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平成25年2月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成24年(行ケ)第10183号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成25年1月31日
判決
原告ゾール・サーキュレイション
・インコーポレイテッド
同訴訟代理人弁理士伊藤晃
前田厚司
前堀義之
大塚雅晴
岡崎博之
被告特許庁長官
同指定代理人高田元樹
横林秀治郎
石川好文
守屋友宏
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための
付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2010-16592号事件について平成24年1月10日にした
審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,後記1のとおりの手続において,特許請求の範囲の記載を後記
2とする本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が同請求は成
り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は後記3のとお
り)には,後記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯
(1)原告は,平成21年4月1日,発明の名称を「胸部圧迫装置」とする特許出
願(特願2009-89178号。特願2000-551718号を原出願とする
分割出願。原出願日:平成11年5月17日。パリ条約による優先権主張日:平成
10年(1998年)5月29日,米国。請求項の数16)をした(甲4)。
特許庁は,平成22年3月18日付けで拒絶査定をしたため,原告は,同年7月
23日,これに対する不服の審判を請求した。
(2)特許庁は,これを不服2010-16592号事件として審理し,平成24
年1月10日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,その謄
本は,同月24日,原告に送達された。
2特許請求の範囲の記載
本件審決が判断の対象とした特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりで
ある(以下,特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本願発明」といい,
本願発明に係る明細書(甲4)を,図面を含めて「本願明細書」という。)。なお,
文中の「/」は,原文における改行箇所を示す。
患者の胸部を圧迫するための胸部圧迫装置であって,/上記患者の胸部の周囲に
延びて,上記患者の上で結び付けられるベルトと,/上記患者の胸部の周囲で上記
ベルトの締め付けと緩めを繰り返すために上記ベルトに対して接続されたベルト引
張手段と,/上記ベルト引張手段に接続され,上記患者の胸部に対する上記ベルト
の締め付けと,上記患者の胸部に対する上記ベルトの緩めとを繰り返すように,上
記ベルト引張手段を作動させるモータと,/上記モータの作動を制御するコントロ
ーラと/を備え,/上記コントローラは,上記モータ及び上記ベルト引張手段を作
動させ,上記患者の胸部に対する上記ベルトの締め付けと緩めのサイクルのサイク
ルを繰り返すように,プログラムされ,/エンコーダが上記胸部圧迫装置の構成要
素に接続され,上記エンコーダは上記ベルトの位置を測定可能であり,かつ上記エ
ンコーダは上記ベルトの位置を示すベルト位置信号を上記コントローラに送信可能
である,胸部圧迫装置
3本件審決の理由の要旨
(1)本件審決の理由は,要するに,本願発明は,後記アの引用例に記載された発
明並びに後記イ及びウの周知例1及び2に記載された周知技術に基づいて当業者が
容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許
を受けることができない,というものである。
ア引用例:米国特許第4770164号明細書(甲1。特許日(発行日):昭
和63年(1988年)9月13日)
イ周知例1:特開平3-280931号公報(甲2)
ウ周知例2:特開昭63-186625号公報(甲3)
(2)本件審決が認定した引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)
並びに本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
ア引用発明:患者の胸郭に圧迫を生じさせて心停止している患者を蘇生させる
装置であって,バンドを患者の胸郭の周りに通し,バンドは患者の胸の中央の位置
で分離可能で再結合可能であり,蘇生のリズムで張りと緩めを交互に続けるものに
おいて,バンドを張るためにその一部を引っ張りローラに巻き付け,モータで駆動
されるソケットが駆動されることにより引っ張りローラが駆動され,モータが駆動
されたときに蘇生のリズムでバンドを緩め,張り,電気モータをソケットの所望の
最緊張状態と最弛緩状態で停止させる好適な電子保持回路と協働する,装置
イ一致点:患者の胸部を圧迫するための胸部圧迫装置であって,上記患者の胸
部の周囲に延びて,上記患者の上で結び付けられるベルトと,上記患者の胸部の周
囲で上記ベルトの締め付けと緩めを繰り返すために上記ベルトに対して接続された
ベルト引張手段と,上記ベルト引張手段に接続され,上記患者の胸部に対する上記
ベルトの締め付けと,上記患者の胸部に対する上記ベルトの緩めとを繰り返すよう
に,上記ベルト引張手段を作動させるモータと,上記モータの作動を制御するコン
トローラとを備え,上記コントローラは,上記モータ及び上記ベルト引張手段を作
動させ,上記患者の胸部に対する上記ベルトの締め付けと緩めのサイクルのサイク
ルを繰り返すようにされた,胸部圧迫装置である点
ウ相違点1:本願発明では,「上記コントローラは,上記モータ及び上記ベル
ト引張手段を作動させ,上記患者の胸部に対する上記ベルトの締め付けと緩めのサ
イクルのサイクルを繰り返すように,プログラムされ」ているのに対し,引用発明
は「上記コントローラは,上記モータ及び上記ベルト引張手段を作動させ,上記患
者の胸部に対する上記ベルトの締め付けと緩めのサイクルのサイクルを繰り返すよ
うにされ」てはいるが,そのように「プログラムされ」てはいない点
エ相違点2:本願発明では,「エンコーダが上記胸部圧迫装置の構成要素に接
続され,上記エンコーダは上記ベルトの位置を測定可能であり,かつ上記エンコー
ダは上記ベルトの位置を示すベルト位置信号を上記コントローラに送信可能であ
る」であるのに対し,引用発明ではそのような特定がなされていない点
4取消事由
本願発明の容易想到性に係る判断の誤り
(1)引用発明の認定の誤り
