,艦橋の前には主砲が設置され,側面中部に半円盤状の翼
様のものが,その後方に通常の戦闘機の翼様のものが,それぞれ設置
されている。飛行物体が近づいて来るときは,艦橋が点灯されている
が,艦体の側面に,碇型のマークは付いていない。
艦尾は,円形をして,全体がメインエンジンの噴出口となっており,
同噴出口は,黄白色に発光している。また,飛行物体を真後ろから見
ると,両側面に大きな主翼が設置されていることから,戦闘機ないし
飛行機のように見える。さらに,艦尾の上部と底部に,補助エンジン
の噴出口が,それぞれ2つずつ設置されており,上記主翼にも,各1
つずつ補助エンジンの噴出口が設置され,いずれの噴出口も黄白色に
発光している。艦尾には,相互に90度の角度に開いた4本の尾翼が
設置されている。
背景は,暗青色であるが,所々,光に照らされて明るくなっている
部分がある。
(イ)対比
本件映画対比表25部分と被告映像対比表25部分とは,前記(ア)の
とおり,戦艦が,宇宙空間を飛行し,画面を見る者の近くを通過し,画
面中央奥へ遠ざかって行く様子が描かれている点,戦艦が画面を見る者
の前を通過して行くような印象を与えるように視点が移動する点,戦艦
の後方部分が映った場面で,地球と思われる天体が画面の左側から現れ,
同天体は徐々に画面の中央部へ移動し,戦艦が真後ろの位置から描かれ
た場面では,戦艦の背景として,画面の約3分の1の大きさの天体が描
かれている点,戦艦には艦橋があり,喫水線付近で上下に色分けされ,
上部は灰色に,下部は赤色となっている点で共通している。
しかしながら,前記のとおり,上記共通点のうち,戦艦の形状及び色
彩として,艦橋が設置されており,喫水線付近で上下に色分けされ,上
部は灰色に,下部は赤色として描くことは,ありふれた表現形式という
べきである。そして,宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は,アイデ
アに属し,また,海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くと
いう表現は,特徴あるものとはいえない。さらに,その他の共通点も,
それ自体は抽象的なものであり,その抽象化された部分では,ありふれ
た表現形式である。
したがって,上記両映像に上記共通点が存在することが,両映像の同
一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表25部分は,本件映画対比表25部分の
複製物ということはできない。
ヤ被告映像対比表26部分は,本件映画対比表26部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表26部分
本件映画対比表26部分は,艦橋内部の様子を描いた約3秒間の動
画映像である。
上記映像部分では,画面全体が薄暗く,艦橋内部の様子が,艦橋内
部奥側から外を見る方向で,内部全体を見渡せるように,俯瞰する位
置から描かれている。
前方正面上方に巨大なパネルが描かれ,前方中央部に,4本の太い
格子で区分された5つの窓があり,手前の床上には,手前側に操縦席
が,正面の窓と両側壁の手前側に複数の机と椅子が,中央部に半球状
のものが,それぞれ設置されており,その半球状のものの両側の左右
対称となる位置に,1つずつ机と椅子が設置されている。
上記パネルは,上辺が下辺よりも長い台形で,黒色をしており,碁
盤目を有し,中央部に,中心部が赤色で,周辺部がオレンジ色の円形
の物体が映し出されており,上記物体の周りは青くなっている。
前方の5つに区分された窓は,中央部分の窓を中心にして,左右対
称にそれぞれ2つの窓が配置されており,黒色である。窓を仕切る格
子は,右側の2本が,くの字の形をしており,左側の2本は,逆くの
字の形をしている。パネルと窓及び側壁との境界には仕切りがある。
床及び床に設置された半球形の物体は,暗い茶色をしており,発光
していない。両側面の壁部分には,それぞれの壁に,円形の大小の窓
が1つずつ設置されている。
b被告映像対比表26部分
被告映像対比表26部分は,艦橋内部の様子が描かれた動画映像で
ある。
上記映像部分では,画面全体が青白く,明るく,艦橋内部の様子が,
艦橋内部奥側から外を見る方向で,内部全体を見渡せるように,俯瞰
する位置から描かれている。
前方正面上方に,本件映画対比表26部分のパネルの幅の半分程度
の幅の巨大なパネルが設けられ,前方中央部に,窓様のものがあり,
手前の床上には,手前側に操縦席が,正面の窓様のものの手前と両側
壁に複数の机と椅子が,中央部に円錐状の物体が,それぞれ設置され
ており,その円錐状の物体の両側の左右対称となる位置に,1つずつ
