弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人らの負担とする。
理由
抗告代理人本多清二,同森定直行の抗告理由について
民法258条2項所定の競売を命ずる判決に基づく不動産競売について,民事執
行法59条が準用されることを前提として同法63条が準用されるものとした原審
の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官岡部喜
代子の補足意見がある。
裁判官岡部喜代子の補足意見は,次のとおりである。
1本件競売手続に売却に伴う権利の消滅等に関する民事執行法59条の準用が
あるか否かに関して,準用があるとの法廷意見に賛意を表するものであるが,従
前,いわゆる形式的競売を換価型と清算型とに分類し,前者については同条の準用
を否定する引受主義を,後者については同条の準用を肯定する消除主義を採用すべ
きであるとする二分説を支持していた者として若干の補足をしておきたい。
競売手続における消除主義の利点は,買受人の地位を安定させることにより換価
を容易にすることである。その根拠は売却の目的を達成するための必要性にあるの
であり,その必要性は形式的競売も担保権実行としての競売と変わりはない。競売
による売却により占有を伴わない担保権は消滅するが,順位に応じた配当がされる
ことによって担保権は一応の目的を達することができる。消滅する担保権に劣後す
る用益権が何らの補償もなく買受人に対抗できなくなるのは,売却を促進するとい
う公的な売却の目的を達するために設けられた制度であって,やむを得ないという
外はない。担保権と用益権の対抗関係は登記簿等によって公示されていることに加
え,少なくも民法395条の保護は与えられる点において用益権にも最低限の保護
は与えられているともいい得る。売却の必要性を重視して民事執行法59条の準用
を認めることは根拠のあることと考える。
2本件競売手続にいわゆる剰余主義に関する民事執行法63条の準用があるか
否かについてもまた法廷意見に賛成するものであるが,その理由は以下のとおりで
ある。
(1)形式的競売に剰余主義を準用すると,物件上に担保権の負担がある場合に
は,競売権のみを有する差押債権者について無剰余となることが少なくなく,結局
売却の目的を達し得ない事態が生じやすい。このような事態は,本件についていえ
ば共有物について競売を命じた判決の目的を達することができない上,紛争解決も
できない点において,社会的にも好ましいこととはいえない。この点からは剰余主
義を準用しないことが望ましいが,剰余主義を準用しない場合には,担保権者は,
希望しない時期に満足を得ることもないままその担保権を強制的に消滅させられる
という不利益を被ることになる。担保権者は,望むときに換価し,できるだけ多額
の満足を得る利益を有しているのであるから,その利益を無視することはできな
い。
(2)そこで,形式的競売における物件を売却する必要性と,担保権者の利益と
をどのように衡量するかという問題となる。実体法的には形式的競売における差押
債権者は競売権という権利を有し,担保権者は換価して債権の満足を得るという物
権的利益を有しているのであって,その比較衡量は困難である。そこで,形式的競
売の差押債権者と担保権者それぞれに与えられている自己の利益を実現するための
法的な手段の有無,方法という手続的側面について検討することが有用である。
差押債権者について無剰余となる場合に,民事執行法は,差押債権者が競売手続
を取り消されないための手段を用意しているが,現実的な手段は民事執行法63条
2項ただし書により優先債権者の同意を得ることであろう。優先債権者には同意義
務はないが,各種の方法により差押債権者が優先債権者と協議して同意を求めるこ
とは可能であると考えられる。
これに対し,剰余主義の準用がない場合には,担保権者において売却を阻止する
方法はない。ただ,担保権者は共有物分割のための競売の場合であれば,それに先
立つ共有物分割訴訟に参加して意見を述べることができ(民法260条),そこで
競売による分割に反対する旨の意見を述べることができようが,共有者はもとよ
り,裁判所も参加者の意思に拘束されない。
上記両者の法的手段を比較してみると,民事執行法63条の準用を認めた上で,
差押債権者が競売手続の取消しを回避する手段を執ることを期待することの方が,
実用的かつ実効的であり,利益調整という面で優れているということができる。
(3)ただ,自助売却のように緊急性を要する場合,あるいは建物の区分所有等
に関する法律59条によって命ぜられた競売のように,売却の必要性が高い一方,
所有者ではない差押債権者と優先債権者の接触が予定されておらず,差押債権者に
おいて目的物件上の優先債権者の同意を得るなどの方策を採ることが著しく困難な
場合は,剰余主義の準用を排してよいものと考える。このように形式的競売のうち
においても民事執行法63条準用の有無を異にする解釈は,民事執行法195条の
「例による」との文言が,形式的競売に担保権の実行としての競売の諸規定を準用
するか否かを解釈に委ねている趣旨であるところからも可能であると考える。
(裁判長裁判官寺田逸郎裁判官那須弘平裁判官田原睦夫裁判官
岡部喜代子裁判官大谷剛彦)

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