(2)相違点の認定の誤り
(3)相違点1に係る判断の誤り
(4)相違点2に係る判断の誤り
第3当事者の主張
〔原告の主張〕
1引用発明の認定の誤りについて
引用例には,胸郭の側部とバンドとの間に固定された「バンドガイド手段16」
が介在し,胸郭の側部とバンドとの間には可動の「バンドガイド手段18」が介在
していることが記載されている。
しかしながら,本件審決は,引用例に開示されている「バンドガイド手段16及
び18」の存在を看過して引用発明を認定した。
したがって,本件審決の引用発明の認定は誤りである。
2相違点の認定の誤りについて
(1)ベルトと胸部との間にベルト以外の部材が介在するか否かについて
ア前記1のとおり,引用例に記載された発明には,「バンドガイド手段16及
び18」が存在するから,バンドそれ自体が胸郭の周囲全体を囲むのではなく,少
なくとも胸郭の側部ではバンドと胸郭との間にバンド以外の部材が介在する。
イこれに対し,本願発明は,「患者の胸部の周囲に延びて,上記患者の上で結
び付けられるベルト」を有しており,患者の胸部の周囲全体をベルト自体が取り囲
んでいる。本願明細書【図5】ないし【図9】には,圧迫ベルト自体が胸部の周囲
全体を囲んでおり,胸部の側部を含め,胸部の周囲のいかなる領域においても圧迫
ベルトと胸部との間に何らの部材も介在していないことが明確に図示されているし,
【図3】及び【図4】にも,摩擦ライナがあるだけで実質的には圧迫ベルトと胸部
との間には何らの部材も介在していないことが明確に図示されている。
また,本願明細書には,摩擦ライナを除いてベルトと患者の胸部との間に何らか
の部材が介在することは一切記載されていない。摩擦ライナは,その名称や図面の
記載からしても,患者の胸部との間の摩擦を低減する機能を有するにすぎず,ベル
トによる胸部の締め付けに寄与していないことは明らかである。
したがって,本願発明の「患者の胸部の周囲に延びて,上記患者の上で結び付け
られるベルト」とは,ベルトそれ自体が患者の側部の周囲全体を囲み,胸部の側部
を含む胸部の周囲のいかなる領域においてもベルトと胸部との間には実質的にベル
ト以外の部材が介在していないことを意味するものと解すべきである。
ウ以上によると,本願発明は,患者の胸部の周囲全体をベルト自体が取り囲み,
ベルトと患者の胸部との間にはベルト以外の部材が実質的に介在していないのに対
し,引用例に記載された発明は,バンドそれ自体が胸郭の周囲全体を囲むのではな
く,少なくとも胸郭の側部ではバンドと胸郭との間にバンド以外の部材が介在して
いる点で相違するというべきである(以下,この相違点を「原告主張相違点3」と
いう。)。
(2)相違点1の認定の誤りについて
ア引用例には,モータ手段の作動によりバンドの張りと緩めを相互に繰り返す
ことが開示されているが,上記作動が電子保持回路により実現されることについて
まで,開示されていない。引用例に記載された発明において,モータ手段の上記作
動は,ソケットを駆動するシャフトと連結されている1個又は2個のカム作動の回
路遮断スイッチによって実現されているものである。回路遮断スイッチが「バンド
の張りと緩めを交互に繰り返させ」る機能を有することは,引用例の記載から当業
者が当然に理解できるものであって,引用例は,モータ手段の上記作動が機械的な
スイッチによって実現されていること,機械的なスイッチによる制御を前提として,
さらに,電気モータを,例えばソケットの所望の最緊張状態又は最弛緩状態で停止
させる好適な電子保持回路を設けて協働させてもよいことを開示するにすぎない。
また,「保持回路」や「自己保持回路」とは,例えばスタートスイッチがオン状
態とされた後,ストップスイッチが操作されるまではモータに電力が供給された状
態(モータが作動している状態)を維持する回路を意味するから,このような回路
がバンドの張りと緩めを交互に繰り返させる機能を有しないことは明らかである。
したがって,引用例に記載された発明の電子保持回路は,電気モータをソケット
の所望の最緊張状態と最弛緩状態で停止させるものではあるが,バンドの張りと緩
めを交互に繰り返させているのは電子保持回路ではなく,回路遮断スイッチである。
イ以上によると,本願発明と引用例に記載された発明とは,本願発明では,
「コントローラは,上記モータ及び上記ベルト引張手段を作動させ,上記患者の胸
部に対する上記ベルトの締め付けと緩めのサイクルのサイクルを繰り返すように,
プログラムされ」ているのに対し,引用例に記載された発明の「電子保持回路」は,
「患者の胸部に対する上記ベルトの締め付けと緩めのサイクルのサイクルを繰り返
す」ものではない点で相違するものというべきであって,本件審決は,本願発明の
「コントローラ」と引用発明の「電子保持回路」との相違を看過して相違点1につ
いて認定したものというほかない。
よって,本件審決の相違点1の認定は誤りである。
3相違点1に係る判断の誤りについて
本件審決の相違点1に係る判断は,引用例に記載された発明の電子保持回路と本
願発明のコントローラとが同一の機能を有するとの認定を前提とするところ,前記
2のとおり,引用例に記載された発明の電子保持回路は,患者の胸部に対するベル
トの締め付けと緩めのサイクルを繰り返すものではないから,その前提自体が誤り
である。
以上のとおり,引用例に記載された発明は,本願発明のコントローラに対応する
構成を有していないから,引用例に記載された発明のモータ手段について,マイク
ロプロセッサ回路を用いた制御とする構成を適用したとしても,本願発明のコント
ローラが患者の胸部に対するベルトの締め付けと緩めのサイクルを繰り返すという
構成に容易に想到することはできない。そのような作動をするようにプログラムす
ることも,同様である。
したがって,本件審決の相違点1に係る判断は誤りである。
4相違点2に係る判断の誤りについて
(1)「バンド位置信号」について
引用例に記載された発明の「しるし」は,バンドの表面に描かれた線ないし目盛
りであり,ガードの縁との相対的な位置からバンドの位置を人間が視覚的に読み取
るものにすぎず,本願発明の「信号」に相当するものではないから,引用例には,
「ベルトの位置を示すベルト位置信号」が記載されているということはできない。
また,技術用語としての「信号」とは,「デジタル信号」や「アナログ信号」の
ように,「情報を伝えたり表現したりするために用いられる量又は状態」を意味す
るから,線ないし目盛りにすぎない「しるし」は,「信号」の範疇には含まれない。
(2)「エンコーダ」について
引用例に記載された発明の電子保持回路は,電気モータの停止状態を維持するも
ので,電気モータをソケットの所望の最緊張状態と最弛緩状態で停止させるための
回路にすぎず,エンコーダのような計測機器から何らかの信号を受信するものでは
ないから,本願発明のコントローラとは異なるものである。
また,前記のとおり,モータの制御における「保持回路」や「自己保持回路」と
は,例えばスタートスイッチがオン状態とされた後,ストップスイッチが操作され
