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裁判例


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         主    文
     附帯控訴に基づき、原判決を取り消す。
     原判決添付別紙第一目録記載1の土地及び同第二、第三目録記載の各土
地につき、被控訴人(附帯控訴人)Aが八一七一万四〇〇〇分の一三六一万九〇〇
〇の、被控訴人(附帯控訴人)Bが八一七一万四〇〇〇分の四〇七万二五四五の、
被控訴人(附帯控訴人)Cが八一七一万四〇〇〇分の三一三万〇三九三の、被控訴
人(附帯控訴人)Dが八一七一万四〇〇〇分の二九三万三五九九の各持分を有する
ことを確認する。
     控訴人(附帯被控訴人)は被控訴人(附帯控訴人)らに対し、前記各土
地につき被控訴人(附帯控訴人)らが前記各該当持分を有する旨の変更登記手続を
せよ。
     被控訴人(附帯控訴人)らのその余の主位的請求を棄却する。
     訴訟費用は第一、二審とも控訴人(附帯控訴人)の負担とする。
         事    実
 控訴人(附帯被控訴人、以下単に控訴人という。)代理人は「原判決中控訴人敗
訴部分を取り消す。被控訴人(附帯控訴人、以下単に被控訴人という。)の各請求
を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求
め、被控訴人らの附帯控訴につき「本件各附帯控訴及び被控訴人A、同Bの当審に
おける新たな各請求をいずれも棄却する。附帯控訴費用は被控訴人らの負担とす
る。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控
訴人の負担とする。」との判決を求め、附帯控訴における主位的申立として「原判
決中被控訴人らの主位的請求を棄却した部分を取り消す。被控訴人Aは、原判決添
付別紙第一目録記載の土地につき六分の四の持分を、第二ないし第四目録記載の各
土地につきいずれも六分の一の持分を、被控訴人B、同C、同Dはそれぞれ同第一
ないし第四目録記載の各土地につきいずれも一八分の一の持分を各有することを確
認する。控訴人は被控訴人らに対し右各土地につき右各該当持分を有する旨の変更
登記手続をせよ。附帯控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を、予備的申立
として「原判決中被控訴人A、同C、同Dの各予備的請求の敗訴部分を取り消す。
控訴人は、被控訴人Aに対し七二九八万八六六六円(当審において三三万五四〇二
円請求拡張)及びこれに対する昭和四一年四月六日から支払済まで年五分の割合に
よる金員を、被控訴人Bに対し三八七万四八〇〇円(当審において請求拡張)及び
これに対する右同日から支払済まで年五分の割合による金員を、被控訴人C、同D
に対し各二五八万四三八九円(当審において各二六二万五七〇〇円請求減縮)及び
これに対する右同日から支払済まで年五分の割合による金員を各支払え。附帯控訴
費用は控訴人の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求めた。
 当事者双方の主張及び証拠関係は、左記のほかは、原判決事実摘示のとおりであ
るので、これをここに引用する(但し、原判決四枚目表一一行目から同裏三行目ま
でを削除し、同九枚目表八行目に「原告らの遺留分減殺請求に対して」とあるを
「被控訴人B、同C、同Dの遺留分減殺請求に対して」と改め、原判決添付別紙第
六目録中、番号4欄に「一八坪」とあるを「一八歩」と、番号8欄に「三二七〇
番」とあるを「k番」と、同番号15欄に「第七の7」とあるを「第三の7」と改
める。)。
 被控訴人ら代理人の主張
 一、 原判決添付別紙第一目録記載の各土地につき、被控訴人Aが持分二分の一
を有しないとしても、同士地は亡Eの遺産であるから、被控訴人Aは遺留分減殺に
より六分の一の持分を取得した。
