弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件各控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意答弁は、弁護人石島泰、同渡辺卓郎、同斉藤一好、同田口康雅連
名名義で提出にかかる控訴趣意書、弁護人鹿野琢見提出の控訴趣意書検察官居林与
三次提出の答弁書に、それぞれ記載されているとおりであるから、ここにこれらを
引用する。
 弁護人石島泰ほか三名の控訴趣意第三点について。
 所論は、原判決は、旧第二審判決の事実認定(この事実認定については、検察官
も上告審で争わなかつた)より被告人に不利な事実認定をした点で、憲法第三一
条、第一一条、刑事訴訟法第一条、その他同法の全体の構造に反するという旨の主
張である。
 <要旨第一>しかし、上告審または控訴審から破棄差戻された第一審の手続も、原
則として公訴提起に引き続いて行われる第一審の手続と異つたところは
ない。そして、被告人Aに対する昭和二七年七月二八日起訴状記載の公訴事実は、
被告人(A)は、B大学C部四年在学中の学生であるが、D外数名と共同して、
 (一)、 昭和二七年二月二〇日午後七時三〇分頃、東京都文京区a町b番地B
大学E二五番教室内において(なお、三五番とあるは、二五番の誤認と認め
る。)、F劇団G主催の演劇を観覧中の本富士警察署員Hに対し、同人の右手を押
え、手拳で腹部を突き、或いは、同人の洋服内ポケットに手を入れ、オーバーのボ
タンをもぎ取る等の暴行を加え、(二)、その頃前同所において、同様演劇観覧中
の同署員Iに対し、同人の両手を押え、洋服の内ポケットに手を入れ、ボタン穴に
紐でつけてあつた警察手帳を引つ張つて、その紐を引きちぎる等の暴行を加えたも
のである(罰条は、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項)というにあるとこ
ろ、旧第一審判決は、昭和二九年五月一一日右両公訴事実のうち、右H巡査に対
し、単独で一部の暴行的所為をなしたことのみを認め、その余は、すべて認めるべ
き証拠がないとし、しかも、右H巡査に対する暴行的所為についても、その違法件
が阻却される正当行為であるとして、結局被告人Aに無罪の言渡をしたこと、これ
に対し、検察官は、右被告人Aに対する本件被告事件全部につき控訴の申立をした
ところ、旧第二審判決は、昭和三一年五月八日ほぼ旧第一審判決と同旨の説示をし
て、控訴を棄却する旨の言渡をしたので、これに対し、さらに検察官は、右被告人
Aに対する本件被告事件全部につき、上告の申立をなし、これにもとづき最高裁判
所は、昭和三八年五月二二日その大法廷で、旧第二審判決および旧第一審判決を破
棄し、本件を東京地方裁判所に差し戻す旨の判決言渡をしていることが記録上明ら
かである。また、被告人Dに対する昭和二七年三月一〇日付起訴状記載の公訴事実
は、被告人Dは、B大学C学部二年在学中の学生であるが、昭和二七年二月二〇日
午後七時四〇分頃東京都文京区a町b番地B大学E二五番教室内において、F劇団
G主催演劇発表会を開催中同所において、外数名と共同して同演劇を観覧中の本富
士警察署員I(当二三年)に対し、同人の襟首を押さえ、かつ、その面部に唾を吐
きかける等の暴行を加えたものである(罰条は、暴力行為等処罰に関する法律第一
条第一項)というにあるところ、旧第一審判決は、昭和三三年一二月三日被告人D
については、単独で、前記公訴事実中右I巡査に対し、唾を吐きかけたことは認め
られるとしたが、右Aに対する被告事件と同趣旨の理由で、その違法性は阻却され
るとして、同被告人に対し無罪の言渡をしたので、検察官は、被告人Dに対する本
件被告事件につき控訴の申立をなし、旧第二審判決(東京高等裁判所第一刑事部)
は、昭和三八年一一月八日右被告人Dに対する被告事件について、前記最高裁判所
大法廷が示した判断と同旨の理由で、旧第一審判決を破棄し、本件を東京地方裁判
所に差し戻す旨の判決言渡をしていることも、記録上明らかである。してみると。
被告人Aに対する<要旨第二>旧第二審判決および旧第一審判決ならびに被告人Dに
対する旧第一審判決は、全部破棄されたのであつて、差し戻しを受けた
新第一審が、右両被告事件を併合して審理するにあたつては、右両事件の起訴状に
記載された各公訴事実(換言すれば、訴因)が、その審判の対象となるものであ
り、(その後、後記のように各訴因の変更がある。)新第一審判決は、裁判所法第
四条により上級審である前記最高裁判所および東京高等裁判所の両裁判における判
断に拘束されるだけである。そして、右新第一審判決が、所論のように被告人両名
につき不利な事実を認定したことは、前記両被告人に対する前記各起訴状に記載さ
れた各公訴事実の範囲内のことであり、(なお、付言すると、右新第一審判決は、
被告人Dにつき、前記起訴状記載の公訴事実と同趣旨の事実を認定している。)前
記差し戻しの言渡をした両裁判所の判断は、なんら所論の点に触れていないばかり
か、本件被告人両名の審級の利益を奪うものでないことも明らかである。されば、
原判決には、なんらの非違もないので、所論違憲、違法の主張は、採用できない。
 同第五点について。
 所論は、原判決は、旧第一、二審の各判決の否定した被告人両名らが、ほか数名
の学生と共同して暴行をしたという「共同行為」を合理的な根拠と証拠がないのに
認定しているのには、事実の誤認がある。なお、検察官は、新第一審公判におい
て、訴因を変更し、「ほか数名と共同し、かつ、多衆の威力を示して」暴行をした
というのであつて、同判決が、「多衆の威力を示し」たことを否認したにもかかわ
らず、「共同行為」だけを認定したのは、検察官の請求した訴因の範囲からもはず
れ、「共同行為」の認定についても、根拠がないことを示していたものであるとい
う旨の主張である。
 しかし、原判決の認定した被告人両名が、他の学生数名と共同して原判示各巡査
に対し、逐次原判示の各暴行を加えたという共同行為は、原判決挙示の関係証拠に
より十分肯認することができ、これを覆すに足りる証拠資料は、記録上存しない。
なお検察官は、新第一審第九回公判において、被告人Aに対する起訴状記載の公訴
事実初めより二行目中「外数名と共同し」とある次に、「かつ威力を示し」を加
え、被告人Dに対する起訴状記載の公訴事実初めより六行中「共同し」とある次
に、「かつ威力を示し」を加える旨の各訴因の変更を申し立て、裁判長は、右各訴
因変更の申立を許可する旨の決定をなしたことおよび検察官の釈名があつた後、主
任弁護人も、訴因変更申立自体には、異議の申立をしない旨を述べていることが記
録により認められるところ、「威力を示した」点を認めず、「共同行為」を認めて
いることは、所論のとおりであるが、なんら矛盾するところはなく、原判決が、被
告人両名らに対し本件各訴因に限定された以外の事実を認定していないことは、そ
の判文上明らかである。されば、原判決には、所論のような事実の誤認はないか
ら、論旨は理由がない。
 (その余の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 小林健治 判事 遠藤吉彦 判事 吉川由起夫)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