るまではモータに電力が供給された状態を維持する回路を意味するから,エンコー
ダのような機器から信号を受信する機能を有していない。
したがって,引用例に記載された発明は,そもそもエンコーダからの信号を受信
するような構成を有するものではない。
(3)引用発明に周知技術を適用する動機付けについて
ア引用例に記載された発明は,心肺蘇生法(CPR)のための胸部圧迫装置に
係る発明であるのに対し,周知例1及び2は,いずれも血圧計に係る文献である。
しかも,各文献は,血圧計において,腕の太さや腕囲を測定する技術を開示する
ところ,周知例1の巻込用ワイヤーロープと周知例2のカフ機構部は,腕に対する
緊縮と弛緩を繰り返すものではない点で,蘇生のリズムで引っ張りと緩めのサイク
ルを交互に続ける引用例に記載された発明とは機能において本質的に相違する。
確かに,エンコーダ自体は周知技術であるが,引用例にはエンコーダ等によりバ
ンドの位置を自動的に測定することについて特段の示唆はないから,引用例に記載
された発明に,周知例1及び2のエンコーダを適用する動機付けを認めることはで
きない。被告が指摘するその他の文献(乙4~6。以下,それぞれ「周知例3」
「周知例4」「周知例5」という。)も,「安全ベルト」「シートベルト」「胸囲
測定装置」に係る文献であって,胸部圧迫装置に係る引用例に記載された発明とは
その機能が本質的に相違しているから,引用例に記載された発明に周知技術を適用
する動機付けを認めることはできない。
イ仮に,引用例に記載された発明に周知技術であるエンコーダを適用したとし
ても,引用例に記載された発明の電子保持回路は,患者の胸部に対するベルトの締
め付けと緩めのサイクルを繰り返すものではない点で本願発明のコントローラとは
相違しており,周知例1ないし5により開示された周知技術も上記サイクルを繰り
返すものではないから,本願発明と同様の構成に想到し得るものではない。
(4)したがって,本件審決の相違点2に係る判断は誤りである。
5小括
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業
者が容易に発明をすることができたものということはできない。
〔被告の主張〕
1引用発明の認定の誤りについて
引用例には,胸郭の側部においてバンドと胸郭との間にバンドガイド手段が介在
しつつ,バンドを患者の胸郭の周囲全体に通す状態が開示されており,引用発明の
「バンドを患者の胸郭の周りに通し」とは,このような状態を意味するものである。
したがって,本件審決は,バンドガイド手段の存在を看過したということはでき
ないから,本件審決の引用発明の認定に誤りはない。
2相違点の認定の誤りについて
(1)ベルトと胸部との間にベルト以外の部材が介在するか否かについて
ア本願発明は,患者の胸部に対するベルトの配置について,「患者の胸部の周
囲に延びて」と規定するが,通常,「周囲」とは,「ある物の外周。ぐるり。めぐ
り。まわり。」等を意味し,「延びる」とは,「空間的に長くひろがる」こと等を
意味するから,本願発明の「患者の胸部の周囲に延びて」とは,「患者の胸部の外
周に空間的に長くひろがる」ことを意味するということができる。本願発明には,
ほかに患者の胸部に対するベルトの配置を規定する事項はないから,原告が主張す
るように,ベルトが患者の側部の周囲全体を囲み,ベルトと患者の胸部との間には
実質的にベルト以外の部材が介在しないことを意味すると解することはできない。
本願明細書にも,「患者の胸部の周囲に延びて」について明確な定義はされてい
ない。また,摩擦ライナがベルト以外の部材であることは明らかであるから,本願
明細書には,ベルトが患者の側部の周囲全体を囲み,ベルトと患者の胸部との間に
は実質的にベルト以外の部材が介在しないことを意味する旨の記載も,ベルト以外
の部材が介在する態様を排除する旨の記載もないというべきである。
したがって,本願発明の「患者の胸部の周囲に延びて」とは,ベルトが患者の胸
部の外周に空間的に長くひろがることを意味するものであって,ベルトと胸部との
間には実質的にベルト以外の部材が介在していない状態を意味するものとして限定
的に解釈する必要はない。
イ前記のとおり,引用発明の「バンドを患者の胸郭の周りに通し」とは,胸郭
の側部においてバンドと胸郭との間にバンドガイド手段16及び18が介在しつつ,
バンドを患者の胸郭の周囲全体に通す状態を意味するものである。
ウしたがって,本願発明と引用発明とは,バンドが「患者の胸部の周囲に延
び」る点で一致しているところ,引用発明では,「バンドを患者の胸郭の周りに通
し,バンドは患者の胸の中央の位置で分離可能で再結合可能で」あることから,そ
のような機能を有するバンドについて,本願発明のベルトに相当するとした本件審
決の認定に誤りはない。
(2)相違点1の認定の誤りについて
引用例には,電子保持回路の具体的な構成,1個又は2個のカム作動の回路遮断
スイッチと電子保持回路との具体的な関係やこれらがどのように協働して電気モー
タを例えばソケットの所望の最緊張状態又は最弛緩状態で停止させるのかについて
明確に記載されていないから,引用発明において,バンドの張りと緩めを交互に繰
り返させているのは,回路遮断スイッチであるということはできない。
引用例における電気モータを例えばソケットの所望の最緊張状態又は最弛緩状態
で停止させる電子保持回路は,バンドの張りと緩めのサイクルを交互に繰り返させ
るように電気モータを駆動することに寄与しているし,引用発明の電子保持回路が
回路遮断スイッチを介して電気モータの作動を制御するものであったとしても,実
質上,電気モータの作動を制御する制御指令を出しているのは電子保持回路である
から,引用発明の電子保持回路は,モータの作動を制御しているものというべきで
あって,本願発明のコントローラに相当するとした本件審決の認定に誤りはない。
したがって,本件審決の相違点1の認定に誤りはない。
3相違点1に係る判断の誤りについて
前記のとおり,引用発明は,モータの作動を制御するコントローラである電子保
持回路を備え,同回路は,モータ及びベルト引張手段を作動させ,患者の胸部に対
するベルトの締め付けと緩めのサイクルを繰り返すように制御しているところ,引
用例には,モータ手段について,マイクロプロセッサ回路を用いた制御とすること
が示唆されているから,引用発明において,電子保持回路により回路遮断スイッチ
を介していわば電気的にモータの作動を制御することに代えて,マイクロプロセッ
サ回路を用いて,いわば電子的にモータの作動を制御することにより,相違点1の
構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
したがって,本件審決の相違点1に係る判断に誤りはない。
4相違点2に係る判断の誤りについて
(1)「バンド位置信号」について
引用発明の「しるし」は,バンドの位置を視覚的に人間に伝えるものであるとこ
ろ,通常,「信号」とは,「隔たった二者以上の間で,一定の符号を用いて意思を
通ずる方法。また,その符号。」等を意味するから,バンドの位置情報を視覚的に