机様のものが設置されている。
上記パネルは,上辺が下辺よりも長い台形で,青白く発光し,碁盤
目を有し,中央部に,龍がとぐろを巻いているような物体が映し出さ
れている。
前方の窓は,横に細長い長方形をしており,仕切りがなく,中央部
分は青白く発光し,右側の一部は白く発光し,左側の3分の1部分は
黒色である。窓とパネルとの境界には仕切りがない。
床は,青白く発光している。両側壁には,その中ほどの高さのとこ
ろに小さな円形の発光体が横一列に並んで配置してあり,窓はない。
(イ)対比
本件映画対比表26部分と被告映像対比表26部分とは,前記(ア)の
とおり,艦橋内部の様子が,艦橋内部奥側から外を見る方向で,内部全
体を見渡せるように,俯瞰する位置から描かれている点,前方正面上方
に巨大なパネルが設けられ,前方中央部に,窓ないし窓様のものがあり,
手前の床上には,手前側に操縦席が,正面の窓ないし窓様のものの手前
に机と椅子が,中央部に物体が,それぞれ設置されており,その物体の
両側の左右対称となる位置に,1つずつ机様のものが設置されている点
で共通する。
しかしながら,証拠(乙93)及び弁論の全趣旨によれば,本件映画
対比表26部分と構図,各設置物の配置及び寸法がほとんど同一の,本
件映画のために作成された,本件映画対比表26部分の原図柄(乙93
の152頁。以下「本件原図柄」という。)が存在することが認められ
るところ,上記のように,本件映画対比表26部分と本件原図柄とは,
構図,各設置物の配置及び寸法がほとんど同一であるから,本件映画対
比表26部分から本件原図柄の表現上の本質的な特徴を直接感得するこ
とができ,しかも,本件原図柄は本件映画のために作成されたものであ
るから,本件映画対比表26部分は,本件原図柄の上記部分に依拠して
制作されたものと認められ,したがって,本件映画対比表26部分は,
本件原図柄の上記部分の二次的著作物であると解するのが相当である。
そうすると,本件映画の本件映画対比表26部分の著作権は,原著作物
である本件原図柄の上記部分と共通し,その実質を同じくする部分には
生じないというべきであるところ,上記共通点のうち,艦橋内部の様子
が,艦橋内部奥側から外を見る方向で,内部全体を見渡せるように,俯
瞰する視点から描かれている点,前方中央部に窓があり,手前に床があ
り,その床上には,手前側に操縦席が,床の中央部から左右対称の両側
の位置に机と椅子が,それぞれ設置されている点は,本件原図柄に表現
されているから,同部分については,本件映画対比表26部分の著作権
は生じない。
また,証拠(乙68の4)によれば,本件映画が制作される以前に制
作されたアニメーション映画において,見上げるような高さの位置に巨
大なパネルが設置されている様子を描いた場面があることが認められる
ことから,上記共通点のうち,巨大なパネルを設置した点は特に目新し
い表現ということはできない。また,床の中央部に何らかの物体を設置
することも特徴のある表現ということはできない。
したがって,上記両映像に上記共通点が存在することが,両映像の同
一性の判断において,大きな意味を有するということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,相当異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表26部分は,本件映画対比表26部分の
複製物ということはできない。
ユ被告映像対比表27部分は,本件映画対比表27部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表27部分は,約3秒間の動画映像であり,宇宙空間
において,3基の主砲(1基の砲台に3門の砲身がある。)が画面左
側奥の天体に狙いを定めている場面が,同主砲の手前左側の,同主砲
に接近した位置から描かれている。
3基の主砲のうち,最も手前の砲台の3門の砲身が中心的に描かれ,
左端の砲身が,最初は上方を向いていたのが,下降して,他の2門の
砲身と並んで,まっすぐ前方を向くまでの様子が描かれている。なお,
砲身からの発砲はない。
攻撃対象となっている天体は,画面左側奥に描かれており,全体的
に灰色で,半球状の天体の上に略円錐状の山が乗っているような形状
であり,その円錐状の山には,多数の高層構造物が築造されており,
天体上に都市が造られているような印象を与える。
b被告映像対比表27部分
被告映像対比表27部分は,宇宙空間において,3門の砲身が,画
面中央奥にある赤色の天体を実際に攻撃している様子が,同砲身の手
前上方の,同砲身に接近した位置から描かれている10秒余りの動画
映像である。
