弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被上告人B1の請求中金五〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和三五年
一〇月二九日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払を認容した部分なら
びに同B2および同B3の請求を認容した部分について、上告人との関係において、
原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
     前項の部分に関する被上告人B1、同B2およびB3の上告人に対する
請求を棄却する。
     上告人のその余の部分に対する上告を棄却する。
     訴訟の総費用中、上告人と被上告人B1との間に生じたものは、これを
七分し、その一を同被上告人の負担とし、その余を上告人の負担とする。
     訴訟の総費用中、上告人と被上告人B2および同B3との間に生じたも
のは、同被上告人らの負担とする。
     訴訟の総費用中、上告人と被上告人B4との間に生じたものは、これを
一〇分し、その一を同被上告人の負担とし、その余を上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人青木米吉、同鬼頭忠明の上告理由第一点について。
 所論の点に関する原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同様とする。)
の事実認定は、これに対応する挙示の証拠によつて是認することができ、その判断
の過程に所論の違法はないから、論旨は採るを得ない。
 同第二点について。
 転居後における被上告人B1の減収額のうち少なくとも三分の二程度のものが本
件事故と相当因果関係にある旨の原審の認定判断は、原判決の挙示する事実関係に
照らして肯認できないことはなく、その問に所論の違法はないから、論旨は採るを
得ない。
 同第三点について。
 第三者の不法行為によつて身体を害された者の配偶者および子は、そのために被
害者が生命を害された場合にも比肩すべき、または右場合に比して著しく劣らない
程度の精神上の苦痛を受けたときにかぎり、自己の権利として慰藉料を請求できる
ものと解するのが相当である(最高裁昭和三一年(オ)第二一五号同三三年八月五
日第三小法廷判決、民集一二巻一二号一九〇一頁、最高裁昭和三八年(オ)第三七
三号同三九年一月二四日第二小法廷判決、民集一八巻一号一二一頁、最高裁昭和四
〇年(オ)第一〇〇四号同四二年一月三一日第三小法廷判決参照)。これを本件に
ついてみるに、原判決は、被上告人B4が、本件不法行為によつて、全治までに一
年以上を要する左大腿部骨折等の重傷をこうむり、手術等の治療を受けたが、現在
においても、左下肢が約三〇度外旋位をとつて約三、五センチメートル短縮し、大
腿囲、下腿囲とも狭小となり、股、膝関節の運動領域に障害を残し、正座は不能で、
歩行も約一キロメートル以上は苦痛のため不可能な状態である等の事実を認定して、
同被上告人の右受傷および後遺障害のため、同被上告人の配偶者である被上告人B
1ならびに子である同B2および同B3が、自己の権利として、原判決判示の限度
において慰藉料請求権を有するものと判断した。しかし、原判決認定の右事実関係
のもとにおいては、まだ、すでに説示した被害者の配偶者および子が自己の権利と
して慰藉料を請求できる程度の精神上の苦痛を受けたものとは認められない。され
ば、この点を指摘する論旨は理由がある。
 同第四点について。
 所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および事実認定を非難
するに帰するものであるから、採用できない。
 されば、被上告人B1の請求中慰藉料の請求を認容した部分ならびに同B2およ
び回B3の請求(いずれも慰藉料の請求)を認容した部分は、いずれも失当である
から、右部分については、原判決は破棄を、第一審判決は取消を免れず、右部分の
請求は棄却すべきものである。しかし、その余の部分の原判決は正当であるから、
この部分に関する上告は棄却すべきものである。
 よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、八九条、
九二条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    松   本   正   雄

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