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平成16年12月24日判決言渡
平成16年(少コ)第782号(通常訴訟移行)仲介手数料請求事件
平成16年(ハ)第11534号損害賠償反訴請求事件
口頭弁論終結日 平成16年11月30日
判         決
主         文
1 原告の請求を棄却する。
2 反訴被告は,反訴原告から35万円の支払を受けるのと引換えに,反訴原告に対
し,35万円を支払え。
3 反訴原告のその余の反訴請求を棄却する。
4 訴訟費用は,本訴反訴ともに,これを3分し,その2を本訴被告(反訴原告)の負担
とし,その余を本訴原告(反訴被告)の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 本訴請求について
被告は,原告に対し,35万円及びこれに対する平成16年3月19日から支払済
みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
2 反訴請求について
反訴被告は,反訴原告に対し,140万円及びこれに対する平成16年8月26日
から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が本訴請求として,被告との間の東京都調布市ab丁目c番d号所
在のe号室(本件物件)を買い受けるための媒介契約に基づき,仲介手数料残額の
支払いを求め,被告が反訴請求として,同契約を原告の債務不履行を理由に解除
したことに基づき,既払い仲介手数料の返還と損害賠償の支払いを求めた事案で
ある。
1 争いのない事実等
(1)原告は,平成16年2月2日,被告から原告が取り扱っている物件について,間
取図,物件の詳細,周辺環境の詳細の問い合わせがあったので,これに回答す
るとともに,被告の希望に沿う物件を探し,本件物件を選定した。そして,原告
は,被告の依頼に応じて,本件物件の調査,管理規約の確認をするとともに,被
告を現地案内した上で,調査事項を説明し,また,売主との間で価格交渉をして
売値から100万円を減額することに成功した。
(2)原告の社員Aは,平成16年2月16日,被告に対し,契約日が同年2月19日午
後2時に決定し,その日に仲介手数料内金37万円を持参して欲しい旨を伝え,
また,みずほ銀行の担当者に今回の件で借入れが可能かどうかの確認が取れ
ているかを問い合わせた(乙8)。
(3)そして,原告は,遅くても平成16年2月19日,被告との間で,本件物件を被告
が買い受けるための媒介契約を締結し,本件物件の調査結果に基づいて作成し
た重要事項説明書の記載内容を口頭で説明し,売買契約書も各当事者が署名
(記名)押印する前の段階まで作成した上,契約内容を説明した。同日,原告会
社において,被告,売主代理人B及び売主仲介業者株式会社竹仁の立ち会いの
下で,売主Cと被告間の売買契約を締結させた。
(4)契約締結に立ち会った関係者は,区分所有建物売買契約書(乙1)及び重要事
項説明書(乙2)の元となる書面にそれぞれ署名(記名)押印した。その際,原告
代表者は,被告が印紙を貼付後,関係者の前で銀行の融資審査を受けるために
は,原告を仲介人とする記載のない書面の方が融資を受けやすいと言って,関
係者が署名(記名)押印した前記証書の元になる書面をコピーし,さらに,被告に
対し,コピーして作成した区分所有建物売買契約書の収入印紙部分に割印をす
るように指示した。そして,被告は自ら割印した。それを再度コピーして,いずれも
原告を仲介人とする記載のない銀行提出用の区分所有建物売買契約書(乙3)
及び重要事項説明書(乙4)(銀行提出用の契約書等)を作成した。しかし,原告
代表者は,売主や被告に対し,原本の売買契約書に貼った収入印紙への割印を
求めなかった。結局,被告は,原告からいずれも原告を仲介人とする記載のある
区分所有建物売買契約書(乙1)及び重要事項説明書(乙2)の元となる書面(契
約書等の元となる書面)の他に,銀行提出用の契約書等を受け取った。