伝える符号である点において,「バンドの位置を示すバンド位置信号」であるとい
うことができる。
引用例には,人間が「しるし」から「バンドの位置情報」を視覚的に読み取って
測定し,バンドの状態を把握することにより,バンドの緊張度を変更することが記
載されており,引用例の「しるし」は,「バンドの位置を示すバンド位置信号」と
いうことができるから,「バンドの位置を測定」することにより,バンドの緊張度
を変更することが引用例に記載されているとした本件審決に誤りはない。
(2)「エンコーダ」について
引用発明において,マイクロプロセッサ回路を用いて電子的にモータの作動を制
御する場合,エンコーダからの信号を受信するような構成が採用可能であることは,
技術常識によれば明らかである。
(3)引用発明に周知技術を適用する動機付けについて
ア周知例1ないし5によれば,本願優先日前において,血圧計等の幅広い技術
分野について,人体の一部に巻き付ける帯状物の巻付け状態をエンコーダで検出し,
制御装置に送信する技術手段は周知技術であったということができるから,原告が
主張する引用発明と周知例1ないし5との技術分野の相違は,引用発明に上記周知
技術を適用することの阻害事由となるものではない。
原告が主張する機能の相違も,技術分野の相違に伴う用途の相違にすぎない。
仮に,引用例には引用発明に周知技術であるエンコーダを適用する動機付けが存
在しないとしても,引用発明において,人間が行っていたバンドの位置情報を視覚
的に伝える符号からバンドの位置情報を読み取って測定し,バンドの状態を把握す
ることによりバンドの緊張度を変更することを,人間に代わり,マイクロプロセッ
サ回路に行わせるようにすることに格別の困難性は見出せない。
イ引用発明において,マイクロプロセッサ回路を用いて自動的に制御を行う構
成とする場合,バンドの位置情報に応じてバンドの緊張度を変更する構成を採用す
ることに格別の困難性はなく,人体への巻付け状態を検出する周知技術であるエン
コーダを採用し,エンコーダからマイクロプロセッサ回路にバンドの位置信号を送
信するようにすることは,当業者が適宜行うことができる程度の事項である。
(4)したがって,本件審決の相違点2に係る判断に誤りはない。
5小括
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業
者が容易に発明をすることができたものというべきである。
第4当裁判所の判断
1本願発明について
本願発明の特許請求の範囲は,前記第2の2に記載のとおりであるところ,本願
明細書(甲4)には,おおむね次の記載がある。
(1)技術分野
本願発明は,心停止患者の蘇生に関する(【0001】)。
(2)背景技術
心肺機能蘇生法(CPR)は,心臓発作,感電,胸の怪我及び他の多くの原因に
より心停止した人を蘇生させるための,周知かつ価値ある救急方法である。心停止
中,心臓は血液の拍出を停止するため,心停止した人は,脳への血液供給不足から
脳障害を受けるおそれがあり,CPRには,身体に血液を拍出する心臓及び胸腔を
圧搾するために繰り返し胸部を圧迫することが必要とされる。患者が呼吸していな
ことも多いため,口移し式人工呼吸又はバッグバルブマスクを用いて,胸部圧迫に
より身体に血液が拍出されている間,肺に空気が供給される(【0002】)。
特に心停止直後には,CPR及び胸部圧迫により心停止患者を救うことが可能で
ある。胸部圧迫には,毎分80ないし100回,患者の胸骨を繰り返し下方に押す
ことが必要とされる。CPR及び胸部圧迫は,病院から離れた場所でも,訓練され
た医療補助員及び救急隊員等によって使用することができる(【0003】)。
胸部圧迫が上手に行われた場合,身体中の血液流量は正常な血液流量の約25な
いし30%であるが,脳障害を防ぐには十分な血液流量である。
しかし,胸部圧迫が長時間必要となる場合,心臓及び胸郭を適切に圧迫し続ける
のは不可能ではないにしても困難であり,経験を積んだ医療補助員さえ,数分以上,
適切に胸部圧迫し続けることは不可能である(【0004】)。
よりよい血液流量を提供し,かつ局外者の蘇生努力の有効性を増加させるために,
基礎的なCPRの手順の変形例が使用されている。また,様々な機械的装置による
胸腔の繰り返し圧迫が,CPRで使用するために提案されている(【0005】)。
胸部機械的圧迫用装置として,胸のまわりのベストか革ひもによって胸骨に固定
される圧迫ピストンを備える装置がある。背中の両側に幅広バンド及び止め木を有
し,胸部を圧迫するために隣接してクランプ動作する胸部圧迫部を備える装置もあ
る(【0007】)。
CPR及び胸部圧迫は,その有効性を最大限にし,かつ脳への血液流量の不足に
よる神経損傷を回避するために,心停止後にできるだけ早く始められるべきである。
CPRは,十分に訓練された第1応答者等によって実行された場合でさえ,供給
者が疲労すれば胸部圧迫の効果がなくなるので,多くの場合効果がない。
したがって,生命維持の成功には,第1応答者が到着前にCPRを開始すること
が不可欠である。基礎的な生命維持及び高度な生命維持段階では,CPRの有効性
を維持するために,機械的胸部圧迫装置の補助が必要とされる(【0009】)。
(3)発明の概要
本願発明は,コンパクト,ポータブル又は輸送可能で,小動力源を備えて自家発
電し,訓練が不要かほとんど必要とせずに局外者が容易に使用できる周囲の胸部圧
迫を提供する装置に係る発明である。付加的な特徴として,商業的実用化のために
熟考された動力源及び支持ボードを利用する装置に設けてもよい(【0012】)。
本願発明の胸部圧迫装置は,心停止患者の胸周りを包み,正面で締め付けられる
幅広ベルトを備える。ベルトは,CPRに必要な胸部圧迫を引き起こすために,胸
の周りで繰り返して締め付けられる。バックルは,装置が駆動する前に,適切な付
属品によって駆動されるインターロックを備えることにより,無駄なベルトサイク
ルを阻止してもよい。繰り返してベルトを締めるための操作機構は,患者側で位置
決め可能な小さなボックスに設けられ,胸周りの圧迫を引き起こすためにベルトの
中間を巻き上げる回転機構を備える。ローラは,小さな電動機によって動力が供給
され,バッテリー及び/又は標準電力によってモータが駆動する。ベルトは,モー
タボックスに着脱容易なカートリッジを備える。モータは,カム・ブレーキ及びク
ラッチを備えるトランスミッションを介してベルトに連結され,幾つかのモードで,
モータ,クラッチ及びカム・ブレーキを操作するコントローラが設けられている。
1つのモードでは,高圧迫閾値から低圧迫閾値にベルト運動が制限される。他のモ
ードでは,弛緩に抗してベルトを締め付けた状態に維持した後,ベルトを緩める。
いくつかのモードでは,圧迫がCPR呼吸を不能とする間の小休止期間を含ませる
ことができる。したがって,本願発明は,ポータブル蘇生装置に組み入れることが
できる(【0013】)。
(4)発明を実施するための形態
本願発明の実施例の主要部はモジュール式であり,モータボックス,ベルトカー
