弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人国指定代理人田中瑞穂、同稲垣操、同安食彰彦、上告人神奈川県知事指定
代理人村上禎司、同稲垣操、同安食彰彦の上告理由第一点について。
 原判決挙示の証拠により原審の如く認定することは不可能でなく、原判決の結論
を導くためには、被上告人の新住所あてに訂正された昭和二四年二月二一日附郵便
物(甲七号証ノ一、)が当時(すなわち、この日からさして遅れざる時期に)被上
告人に到達した旨の事実を認定するをもつて足り、所論のように、右訂正と発信の
先後関係・訂正の理由・経過等を必ず認定しなければならないものではないから、
原判決に理由の脱ろうがあるというのは当らない。また、訂正の字体やインクの色
が異なるということだけで所論のように認めなければならないといい得るものでは
なく、所論のD証人の証言は、必ずしも、原審認定の妨げとなるものではない。所
論は、要するに、原審の専権に属する証拠の取捨選択乃至事実認定を攻撃するに帰
し、すべて、採用し難いものである。
 同第二点について。
 「買収に先だち控訴人(被上告人)に令書の交付を試みたことを認めるに足る証
拠はない」旨の原審の判示は、令書の交付を試みることが令書の交付に代えて公告
をなすための法律上の要件であるとの見解を前提として、令書の交付を試みた事実
がないから令書の交付に代る公告が無効であるとの趣旨を判示したものではない。
すなわち、原判示の趣旨は、当時被上告人あて郵便物がいずれも新住所で受領され
ていた状況であつたことと、令書の交付を試みた形跡すらないこととを合せ考えれ
ば、当時、令書を交付しようとしてもその交付ができなかつた状態であつたとは到
底認め難いとの趣旨を判示したものである。所論は、原判決を正解しないことに基
くものであつて採用のかぎりでない。
 同第三点について。
 原判決認定の事実関係の下においては、令書の交付に代る公告は重大かつ明白な
瑕疵がある処分として当然無効のものと解すべきことは原判決の判示するとおりで
あつて、所論は、令書の交付に代る公告が当然無効のものでないことを前提とする
ものであるから、前提を欠き、採用し難いものである。
 同第四点について。
 所論は、要するに、原審の専権に属する証拠の取捨選択を非難するものであるか、
または、原審の認めない事実を前提とするものであつて、採用のかぎりでない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    奥   野   健   一
 裁判官河村大助は病気につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎

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