(5)原告は,同日,被告との間で仲介手数料を70万円とし,売買契約締結日に35
万円,残金決済日に35万円を支払うとの合意をし(甲1),同日,35万円を支払
った。
(6)被告は,平成16年2月20日ころ,みずほ銀行に対して,以前に不動産購入で
融資を受けたことがあったので,まず同銀行から融資を受けることを考えて手続
を開始した。
(7)Aは,平成16年2月21日,被告に対し,融資先が未定であれば中央三井信託
銀行なり,UFJ銀行(いずれも新宿支店)の担当者を週明けにでも紹介する旨の
連絡をした(乙10)。
(8)被告は,平成16年2月23日,みずほ銀行丸の内仲通支店のDに審査を依頼し
たところ,仲介業者を聞かれたので原告が仲介業者である旨伝え,その際Dから
求められた住民票を,午後5時ころ,町田市役所まで取りに行った(乙16)。その
後,同日,被告は,中央三井信託銀行町田支店のEを訪ね,融資の審査を申し
込んだ。その際,被告は,Eに銀行提出用の契約書等の写しを提示した(甲14,
乙11)。
(9)被告は,平成16年2月24日,Aに対し,本件物件及び土地の登記簿謄本を被
告宛に直接送付するように売主に伝えて欲しいこと,融資については,みずほ銀
行と中央三井信託銀行に審査を依頼したこと,その際,契約書に原告の記載が
ないことが問題視されたので,そのように作成した理由を,①融資が降りないと手
数料が全額戻しとなること,②不動産会社が1社の方が審査がスムーズに行わ
れること,であると答えた旨連絡した(甲14,乙11)。
(10)Aは,平成16年2月24日,被告に対し,依頼の登記簿謄本を取得して,物件状
況確認書と一緒に郵送したこと,また,契約書に原告の記載をしなかったことが
原告代表者の考えによるものであり,許して欲しい旨の連絡をした(乙9)。
(11)被告は,平成16年2月26日,みずほ銀行丸の内仲通支店に対し,融資の申し
込みをした(乙15)。銀行提出用の契約書等には原告名がなかったので,被告と
しては,原告が仲介業者であることを示すために,契約書等の元となる書面を示
した。
(12)原告は,遅くても平成16年2月26日までに,被告に対し,中央三井信託銀行が
連絡を取りたがっているので,同銀行に連絡するように連絡メールを送った。そし
て,被告は,同26日,Aに対し,上記連絡メールを受け取った旨の返信メールを
送った(甲15の1,2)。
(13)Aは被告からの返信メールを受けて,平成16年2月26日,被告に対し,中央三
井信託銀行の予備審査がきっと問題なかったということを感じること,また,みず
ほ銀行の方の融資はどうなっているのかということを連絡をした(乙12)。
(14)Eは,平成16年2月27日,自ら被告に対する審査のために登記簿謄本を取り
寄せた(乙17)。
(15)被告は,平成16年3月9日,みずほ銀行のDから融資の審査が通過した旨の連
絡を受けた。
(16)被告は,平成16年3月9日,Aに対し,融資先がみずほ銀行丸の内仲通支店に
決定したこと,残金決済日時が3月15日午前中の予定,決済場所がみずほ銀行
丸の内仲通支店,入居日が3月16日であることを売主に伝えて欲しい旨連絡し
た(甲16)。しかし,結局,売主の担保抹消の書類準備などが3月16日に間に合
わないから,原告は,売主と銀行との調整で残金決済日を3月18日と決定した。
(17)被告は,平成16年3月13日,原告代表者に対し,売買契約に関して被告が損
害を被ったことについて,同16日14時30分に調布で会って話し合いたいので,
連絡を欲しい旨を伝えた(甲17)。
(18)被告は,平成16年3月17日,Aに対し,明日はみずほ銀行に来ないで欲しいこ
と,手数料の残り半分は支払うつもりがないこと,この被告の要求を了解するか
否かの返事を16時までに欲しいこと,返事がなければ,要求を承諾したものとし
て取り扱うことを連絡した(乙14の1,2,3)。
(19)平成16年3月18日,売主C,売主側仲介人竹仁,F司法書士,被告,原告のG
及びAが,みずほ銀行丸の内仲通支店に集まり,融資の実行と売買代金の残金
