弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 公労委昭和四一年(不)第二号および第三号事件につき、被告が昭和四二年七
月五日付でした救済申立てを却下する旨の各決定を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
       事   実
第一 当事者双方の求める裁判
一 原告
主文と同旨の判決。
二 被告
「1 原告の請求を棄却する。2 訴訟費用は原告の負担とする。」
第二 当事者双方の主張
一 請求原因
(一) 原告は、昭和四一年九月三日郵政大臣を被申立人として、「茨城県美浦郵
便局長、大阪城東郵便局長、および大阪福島郵便局長が昭和四〇年八月ころから継
続して原告組合の運営に介入し、あるいは原告組合の組合員を差別取扱いしてお
り、このことは労働組合法第七条第一号、第三号に該当する不当労働行為である」
とし、さらに昭和四一年一二月五日同じく郵政大臣を被申立人とし、「大阪福島郵
便局長および大阪住吉郵便局長が昭和四一年九月一日付で原告組合の組合員である
Aほか三名を配置転換したことは労働組合法第七条第一号、第三号に該当する不当
労働行為である」とし、それぞれ不当労働行為救済命令を求める申立てをし、それ
ぞれ公労委昭和四一年(不)第二号および同第三号事件として受理された。
(二) ところが、被告は昭和四二年七月五日、右事件につき申立てを却下する旨
の決定をした。
(三) しかし、右却下決定は、違法であるからその取消しを求める。
二 請求原因に対する被告の答弁
(一) 請求原因(一)は認める。
(二) 請求原因(二)も認める。
(三) 請求原因(三)は争う。
三 被告の主張
(一) 被告は、大要次のような経緯のもとに原告には申立てを維持する意思がな
いものと認め、申立てを却下したものであつて、本件却下決定に何ら違法はない。
1 昭和四一年九月三日 (1) 原告から、不当労働行為救済申立書が提出され
昭和四一年(不)第二号として受理された。
(2) 被告は申立事項中、日付けの明らかでないものについてはこれを明らかに
すべきこと、また除斥期間を経過したものについては取り下げないと却下になる旨
を、申立書を持参した原告の職員に伝えた。
2 同年 九月 六日 被告は、審査委員として公益委員Bを指名した。
3 同年 九月二〇日 被告は、第二一〇回公益委員会議において、申立事項中、
除斥期間を経過したものにつき却下決定をした。
4 同年 九月二一日 被告は、右却下決定書の写しを原告に送付した。審査委員
Bは、当事者双方に調査開始の通知をし、原告には申立ての理由を疎明するための
証拠を九月末日までに提出するよう求めた。
5 同年 九月二九日 被申立人(郵政大臣をいう。以下同じ。)から答弁書が提
出され、被告は翌日その写しを原告に送付した。
6 同年 九月三〇日 被告は当事者双方に一〇月五日審問準備のための打合わせ
を行なう旨連絡し、了承を得た。
7 同年一〇月 五日 原告から被告に当日の打合わせについて都合で中止してほ
しい旨の電話連絡があつた。
8 同年一〇月一四日 被告は原告に審問準備のための打合わせをしたい旨電話で
督促した。
9 同年一〇月一九日 被告は原告に審問準備のための打合わせをしたい旨再度電
話で督促した。
10 同年一〇月二〇日 被告は原告に審問を速かに開始したい旨電話で連絡し
た。原告は、九月二一日の一部却下決定について問題があるので審問には入れない
との態度を明らかにした。
11 同年一〇月二四日 原告から右却下決定についての質問書が提出された。
12 同年一一月 四日 審査委員は、原告の中央執行委員長Cと直接面談し、却
下についての考え方を詳細に説明し、かつ、却下した部分以外の分の審査を早く行
ないたい旨強調した。
13 同年一一月一五日 被告は原告と電話で審問準備を打ち合わせ、原告は、翌
日具体的な話合いをすることにつき了解した。
14 同年一一月一七日 原告のD中央執行委員から被告に日程がとれないと電話
で連絡があつた。
15 同年一一月二二日 審査委員名の文書で関係当事者に証拠の申出を一一月中
にするように督促した。
16 同年一一月三〇日 被申立人から証拠の申出があつた。
17 同年一二月五日 原告から大阪福島郵便局につき新たな申立て(昭和四一年
(不)第三号不当労働行為救済申立事件)が追加された。
18 昭昭四二年一月六日 被告は原告の代理人仲田弁護士に電話で証拠の申出を
督促した。
19 同年二月三日 被告は原告のD中央執行委員に証拠の申出を電話で督促し
