弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人岩田満夫、同布施誠司連名作成名義の控訴趣意書に記
載されたとおりであるから、これを引用し、これに対し当裁判所は次のとおり判断
する。
 一、 控訴趣意第一点及び第二点について。
 論旨は、原判決が被告人ほか二名の共謀による強姦の事実を摘示したうえ刑法第
一七七条前段、第六〇条を適用していることからすれば、原判決は被告人らを単な
る共謀共同正犯と認定したものと解されるから、本件強姦の罪は親告罪である。然
るに本件に対する告訴は被告人を除く共犯者二名につき昭和四〇年七月三〇日取り
消され、その効力は被告人にも及んでいるから、右と同じ日になきれた被告人に対
する本件公訴の提起は訴訟条件を欠き、無効であり、本件公訴は刑事訴訟法第三三
八条第四号に則り棄却せらるべきであるに拘らずこれを有罪とした原判決には判決
に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある。仮に原判決の認定する
ところが刑法第一八〇条第二項に規定する場合に当り、告訴を要しないとするので
あれば、この点原判決には事実の誤認、ひいては右条項の解釈、適用を誤つた違法
がある。即ち、被告人のなした原判示強姦の現場には共犯者はいなかつたのである
から、被告人らが現場において共同して本件犯行に及んだ事実はなく、またその意
思もなかつたのであつて、本件は右条項の規定する場合に当らない。従つて以上い
ずれの点からするも原判決は破棄を免れないというのである。
 <要旨>よつて、先ず原判決挙示の証拠に当審における事実取調べの結果を加えて
本件犯行に至る顛末をみると、被</要旨>告人はA、Bとともに原判示日時頃立川
市から愛知県下に向け大型トレーラーを運転、西進し、秦野市内で通行人C子(当
時一六年)を同乗させたが、沼津市付近に差しかかつた頃同女を輪姦しようと企
て、これを右両名に計つたところその賛同を得たので、興津市内のドライブインに
立ち寄り右犯行の場所等につき具体的な打合せを遂げた。かくて被告人ら三名は右
謀議に従い原判示日時頃原判示静岡県浜名郡a町b地内の国道上でトレーラーを停
め、同国道脇の海岸において、C子を強姦するため被告人が同女の左手を掴んでト
レーラーから引きおろし、その背を押すなどして同国道南沿いの樹木の間にある小
路に入り、A、Bの両名もこれと相前後して右小路から海岸に向つた。被告人は、
C子を連れ右小路から海岸を走る道路に出たが、A、Bの両名が途中用便を足そう
として脇にそれたため、被告人ひとり先に同女を連れ、犯行に適当な場所を求めて
原判示砂浜上にある小松林の陰に至り、同女をその肩を押えて座らせ、同女が嫌が
るにも拘らず、原判示のような暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧したうえ強いて同
女を姦淫した。その間A、Bの両名は用便をすましたうえ被告人らの後を追い、右
犯行場所付近界隈を探し、偶々同人らと交替するため戻つて来た被告人と前記道路
上で出会い、更に被告人ら三名共に右犯行の場所に戻り、先ずAが、被告人及びB
が一五メートルほど離れたところで待つている間に、殆んど抵抗力を失つていたC
子を押し倒しその反抗を抑圧して強いて同女を姦淫し、次いで代つたBも同様被告
人らが右場所で待つている間に、既に抵抗力を失つていた同女を強いて姦淫したこ
とが認められ、これに反する被告人の原審及び当審各公判における供述並びに当審
証人A、同Bに対する各尋問調書中の供述記載部分は到底措信ずることができな
い。なる程、被告人と前記A、Bの両名とが互いに一時相手を見失つたため事実上
被告人がC子を強姦した際右共犯者がその場にいなかつたことは所論のとおりであ
るが、以上認定のような本件犯行に至る経緯、態様、殊に被告人ら三名において前
記C子を輪姦することを共謀し、事前に強姦の場所を具体的に打合せ、しかもその
場所において本件犯行を遂行していること、尠くともA、Bの両名が順次同女を強
姦する際は被告人らが交互にその犯行の場所付近にいたことが明らかであることに
鑑みれば、偶々夜間前記の事情から互いに一時その相手を見失い被告人がC子を強
姦する際右Aらが事実上その場にいなかつたとしても、同人らは同じ海浜の一部、
特に場所的に自ら限られた範囲内にあつて互いに探し合つた末、結局被告人ら三名
とも同一の場所でそれぞれ所期の目的を遂げているのであるから、よしんば当審に
おける検証の結果に徴して窺えるように被告人がAらと最も離れた場合が一時一二
〇メートル余に達したことがあつたとしても、その犯行の形態は正に刑法第一八〇
条第二項に規定する「二人以上現場において共同して犯した」場合に該当するもの
と解するのが相当である。尤もこの点に関する原判示は措辞十分とはいえず所論の
ような疑いを挾む余地なしとしないが、原審第一回公判において立会検察官が本件
公訴事実の訴因を変更することなく罰条に刑法第六〇条、第一八〇条第二項を追加
し、原判決が右訴因と同様の事実を認定していることに徴すれば、原判決はひつき
よう被告人ら三名が現場において共同して犯した本件強姦の事実を認定したものと
認めざるを得ない。尤も原判決が法令の適用において刑法第一七七条前段、第一〇
条を挙げ、同法第一八〇条第二項を明記していないことは所論のとおりであるが、
同条項はただこれに規定する形態の罪を非親告罪とする趣旨を規定したものであつ
て、特に独立の犯罪構成要件を規定したものとは解されないから、判決に特に同条
項を挙げる要はないものといわなければならない。さすれば原判決には所論のよう
な事実の誤認、法令の解釈、適用の誤りはなく、もとより本件の罪は親告罪に当ら
ない。なお所論は告訴の取消をいうので敢てこの点について付言すると、なるほど
C子の母作成の告訴状、C子の父作成の告訴取消申立書によると、本件については
先に被害者の母親より告訴がなされていたところ、昭和四〇年七月三〇日被害者の
父親から東京家庭裁判所八王子支部に被告人を除く共犯者二名につき告訴を取消す
旨の右支部宛同月二八日付の書面が差し出されたことが認められる。然し、右告訴
取消申立書が家庭裁判所に差し出されたとしても、それによつて直ちに告訴取消の
効力を生じたものとは解されないのであつて、東京家庭裁判所八王子支部裁判官の
検察官送致決定書(二通)及び右告訴取消申立書に同裁判所の受付印だけがあつて
東京地方検察庁八王子支部の受付印のないことに徴すれば、被告人を除く共犯者二
名に対する一件書類が一括して同年八月二三日裁判所から右検察庁検察官に送致さ
れたとき初めて同検察官において前記告訴取消申立書を受領したことが窺われるか
ら、本件告訴取消の効力は右検察官において同書面を受領したときに発生したもの
と解するのを相当とする。果して然らば右告訴の取消が効力を生ずる前の同年七月
三〇日になされた本件公訴の提起は有効であり、原判決は所論いずれの点よりして
も非議せられるべき筋合はない。論旨はすべて理由がない。
 (その余の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 松本勝夫 判事 海部安昌 判事 石渡吉夫)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