弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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        主文
 1 被告が平成11年11月30日にした額面普通株式600株の新株発行のう
ち,Fに割り当てられた100株を除く500株の新株発行を無効とする。
 2 訴訟費用は被告の負担とする。
        事実及び理由
第1 請求
 1 主位的請求
   主文1項同旨
 2 予備的請求
   被告が平成11年11月30日にした額面普通株式600株の新株発行を無
効とする。
第2 事案の概要
 1 争いのない事実等
  (1)被告は,和議の認可を得た株式会社戊の資金提供のため,原告D,被告の
代表取締役であるE(以下「被告代表者」という。)及びMが中心となっ
て,平成11年4月8日,設立された株式会社であり,原告Dを除く原告ら
は,いずれも原告Dが代表取締役を務める株式会社で,原告らは,いずれも
被告の株主である。
  (2)平成11年11月30日当時の被告の株主構成は,Mが原告D及び被告代
表者に株式を譲渡した結果,原告株式会社甲が100株,同株式会社乙が2
00株,同株式会社丙が100株,原告Dが100株で,原告ら合計で50
0株,一方,被告代表者が500株となっており,被告は,株式の譲渡につ
き取締役会の承認を要する旨の定款の定めのある会社で,株主以外の者に対
し新株を発行するには,商法343条所定の株主総会の特別決議を要すると
ころ(同法280条の5の2),被告は,同日,株主でないGに160株,
Hに160株,Iに160株,Jに20株,Fに100株を割り当て,1株
の金額及び発行価額を5万円とする額面普通株式600株を新たに発行した
(以下「本件新株発行」という。)。
  (3)原告らは,平成12年4月4日,本訴を提起し,主位的に,本件新株発行
のうちFに割り当てられた100株を除く500株の新株発行を無効とする
ことを求め,予備的に,本件新株発行全部を無効とすることを求めている。
 2 争点
   本件の争点及びこれに関する当事者の主張は次のとおりであり,本件新株発
行の無効原因の有無については,商法280条の3の2所定の株主への通知と
して原告Dに通知があったかどうかが主たる争点である。
  (1)本件新株発行無効原因の有無
   (原告ら)
    本件新株発行は,株主総会の特別決議を欠くものであるところ,被告のよ
うな閉鎖会社にあっては,第三者の取引上の利益より従来の株主の会社支配上
の利益を優先すべきである。原告Dが,第三者割当てによる新株発行の話を聞
いたのは,本件新株発行が行われた後の平成11年12月6日ころであり,本
件新株発行の違法性は著しい。
   (被告)
    本件新株発行は,被告代表者が発行したものである以上,取引の安全が優
先され,株主総会の特別決議がないことは無効原因とはならない。被告代表者
は,平成11年10月27日から,原告Dに対し,増資を相談し,同年11月
11日,株式会社己のK社長に援助してもらうつもりであることを言い,第三
者割当てによる3000万円の増資を伝えたところ,その後,原告Dから回答
がなく,承知したものと理解して本件新株発行を行ったもので,本件新株発行
について株主に対する通知が行われている。
  (2)本件新株発行の一部無効の可否
   (原告ら)
    Fに対する新株発行については,事前に原告Dも承諾しており,Fの取引
の安全を考慮し,本件新株発行のうち,Fに割り当てられた100株を除く5
00株の新株発行を無効とすべきである。
   (被告)
    新株発行無効の訴えは,新株発行を一体として無効とする訴訟であり,そ
の一部を無効とすることは許されない。
第3 当裁判所の判断
 1 本件新株発行無効原因の有無について
  (1)新株発行無効原因について
    新株発行は,株式会社の組織に関するものであるとはいえ,会社の業務執
行に準じて取り扱われ,会社と取引関係に立つ第三者を含めて広範囲の法律関係に
影響を及ぼすものであることにかんがみれば,代表取締役が新株を発行したもので
ある以上,株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定款の定めのある会社に
おいて,株主以外の者に対し新株を発行することについて株主総会の特別決議がな
いことを,新株発行の無効原因ということはできない。しかしながら,商法280
条の3の2所定の株主への通知義務は,株主の新株発行差止請求権行使の機会を保
障することを目的として定められたものであり,新株発行差止事由が存在しない場
合でない限り,原則として,上記通知を欠くことは新株発行の無効原因となるとい
うべきである。本件新株発行においては,株主総会の特別決議がない以上,新株発
行の差止事由がないということはできず,上記通知を欠くことは,無効原因とな
る。
  (2)通知の有無について
    本件新株発行につき,Fに対する新株発行については,原告Dも事前に聞
きこれを了承していたことは当事者間に争いがない。更に,手帳(乙1
0),資金要望書(乙12)及び被告代表者本人尋問の結果によれば,原告
Dは否定するものの(甲9,原告D本人),平成11年10月22日の株式
会社戊の和議条件による債務の支払の後,代表取締役を続投することとなっ
た被告代表者が,同月27日ころ,3000万円の資金が必要と考え,同年
11月11日までに,原告Dに対し,増資の意向を打診したことは認められ
る。しかしながら,被告代表者本人尋問の結果によっても,被告代表者が,
原告Dに対し,本件新株発行前に,具体的な新株発行の時期や割当てを受け
る株主名等を伝えたことはなく,株式引受人名簿(甲8),陳述書(甲
9),上申書(甲10),証人Lの証言及び原告D本人尋問の結果によれ
ば,本件新株発行後においても,被告代表者が,原告Dのみならず新株主で
あるFに対しても,本件新株発行を行ったことを明らかにしていなかったこ
とが認められることに照らせば,被告代表者が,本件新株発行について原告
Dの承諾を得られていないことを認識し,本件新株発行を行ったことを明確
にしていなかったことが認められるところで,本件新株発行前に,新株発行
差止請求権行使の前提となるべき確定的かつ明確な新株発行の通知はなかっ
たと認められ,上記認定を覆すに足りる証拠はない。
 2 本件新株発行の一部無効の可否について
   前記のとおり,Fに対する新株発行については,原告Dも事前に聞きこれを
了承していたものであるところ,Fに対する新株発行は,平成11年10月2
2日の株式会社戊の和議条件による債務の支払の資金調達を目的とするもの
で,被告は,同月21日には,増資資金としてFから500万円を預かってお
り,そのころまでに,被告代表者においてもFに対する新株発行を了承してい
たことが認められる(甲9ないし11,乙13,証人L,原告D本人,被告代
表者本人)。これに対し,本件新株発行のうちF以外の者に対する新株発行
は,平成11年10月22日以後,被告代表者が,今後の被告の運営のため資
金の必要性を感じ,その資金調達を目的として行われたものであり(乙10,
12,被告代表者本人),形式上新株発行手続は同時に行われているものの,
Fに対する新株発行とその他の者に対する新株発行とは,実質的に別個の異な
る新株発行と言うべきである。したがって,本件新株発行のうち,Fに割り当
てられた100株の新株発行は無効原因がなく,これを除く500株の新株発
行を無効とすべきである。
 3 結論
   以上によれば,原告の主位的請求に理由があるのでこれを認容し,主文のと
おり判決する。
    広島地方裁判所民事第3部
         裁判官 山   田     明

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