 二、 原判決添付別紙第六目録記載の不動産はいずれも亡Eの遺産であり、その
価額は同目録記載のとおりである(但し、同目録記載7(前記第一目録記載1)の
不動産については前記一のとおりである。)。被控訴人Bは同目録記載21の建物
を、被控訴人C、同Dは同22の土地を亡Eから遺贈された(原判決五枚目裏五行
目から同六枚目表一行目までの主張を以上のとおり改める。)。
 三、 民法第一〇四一条による価額弁償は、遺贈又は贈与の目的の価額弁償申出
時の価額によるべきである。その理由は次のとおりである。
 1 遺留分本来の制度目的とは、財産処分自由の原則と法定相続制度の調和を図
るために制定せられたもの、換言すれば被相続人の財産処分の自由から法定相続人
たる配偶者及び直系尊卑属の有する相続利益の一定限度を守るために制定せられた
ものとすること通説である。
 然らば此のことから直ちに相続開始時の価額によるべきものとの結論は出て来
ず、むしろ法定相続人の相続利益を守るという趣旨を失わせないためには、少くと
も遺留分権利者に損失を帰せしめないようにすべきであり、これには相続開始時と
現在との間に遺産たる不動産の価額が騰貴した場合においては、現在の価額によつ
て弁償すべき金額を算定することによつて始めて遺留分権利者の相続利益が正当に
守られることになるのであり、且つそうすることによつて受遣者に何らの不利益に
なることもない。蓋し価額の騰貴した不動産をそのまま受益者は保有し得るからで
ある。
 斯くて始めて受遺者、遺留分権利者の双方に公平が期せられるのである。
 大審院大正七年一二月二五日判決(民録二四輯二四二九頁)は、遺留分権利者が
贈与の減殺を請求した場合において、贈与が遺留分を保全するに必要な限度を超え
たか否かを判定するには相続開始当時における被相続人の有した財産のその当時に
おける価額及び先に被相続人が贈与した財産の相続開始の当時における価額を斟酌
して定めることを要する旨判示したもので、もとより当然のことであり、受遺者受
贈者が遺留分権利者に対して返還の義務を免かれるために価額を弁償するに際し
て、何時の時点における価額を以て弁償する金額とするかについては何らの判断も
示していないのであつて、全く性質の異なる事案についてなされた判決である。
 2 民法第一〇四一条は、いつの時点の価額を弁償すべきかについては何ら規定
していない。
 故にいつの時点における価額を弁償すべきかは、一に解釈によつて決せられるこ
と当然であり、而して法の解釈はその適用を受ける者に対していやしくも偏頗な結
果になるようなことは避けねばならないこと、いうまでもないと信ずる。法の根本
理念である公平に反するからである。
 不動産価額の高騰している場合に右民法第一〇四一条の解釈に当り相続開始時説
をとれば、如何に不公平になるかの簡単な例を挙げれば、子が遺留分権利者で被相
続人の財産が一〇〇平方メートルの土地だけで、これを他人に贈与或は遺贈された
ので減殺請求をしたところ受贈者が価額弁償の申出をした場合において、右土地が
相続開始時には一〇〇万円であつたが価額弁償の申出をした時は二〇〇万円に騰貴
していたとき、開始時説によれば五〇万円だけを遺留分権利者に交付すればよく、
受贈者は二〇〇万円から五〇万円を控除した金一五〇万円を取得することになり、
その割合は遺留分権利者一に対し受贈者三の割合となること明らかで、このような
解釈は民法第一〇二八条に違反し遺留分権利者の有する遺留分を侵害する結果とな
ること明らかである。此のような不当な結果を避けるためには、価額弁償の申出を
した時の遺産の価額により一〇〇万円を遺留権利者に弁償すれば、双方にとつて公
平となり民法第一〇二八条の趣旨も生かされるので、妥当な結果となる。
 3 近時遺産分割についての民法第九〇六条の解釈につき、遺産に属する物又は
権利の価額を相続開始時より評価すべきか分割時により評価すべきかについて、民
法第九〇九条、九〇三条、九〇四条の条文を根拠として相続開始時により、評価す
べしとする学説判例が次第に影をひそめ、分割時により評価すべしとする学説判例