た。
20 同年二月八日 原告・被申立人および被告の三者で審査の進行について打合
わせを行ない、原告の立証計画を三月五日ころまでに提出すること、審問は四月
上、中旬に行なうことをきめた。
21 同年三月二二日 審査委員名の文書で原告に証拠の申出をするよう督促する
とともに、審査手続の進め方について原告の意向を連絡するよう通告した。
22 同年六月六日 審査委員名の文書で「申立てを維持する意思があるならば」
六月末日までに証拠の申出をするよう通告した。
23 同年七月四日 原告から証拠の申出がなく、その他何の連絡もなかつたの
で、被告は、第二二七回公益委員会議において、原告には本件「申立てを維持する
意思」がないと認め却下の決定をした。
24 同年七月五日 却下決定書の写しを原告に送付した。
(二) ところで、被告が、最近五カ年間に審問を行なつた不当労働行為事件一四
件の平均所要日数は、申立てから審問開始まで約一三二日であり、この間右各事件
の申立人から具体的な内容の準備書面の提出なり証拠申出がなされたのは、申立て
から約八〇日後となつている。本件の場合には、被申立人が昭和四一年一一月三〇
日にすでに証拠申出をしているのに、原告は、再三、再四の督促にもかかわらず、
申立後二八〇日余を経て、なお証拠の申出をしなかつたので、被告は、原告が申立
てを維持する意思がないものと認め、申立てを却下したのである。
四 被告の右主張(三)に対する原告の認否と反論
(一) 認否
三の(一)に対し
冒頭中本件決定が違法でないとする点は争う。
1 昭和四一年九月三日に関する主張のうち、(1)は認めるが、(2)は不知。
2 同年九月六日に関する主張は不知。
3 同年九月二〇日に関する主張は不知。
4 同年九月二一日に関する主張は認める。
5 同年九月二九日に関する主張も認める。
6 同年九月三〇日に関する主張は否認する。
7 同年一〇月五日に関する主張は否認する。
8 同年一〇月一四日に関する主張は不知。
9 同年一〇月一九日に関する主張は否認する。
10 同年一〇月二〇日に関する主張は認める。当時、原告は、被告の前記却下決
定を違法なものとし、前記申立事件担当の中央執行委員または担当代理人弁護士小
谷野三郎等を通じ被告に強く抗議しており、それが認められない限り、審問には応
じられないという態度をとつていたのである。
11 同年一〇月二四日に関する主張は認める。
12 同年一一月四日に関する主張中、原告中央執行委員長Cと被告のB審査委員
が話合つた事実は認めるが、その内容については否認する。
13 同年一一月一五日に関する主張は認める。
14 同年二月一七日に関する主張は否認する。
15 同年一一月二二日に関する主張は認める。
16 同年一一月三〇日に関する主張は認める。
17 同年一二月五日に関する主張は認める。
18 昭和四二年一月六日に関する主張は不知。
19 同年二月三日に関する主張は不知。
20 同年二月八日に関する主張中、原告、被申立人および被告の三者が本件審査
につき打合わせを行なつたことは認めるが、その余は否認する。右打合わせの席
上、原告は、被告の本件審問期日を昭和四二年四月上、中旬ころに入れることを目
標にしたいという趣旨の申出に同意したが、その立証計画については、法規対策担
当のE中央執行委員をして「提出する書証は公文書を含めて大阪関係一〇通、美浦
関係一〇通、これに関聯して証人は大阪一〇名、美浦五、六名である」旨発言させ
たうえ、さらにこれらの証拠に対する被申立人側からの悪質な工作を防ぎ、証拠と
しての価値を保全するため書証ならびに証人については審問廷ないしは審問の直前
に明確にする旨述べさせているのである。
21 同年三月二二日に関する主張は認める。原告は、被告の通告に対し、証拠の
申出についてはさきにE中央執行委員が説明したと同旨のことを繰返し説明し、審
問期日を指定するよう要請しているのである。
22 同年六月六日に関する主張は認める。原告は、被告の右通告につき、「証拠
の申出については、E中央執行委員が述べたとおりであるから、被告はまず審問期
日を指定すべきであり、原告は同期日の直前または同期日に証人の氏名の明確にす
る」旨述べた。
23 同年七月四日に関する主張は不知。
24 同年七月五日に関する主張は認める。
 三の(二)に対し、被告が最近五ヵ年間に審問を行なつた不当労働行為事件一四
件の平均所要日数は、申立てから審問開始まで約一三二日であり、この間申立人か
ら具体的な内容の準備書面の提出なり証拠申出がなされたのは申立てから約八〇日