トリッジ及びベルトからなる。モータボックスの外部には,駆動ホイール内にスプ
ロケットが設けられ,このスプロケットは,ベルトカートリッジの受けロッドと係
合する。ベルトカートリッジは,患者の胸部の周囲に巻かれるベルトを収容してお
り,受けロッドによって回転されるスプールを含む。スプールは,ベルトの中間点
を巻き取り,圧迫サイクル状態にする。コンピュータ制御システムは,モータボッ
クス内に収容されることが好ましい。モータボックスがベルトカートリッジに着脱
自在に取り付けられているモジュール式で提供することにより,ベルトカートリッ
ジを患者の下側に容易に滑らすことが可能となる(【0015】【図1】)。
内部機構を含むベルトカートリッジは,ベルトを駆動スプールの方向に向かわせ
るためのガイドスピンドルを収容している。ガイドスピンドルは,カートリッジ中
心部の近傍に配置されており,装置が使用される際には背骨の近くに位置する。摩
擦ライナは,ガイドスピンドルの領域においてベルト上方に浮遊し,ハウジングの
頂上部と各底面パネルに取り付けられており,左側ベルト部と右側ベルトがベルト
カートリッジから分岐する領域に広がっている(【0016】【図2】【図3】)。
摩擦ベルトライナは,ガイドスピンドルとベルトの上に浮遊し,ハウジング上に
取り付けられ,患者と圧迫ベルトとの間に密着する(【0017】)。
装置の使用時において,ベルトカートリッジは患者の下側に滑り込まされ,左及
び右の迅速解放部材が接続される。駆動スプールが回転すると,ベルトの中間部分
を巻き上げて胸部の周囲にベルトを締め付ける。ベルトによって作用される圧迫力
により,CPRに必要な内部胸郭圧力が十分に引き起こされ,若しくは増加させら
れる。ベルトが駆動スプールの周りに巻き上げられると,患者の胸部は十分に圧迫
される(【0018】【図4】)。
モータボックスの外部には,ハウジング及びシステムによって測定されたあらゆ
るパラメータの表示に便利なディスプレイスクリーンを備えたコンピュータ・モジ
ュールがある。モータは,トルクを引き出すのに必要なベルトを稼働でき,小さな
バッテリーで操作される。モータ軸は,モータがエネルギーを与えられない場合
(あるいは逆の負荷がギヤボックス出力軸に負荷される場合),モータ空回りを制御
する減速ギヤ及びカム・ブレーキを有するブレーキに同一軸心上に直接並べられて
いる。ギヤボックス出力ロータは,入力歯車に接続したチェーン及び歯車によって
クラッチの伝達ロータに接続している。クラッチは,入力歯車が出力ホイールに噛
み合うか否か,入力ホイールに入力される回転が出力ホイールに伝達されるか否か
を制御する。スピンドルブレーキと呼ばれる第2ブレーキが,システムを制御する。
出力ホイールは,チェーン,駆動ホイール及び受けロッドを介して駆動スプールに
接続されている。駆動ホイールは,駆動ロッドに嵌合して係合する大きさの形に作
られている受けソケットを受け入れている(【0025】【図12】【図17】)。
システム・コントローラとして動作するコンピュータ・モジュールは,ボックス
内あるいはボックスに取り付けられ,全システムに含まれている生物学的かつ物理
的なパラメーター・センサと同様,操作可能にモータ,カム・ブレーキ,クラッチ,
エンコーダ及び他の操作部品に接続される。血圧,血液酸素,エンドタイドルCO2,
体重,胸周囲などのパラメータは,システムによって測定でき,圧迫割合及びトル
クの閾値あるいはベルトの締め上げ及び緩め制限を調整するため,コントロールシ
ステム内に組み込むことができる。コンピュータ・モジュールは,ディスプレイ及
び遠隔通信並びにセンサ・モニタリング及びフィードバック・モニタリングのよう
な様々な付随的な作業を扱うようにプログラムできる(【0028】)。
コンピュータは,プログラムにより繰り返してモータを回すように操作され,駆
動スプールに圧迫ベルトを巻き付けるためにクラッチを開放することによって患者
の胸を圧迫し,ベルトを開放することを許す駆動スプールをリリースすることによ
ってベルト及び患者の胸を広げることを可能にし,各サイクルの時間中にロックさ
れ,あるいは,ブレーキがかけられた状態で駆動スプールを保持する。コンピュー
タは,トルク・センサあるいはベルト・エンコーダのような様々なセンサからの入
力をモニターするようにプログラムされ,例えば,圧迫ストロークを停止し,ある
いは,トルク限界かベルト取り分範囲に応じてクラッチ(あるいはブレーキ)を滑
らせることにより,検知されたこれらのパラメータに応じてシステムの操作を調節
する。モータボックスコンポーネントの操作は,高い胸郭内の圧力の時間を延長す
る圧迫方法を保持し,圧搾するために調整してもよい。システムは,より迅速な圧
迫サイクル及びよりよい波形のための迅速なリリース方法並びにある状態のフロー
特性で操作してもよい。モータボックスコンポーネントの操作は,ベルトの過去の
圧迫閾値範囲あるいは緩和範囲を移動させるための時間及びバッテリーパワーの浪
費を回避するため,制限された弛緩及び圧迫のために調整してもよい。コンピュー
タは,ベルト圧迫の上方閾値を決定するために検知された2以上のパラメータをモ
ニターするようにプログラムされていることが好ましい。トルク・センサによって
測定されるモータ・トルク及びベルト・エンコーダによって決定される引き出され
るベルト長さをモニターすることにより,システムは余分な制限パラメータでベル
ト取り分を制限できる。システムに2つの制限パラメータを適用することによって
提供される余剰は,システムがベルトの締め上げの停止によって閾値を検知せずに
応答しない一方,単一の圧迫パラメータが安全閾値を超える場合に,過剰圧迫を回
避する(【0029】)。
エンコーダは,例えば,第2ブレーキに取り付けられ,かつ,システム・コント
ローラにモータ軸動作の表示を与える。さらに,エンコーダは,ドライブ・ソケッ
トあるいは駆動歯車,モータ及び/又はモータ軸に配置してもよい。ベルト・エン
コーダは,ベルトの取り分を追跡し,ドライブ・ベルトに巻かれるベルトの長さを
制限するため,コントロールシステムに使用される(【0030】【図12】)。
モータ,カム・ブレーキ及びクラッチの配置は,ベルト駆動胸部圧迫に対する他
のシステムに適用してもよい。例えば,胸部の上に取り付けるハンドクランクベル
トと患者の胸部の下に置く2つのチョックによるものでもいい。チョックは胸部を
正しい位置に保持し,ベルトはきつくクランクされる。トルクとベルト緊張度は,
大きな駆動ローラの回転と干渉する機械的止め具により制限される。機械的止め具
はスプールの締付けロールを単に制限するが,スプールの巻戻しを妨げない。駆動
ロッドに取り付けるためのモータが提案されている。モータ軸と駆動ローラとの間
の噛み合いは,クラッチと称される手動操作の機械的インターロックである。この
クラッチは,使用前に手動で設定しなければならない原始的クラッチであり,圧迫
サイクル中は操作することができない。また,サイクル中は駆動ローラを解放する