が有力となるに至つたのは、後説が現実の社会に適合し且つ公平の理念に合致する
からに外ならない。
 遺産分割と遺留分減殺とは、共に遺産を相続人に分与するための制度であり、制
度の根本趣旨を共通にするのであるから、一は分割時により評価し、他を相続開始
時により評価するのは、一国の法制としては矛盾という外ない。民法第一〇四一条
は決して受遺者に不当に利益を与える趣旨の規定とは解されない。
 価額を弁償するか現物を返還するかの選択権を与えられている受遺者は、その何
れかを選ぶ自由を有するとしても、それはあくまでその時点(弁償申出時)におけ
る価額であつて、不当に低額な相続開始時における価額を弁償することにより受遺
者をして価額高騰による利益を独占せしめる趣旨とは到底解されない。
 4 以上の通り民法第一〇四一条の正当な解釈に基づき、価格弁償時に最も近接
した時期である昭和四七年四月一日現在における価額に従い被控訴人等の弁償を受
くベき額を算出すると、次のとおりとなる(原判決六枚目表二行目から同裏三行目
までの主張を以下のとおりに改める。)。
 (一) 被控訴人A
 原判決第六目録7の価額一億二、四四八万三、〇〇〇円の持分六分の四に当る
八、二九八万八、六六六円とそれ以外の遺留分算定の基礎となる財産の価額二、八
三二万一、四〇〇円の六分の一に当る四七二万〇、二三三円との合計八、七七〇万
八、八九九円から原判決の認容した一、四七二万〇、二三三円を控除した七、二九
八万八、六六六円。
 (二) 被控訴人B
 遺留分算定の基礎となる財産の価額一億五、二八〇万四、四〇〇円の一八分の一
に当る八四八万九、一三三円から遺贈を受けた右第六目録記載21の物件の価額一
一一万二、〇〇〇円をさし引いた金七三七万七、一三三円から原判決の認容した金
三五〇万二、三三三円を控除した三八七万四、八〇〇円。
 (三) 被控訴人C
 遺留分算定の基礎となる財産の価額一億五、二八〇万四、四〇〇円の一八分の一
に当る八四八万九、一三三円から遺贈を受けた右第六目録記載22の物件の価額四
八七万五、〇〇〇円の二分の一である二四三万七、五〇〇円及び贈与を受けた三〇
万円をさし引いた五七五万一、六三三円から原判決の認容した三一六万七、二四四
円を控除した二五八万四、三八九円。
 (四) 被控訴人D
 遺留分算定の基礎となる財産の価額一億五、二八〇万四、四〇〇円の一八分の一
に当る八四八万九、一三三円から遺贈を受けた右第六目録22の物件の価額四八七
万五、〇〇〇円の二分の一である二四三万七、五〇〇円及び贈与を受けた五〇万円
をさし引いた五五五万一、六三三円から原判決の認容した金二九六万七、二四四円
を控除した二五八万四、三八九円。
 5 よつて、被控訴人らは右各該当金員及びこれに対する被相続人E死亡の日で
ある昭和四一年四月六日から各完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求
める。
 控訴代理人の主張
 一、 亡Eの遺産及びその価額は原判決添付別紙第六目録記載のとおりである。
亡Eには遺産債務はなく、動産は無価値のものである。
 二、 判決書七枚目表六行目の「第三の12」とある次に「3」を加える。
 三、 被控訴人主張三は争う。
 四、 控訴人は、亡Eの遣言の趣旨に従い、家にとどまり農業を承継し、妻F、
長男Gとともに遺贈を受けた農地を耕作しているので、価額弁償の申出をしたが、
控訴人には受遺物件以外に格別の財産がないのに対し、被控訴人B、同C、同Dは
いずれも給料を得て生活している。ところで、分割の基準を定めた民法第九〇六条
は遺留分減殺請求の場合にも適用されるべきものである。よつて、被控訴人B、同
C、同Dに対しては一〇年ないし一五年の年賦にて支払うのが相当である。
 なお、被控訴人Aに遺留分減殺請求権があるとすれば、その請求額を半減し、年
賦で支払うのが相当である。
 証拠関係(省略)
         理    由
 一、 亡Eの相続関係については、原判決の理由説示第一の一と同一であるか