後となつていることは不知。
(二) 反論
1 公共企業体等労働委員会規則(以下公労委規則という。)第二六条は申立てを
却下すべき場合を列挙しているが、この中には「申立てを維持する意思がないと認
められるとき」という条項はない。同条は、却下すべき場合を制限列挙したものと
解すべきであるから、このような理由による却下は、右規則ひいては公労法に違反
する。
 おもうに、不当労働行為は、一般企業で働く労働者ないし労働組合に対するもの
も、公務員、公共企業体等職員ないしいわゆる官公労組合に対するものもひとしく
憲法に保障された労働基本権に対する使用者の侵害行為であるが、公共企業体等労
働委員会(以下公労委という。)に救済を求められる不当労働行為は、労働委員会
に救済を求められる不当労働行為と異なり、単に労働基本権に対する侵害行為とい
う側面だけでなく、多くの場合に憲法尊重擁護義務の不履行という側面をもつもの
である。労働委員会規則が、「申立人が申立てを維持する意思を放棄したものと認
められるとき」を却下することができる理由の一つとして挙げている(同規則第三
四条第一項第七号)のに、公労委規則が特にこれを除外しているのは、公労委に救
済を求められる不当労働行為のもつ右のような側面を考慮し、かりに申立人の側に
おいて申立てを維持する意思がないと認められるような場合においても、積極的に
申立ての取下げがない以上、一方的に申立てを却下するなどという早計な態度を戒
め、かえつて憲法尊重擁護義務との関係において慎重に審査をなすという態度をと
つたものにほかならない。
2 かりに、被告の主張するように明文の規定がなくとも、「申立てを維持する意
思を放棄したものと認められるとき」に申立てを却下できるとしても、本件の場
合、「申立を維持する意思を放棄したものと認められるとき」に当らない。すなわ
ち、
(1) 公労委規則第二五条は、「審査が終了するまでは関係当事者はいつでも証
拠を提出することができる」と規定し、証拠についてはいわゆる随時提出主義の立
場をとつている関係上、調査開始の際に提出を求められる証拠は、これを量的にみ
れば審査の全過程において提出されるであろう証拠の一部に過ぎず、また質的にみ
れば「理由を疎明する」程度のもので足りるところ、原告は次に述べるとおりその
提出をした。
(イ) まず、原告は、昭和四二年二月八日、法規対策担当のE中央執行委員をし
て「提出する書証は公文書を含めて大阪(城東、福島郵便局関係の意味)一〇通、
美浦一〇通、これに関聯して証人は大阪一〇人、美浦五ー六人である」と発言させ
たうえこれら証拠に対する被申立人側からする悪質な工作を防ぎ、証拠としての価
値を保全するための書証である私信(大阪福島郵便局長が原告の組合員の父兄に差
出した手紙とこれに対し父兄から組合員にあてた手紙)および証人については審問
廷ないしは審問の直前に文書内容および証人氏名を明らかにする旨附言させたが、
前記公労委規則の定めに照らし、上述のE発言なるものは、まさに公労委規則の予
定する疎明方法の提出にほかならず、かつ本件については、これをもつて十分であ
るといわなければならない。もしこれが疎明方法提出の予告であるとしても被告が
審問期日を指定しさえすれば、原告はこれを提出することは前示発言からみても明
らかである。
(ロ) のみならず、原告は、D、Eの各中央執行委員、F、Gの各法規対策部
員、小谷野、仲田の各代理人を通じ、前記E発言と同旨発言をし、申立ての理由を
疎明してきたのである。
(2) かりに、原告の側において、申立理由の疎明をしなかつたとみられるとし
ても、原告は、申立てを維持する意思を放棄したために疎明をしなかつたのではな
く、次に述べるようなやむをえざる理由により疎明がおくれたに過ぎないから、原
告には「申立てを維持する意思がない」と認めることはできない。これをふえんす
れば、
(イ) まず、被告は、一定の期間にわたつて継続して行なわれた茨城県美浦郵便
局長の不当労働行為についての原告の不当労働行為申立ての一部を除斥期間を徒過
したという理由で却下したが、これは継続して行なわれた不当労働行為については
その終了の日から除斥期間を計算すべきであるのにその一部を切り離して除斥期間
を算定したものである。このように、右却下決定は、原告の申立てを曲解したもの
で、労働組合法第二七条第二項に違反するものであるところ、同決定を是認するな
らば、原告の主張は大幅に後退することになり、その救済の可能性は著しく少なく
なる。
 そこで、原告としては、被告が反省し自ら前記決定を取り消すことを期待し、昭