決済が行われた。この際,売買当事者が契約書の原本に貼られた収入印紙に割
印をし,Cが売主の氏名のところに押印した。そして,被告は,物件の引渡しを受
け,所有権移転登記手続も完了した。しかし,被告は,予告どおり残金の支払い
を拒否した。
(20)原告は,平成16年6月7日,東京都都市整備局不動産課から呼出を受け,①原
告が媒介契約を締結した際には,遅滞なく媒介契約書を作成して記名押印をし,
被告に交付しなければならないのに,この義務を怠り,被告に対して,媒介契約
書を交付しなかったこと,②原告が契約書等の元となる書面の他に,自らが媒介
業者として記名押印した部分を空欄にした銀行提出用の契約書等を作成し,被
告に対して「これを銀行に提出するように」と言って渡したことが宅建業法違反の
事実であることを認めた。
(21)原告は,平成16年7月14日,前記(20)記載の事実について,東京都から宅建
業法に基づく勧告を受けた。
2 本訴請求原因の要旨
原告は,上記1記載の事実経過に従い,被告との間で本件媒介契約に基づく仲
介義務を履行したものである。
 よって,原告は,被告に対し,媒介契約に基づく仲介手数料残金35万円及びこれ
に対する売買代金残金決済日の翌日である平成16年3月19日から支払済みまで
年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
3 本訴請求に対する抗弁の要旨
被告は,原告に対し,後記4(4)のとおり債務不履行,あるいは委任契約の解除権
に基づき本件媒介契約を解除する旨の意思表示をした。
4 反訴請求原因の要旨
(1)前記1(8)記載のとおり,被告は,平成16年2月23日,中央三井信託銀行町田
支店に融資の予備審査を申し込んだ。同銀行では,予備審査と本審査という2段
階の手続があり,予備審査の段階では,原本の提出を求められず,被告が予備
審査で持参した書類は全てコピーであり,その中には銀行提出用の契約書等も
含まれていた。その際,被告は,同銀行のEから,被告の勤続年数が少ないとし
ても大学教員としての職種及び経歴から考えて予備審査を通過すると言われ,ま
た,被告の希望どおり3月13日を実行日とする予定で手続を進めること,金利に
ついてもみずほ銀行より有利な条件(5年で1.8パーセント,保証料をローンに
組み込まない場合には1.6パーセント)を提示された。
(2)そして,被告は,平成16年3月1日,Eから予備審査が通過した旨の通知を受け
た。そこで,被告は,同5日,同銀行に本審査の申し込みに出向いた(その際,印
鑑証明書3通,住民票2通,源泉徴収書原本,非課税証明書を持参した。)。被
告は,申込書に記入する前に,契約書等の元となる書面を提示したところ,Eから
本審査への手続受付を断られた。
(3)このように,被告が中央三井信託銀行町田支店から融資を受けられなかったの
は,本審査の段階で契約書等の元となる書面を提示したからであり,その原因を
作ったのは,原告がそのとき提示した契約書等の元となる書面の他に銀行提出
用の契約書等を用意し,それを銀行の提出するように指示したことにある。そうす
ると,原告には,前記1(20),(21)記載の宅建業法違反の行政処分を受けるような
義務違反行為及び銀行提出用の契約書等を用意して提出するように指示した義
務違反行為があるから,原告は,媒介契約上の債務を完全に履行したとはいえ
ず(不完全履行),しかも,被告は本件物件を既に購入しているので,原告の債務
は履行不能といえる。
(4)そこで,被告は,第3回口頭弁論期日(平成16年9月7日)において,原告に対
し,上記(3)の債務不履行,あるいは委任契約の解除権に基づき本件媒介契約を
解除する旨の意思表示をした。
よって,被告は,原告に対し,解除に基づく原状回復,あるいは損害賠償として
既払い仲介手数料35万円,及び損害賠償として中央三井信託銀行町田支店か
ら融資を受けていたならば,みずほ銀行から融資を受けるより低額の金利で済ん
だことから,その金利差額による10年分の差額金287万2360円のうち105万