ら、ここにこれを引用する。
 二、 被控訴人Aは原判決添付別紙第一目録記載の各土地(以下原判決添付別紙
目録記載の土地については第一の1の土地の如く目録と土地の各番号で表示す
る。)につき持分二分の一を有する旨主張するが、成立に争いのない甲第三号証に
よると第一の1の土地につき昭和七年七月一三日付売買を原因としてHからEに所
有権移転登記がなされていることが認められるので、反証のない限り第一の1の土
地はEの特有財産と推定すべきである。
 被控訴人AはEと結婚後農業に精進して得た収入により第一の1の土地を買い受
けたものであるから、Eとの共有である旨主張し、成立に争いのない甲第三六号証
の二、当審における被控訴人A本人尋問の結果によれば、被控訴人AはEと結婚以
来Eに協力して農業に従事し、第一の1の土地購入につき協力寄与しているものと
推認しうるが、かかる場合、民法は、別に財産分与請求権、相続権ないし扶養請求
権等の権利を規定し、これらの権利の行使により、結局において夫婦間に実質上の
不平等が生じないよう配慮しているから、右協力寄与の事実をもつて右推定を覆す
ことができず、他に右推定を左右するに足る証拠はない。
 成立に争いのない甲第四号証によると、第一の2の土地については昭和二七年九
月一七日控訴人所有名義に保存登記がなされていることが認められるので、第一の
2の土地は控訴人の所有に属すると推定すべきであり、右推定を覆すに足る証拠は
ない。
 そうすると、第一の1、2の土地につき持分二分の一を有することを前提とする
被控訴人Aの請求部分は失当である。
 三、 次に、被控訴人らの遺留分減殺請求に基づく主位的請求の当否につき以下
に判断する。
 1 前記のごとく、Eが昭和四一年四月六日死亡し、被控訴人ら主張の七名がそ
の主張のように相続人であり、また第一の1、第二、第三の各土地(以下原判決添
付別紙第六目録記載の番号により表示する。但し第三の3の上地はそのまま。)、
第六の1、16ないし22の各不動産が亡Eの遺産であること、第六の1ないし2
2の各不動産の価額が原判決添付別紙第六目録記載のとおりであること、Eは控訴
人に対し第六の1ないし18、第三の3の各不動産を、被控訴人Bに対し第六の2
1の建物を、被控訴人C、同Dに対し第六の22の土地をそれぞれ遺贈したこと、
Eから被控訴人Cが三〇万円(控訴人は四〇万円と主張するが三〇万円を超える部
分を認めるに足る証拠はない。)、同Dが五〇万円の各贈与を受けたこと、以上の
各事実はいずれも当事者間に争いがなく、亡Eに遺産債務がなく、遺産である動産
が無価値であることは、被控訴人らが明らかに争わないので自白したものとみな
す。
 成立に争いのない乙第三号証によれば、亡Eは生前養子のF(控訴人の妻)と孫
のGに対し第六の19の土地の持分二分の一ずつ、Gに対し第六の20の土地をそ
れぞれ遺贈したことが認められ、右認定に反する証拠はない。
 被控訴人ら代理人は第一の2、第四の1ないし12の各土地も亡Eの遺産である
旨主張するが、これを認めるに足る証拠はないので、右の主張は採用できない。
 2 そこで、前記各事実に基づき被控訴人らの遺留分を計算すると次のとおりと
なる。
 (一) 遺留分算定の基礎となる財産
 (1) 亡Eが相続開始時において有した財産の価額(以下価額は相続開始時の
ものである。)
 a 第六の1ないし22の不動産の価額合計八七五二万一四〇〇円
 b 第三の3の土地の価額
 原審鑑定人Iの鑑定の結果によると、第三の3の土地の現況は原野であり、回じ
く現況原野である第六の10、13の土地と第六の11、12の土地の間に存在す
ることが認められ、右認定に反する証拠はない。
 そこで、第六の10ないし13と同一基準により第三の3の土地の価額を算出す
ると、二五万四六〇〇円C1となる。
 c 右a、bの合計額八七七七万六〇〇〇円
 (2) 亡Eが生前贈与した金員計八〇万円
 内訳
 被控訴人C三〇万円、同D五〇万円
 (3) 遺留分算定の基礎となる財産の価額
 前記(1)のcと(2)の合計八八五七万六〇〇〇円
