弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人斎藤兼也の上告理由第一点について。
 所論は、要するに、民法九二一条一号本文により相続人が単純承認をしたものと
みなされるがためには、相続財産の全部または一部の処分という客観的事実が存す
れば足り、相続人が自己のために相続が開始したことを知つてその処分をしたこと
は必要でないというにある。
 しかしながら、民法九二一条一号本文が相続財産の処分行為があつた事実をもつ
て当然に相続の単純承認があつたものとみなしている主たる理由は、本来、かかる
行為は相続人が単純承認をしない限りしてはならないところであるから、これによ
り黙示の単純承認があるものと推認しうるのみならず、第三者から見ても単純承認
があつたと信ずるのが当然であると認められることにある(大正九年一二月一七日
大審院判決、民録二六輯二〇三四頁参照)。したがつて、たとえ相続人が相続財産
を処分したとしても、いまだ相続開始の事実を知らなかつたときは、相続人に単純
承認の意思があつたものと認めるに由ないから、右の規定により単純承認を擬制す
ることは許されないわけであつて、この規定が適用されるためには、相続人が自己
のために相続が開始した事実を知りながら相続財産を処分したか、または、少なく
とも相続人が被相続人の死亡した事実を確実に予想しながらあえてその処分をした
ことを要するものと解しなければならない。
 本件につき原審の確定したところによれば、被上告人およびその家族は、訴外D
の死体が発見されて昭和三四年一二月七日に至つて初めてDが死亡したことを知つ
たものであり、しかも、それ以前に被上告人がDの死亡を確実に予想していたもの
とは認められないというのである。してみれば、後になつてDが昭和三四年七月三
〇日頃の家出当夜自殺死亡していたことが確認されたからといつて、Dの相続人で
ある被上告人が、Dの家出後その行方不明中に、Dの所有財産の一部である判示動
産を処分したとしても、民法九二一条一号による単純承認擬制の効力を生じないと
した原審の見解が正当であることは、前段の説示に照らして明らかである。したが
つて、原判決に所論の違法はなく、これと異なる見解に立つて原判決を非難する論
旨は採用することができない。
 同第二点について。
 原判決が、被上告人が判示の事情のもとに訴外Dの家出後それまでみずからも従
事していた左官業を会社組織にするために有限会社E工作所を設立し、同会社をし
てDの所有にかかる所論各物件を使用させたことは、被上告人が相続の開始を知つ
た以前の行為であるから、民法九二一条一号本文にいわゆる相続財産の処分に当た
らないと判断していることは、その判示に照らして窺いえないものではなく、右の
判断の正当なことは、上告論旨第一点につき説示したところによつて明らかであり、
また、被上告人がDの死亡を知つた以後において同会社に所論各物件の使用を許容
していたことは、民法九二一条一号但書所定の保存行為の範囲を超えるものでない
とする原審の判断も、正当なものとして是認することができる。したがつて、原判
決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