和四一年一〇月二二日、被告に対し、前記決定についての質問書を提出したが、被
告は、これに対し何ら誠意ある回答をすることなく、かえつて昭和四一年一一月四
日には原告執行委員長Cに対し、公労委の決定に対して原告のなした行政訴訟の提
起には濫訴の傾向がある旨申し向け、前記決定に対する行政訴訟の提起を断念せざ
るをえないような態度に出ている。
 右のように、原告は、前記一部却下決定に対し行政訴訟を提起すべきかどうかの
協議あるいは被告に対し取消しの検討を求める等のために時間を要したのである
が、右期間中の審理の停止についての責任の一切は、あげて被告にある。
(ロ) さらに、昭和四二年一月二九日施行の衆議院議員の選挙には、原告から多
数の組織内候補者が立候補し、組織をあげて選挙戦がなされたが、右選挙に関して
は各地で選挙違反として組織に対する弾圧が加えられたために、原告の法規対策部
関係者をはじめ代理人である弁護士等も繁忙をきわめ被告においてもその事情を十
分了解していた筈である。
(ハ) 茨城県美浦郵便局関係については、さらに次の特殊事情があつた。
(ⅰ) 前記のような事情もあつて、本件審理はおくれたが、前記却下決定に対す
る出訴期間の経過後、原告は、本申立てについての証拠(証人)申請を準備中であ
つたところ、昭和四二年一月、前記局における原告の役員であり、かつ活動家であ
るHに郵便法違反という問題が発生した。そうしたところ、前記局の局長Iは、右
Hに対し、「俺の上申によつて、君は免職になるかも知れない。君がよい上申を期
待するなら組合活動をやめた方がよい」というようなことを申し向けた。
(ⅱ)右Hは、原告の重要な証人の一人に予定されていたが、右のようなことがあ
つたため、同局の原告組合員から原告代理人弁護士小谷野三郎に対し、右Hについ
ての郵便法違反の問題が解決するまでは、本申立てについての証人申請等を待つて
ほしい旨の連絡があつた。そこで、右小谷野弁護士はこれを了承し、直ちに被告の
事務局に対し、茨城県美浦郵便局関係についての証拠申請は事情があつて遅れる
が、しばらく待つてほしい旨申し入れた。
(ⅲ) ところが、右Hに対する郵便法違反の事実は、昭和四二年五月ころ、不起
訴処分となり、かつ同人は右事件につき同年六月減給処分を受けて同問題は解決を
みたので、原告は、本申立てにつき、立証準備中のところ、突如本件却下決定に接
したのである。
(ニ) また、審問の時期については、申立人および被申立人双方において春闘が
終了して一段落した後に開始してもらう旨の暗黙の合意が成立していた。
五 原告の右反論(四の(二))に対する被告の反駁
(一) 公労委規則第二六条には「申立ての意思を放棄したと認められるとき」に
却下できる旨の規定がないから右のような場合にも却下できないという原告の主張
は、誤りである。たしかに、労働委員会規則第三四条は、申立てを却下することが
できる場合の一つとして「申立人が申立てを維持する意思を放棄したものと認めら
れるとき」をあげているのに対し、公労委規則第二六条は、申立てを却下すべき場
合の中に同様の事由を特にあげてはいない。しかしながら、右公労委規則第二六条
は、例示的規定であつて、制限的規定ではなく、申立人に申立てを維持する意思が
ない場合にも申立てを却下できないとした趣旨に解すべきではない。
1 本来、公労委の不当労働行為救済命令手続は、申立人の申立てにより開始さ
れ、申立人の申立てが有効に存続していることを前提にその手続が進められるもの
である。申立書の記載が不備であつて補正がなされないときは申立てを却下すべき
ものとされ、また事件の終了事由として申立ての取下げが認められているのは、い
ずれも命令手続が申立ての有効に存続していることを前提に進められることのあら
われにすぎない。一旦申立てが有効になされても、その後申立人が当該申立てを維
持する意思を放棄したときは、申立てが形式的に残つていても、実質的にこれを維
持する主体がなくなつたのであるから、公労委はこれ以上手続を進めることができ
ず、申立てを却下するほかないのである。このことは、申立てに基づいてのみ手続
が進行するという制度の性質上いわば当然のことである。
2 また、使用者が憲法尊重擁護義務があるということから何故却下事由を限定的
なものと解さなければならないか理解に苦しむものである。公労委規則が労働委員
会規則第三四条第一項第七号に該当する場合を却下事由から除外したと解すると、
例えば、「申立人の所在が知れないとき」とか「申立人が死亡し若しくは消滅し、