 (二) 各被控訴人の遺留分
 (1) 被控訴人A 一四七六万二六六七円(円未満は四捨五入した。以下同
じ)
<記載内容は末尾2添付>
 (2) 被控訴人 B  四一四万八八八九円
<記載内容は末尾3添付>
 (3) 被控訴人 C 三一八万一三八九円
<記載内容は末尾4添付>
 (4) 被控訴人 D 二九八万一三八九円
<記載内容は末尾5添付>
 3 控訴人に遺贈された不動産の価額
 (一)第六の1ないし18の不動産の価額計八一四五万九四〇〇円
 (二) 第三の3の土地の価額二五万四六〇〇円
 (三) 右(一)、(二)の合計八一七一万四〇〇〇円
 4 Gに遺贈された不動産の価額
 (一)第六の19の宅地の価額(二分の一)一一五万円
 (二) 第六の20の土地の価額一〇万一〇〇〇円
 (三) 右(一)、(二)の合計一二五万一〇〇〇円
 5 被控訴人らの遺留分を侵害している遺贈部分の価額
 (一) 控訴人に遺贈された内、七六七九万三一一一円
<記載内容は末尾6添付>
 (二) Gに遺贈された不動産の価額一二五万一〇〇〇円
 (三) 民法一〇三四条本文により右(一)、(二)の遺贈部分は価額の割合に
応じて減殺されるべきである。
 6 被控訴人らが控訴人に対し減殺しうる遺贈部分の価額は次のとおりである。
 (一) 被控訴人A 一四五二万六〇三〇円
<記載内容は末尾7添付>
 (二) 被控訴人 B   四〇七万二五四五円
<記載内容は末尾8添付>
 (三) 被控訴人 C   三一三万〇三九三円
<記載内容は末尾9添付>
 (四) 被控訴人 D   二九三万三五九九円
<記載内容は末尾10添付>
 7 ところで、遺留分権利者が受遺者、受贈者に対して行う減殺請求権は形成権
であつて、その意思表示がなされると、法律上当然に減殺の効力を生じ、遺留分権
利者は遡及的に目的物につき持分を取得するものと解するを相当とする(最高裁昭
和三五年七月一九日判決民集一四巻九号一七七九頁、同昭和四一年七月一四日判決
民集二〇巻六号一一八三頁、同昭和四四年一月二八日判決判例時報五四八号六八頁
参照)。これを本件についてみるに、被控訴人らが昭和四一年一〇月六日到達の書
面で控訴人に対し遺留分減殺の意思表示をなしたことは当事者間に争いがないか
ら、亡Eから控訴人に対しなされた第六の1ないし18、第三の3の各不動産の遺
産は、被控訴人らの遺留分を侵害している前記6の限度において当然に無効とな
り、その結果第六の1ないし18、第三の3の各不動産は相続開始時に遡及して控
訴人と被控訴人らの共有となり、そして、第六の1ないし18、第三の3の各不動
産の相続開始時の価額の総額は前示のとおり、八一七一万四〇〇〇円であるから、
被控訴人らは第六の1ないし18、第三の3の各不動産につき遺留分が侵害された
前記6の価額相当分の持分を有するということができるから、被控訴人Aの持分は
八一七一万四〇〇〇分の一四五二万六〇三〇、被控訴人Bの持分は八一七一万四〇
〇〇分の四〇七万二五四五、被控訴人Cの持分は八一七一万四〇〇〇分の三一三方
〇三九三、被控訴人Dの持分は八一七一万四〇〇〇分の二九三万三五九九となる。
 8 控訴代理人は被控訴人Aの遺留分減殺請求権の行使は権利の濫用であつて許
されない旨主張する。
 各成立に争いのない甲第四〇、第四一号証、乙第三、第四号証、同第三六号証の
二、原審及び当審証人Fの証言、原審における被控訴人C、当審における被控訴人
A、原審及び当審における控訴人の各本人の尋問の結果によると、被控訴人Aは大
正一五年一一月Eの後妻として同人と結婚し(昭和二年四月一八日届出)、爾来E
や控訴人らとともに農業に従事し、昭和三九年Eが直腸がんに罹患して病臥する
や、同人の入院中も、自宅療養中もEを看護してきたこと、ところが、被控訴人A
が控訴人の目を逃れて食糧品等を被控訴人B方へ運んだり、飲酒した際などに被控
訴人BがE家の長男だというような言動があつたため、被控訴人Aと控訴人が不仲
になり、控訴人が被控訴人Aに暴力を振うようになつたこと、そして、昭和四〇年