3門の砲身は,最初は,左下方を向いているが,立ち上がって,正
面の天体の方向を向き,まず,左端の砲身から,次に,真ん中の砲身
から,最後に右端の砲身から,順に,光線を天体に向けて発射する。
攻撃対象となっている天体は,画面中央奥に描かれ,全体的に赤色
をしており,逆円錐形状をした天体の上に略円錐状の山が乗っている
ような形状である。天体上には,発光部分が散見される。
(イ)対比
本件映画対比表27部分と被告映像対比表27部分とは,前記(ア)の
とおり,宇宙空間において,主砲が天体に向いている場面が,主砲に接
近した位置から描かれている点,攻撃対象である天体が画面上に描かれ
ている点で共通する。
しかしながら,主砲が攻撃対象を向き,その攻撃対象を画面上に映す
という表現形式は,極めてありふれており,また,その様子を主砲側の,
主砲に接近した位置から描くこともありふれている。したがって,上記
共通点は,いずれも,ありふれた表現形式であり,このような共通点が
存在することが,両映像の同一性の判断において,大きな意味を有する
ということはできない。
そして,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうち
の具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表27部分は,本件映画対比表27部分の
複製物ということはできない。
ヨ被告映像対比表28部分は,本件映画対比表28部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表28部分
本件映画対比表28部分は,本件映画対比表12部分と同一であり,
前記チ(ア)aで判示したとおりである。
b被告映像対比表28部分
被告映像対比表28部分は,屋内で,青色のコート様のユニフォー
ムを着て,軍帽を目深に被り,椅子に腰掛けて,口を小さく動かして,
話をしている体格のよい熟年男性の胸より上の部分が,目の粗い網目
越しに正面から描かれた約3秒間の動画映像である。
上記映像部分では,視点は一定であり,また,男性の大きさに変化
はなく,口以外は全く動かない。
男性の顔には,灰色の口髭と顎髭が生えているが,下唇は髭に覆わ
れておらず,耳は,よく見えない。男性の顎髭は,下方に若干伸びて
いる。
帽子は,上部が白色,下部が黒色であり,中央に金色の徽章と金色
の顎紐が付いている。
コート様のユニフォームは,身体の右側にずれた位置で留めるよう
になっており,左の胸部に金色の図形が描かれている。両肩には金色
の肩章が付いており,襟は大きく,立った状態で折り返されており,
折り返された裏地部分は,白く縁取られた赤色である。男性の襟元か
ら,白いスカーフ様のものが見える。
(イ)対比
本件映画対比表28部分と被告映像対比表28部分とは,前記(ア)の
とおり,屋内で,コート様のユニフォームを着て,軍帽を目深に被り,
体格のよい熟年男性が描かれている点,画面の後半の場面では,頭,顔
及び肩ないし胸の付近までが映っている点,男性の顔には口髭と顎髭が
生えている点,帽子は,上部が白色,下部が黒色であり,中央に金色の
徽章と金色の顎紐が付いている点,両肩に肩章が付いている点,コート
様のユニフォームの襟は大きく,折り返された裏地部分が白く縁取られ
た赤色である点,襟元から白いスカーフ様のものが見える点で共通する。
しかしながら,上記両映像中に描かれている男性には,前記(ア)のと
おりの相違点があるところ,アニメーション映画の登場人物としては,
このような相違点があれば,別人として認識されると解される。また,
その他の表現形式や,上記の共通する表現形式における具体的な表現形
式において,前記(ア)の認定で明らかなように,両映像は大きく異なる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表28部分は,本件映画対比表28部分の
複製物ということはできない。
ラ被告映像対比表29部分は,本件映画対比表29部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表29部分
本件映画対比表29部分は,本件映画対比表13部分と同一であり,
前記ツ(ア)aで判示したとおりである。
b被告映像対比表29部分
被告映像対比表29部分は,眼鏡をかけて頭髪のほとんどない男性
が,艦橋内で立って話をしている様子が,正面から描かれた約7秒間
の動画映像である。
男性の人相は,①頭頂部は尖っておらず,下ぶくれの輪郭で,髪の
毛は,耳の上の辺りだけにわずかに生えており,②口は大きいが,誇
張されておらず,③目は黒い点であるが,眼鏡の奥に描かれており,
④普通の大きさの,角が丸味を帯びた四角いフレームの眼鏡をかけて
