弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人和島岩吉の上告趣意第一点について。
 原判決判示第一の賍物牙保罪において被告人が賍物たるの情を知つていたとの点
について、原審は検察事務官のAに対する聴取書の陳述記載を証拠としてこれを認
定したのであるが、Aの原審公判廷における共同被告人としての供述はこれと異つ
ていること、所論の通りである。
 しかし共同被告人の公判廷における供述と所論の如き公判廷外における供述とが
異る場合に、その何れを採用するかは一に裁判官の自由心証に委ねられているので
あつて、公判廷の供述であるからといつて必ずこれを採用しなければならないとい
う法則はないのであり(昭和二三年(れ)一四六号、同二四年二月九日大法廷判決
参照)、また公判廷における供述を排して公判廷外における供述を信じて採つた場
合に、その理由を示す必要がないことも、当裁判所の判例とするとおりである(昭
和二三年(れ)一八一三号、同二四年四月一四日第一小法廷判決)から、原判決に
は何等違法の点はない。
 次に論旨は、原判決判示第二乃至第四の各賍物罪を通じ被告人が賍物たるの情を
知つていたとの点について、原審が司法警察官の被告人に対する第二回被疑者訊問
調書のみによつてこれを認定したことを目して、憲法及び刑訴応急措置法に違反し
ていると主張する。
 しかし被告人の当該公判廷外における自白を証拠として犯罪事実を認定するには
補強証拠を必要とするけれども、その犯罪構成事実の全部に亘つて一々これが裏付
となる補強証拠を必要とするものではなく、要はその自白の真実性を保障するに足
る他の証拠があれば足りるのであつて、殊に賍物罪において犯人が賍物たるの情を
知つていたか、どうかというがごとき、いわゆる犯罪の主観的要件に属するものに
ついては、その直接の証拠は当該公判廷外の被告人の自白のみであつても、その客
観的構成要件たる事実について他に確証があつて、右被告人の自白の真実性が保障
せられると認められる以上、それ等の各証拠を綜合して犯罪事実の全体を認定する
ことは適法であること、夙に当裁判所が判例とするところである(昭和二四年(れ)
八二九号、同二五年一一月二九日大法廷判決。昭和二三年(れ)一四二六号、同二
四年一〇月五日大法廷判決参照)。しかして本件においては当該公判廷外の自白と
しては、前掲の被疑者訊問調書あり、客観的要件を証するものとして原判決挙示の
各証拠が存するから、以上の証拠を綜合して犯罪事実を認定した原判決に所論のよ
うな違憲及び違法ありということはできない。論旨はいずれも理由がない。
 同第二点について。
 論旨は刑訴四〇五条に定めた適法な上告理由とならない。なお記録を精査しても
刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。よつて刑訴施行法三条の二、刑訴
法四〇八条に従い主文のとおり判決する。この判決は、裁判官全員一致の意見であ
る。
  昭和二六年八月九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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