八月一三日控訴人が被控訴人Aに対し些細なことから暴力を振つたため、被控訴人
Aは家を出て被控訴人B方に身を寄せたこと、被控訴人Aは、昭和四〇年一一月E
を相手方として山形家庭裁判所新庄支部に対し、控訴人の暴行をEがとめないので
同居に耐えられないとして、離婚等の調停の申立をし、また昭和四二年二月一三日
控訴人とその妻Fを相手方として、山形地方裁判所新庄支部に対し、自己の不知の
間に養子縁組がなされたとして、Eと被控訴人Aを養親とする養子縁組無効の訴を
提起したこと、Eは、被控訴人Aが昭和四八年八月一三日より病気中のEを顧みず
に被控訴人B方に同居し、離婚の調停を申立てているので何ら遺贈しない旨遺言し
ていること、以上の各事実が認められ、右認定に反する証拠はない(乙第三号証
((遺言公正証書謄本))第六条に離婚の訴とあるのは、離婚調停の申立の誤記で
あることは弁論の全趣旨に徴し明らかである。)。
 前記認定の事実からみると、被控訴人Aの家出、離婚調停の申立等は、E、控訴
人、被控訴人Aらの親族間の紛争に端を発したもので、被控訴人Aを一方的に責め
るのは酷に失するものとみられ、これらの行為があつたことの一事を以て直ちに被
控訴人Aの遺留分減殺請求権の行使が権利濫用として容認できない程非難されるべ
き行為ということはできず、他に控訴人のこの点に関する主張事実を認めるに足る
証拠はない。
 よつて、控訴人の右主張は採用できない。
 9 以上の理由により、被控訴人らは第六の1ないし18、第三の3の各不動産
につき、前記認定の各持分を有するところ、第六の2ないし15、第三の3の各土
地が控訴人所有名義に登記されていることは当事者間に争いがないから、被控訴人
らは右認定の持分に基づき、控訴人に対し、右各土地につき右持分を有する旨の変
更登記手続を求めることができるというべきである。
 10 控訴人は、被控訴人らの遺留分減殺請求に基づく現物返還に代えて価額に
よる弁償を主張している。
 <要旨>ところで、民法一〇四一条一項は、受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべ
き限度において、贈与又は遺贈の目的物の価額を遺留分権利者に弁償して返
還の義務を免かれることができる旨規定し、受遺者・受贈者に対し目的物を返還す
るか、その価額を弁償するかの選択権を与えているが、受遺者・受贈者において、
価額弁償の意思表示をしたのみでは、遺留分権利者の目的物返還請求権は消滅する
ものでなく、現実に価額の弁償がなされてはじめて目的物返還請求権が消滅するも
のと解すべきである。即ち、遺留分権利者の目的物返還請求権は物権的に保護され
ているのに対し、受遺者・受贈者の価額弁償の意思表示により、これが消滅し、金
銭債権である価額弁償請求権にかわるとすれば、民法上右価額弁償請求権に優先的
効力を与える旨の規定がないので、遺留分権利者は、他の一般債権者と同じく単に
債権的な保護が与えられるにすぎなくなり、不当だからである。
 これを本件についてみるに、控訴人において目的物の価額を現実に弁償した旨の
主張立証のない本件においては、控訴人の右主張は採用できない。
 四、 以上の次第により、被控訴人らにおいて第一の1(第六の7)、第二の1
ないし7(第六の2ないし6、8、9)、第三の1ないし7(第六の10ないし1
5)の各不動産につき前記認定の各持分(但し、被控訴人Aについては申立の範囲
である六分の一の限度)を有し、控訴人においてこれを争うことは訴訟の経過によ
り明らかであるから、右持分の確認を求める利益ありとすべく、被控訴人らの主位
的請求は、被控訴人らの右の各持分を有することの確認と同持分に基づき右各不動
産につき同持分を有する旨の変更登記手続を求める限度で正当として認容すべきで
あり、その余は失当として棄却すべきである。
 よつて、被控訴人らの主位的請求を棄却し予備的請求を一部認容した原判決を取
り消すこととし、原審及び当審における訴訟費用の負担につき民訴法九六条九二条