円(以上合計140万円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成16年
8月26日から支払済みまで年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求
める。
5 反訴請求に対する抗弁の要旨
原告の債務不履行により本件媒介契約の解除が認められるにしても,被告が原
告の仲介業務に対する評価額の原状回復義務を履行するまで,原告は,既払い仲
介手数料35万円の返還を拒絶する。
6 争点
(1)原告に媒介契約上の債務不履行があるか。
(2)被告が中央三井信託銀行から融資を受けられず負担した損害は,原告 の債
務不履行が原因か。 
第3 当裁判所の判断
1 本訴請求原因事実(前記第2の1記載の(3),(5)及び(20)の事実)は,すべて当事者
間に争いがない。
2 本訴請求に対する抗弁事実(原告の債務不履行による解除)について,検討する。
(1)前記第2の1記載の(4),(8),(9),(10),(11),(20)及び(21)の事実を総合すると,
①原告代表者は,仲介業者としては当然知っておくべき違反行為であったのに,
媒介契約書を交付せず,自ら媒介業者として記名押印した部分を空欄にした銀
行提出用の契約書等を作成し,被告に対し,銀行への提出を積極的に指示して
渡したものであること,後日,そのことで宅建業法違反として行政処分を受けるこ
とになったこと,②被告は,原告代表者の業者としての積極的な指示に基づき,
銀行と融資交渉をしたが,みずほ銀行からは仲介業者名を聞かれて原告名を答
える羽目になり,中央三井信託銀行では原告代表者の指示どおり銀行提出用の
契約書等を提示したものの,結局,いずれの銀行からも契約書に原告の記載が
ないことが問題視されることになったこと,③これに対し,被告は,両銀行に対し
て,原告代表者から聞いた内容を話したが,その内容は仲介業者1社の方が融
資を受けやすいという,同人の独善的な認識に基づく内容であり,不動産業界の
みならず,銀行の納得も得られないものであったこと,そのことは,原告の社員で
あるAも謝罪していること,④そして,被告は,結局,みずほ銀行に対しても契約
書等の元になる書面を提出することになったことが認められる。
(2)そうすると,原告代表者の指示に基づいて行われた銀行提出用の契約書等の
作成及び使用は,本件媒介契約の履行及び売買契約の締結において,全く意味
がなく,かえって支障を来したものというべきである。したがって,原告において,
被告の融資手続に不適正な銀行提出用の契約書等を作成し,その使用を指示し
たことは,媒介契約における原告の債務の重要部分の不履行というべきである。
(3)被告が第3回口頭弁論期日において,原告の債務不履行に基づき本件媒介契
約を解除する旨の意思表示をした事実は,当裁判所に顕著である。
(4)以上の事実によれば,被告が原告の債務不履行を理由に本件媒介契約を解除
したことは相当である。
 原告は,被告が原告の融資手続業務委託の申し入れを拒否し,自ら融資手続
を行う意思を示したから,重要事項説明書にあっせんを無しとしたものであり,被
告から融資手続の委託を受けていない以上,融資手続に関して不履行の前提と
なる債務は存在しない旨主張する。しかしながら,仲介業務の内容は,融資の必
要があれば,その実行手続を完了させることも内容であり,本件の場合も,融資
が受けられることが売買契約の前提であるから,融資手続に支障が生じないよう
に配慮する義務があるというべきである。原告自身も仲介業務として融資実行手
続が含まれるとの認識を持っていたからこそ,被告に対し,銀行提出用の契約書
等を作成し,それを銀行に提出するように指示したところである。重要事項説明
書にあっせんを無しとしたのは,あっせん委託をしないことにしただけであって,こ
のことから,仲介業務として融資実行手続を完了させる義務を負わないことには
ならない。原告が,平成16年3月18日の融資実行日に立ち会い,実際に融資手
続に関与していることも,自ら義務を認識していることの証左である。そうすると,