ことはできないし,モータが駆動している間又は装置が動作している間は噛み合わ
せることができない。ブレーキとクラッチをハンドクランクベルトとチョックを用
いた装置に適用する場合,システムを自動化させ,圧搾を達成し,圧迫パターンを
保持する必要がある(【0051】)。
2引用発明の認定の誤りについて
(1)引用例の記載について
引用例(甲1)には,おおむね次の記載がある。
ア技術分野
引用例に記載された発明は,心停止している患者を蘇生させる方法及び装置に関
するものであり,特に,胸郭の一般化された圧迫を生じさせる柔軟なバンドを用い
る方法及び装置に関する発明である。
イ要約
引用例に記載された発明の方法と装置によれば,心停止を起こしている患者は,
柔軟なバンドを患者の胸郭の周りに通すこと,バンドの張りが締め作用を及ぼし胸
郭の周囲の大部分の周りで胸郭の内部に向かう力の成分を生み出すために,胸郭を
その横部分で締め,締められた部分にわたっての長手方向の運動のためにバンドを
案内すること,患者の血液に胸郭外領域における毛細血管への有効な循環を促すた
めに十分な胸郭内圧を生じさせるようにバンドを張ること,患者の体の弾性組織が
胸郭内の領域に血液を送り返すことを可能にするようにバンドを緩めること,蘇生
のリズムで張りと緩めのサイクルを交互に続けることにより蘇生することができる。
バンドは,バンドを張るためにその一部を引っ張りローラに巻き付け,引っ張り
ローラにトルクをかけることにより胸郭の一方に引くことができる。
バンドの緊張度に影響するパラメータとして引っ張りローラのトルクに制限が設
けられる。バンドの一部が走行する長手方向の距離がバンドの緊張度に影響するパ
ラメータとして用いられてもよい。制限は引っ張りローラの張り方向の動作の機械
的停止装置により行われる。
ウ発明を実施するための最良の形態
制限を設けるための1つの方法として,バンドは胸郭の僅かな圧縮を起こすのに
十分な程度に張られ,次に胸郭の弾性構造が通常位置まで拡張できるように緩めら
れる。バンドの位置はしるしを用いて示される。ぎざぎざが付けられたノブにより
ブレーキ制御は緩められ,レンチハンドルは,トルク又はバンド走行パラメータの
指示された値が目盛り又はしるしを用いて検知されるまで引かれる。
患者が速やかに蘇生ポジションに配置されるように,バンドは,例えば患者の胸
の中央に位置する重ね領域において2つの分離可能で再結合可能な部分に分割して
もよい。バンドの接合部で,上記重なり部分は,例えばフックアンドループ(ベル
クロ)ファスナー織物の一対のまち部に面している。
モータ手段により,装置は電気あるいは圧縮ガス源のような動力源からの作用に
適したものとすることができる。
手動のレンチの配置は,所望の張りの程度にバンドを引っ張るために他のベアリ
ングスタッドに対して用いることができる。また,モータで駆動されるソケットは,
モータ手段に接続するクラッチを連動させることができる(なお,第2図には,ソ
ケットが駆動されることにより引っ張りローラが駆動されることが図示されてい
る。)。
モータ手段が駆動された場合,蘇生のリズムでバンドを最初に緩め,それから再
度張る。1個又は2個のカム作動の回路遮断スイッチがソケットを駆動するシャフ
トと連結し,電気モータを例えばソケットの所望の最緊張状態又は最弛緩状態で停
止させる好適な電子保持回路と協働させてもよい。
原動機として,モータ手段は,電気的ソレノイド,空気シリンダー,ベーンアク
チュエータ,電気モータ等の動力装置を利用できる。
可変速モータとカム配列,あるいは基本的なマイクロプロセッサ回路を用いた弁
又はリレー制御が好まれるかもしれないが,先行技術である圧縮ガスとソレノイド
アクチュエータによる制御が適切かもしれない。これらのシステムの高い信頼性は
非常に重要である。
(2)本件審決の引用発明の認定の当否
ア「患者の胸部の周囲に延びて」について
本願発明は,患者の胸部に対するベルトの配置について,「患者の胸部の周囲に
延びて」と定めるところ,「周囲」とは,「ある物の外周。ぐるり。めぐり。まわ
り。」を意味する語(乙1)であり,「延びる」とは,「空間的に長くひろがる」
ことを意味する語(乙2)であるから,本願発明の「患者の胸部の周囲に延びて」
とは,文理上,「患者の胸部の外周に空間的に長くひろがる」ことを意味すると解
することができる。
その他,本願発明において,患者の胸部に対するベルトの配置に係る発明特定事
項は存在しないのみならず,本願明細書にも,ベルトが患者の側部の周囲全体を囲
み,ベルトと患者の胸部との間にはベルト以外の部材が介在しないことを意味する
記載はない。しかも,本願明細書【図3】【図4】には,圧迫ベルトがベルト以外
の部材である摩擦ライナを介して胸部を圧迫している態様が図示されている。
したがって,本願発明における患者の胸部に対するベルトの配置を定める「患者
の胸部の周囲に延びて」とは,ベルトが「患者の胸部の外周に空間的に長くひろが
る」ことを意味し,ベルトそれ自体が患者の側部の周囲全体を囲み,胸部の側部を
含む側部の周囲のいかなる領域においてもベルトと胸部との間にはベルト以外の部
材が介在していない態様に限定されるものではなく,また,ベルトと患者の胸部と
の間にベルト以外の部材が介在する態様を排除するものでもない。
イこの点について,原告は,引用例に開示されている「バンドガイド手段16
及び18」の存在を看過した本件審決の引用発明の認定は誤りであると主張する。
しかしながら,引用発明の認定は,引用例の記載に基づいて,本願発明との対比
において必要な限度で行えば足りるものである。本願発明が,ベルトと患者の胸部
との間にベルト以外の部材が介在する態様を排除するものではない以上,本件審決
が,引用例に開示されているバンドガイド手段について,本願発明との対比におい
て当該構成を認定する必要を認めず,当該構成を有するものとして引用発明を認定
しなかったからといって,引用発明の認定が誤りであるということはできない。
したがって,原告の前記主張は採用できない。
ウ小括
以上のとおり,本件審決の引用発明の認定に誤りはない。
3相違点の認定の誤りについて
(1)ベルトと胸部との間にベルト以外の部材が介在するか否かについて
ア前記2のとおり,本願発明は,ベルトと患者の胸部との間にベルト以外の部
材が介在する態様を排除するものではないから,引用発明がバンドガイド手段を有
していたとしても,本願発明と引用発明とは,バンド(ベルト)が患者の胸部の周
囲に延びる点で一致するものということができる。
そして,引用発明では,バンドは患者の胸郭の周りに通されており,患者の胸の
中央の位置で分離可能で再結合可能であることから,そのような機能を有するバン
ドは,本願発明の患者の胸部の周囲に延びて,患者の上で結び付けられるベルトに
相当するとした本件審決の認定に誤りはない。
イこの点について,原告は,本件審決の引用発明の認定が誤りであることを前
提とした上で,本願明細書には,摩擦ライナを除いてベルトと患者の胸部との間に
何らかの部材が介在することは記載されていないし,摩擦ライナは,患者の胸部と
