弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とする。
       事実及び理由
第一  当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは、岡山県に対し、別紙請求目録の当該被控訴人に対応する請求金
額欄記載の金員及びこれに対する当該被控訴人に対応する遅延損害金起算日欄記載
の日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
4 仮執行宣言
二 被控訴人ら
 主文と同旨
第二 事案の概要
 次のとおり訂正するほか、原判決の事実及び理由の「第一 請求」及び「第二 
事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決一枚目表一二行目の「被告ら」を「被控訴人ら(ただし、番号3の1な
いし3の被控訴人らの関係では、その被相続人であるA)」に改める。
2 同一枚目裏につき、一行目から二行目にかけての「関わらず」を「かかわら
ず」に、八行目の「被告ら」を「被控訴人ら(ただし、番号3の1ないし3の被控
訴人らの関係では、右手続に関与したAの相続人である同被控訴人ら)」に、九行
目の「別紙請求目録」から一一行目の「遅延損害金起算日欄記載の日」までを「別
紙請求目録の当該被控訴人に対応する請求金額欄記載の損害賠償金及びこれに対す
る当該被控訴人に対応する遅延損害金起算日欄記載の日(本件訴状が当該被控訴人
〔ただし、番号3の1ないし3の被控訴人らの関係では、その被相続人であるA〕
に送達された日の翌日)」に各改める。
3 同二枚目表二行目の「算出したものである」を「算出したもの〔ただし、番号
3の1ないし3の被控訴人らの損害賠償額は、被相続人であるAについてこのよう
にして計算した金額についての右被控訴人らの各法定相続分〕である」に改める。
4 同二枚目裏につき、一行目の「職にあった者」の次に「(ただし、番号3の1
ないし3の被控訴人らの関係では、その地位にあったのは同被控訴人らの被相続人
のAである。)」を加え、四行目の「同3の被告 岡山地方振興局健康福祉部長」
を「同3の1ないし3の被控訴人らの被相続人A 岡山地方振興局健康福祉部長
(なお、Aは平成一一年六月四日死亡し、その相続人は番号3の1ないし3の被控
訴人らであり、法定相続分は、番号3の1の被控訴人が二分の一、同3の2及び同
3の3の各被控訴人が各四分の一で
ある。)」に改める。
5 同三枚目表一〇行目の「保健福祉部」の前に「岡山県の」を加える。
第三 当裁判所の判断
 当裁判所も、控訴人らの本訴請求は不適法として却下すべきものと判断する。
 その理由は、次のとおり訂正するほか、原判決の事実及び理由「第三 本案前の
争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決八枚目表一〇行目の「本件において」から九枚目表一行目の「当然の理
であるといってよい。」までを次のとおり改める。
「 これを本件についてみるに、証拠(甲一)によれば、本件監査請求に係る監査
請求書には、『岡山県職員措置請求書』との表題の下に、『岡山県保健福祉部の職
員全員の旅費につき、平成三年四月一日から平成八年三月三一日までの間に違法な
公金支出があるので、監査を求めるとともに、当該不正支出行為によって岡山県の
被った損害を補填するために必要な措置を請求する。』と求め、その理由として、
『岡山県庁及びその出先機関では職員に対して一年度分の旅費の請求・受領手続を
所属部局の庶務担当者に委任しているところ、岡山県保健福祉部に属する各部局の
庶務担当者は、職員が実際には出張していないのにこれをしたように偽装して旅費
を請求し、支出された旅費を所属の職員の慶弔費等に充てている。県職員のうち保
健福祉部に属する保健婦資格を有する職員の勤務状況については、出勤簿以外に保
健婦活動日報が作成されており、右保健婦活動日報と対照すれば、出勤簿中の出張
の記載のうち虚偽の記載が客観的に明らかになり、保健婦資格を有する職員につい
て虚偽の出張による旅費支給が明らかになれば、当該部局の他の職員についても同
様の推定が成り立ち、当該部局の庶務担当者から事情を聴取すればその実態が明ら
かとなる。』等と記載されていることが認められる。
 右事実によれば、本件監査請求は、平成三年四月一日から平成八年三月三一日ま
での間の岡山県保健福祉部所属の職員の出張旅費の支給につき、実際には出張した
事実がないにもかかわらず出張したように偽装して支給がなされているとして、右
違法な公金支出によって岡山県が被った損害の回復を求めるものであることが明ら
かである。
 かかる出張旅費の支給が違法であるかどうかは、旅費支給に関する制度上、支給
を受けたとされる個々の職員に対する個別の支給行為について現実に出張した事実
があったか否かを審査しなければ
判断することができないところ、右監査請求書には、違法とされる旅費支給に係る
出張職員の氏名、出張日時や出張場所といった具体的内容は何ら記載されておら
ず、職員の所属部局と支出があったとされる期間のみを掲げて所属職員の出張旅費
の支給に関し違法な公金支出がなされている旨の包括的網羅的な主張がなされてい
るにすぎないものであり、本件監査請求書の記載からは、岡山県保健福祉部に所属
する複数の職員のうちの誰のいかなる旅費支給について出張しなかったにもかかわ
らず出張したとして旅費支給がされたというのかを認識することはできない。
 したがって、本件監査請求書の記載をもってしては、監査請求人らが違法である
と主張する旅費支給行為について、これを他から区別することができる程度の個別
的・具体的摘示があるとはいえず、監査請求の対象が特定されているとはいえな
い。もっとも、右特定の有無は、監査請求書の記載のみならず、これに添付された
事実を証する書面の記載や監査請求人らが提出したその他の資料を総合斟酌して判
断すべきものであるところ、証拠(甲一、二)及び弁論の全趣旨によれば、本件監
査請求に際しては、倉敷地方振興局倉敷南地域保健福祉センターに所属する保健婦
のうちの三名と右センターに所属するその余の職員のうち八名について旅行命令
(依頼)書等が提出されており、これにより、右職員の氏名、出張日時、行先や旅
費額は特定されるが、右センター所属職員に係る旅費支給については本訴の対象と
なっていないから、本訴請求に係る支給行為についての監査請求に関しては、監査
請求書以外の資料を斟酌しても、監査請求対象の特定があるということはできな
い。
 控訴人らは、本件監査請求が前述の期間における岡山県保健福祉部所属職員全員
の旅費支給全部を対象とするものであり、人的及び期間的に限定されているから、
特定性の要件を満たした適法な監査請求であると主張するが、本件監査請求書の記
載によれば、本件監査請求は右期間における岡山県保健福祉部所属職員の旅費支給
には現実に出張した事実が存したものと右事実が存しなかったものとが混在してい
ることを前提としているものであり、右期間における岡山県保健福祉部所属職員全
員の旅費支給全部が違法支出であるとして監査を求める趣旨でないことが認められ
るから、そのうちの違法であるとする部分を具体的に指摘しなければならないとい
うべきであ
る。」
2 同九枚目表八行目の「さらに」から九枚目裏三行目末尾までを削る。
第四 結論
 よって、原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却す
ることとし、主文のとおり判決する。
広島高等裁判所岡山支部第二部
裁判長裁判官 妹尾圭策
裁判官 辻川昭
裁判官 森一岳

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