おり,⑤眼鏡はずれ落ちておらず,⑥鼻は,団子鼻であり,⑦眉毛は,
短く,太い八の字の形をしている。
男性は,口を大きく開けたり閉めたりして話をし,目も開いたり閉
じたりしている。
男性は,袖をまくった緑色のジャンパーを,前を開けて羽織り,内
側に着ている白いTシャツが見えている。
(イ)対比
本件映画対比表29部分と被告映像対比表29部分とは,前記(ア)の
とおり,頭髪がほとんどなく,眼鏡をかけた男性が描かれている点,そ
の男性の口が大きい点で共通するが,上記(ア)の認定から明らかなよう
に,その他の表現形式や,上記の共通する表現形式のうちでも具体的な
表現形式は,大きく異なる。特に,眼鏡の形や大きさ,鼻の形,口部分
の形状において,両映像の男性の人相が大きく異なり,両人物は,アニ
メーション映画の登場人物としては完全に別人と認識されるものといえ
る。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表29部分は,本件映画対比表29部分の
複製物ということはできない。
リ被告映像対比表30部分は,本件映画対比表30部分の複製物といえる
か。
(ア)両映像の内容及び形式
a本件映画対比表30部分
本件映画対比表30部分は,本件映画対比表14部分と同一であり,
前記テ(ア)aで判示したとおりである。
b被告映像対比表30部分
被告映像対比表30部分は,ロボットが,両腕を振りながら,頭部,
胴部,下半身の3つのパーツを分離したり,一体となったりを繰り返
して,踊っている様子が,正面から描かれた約3秒間の動画映像であ
る。
ロボットは,頭部,胴部,下半身部分とに分離され,いずれのパー
ツも,その大部分がオレンジ色をしている。
ロボットの頭部は,半球状をしており,頭頂部に小さな突起物があ
り,両側面に円形の青色の目が付いており,鼻の位置が,黄色に色分
けされている。頭部には,計器様のものは一切付いていない。頭部の
最下部には,多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯
状に付いている。
胴部には,腕が付いており,手には,指様のものが付いているが,
具体的な形状は不明確である。胴部の中央部分には,緑色の円形のも
のがあり,その左右に小さな白色の突起物が付いている。胴部には,
計器様のものは一切付いていない。胴部の最下部には,多数の小さな
長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。
下半身には,人間の足の代わりに半球状のものが付いている。下半
身の最上部には,多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列
の帯状に付いている。
(イ)対比
本件映画対比表30部分と被告映像対比表30部分とは,前記(ア)の
とおり,頭部,胴部,下半身の3つのパーツから成るロボットが,3つ
のパーツに分離する場面が正面から描かれた点,ロボットの頭部が半球
状をしており,両側面に円形の目が付いており,その最下部には,多数
の小さな長方形のパネル様のものが一列の帯状に付いている点,胴部に
は腕が付いている点において共通する。
しかしながら,両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式
のうちの具体的な部分は,前記(ア)の認定から明らかなように,大きく
異なる。特に,両映像のロボットの形状が大きく異なり,両ロボットは,
アニメーション映画に登場するロボットとしては完全に別のロボットと
認識されるものといえる。
以上の点を総合考慮すると,両映像が同一であるということはできな
いというべきである。
(ウ)小括
したがって,被告映像対比表30部分は,本件映画対比表30部分の
複製物ということはできない。
4不競法に基づく請求の可否(争点())について2
()原告表示は,原告の商品を示す商品表示として,著名,周知といえるか1
について
ア原告の商品表示としての著名又は周知であることを要する時期
自己の商品等表示が不競法2条1項1号にいう周知の商品等表示に当た
る,あるいは,同項2号にいう著名な商品等表示に当たると主張して,こ
れに類似の商品等表示を使用する者に対して損害賠償を請求する場合には,
損害賠償請求の対象とされている類似の商品等表示の使用等をした時点に
おいて,請求人の商品等表示が周知性又は著名性を獲得していることを要
し,かつ,これをもって足りるというべきである(最高裁昭和61年(オ)
第30号,第31号同63年7月19日第三小法廷判決・民集42巻6号
489頁参照)。
本件で,原告は,被告商品の製造・販売による損害として使用料相当額