の間の摩擦を低減する機能を有するにすぎず,ベルトによる胸部の締め付けに寄与
していないから,本願発明では,ベルトそれ自体が患者の側部の周囲全体を囲み,
胸部の側部を含む胸部の周囲のいかなる領域においてもベルトと胸部との間には実
質的にベルト以外の部材が介在していないと解すべきであると主張する。
しかしながら,前記のとおり,本件審決の引用発明の認定に誤りはないから,原
告の主張はその前提自体を欠くものである。
また,引用発明のバンドガイドは,バンドを適切な位置にガイドする機能を有す
るにすぎないから,本願発明について,摩擦ライナが存在するにもかかわらず「ベ
ルトと胸部との間には実質的にベルト以外の部材が介在していない」と解するので
あれば,引用発明におけるバンドガイドについても,同様に解するのが相当である。
したがって,原告の前記主張は失当たるを免れない。
(2)相違点1の認定の誤りについて
ア前記2(1)イ及びウによれば,引用発明において,モータ手段が駆動すること
により,蘇生のリズムでバンドを緩めたり引っ張ったりするところ,電子保持回路
は,1個又は2個のカム作動の回路遮断スイッチがソケットを駆動するシャフトと
連結されており,上記回路遮断スイッチと協働することにより,電気モータを例え
ばソケットの所望の最緊張状態又は最弛緩状態で停止させる機能を有するものであ
る。
引用例には,引用発明の電子保持回路の具体的な構成,電子保持回路と回路遮断
スイッチとの具体的な関係や協働関係について明確に記載されていないが,引用例
の記載によれば,電気モータをソケットの所望の最緊張状態又は最弛緩状態で停止
させる電子保持回路は,バンドの張りと緩めのサイクルを交互に繰り返させるよう
に電気モータを駆動することに寄与していることは明らかである。また,電子保持
回路は,回路遮断スイッチと協働することにより電気モータの作動を制御するもの
であるところ,電気モータの作動を制御する制御指令を出しているのは,電子保持
回路であるということができる。
したがって,引用発明の「電子保持回路」は,モータ及び引っ張りローラ(本願
発明のベルト引張手段に相当)を作動させ,患者の胸部に対するバンド(本願発明
のベルトに相当)の締め付けと緩めのサイクルを繰り返すように制御しているもの
であり,本願発明の「モータの作動を制御するコントローラ」に相当するというべ
きである。
イこの点について,原告は,引用発明の電子保持回路は,電気モータをソケッ
トの所望の最緊張状態と最弛緩状態で停止させるものではあるが,バンドの張りと
緩めのサイクルを交互に繰り返させているのは電子保持回路ではなく回路遮断スイ
ッチである,引用例は,機械的なスイッチによるモータ手段の制御を前提として,
電気モータと電子保持回路とを協働させてもよいことを開示するにすぎないと主張
する。
しかしながら,電気モータを最緊張状態又は最弛緩状態で停止させる制御を直接
的かつ機械的に行っているのが回路遮断スイッチであるとしても,引用例において,
当該スイッチを制御しているのが電子保持回路であることや電子保持回路と当該ス
イッチとが協働関係にあることについて開示されている以上,引用発明の電子保持
回路が電気モータを制御していることは明らかである。
そして,引用発明において,ソケットが最緊張状態又は最弛緩状態で停止するこ
とによりバンドが引っ張られたり緩められたりするものであるから,電子保持回路
がバンドの張りと緩めのサイクルを交互に繰り返させているものということができ
る。
したがって,原告の前記主張は採用できない。
(3)小括
以上のとおり,本件審決の相違点の認定に誤りはない。
4相違点1に係る判断の誤りについて
前記のとおり,引用発明は,電気モータの作動を制御する電子保持回路によりモ
ータ及び引っ張りローラを作動させ,患者の胸部に対するバンドの締め付けと緩め
のサイクルを繰り返すように制御しているところ,引用例には,電気モータについ
て,マイクロプロセッサ回路を用いた制御を行うことを示唆する旨の記載がある。
したがって,引用発明のモータの作動を,後記5のとおり本願優先日当時におけ
る周知技術であるマイクロプロセッサ回路を用いて制御し,患者の胸部に対するベ
ルトの締め付けと緩めのサイクルを繰り返すようにプログラムすることは,当業者
が容易に想到し得たものというべきである。
原告は,引用発明の電子保持回路が,患者の胸部に対するバンドの締め付けと緩
めのサイクルを繰り返すものではないから,引用発明にマイクロプロセッサ回路に
よる制御に係る構成を適用したとしても,本願発明の構成に容易に想到することは
できないと主張するが,原告の主張は,その前提自体を欠くものであって,採用す
ることができない。
以上によると,本件審決の相違点1に係る判断に誤りはない。
5相違点2に係る判断の誤りについて
(1)「バンド位置信号」について
ア前記2(1)イ及びウによれば,引用例には,バンドの一部が走行する長手方向
の距離がバンドの緊張度に影響するパラメータとして用いられてもよいとされてお
り,当該距離を把握するために,バンドの位置がしるしを用いて示されるものであ
る。
また,手動によりバンドを操作するためのレンチハンドルは,トルク又はバンド
走行パラメータの指示された値が目盛り又はしるしを用いて検知されるまで操作さ
れるものである。
したがって,引用例には,操作者が,しるしからバンドの位置情報を視覚的に読
み取って測定し,バンドの状態を把握することにより,バンドの緊張度を変更する
ことが記載されているというべきである。
イこの点について,原告は,引用発明のしるしはバンドの表面に描かれた線な
いし目盛りであり,バンドの位置を人間が視覚的に読み取ることができるものにす
ぎず,本願発明の信号に相当するものではないから,引用例には,ベルトの位置を
示すベルト位置信号が記載されているということはできないと主張する,
しかしながら,本願発明において,ベルト位置信号は,ベルトの適切な制御を行
う前提として,その状態を把握するために用いられるところ,引用発明においても,
バンドの位置情報を把握し,バンドの適切な制御を行うためにしるしが用いられて
いるということができる。引用例には,操作者が手動により操作する発明と,電気
モータを電子保持回路により制御する発明とが開示されているところ,手動により
操作する場合には,バンドの位置を特定する信号としてしるしを用いているもので
あるから,しるしは本願発明の「信号」に相当するというべきである。
したがって,原告の前記主張は採用できない。
(2)「エンコーダ」について
ア周知例1(甲2)は,自動血圧計に係る文献であるところ,同文献には,腕
帯に挿入される生体の部位の太さを,自動的に,正確に,かつ迅速に判定可能な自
動血圧計を提供するために,生体の部位に対する腕帯の巻付けをワイヤーロープの
巻込みにより行い,ワイヤーロープの巻込み量によって生体の部位の太さを判定す
る際,ワイヤーロープの巻込み量について,ワイヤーロープの巻込みを行うモータ
の回転数を直接ロータリーエンコーダ等で計測することが記載されている。