原告の主張は採用できない。
 なお,前記第2の1記載の各事実によると,本件の場合には,既に原告の仲介
事務処理が終了していることが認められるから,委任契約の解除権に基づく本件
媒介契約の解除を認めることができず,原告の主張は採用できない。
(5)したがって,原告の被告に対する仲介手数料残額35万円の支払請求を認める
ことはできない。
3 反訴請求原因事実(原告の前記2(2)記載の債務不履行と被告が中央三井信託銀
行から融資を受けられなかったことによる損害との因果関係)について
(1)前記第2の1記載の(4),(6),(7),(8),(9),(10),(11),(12),(13)及び(14)の事実を
総合すると,被告は,①平成16年2月23日,みずほ銀行のDに融資の審査を依
頼したところ,Dから仲介業者を聞かれたので原告が仲介業者であることを伝え
たものであるが,その際,契約書に原告の記載がないことが問題視されたとする
と,同日,中央三井信託銀行町田支店のEに融資の審査を申し込んだ際も,原告
代表者の指示に従って渡した銀行提出用の契約書等には問題があることが分か
っていたこと,そうでなくても,同24日,Aから原告代表者の考えにより契約書に
原告の記載をしないことになったが,それは好ましいことでなく許して欲しいと言
われているから,銀行提出用の書類には問題があることが分かっていたこと,そ
して,遅くても同26日,みずほ銀行丸の内仲通支店に対し,融資の申し込みをし
た際に,銀行提出用の契約書等には原告名がなかったので,被告は,原告が仲
介業者であることを示すために,契約書等の元となる書面を示したことからする
と,この時点で銀行提出用の契約書等には問題があることが分かっていたことが
認められる。②また,被告は,その手元に契約書等の元となる書面及び原告代
表者が提出を指示した銀行提出用の契約書等があり,銀行に対して,容易に契
約書等の元となる書面を提出することが出来たことが認められる。③さらに,被
告は,自ら融資先を探して手続を行うことを考えており,原告には委託する意思
がなかったことが認められる。④そして,被告には,以前に不動産購入の経験が
あり,融資についても知識があったことが認められる。本件でも,同20日ころに
は,以前に不動産購入で融資を受けたことがあったみずほ銀行から融資を受け
ることを考えて手続を開始していたことが認められる。⑤同27日,中央三井信託
銀行のEが自ら本件物件の不動産登記簿謄本を取り寄せていることからすると,
同日ころには,同銀行で被告に対する予備審査が開始されていたものと認めら
れる。同銀行が,その前日ころまでに,原告を介して被告と連絡を取りたがってい
たことも,予備審査のために必要な書類等の提出を促す意図であったことが推認
される。
(2)以上の事実からすると,被告には,遅くても平成16年2月26日ころまでには銀
行提出用の契約書等に問題があり,融資先銀行に対して,容易に契約書等の元
となる書面を提出することが出来たものであるから,被告がEから予備審査が通
過した旨の通知を受けたと主張する平成16年3月1日までには,契約書等の元
となる書面を提出して,中央三井信託銀行の予備審査を通過するための準備が
出来たはずである。
そうすると,被告が中央三井信託銀行から融資を受けられなかったことが銀行
提出用の契約書等を提示したことにあるとしても,被告が自由意思に基づいて,
自ら選択した結果であると言わざるを得ないから,同契約書等を提示したことが
原因で,融資が受けられなかったとしても,原告が同契約書等を銀行に提示する
ように指示したこととの間に因果関係は認められない。あえて言えば,融資を受
けられなかった責任は,銀行提出用の契約書等で融資が受けられると判断した
被告にあると言うべきである。
(3)また,被告は,原告が銀行提出用の契約書等を作成したことが融資を受けられ
なかった理由であると主張する。しかし,被告には,みずほ銀行とは取引関係は
あるが,中央三井信託銀行町田支店とは初めての取引であり,被告の信用に差
があったものであり,しかも,中央三井信託銀行の方がより有利な金利設定であ