の逸失利益を主張し,被告パチンコゲーム機については,平成16年11
月ころから少なくとも20万台を製造,販売したこと,被告パチスロゲー
ム機については,平成17年3月以前から少なくとも1万台を製造,販売
したとしており,その請求の対象となる期間は必ずしも明確ではないもの
の,被告パチンコゲーム機については,平成16年11月から本件口頭弁
論終結日である平成18年9月21日までの期間,被告パチスロゲーム機
については,平成17年3月から本件口頭弁論終結日である平成18年9
月21日までの期間の損害を主張しているものと解されるので,これらの
期間における原告表示の周知性ないし著名性について,まず検討する。
イ著名性ないし周知性に関する事実認定
証拠(甲16,17)及び弁論の全趣旨によれば,原告が,ライセンス
契約に基づいて,ライセンシーに商品化を許諾した商品のうち,バンダイ
製のプラモデルの5種類の商品には,原告表示1,原告表示2⑴又は真横
若しくは左斜め前方からカラーで描いた宇宙戦艦ヤマトの絵が表示されて
いること,バンプレスト製のAM景品の2種類の商品には,原告表示1又
は左斜め前方からカラーで描いた宇宙戦艦ヤマトの絵が表示されているこ
と,ソースネクスト製のタイピングソフトの1種類の商品には,原告表示
1及び原告表示2⑵が表示されていること,フルタ製菓製の玩具菓子の1
種類の商品には,原告表示1及び原告表示2⑵が表示されていること,日
本コロムビア販売のCDの1種類の商品には,原告表示1が表示されてい
ること,竹書房発行の書籍の1種類の商品には,原告表示1及び原告表示
2⑴が表示されていること,バンダイ製のゲームソフトの4種類の商品に
は,原告表示1と真正面又は左斜め前方からカラーで描いた宇宙戦艦ヤマ
トの絵が表示されていること,バンダイビジュアル発売のDVDの6種類
の商品には,原告表示1とほぼ同様の表示がされ,また,上記商品のうち
4種類のものには,原告表示2⑴と類似する左斜め前方からカラーで描い
た宇宙戦艦ヤマトの絵が記載されていることが認められる。
なお,原告は,平成8年12月20日から平成17年3月31日までの
間に,46社のライセンシーに対し,22ジャンル,50品種,244商
品について,その商品化を許諾したこと,品種としては,「ビデオ」,
「DVD」,「プラモデル」,「トレーディングカード」,「超合金」,
「ガレージキッド」,「フィギュア」,「メタルスタチュー」,「ボール
ペン」,「ゲームソフト」,「Tシャツ」,「鞄」,「ストラップ」,
「ライター」,「腕時計」,「ジグゾーパズル」,「菓子」,「コミック
本」,「書籍」等があることを記載した,原告の映像本部エンタテイメン
ト事業部版権営業部部長のP5作成の陳述書(甲16)を提出するが,上
記認定事実以外の同陳述書に記載された事実を裏付ける客観的な証拠は提
出されておらず,それらの事実を認めることはできない。
ウ検討
上記認定事実によれば,原告は,ライセンス契約に基づいて,複数の企
業に対し,原告表示等の使用を許諾していると推認されるが,これらの販
売地域,販売時期,売上額等を示す証拠は全く提出されておらず,また,
原告表示を付した各商品において,原告との結びつきを示すような表示が
あると認めることもできないから,結局,原告表示が原告の商品表示とし
てどの程度認識されているかを示す事情を認定することは困難であり,原
告の商品表示として著名又は周知であると認めることはできない。
エ原告の主張の検討
(ア)原告は,原告表示は,遅くとも,甲3契約を締結した平成8年12
月までには,著名性,周知性を獲得した旨主張しており,甲3契約締結
前に甲3契約の相手方であるP2から,同人の獲得した著名性ないし周
知性を譲り受けたことを前提とした主張をする。
(イ)この点に関し,甲3契約書には,原告が,P2から,「既存契約」,
すなわち,「同人が平成8年9月10日以前に,宇宙戦艦ヤマト作品に
ついて締結した契約」の契約上の地位を譲り受ける旨の条項(甲3契約
書1条,4条)があり,上記のP2が締結していた契約には,宇宙戦艦
ヤマト作品のDVD化や,キャラクター使用等の許諾に関する契約が含
まれていること(甲3契約書1条,4条,別紙(二))からすれば,P2
は,甲3契約締結前に,宇宙戦艦ヤマト作品のキャラクター等を利用し
た商品等の宇宙戦艦ヤマト作品の関連商品の製造,販売等を許諾する事
業を行っていたものと推認される。
しかしながら,P2が,上記事業において,どのような商品表示を使
用していたか,それがP2の商品表示として周知又は著名であったかに
ついては,これらを裏付ける証拠が全く提出されておらず,これらの事
実を認めることはできないから,P2の商品表示としての原告表示の著