但書を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長 裁判官 井口源一郎 裁判官 伊藤俊光 裁判官 佐藤貞二)
別紙     
 第  一  目  録
2 同所    一番一         田     一九歩     六二平
方メートル
 第  二  目  録
1 新庄市a字bc番d   田   一反二三歩    一〇六七平方メートル
2 同所   字e f番    田    三畝七歩       三二〇平方
メートル
3 同市大字g町後h番    田  一反七畝九歩    一六一六平方メート

4 同所       h番i   田   九畝一八歩
5 同所       h番j   田     一五歩      四九平方メ
-トル
6 同市a字b k番    畑   五畝一三歩     五三八平方メートル
7 新庄市l町     m番n   畑    四畝三歩     四〇六平方
メートル
 第  三  目  録
1 新庄市a字o p番    山林  一畝二三歩     一七五平方メート

2 同所       p番q   山林  一畝一八歩    一五八平方メー
トル
3 同所       r番    山林  四畝一四歩    四四二平九メー
トル
4 同所       s番    山林  一畝一〇歩     一三二平方メ
ートル
5 同所       t番     山林  六畝一九歩     六五七平方
メー卜ル
6 同所   字uv番    山林三反三畝一〇歩    三三〇五平方メート

7 同所   字w x番    山林   三畝九歩     三二七平方メー
トル
 第  四  目  録
 -
 1 新庄市大字y字za1番   田    三畝六歩     三一七平方メ
ートル
 2 同所         a1番b1  田 二反七畝一八歩    二七三
七平方メートル
 3 同所         c1番   田   三畝一四歩     三四三
平方メートル
 4 同所         d1番   田     六畝歩     五九五
平方メートル
 5 同所         e1番   田 一反二畝二八歩    一二八二
平方メートル
 6 同所         f1番   田    二畝三歩     二〇八
平方メートル
 7 同所         g1番h1  田     三反歩    二九七
五平方メートル
 8 同所         i1番   田   二畝一三歩     二四一
平方メートル
 9 同市    a字j1k1番   田   一畝一七歩     一五五平
方メートル
 10 同所        k1番l1  田    四畝九歩     四二
六平方メートル
 11 同所        k1番m1  田   一畝二四歩     一七
八平方メートル
 12 同所   字n1  o1番p1  田   七畝一五歩     七四
三平方メートル
 第  五  目  録
 1 新庄市q1町r1丁目s1番t1    宅地     四二坪   一三
八・八四平方メートル
 2 同所       s1番u1    宅地 四一坪五合九勺   一三
七・四八平方メートル
 3 同所       s1番     宅地   三九坪九合   一三一・
九〇平方メートル
 4 同所       s1番v1    宅地  二坪二合四勺     
七・四〇平方メートル
 5 同所       s1番w1    宅地 三七坪八合一勺   一二
四・九九平方メートル
<記載内容は末尾11添付>

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採用情報


弁護士 求人 採用
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激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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