ったことからすると,被告の資力に対する信用が低いことが融資を断った理由と
も考えられる。現に,みずほ銀行では,銀行提出用の契約書等の存在が分かっ
ていたにもかかわらず,融資を受けることができているからである。そうすると,被
告の主張は,直ちに採用することはできない。
(4)したがって,被告が中央三井信託銀行から融資を受けられなかったことについ
ては,原告に責任を問うことはできない。反訴請求のうち,中央三井信託銀行か
ら融資を受けられなかったことに対する損害賠償請求については,その余の請求
原因事実を検討するまでもなく認めることはできない。
4 反訴請求に対する抗弁事実(原告の債務不履行による解除に基づく原状回復請
求権(損害賠償請求権)と同時履行の抗弁権)について
(1)前記第2の1記載の(1),(2),(3),(5),(7),(10),(15),(16),(17),(18)及び(19)の
事実を総合すると,原告は,①売主側と売値の減額交渉をし,減額された販売価
格を設定した上で,被告との間で媒介契約を締結したこと,②その間に本件物件
の調査結果に基づいて重要事項説明書を作成し,その内容を口頭で被告に説明
し,併せて売買契約書を作成したこと,③そして,被告との間で仲介手数料額を
決め,その支払い方法を合意したこと,④また,被告のために融資先の紹介も考
えていたこと,⑤被告のために融資手続及び売買手続が円滑に進むための協
力,援助をしていたことが認められる。⑥その反面,被告は,融資先の問題で,
中央三井信託銀行から融資を断られたことを切っ掛けとして,それまでの対応に
対する不満と,有利な金利で融資を受けられなかったことから,原告との間の信
頼関係が一挙に崩れ,原告に対し,損害賠償を求めるようになり,また,融資の
実行及び残金決済の場への出席を断わる事態となったことが認められる。
(2)以上の事実からすると,形の上では,原告が作成した契約書等の元になる書面
に基づいて,みずほ銀行から融資を受けることができたとしても,被告の労力と
信用によって同銀行から融資を受けることができたというべきであるし,また,原
告側が立ち会って売買契約の成立に漕ぎ着け,融資の実行と売買代金の残金
決済が行われたとしても,やはり被告の労力と働きかけによって実施されたもの
と認められる。そうすると,原告の仲介債務は,一部履行されたものの完全に履
行されることなく,終了したものと認めるのが相当である。
(3)前記2の(4)記載のとおり,被告が本件媒介契約を解除したので,被告は契約解
除に伴い既に支払った仲介手数料残額の返還を請求できるところ,これと対価関
係にある原告の仲介債務を原告に返還する義務があるから,原告は被告がこの
仲介債務の返還義務を履行するまで仲介手数料残額の支払いを拒むことができ
る。この場合,返還すべき仲介債務の性質上,現物返還が不能な給付であるか
ら,その客観的な価格を金銭に見積もって返還すべきことになる。そして,原告の
仲介債務は一部履行されたことが認められるから,これを金銭評価すると報酬額
の半額が仲介債務の評価額とみるのが相当である。そうすると,原告は,被告か
ら35万円の支払を受けるのと引換えに,被告に対し,35万円を支払うことにな
る。この場合,原告の35万円の返還義務と被告の仲介手数料残額の返還義務
とが同時履行の関係にあるから,解除の日以降被告が原告に35万円の返還を
するまでは,仲介手数料残額に対する遅延損害金は発生しない。
5 以上から,原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし,被告の反訴請求
は,原告から35万円の支払を受けるのと引換えに,原告に対し,35万円の支払を
求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は棄却することとする。
東京簡易裁判所少額訴訟4係
裁 判 官  行 田   豊

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