名性又は周知性を承継した旨の原告の主張は,まず,その前提を欠くこ
とになる。
(ウ)また,商品表示の著名性,周知性については,以下のとおり,営業
譲渡を伴う場合などの特段の事情がある場合を除き,原則としてこれを
譲渡することはできないと解するのが相当である。
すなわち,不競法は,権利の発生や変動についての一般的な規定を欠
いており,また,当該権利についての登記や登録制度に関する規定も設
けていないのであるから,同法は,不法行為に関する訴えの特別法とし
て(最高裁平成15年(許)第44号同16年4月8日第一小法廷決定・
民集58巻4号825頁参照),同法所定の要件を充足する保護主体に
対し,差止請求権や損害賠償請求権等を認めたにとどまり,上記保護主
体に,譲渡可能な差止請求権や損害賠償請求権自体を付与したものでは
ないと解するのが相当である。仮に,同法の認める保護主体性を譲渡可
能なものと解すると,同保護主体性は,性質上,重畳的に譲渡されるこ
とが十分想定され,しかも,登記や登録制度がないことから,第三者に
不測の損害を与えるおそれが生じることになり,妥当性を欠くものとい
わなければならない。
ただし,不競法によって保護される地位は,営業と一体となって構成
されるものであり,当該営業がすべて譲渡されたにもかかわらず,その
営業について獲得された不競法上の保護主体性は譲渡できないと解する
ことは,経済活動の実態に合致するものではないと考えられるところ,
事業の実体を伴う営業譲渡が重畳的になされることは一般的には想定し
難く,また,営業譲渡に伴い不競法上の保護主体性が譲渡される場合に
は,譲渡人の競業避止義務の存在などにより,第三者に不測の損害を与
える可能性が少ないことを考慮すると,営業譲渡がなされた場合には,
当該営業と一体として構成される不競法上の保護主体性も承継されるこ
とがあり得るものと解するのが相当である。
そこで,本件について検討するに,原告とP2との間の甲3契約にお
いては,前記のとおり,原告が,P2から,平成8年9月10日以前に
締結した契約の契約上の地位を譲り受ける旨の条項(1条,4条)が定
められているものの,甲3契約に示された契約(別紙(二))が,P2の
行っていた宇宙戦艦ヤマト作品に関する事業のすべてであったことを示
す条項は定められておらず,それを認めるに足りる証拠もない。そして,
宇宙戦艦ヤマト作品のキャラクターを使用した新たな映像作品を制作す
る権利はP2に留保され,その際の商品化権等の権利の運用については
別途協議する旨の条項(10条)が定められていることからすると,宇
宙戦艦ヤマト作品に関する事業全体が,P2から原告に譲渡されたとは
言い難く,これを認めることはできない。
その他,本件では,営業譲渡に類するような特段の事情も認められな
いから,P2の商品表示の著名性又は周知性を譲り受けたとする原告の
主張を採用することはできない。
(エ)なお,原告は,本件映画を含む宇宙戦艦ヤマト作品の著名性を理由
に,原告表示1に著名性,周知性が認められると主張するところ,原告
表示1は,本件映画の題名に係る表示として著名であるとしても,あく
までも著作物である本件映画自体を特定するものであって,それが直ち
に商品やその出所ないし放映・配給事業を行う営業主体を識別する機能
を有するものとしての商品等表示ということはできないから,本件映画
を含む宇宙戦艦ヤマト作品の映画としての著名性を理由に,原告表示の
著名性又は周知性を主張する原告の上記主張は,到底,採用することが
できない。
⑵以上より,原告の不競法に基づく請求は,その余の点について判断するま
でもなく,理由がない。
5結論
よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理
由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官清水節
裁判官山田真紀
裁判官佐野信
(別紙)
被告商品目録
1被告三共製造・販売に係る下記機種名のパチンコゲーム機
CRZXフィーバー大ヤマト2
CRZFフィーバー大ヤマト2
CRSFフィーバー大ヤマト2
CRSEフィーバー大ヤマト2
2被告ビスティ製造・被告フィールズ販売に係る下記機種名のパチスロゲーム

大ヤマトA
(別紙)
映画著作物目録
1「宇宙戦艦ヤマト」シリーズ(昭和49年10月6日製作)TV
2「さらば宇宙戦艦ヤマト」(昭和53年8月5日製作)
3「宇宙戦艦ヤマト2」シリーズ(昭和53年10月14日製作)TV
4「宇宙戦艦ヤマト」(昭和55年10月11日製作)III

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