イ周知例2(甲3)は,電子血圧計に係る文献であるところ,同文献には,腕
囲(身体の一部の太さ)を検出することにより測定値を補正し,腕囲にかかわらず
正確な血圧測定を行うことができる電子血圧計を提供するために,巻付け装置に締
付け周囲を検出するコードを付設しておき,エンコーダにより腕囲を検出すること
が記載されている。
ウ周知例3(乙4)は,搭乗姿勢検出装置及び情報選択装置に係る文献(特開
平9-309372号公報)であるところ,同文献には,正確に検出した搭乗者の
搭乗姿勢に応じて,真に必要な情報のみを自動的に選択して提供することができる
ような搭乗姿勢検出装置及び情報選択装置を提供するために,エンコーダAにより
運転手に装着された安全ベルトの全引出し量を検出するとともに,エンコーダBに
より全引出し量に対する「肩~腰ベルト」の比率を検出し,情報処理用マイクロコ
ンピュータにおいて,基準値と各エンコーダからの検出結果とを比較することによ
り検出した安全ベルトの変動量によって運転手の搭乗姿勢を把握して切換器を切換
え制御し,必要な情報を提供することが記載されている。
エ周知例4(乙5)は,シートベルト張力制御装置に係る文献(特開平6-2
11105号公報)であるところ,同文献には,シートベルト装着後にレデューサ
の設定が簡単で,レデュース時のベルト張力を極小にでき,引出し量変化に伴う張
力変化が円滑なシートベルト張力制御装置を提供するために,ドラムの回転を検出
するエンコーダを設けて,ドラムの回転によるシートベルトの引出し・巻戻し量を
検出し,シートベルトの引出し量の変化に応じて駆動手段を作動させ,シートベル
トの張力を制御することが記載されている。
オ周知例5(乙6)は,胸囲測定方法及びその装置に係る文献(特開平7-2
36622号公報)であるところ,同文献には,測定者が被測定者の体に直接触れ
ることなく,被測定者自身が半自動的にかつ胸郭に密着して胸囲の計測が可能な胸
囲測定方法及びその装置を提供するために,ワイヤーエンコーダ又はロータリーエ
ンコーダにより計測用テープ又はフレキシブルベルトの引出し量を胸囲長に換算し
て計測することが記載されている。
カ以上によると,血圧計等の医療機器や自動車のシートベルト等の幅広い技術
分野において,人体の一部に巻き付ける帯状物の巻付け状態をエンコーダで検出し,
帯状物の巻付け状態を示す信号を制御装置に送信し,当該検出結果に基づいて制御
装置で制御することは,本願優先日当時における周知技術であったものと認めるこ
とができる。
(3)本件審決の相違点2に係る判断の是非
ア従来,人間が操作者として行ってきたことを,マイクロプロセッサ回路によ
り制御させることは,本願優先日当時における技術常識であったということができ
るから,引用発明の電気モータについてマイクロプロセッサ回路による制御を適用
するに当たり,操作者がしるしを目視することにより行っていたバンド位置の測定
作業等をマイクロプロセッサ回路で制御させるようにすること,すなわち,バンド
の位置情報に応じてバンドの緊張度を変更するように構成することも,当業者が適
宜行うことができることであって,格別の困難性はないというべきである。
そして,バンドの緊張度を自動的に制御する場合,バンドの位置情報を把握する
何らかの検出手段が必要であるところ,具体的手段として,人体の一部に巻き付け
る帯状物の巻付け状態を検出する点で引用発明と共通する技術分野に属する周知技
術であり,かつ,少なくとも共通する機能を有する周知技術であるエンコーダを適
用し,エンコーダがバンドの位置情報を測定可能とするとともに測定結果をマイク
ロプロセッサ回路に送信することにより,マイクロプロセッサ回路が当該結果に基
づいて制御を行うようにすることは,当業者が容易に想到し得たことであるという
ことができる。
イこの点について,原告は,引用発明の電子保持回路は,電気モータをソケッ
トの所望の最緊張状態と最弛緩状態で停止させるための回路にすぎず,エンコーダ
のような計測機器から何らかの信号を受信するものではないと主張する。
しかしながら,電子保持回路が計測機器からの信号を受信する機能を有していな
いとしても,引用発明において,マイクロプロセッサ回路を用いてモータを制御す
ること及びエンコーダからのバンドの位置信号を受信してバンドの緊張度を自動的
に制御することは当業者が適宜行うことができる以上,受信機能を設けることも,
同様に当業者が適宜行うことができることであるということができる。
また,原告は,エンコーダ自体は周知技術ではあるが,引用例にはエンコーダ等
によりバンドの位置を自動的に測定することについて特段の示唆はないから,引用
発明に,胸部圧迫装置に係る引用発明とはその機能が本質的に相違する周知例1な
いし5の周知技術を適用する動機付けを認めることはできないと主張する。
しかしながら,引用例には,引用発明の電気モータをマイクロプロセッサ回路に
より制御することを示唆する記載があるところ,自動的な制御を実現するためには
バンドの位置情報を把握することが必要であることは明らかであるから,エンコー
ダ等の測定機器を用いることについて,動機付けを認めることができる。
また,周知例1ないし5は,胸部圧迫装置に係る文献ではないが,エンコーダに
係る周知技術は,幅広い技術分野にわたるものである上,人体の一部に巻き付ける
帯状物の巻付け状態を把握するという目的において共通しており,当該目的のため
に胸部圧迫装置に適用することを妨げるものではないし,原告が主張する機能の相
違も,引用発明と周知例1ないし5との技術分野の相違に伴う用途の相違にすぎな
いものである。
さらに,原告は,引用発明に周知技術であるエンコーダを適用したとしても,引
用発明の電子保持回路は,ベルトの締め付けと緩めのサイクルを繰り返すものでは
ない点で本願発明のコントローラとは相違しており,周知例1ないし5も,このよ
うなサイクルを繰り返すものではないから,本願発明と同様の構成に想到し得るも
のではないと主張する。
しかしながら,前記のとおり,引用発明の電子保持回路は本願発明のコントロー
ラに相当するものであるから,原告の主張はその前提を欠くというべきである。
したがって,原告の前記主張はいずれも採用できない。
ウ以上のとおり,本件審決の相違点2に係る判断に誤りはない。
6小括
よって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明を
することができたものというべきである。
第5結論
以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官土肥章大
裁判官井上泰人
裁判官荒井章光

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時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
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採用担当宛