かつ、申立てを承継するものがないとき」もあくまでも申立てを却下することは許
されず、その事件は永久に公労委に係属してこれを打ち切る方法がないことにな
り、このことは、いかに被申立人たる使用者に憲法尊重擁護義務があるにしても、
きわめて不合理である。その上、この主張は、一般の労働委員会に対しても、政府
を相手方として駐留軍関係労働者が、また地方公共団体を相手方として地方公営企
業関係労働者がそれぞれ不当労働行為救済申立てができることを無視している。
3 公労委規則が、労委規則第三四条第一項第七号に該当する場合を列挙しなかつ
たのは、もともと法律上却下できる場合には、規則に明文の規定がなくとも却下で
きるし、右の却下事由に該当する場合のおこることはきわめて稀であろうから、あ
えてこれを列挙しなかつたに過ぎない。
 要するに、使用者に不当労働行為ありとして救済を被告に申し立てた申立人本人
が、被告の再三、再四の督促にもかかわらず、手続進行に協力しないで申立てを維
持する意思がないと認められるようなときは、被告としては、それ以上手続を進め
るに由なく、法律または規則が、かかる場合にも申立てを却下してはならないと定
めたと解されるのでない限り、被告は当該申立てを却下できるものと解されるとこ
ろ、労組法、公労法および公労委規則が右の場合に申立てを却下すべきでないと定
めたと解すべき根拠はないのである。
(二)1 原告が「疎明方法の提出」をしたことになるという主張は争う。
 E中央執行委員の発言は、証拠の申出の予告に過ぎず「疎明方法の提出」ではな
い。このような見地にもとずき被告は、大阪において集中的に証人の取調を行なう
のでその予定を立てるためもあり、さらに具体的な立証計画の提出を求めたとこ
ろ、原告は、三月五日にこれを提出することを約したにかかわらず、同日に至る
も、立証計画を提出しなかつたものである。さらに原告は申立て以来却下決定まで
被告あてに審問期日指定を求めてきたこともない。
 また、原告は、D中央執行委員、F、Gの各法規対策部員、小谷野、仲田の各代
理人がE発言と同旨の発言をしたと主張するが、その点については不知。なお、随
時提出主義といえども、不当労働行為救済手続が迅速に行なわるべきであるとの要
請上、再三、再四の督促を受けながら、申立てから二八〇日余も何らの証拠申出を
しないような事態を是認するものではない。
2 申立てを維持する意思を放棄したために疎明をしなかつたのではなく、やむを
えざる理由により疎明がおくれたに過ぎないという原告の主張は争う。
(1) 美浦郵便局関係の除斥期間経過を理由とする却下については、事前に被告
事務局から原告に連絡し、注意を喚起しているところであるし、決定に対して原告
から質問書等が提出された際、その後の審査が円満に進むことを期待して、審査委
員よりそれについての見解を原告に詳細に説明している。原告は、一一月一五日に
は、この問題を了解し、手続を進行することを約しており、その後の証拠申出をし
なかつた理由とはなし難い。
(2) また、衆議院議員選挙の関係で、原告は多忙であつたというが、これをも
つて証拠申出を何カ月もおくらせる理由とはいえない。
(3) さらに、美浦郵便局関係の証人予定者Hについて郵便法違反被疑事件があ
つたとしても、その他の証人あるいは、他の郵便局関係の証人の申出までおくらせ
る理由とはならないと考える。なお、原告がHについて郵便法違反の問題が発生し
たことを被告に連絡した点は不知。
(4) 当事者間で春闘終了後審問を開始するという合意があつたとの点は争う。
なお、春闘終了後、六月六日付審査委員名の文書で原告に証拠の申出を督促したに
もかかわらず、何らの回答も得られなかつたのである。
以上、要するに、被告の本件申立て却下決定には何ら違法な点はない。
第三 証拠関係(省略)
       理   由
一 原告適格と処分の存在
請求の原因(一)(二)については当事者間に争いがない。
二 処分の適否
(一) 公共企業体等労働関係法(以下単に公労法という。)第二条第一項に掲げ
る公共企業体等の不当労働行為により不利益を受けたと主張する公共企業体等の職
員等(同法第二条第二項に掲げる者、およびその結成し又は加入する労働組合をい
う。)は、公共企業体等労働委員会(以下単に公労委という。)に不当労働行為救
済申立てをすることができ、申立てを受けた公労委は、公労委が定める手続規則
(公共企業体等労働委員会規則ー以下単に公労委規則という。)による調査、審問
の手続を経て事実の認定をし、この認定に基づき不当労働行為が存在する以上、必
