弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人C、同Dの弁護人小原直、被告人Aの弁護人安達幸衛の各上告趣意は、末
尾に添えた書面記載のごとくであつて、これに対する当裁判所の判断は、次のとお
りである。
 被告人Cの弁護人小原直の上告趣意について。
 原判決において、被告人CがBの賭博場を開帳し利を図るにつき賭博場を斡旋し
てこれを幇助した行為(原判示第一事実)を認定する証拠の一つとして引用した第
一審第一回公判調書記載の共同被告人Bの供述は、論旨摘録のとおり古道具屋の総
会を開くからと云つて頼んだというのであるから、原判決が右供述を引用するに当
つて「判示のような依頼をして」(判示第一事実には、被告人Cは予て知合いの原
審相被告人Bから賭博場を開帳するに適当な場所を世話して貰いたい旨の依頼を受
けて、と示されている)と記載したことは、供述の内容と一致しないこと所論のと
おりであつて、この点につき原判示は疎漏の譏を免かれない。しかしながら、原判
決がBの供述をこのような仕方で引用したのは第一審公判調書記載の同人の供述を
言葉どおりそのまま書き写すことを省略したに過ぎないのであつて、その趣旨とす
るところは右公判調書に記載されているBの供述そのものものを証拠に引用したこ
とに外ならない。そして、原判決は右Bの供述記載のほか、被告人Cに対する司法
警察官代理の訊問調書及び検事の聴取書並びに同被告人の原審公判廷における供述
等を綜合して判示第一事実を認定しているのであつて、これらの証拠によれば原判
示のように被告人CがBから賭博場を開帳するに適当な場所を世話して貰いたい旨
の依頼を受け同人のために賭博場を世話してこれを幇助した事実を認定し得られる
のである。それゆえ、原判決には所論のように虚無の証拠により事実を認定した違
法はないのであるから論旨は採用できない。
 被告人Dの弁護人小原直の上告趣意について(第一及び第二)。
 被告人Dが常習として本件賭博を行つたかどうかは、事実認定の問題であるから
その認定が違法でない限り事実審たる原裁判所の判断に委ねられていること言うま
でもない。そして、原裁判所が論旨に摘録するような被告人Dの三回に及ぶ賭博の
前科あるに拘らず更に本件の賭博所為に及んだ事跡により同被告人が常習として賭
博を為したものと認定したことは経験法則に違反するものと言うことはできない。
(昭和二四年(れ)一三七四号同年一一月一七日当裁判所第一小法廷判決、昭和二
五年(れ)一〇三五号同年一〇月六日当裁判所第二小法廷判決参照)。なお、被告
人が平素正業に従事する場合には賭博の常習性を有することは比較的に少いであろ
うけれども、かゝる場合に常に必ずその常習性を認めることができないという経験
法則のないこと言うまでもない。それゆえ、原判決には所論のような違法はない。
 被告人Aの弁護人安達幸衛の上告趣意第一点について。
 原判示によれば、被告人Aが昭和二二年六月二六日と翌二七日の両日に亘つてB
のために寺銭を徴収して同人の賭場開帳図利の所為を幇助したことが明らかである
から、所論のように寺銭の額や徴収の方法を一々判示しなくても賭場開帳図利幇助
の犯罪事実の摘示として十分である。されば原判決には所論のような違法はない。
 同第二点について。
 論旨は、原審の量刑不当を主張するものであつて上告の適法な理由ではないから
採用できない。
 よつて、本件各上告を理由ないものと認め、旧刑訴四四六条に従い、裁判官全員
の一致した意見により主文のとおり判決する。
 検察官 福島幸夫関与
  昭和二六年一一月六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保

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