要な救済命令を発しなければならない(公労法第二五条の五第一、二項、労働組合
法第二七条第一、三、四項)。
 したがつて、不当労働行為に対する救済を申し立てた公共企業体等の職員等は救
済申立てに基づき公労委の定める手続規則に従つた適正な手続によつて不当労働行
為救済命令を発することの可否について判断を受ける手続上の権利を有するという
ことができる。(なお、実際に不当労働行為により不利益を蒙つた職員等が公労委
に対し実体上の権利としての右救済請求権を有することはもちろんである。)
(二) ところで、公労委の定めた手続規則たる公労委規則は、公労委が法の授権
のもとに自ら定立した強行法規たる行為規範であつて、公労委自身に対しこれに則
つて審理等をなすべき義務を課した反面、国民に対しても公労委に対しこれに則つ
て審理等をなすべきことを求める権利を賦与したものと解することができる。
 そうであるとすれば、公労委が、公労委規則の定めた場合でないのに、不当労働
行為救済申立てに対し、不当労働行為の存否の認定をなさず、申立てを却下すると
いうようなことは、申立人の右手続上の権利を害することになり許されないと解す
べきである。
(三) ところが、労働委員会規則第三四条は、申立てを却下できる場合の一つと
して「申立人が申立てを維持する意思を放棄したものと認められるとき」をあげて
いるが、公労委規則をみると、申立てを却下する場合について規定した第二六条に
は右のような場合があげられていない。
 そして、公労法および公労委規則を通覧しても、他に「申立人が申立てを維持す
る意思を放棄したものと認められるとき」に申立てを却下できる旨を規定した条文
は見当らない。
 被告は、公労委規則第二六条が掲げる却下事由は例示的なものであつて制限的な
ものでないと主張するけれども、不当労働行為救済申立てが却下されると、申立人
は、再度の申立ては妨げられないにしても、当該申立てによつて開始された手続内
で不当労働行為の救済命令を発することの可否について公労委の判断を受ける機会
を失うことになること、また、再度の申立てが可能であるといつても、それは無制
約に許されるわけではなく、申立期間が制限されている(公労法第二五条の五第二
項、労働組合法第二七条第二項、公労法第二五条の五第四項)関係上、再び救済を
申し立てる時間的余裕がないこともあり、その場合には単に前述の手続上の権利を
失うにとどまらず実体上の権利である救済請求権をも失うことになること、しか
も、不当労働行為救済申立ての制度の目的は、個人あるいは組合の権利救済にとど
まらず、そのことを通じて公正な労働関係の樹立を図ることにもあることを考えあ
わせれば、不当労働行為の存否についての判断がないまま却下する場合が拡がる結
果を招くような解釈は相当でないから、前記公労委規則第二六条は却下する場合を
制限的に規定したものと解するのが相当である。
 (なお、被告は、明文の規定がなければ却下できないとすると、「申立人の所在
が知れないとき、申立人が死亡し若しくは消滅し、かつ、申立てを承継するものが
ないとき」の処置に窮する旨主張するけれども、もしそうであるとしても、公労委
規則に、却下する場合として右の場合を追加すれば足りるのみならず、現行公労委
規則のもとでも同規則第二六条第一項第六号に定める「救済を求める事項が法令上
又は事実上実現することが不可能であることが明らかなとき」に該当するとして処
理できると考える。)
(四) そうであるとすれば、本件の場合、不当労働行為救済命令手続を遷延させ
たのは原告の側であることは、成立に争いのない乙第一ないし第五号証、同第八号
証、証人Jの証言により成立の認められる乙第六号証、ならびに証人J、同Kの各
証言により明らかであるけれども、申立人たる原告に「申立てを維持する意思がな
いと認め」て申立てを却下した被告の本件処分は、その余の点について判断するま
でもなく、違法というほかはない。
三 むすび
 よつて、本件却下決定の取消しを求める原告の請求は正当であるから認容し、訴
訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 沖野威 小笠原昭夫 石井健吾)

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ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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