弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成18年(行ケ)第10148号審決取消請求事件
平成19年7月25日判決言渡,平成19年6月25日口頭弁論終結
判決
原告セイコーエプソン株式会社
訴訟代理人弁護士森崎博之
訴訟代理人弁理士稲葉良幸,菅原俊樹,笹本真理子
被告特許庁長官肥塚雅博
指定代理人井口猶二,末政清滋,小池正彦,
大場義則
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2004−7124号事件について平成18年2月21日にした審
決を取り消す。
第2当事者間に争いがない事実
1特許庁における手続の経緯
原告は,平成10年2月17日,発明の名称を「電流駆動型発光装置」とする発
明について特許出願(特願平10−531359号,優先権主張・平成9年2月1
7日,同年3月19日,以下,これらを併せて「本件優先日」という。)をしたが,
平成16年3月1日付けで拒絶査定を受けたので,同年4月8日,拒絶査定不服審
判を請求し(不服2004−7124号事件として係属),同年5月7日付け手続
補正書(甲2の8)により特許請求の範囲等について補正(以下「本件補正」とい
う。)をした。
特許庁は,平成18年2月21日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,
成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年3月7日,原告に送達された。
2特許請求の範囲の記載
()本件補正前の,平成15年11月4日付け手続補正書により補正された明1
細書(甲2の1,4)の特許請求の範囲の請求項1の記載(以下,同請求項1に記
載された発明を「本願発明」という。請求項2∼6に関する部分は省略する。以下
同じ。)
【請求項1】走査線と,データ線と,画素とを備えた電流駆動型発光表示装置で
あって,
前記画素は,共通電極と,対向電極と,画素電極と,前記画素電極と前記対向電
極の間に介挿される発光素子と,前記走査線を介して走査信号が供給される第1薄
膜トランジスタと,前記データ線から前記第1薄膜トランジスタを介して供給され
る画像信号に応じて保持電位を保持する保持容量と,前記保持電位に応じて前記共
通電極と前記画素電極の間の導通を制御して前記発光素子に流れる電流を制御する
第2薄膜トランジスタと,を備え,
前記第2薄膜トランジスタはnチャネル型であり,
前記画素が表示状態となる期間において,前記保持電位が前記対向電極の電位よ
り低く,前記画素電極の電位が前記対向電極の電位より低く,前記共通電極の電位
が前記画素電極の電位より低くなるように,前記画像信号の電位が設定されてなる
ことを特徴とする電流駆動型発光表示装置。
()本件補正後の明細書(甲2の1,4,8。以下「本件明細書」という。)2
の特許請求の範囲の請求項1の記載(以下,同請求項1に記載された発明を「本願
補正発明」という。)
【請求項1】走査線と,データ線と,画素とを備えた電流駆動型発光表示装置で
あって,
前記画素は,共通電極と,対向電極と,画素電極と,前記画素電極と前記対向電
極の間に介挿される発光素子と,前記走査線を介して走査信号が供給される第1薄
膜トランジスタと,前記データ線から前記第1薄膜トランジスタを介して供給され
る画像信号に応じて保持電位を保持する保持容量と,前記保持電位に応じて前記共
通電極と前記画素電極の間の導通を制御して前記発光素子に流れる電流を制御する
第2薄膜トランジスタと,を備え,
前記第2薄膜トランジスタはnチャネル型であり,
前記画素が表示状態となる期間において,前記保持電位が前記対向電極の電位よ
り低く,前記画素電極の電位が前記対向電極の電位より低く,前記共通電極の電位
が前記画素電極の電位より低くなるように,前記画像信号の電位が設定されてなり,
前記画像信号の電位振幅は,前記共通電極と前記対向電極の間の電圧より小さい
ことを特徴とする電流駆動型発光表示装置。
3審決の理由
()審決は,別紙審決記載のとおり,本願補正発明が,特開平9−161231
号公報(甲3,以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用発明」と
いう。)及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので
あり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,
本件補正は,同法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反する
ものとして,同法159条1項において準用する同法53条1項の規定により,却
下した上,本願発明も,引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明を
することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けるこ
とができない,とした。
()審決が認定した引用発明の要旨2
画素を備えたエレクトロルミネセンス画像表示装置であって,
前記画素は,EL素子と,Y座標選択信号が供給されるSELECT−SW用T
FTと,前記SELECT−SW用TFTがオンとなることによって供給される画
像データにより信号保持用のキャパシタCに電荷を蓄積し,この信号保持用のキャ
パシタCに蓄積された電圧により電流がEL電源から前記SELECT−SW用T
FTのドレイン・ソース間に流れ,前記EL素子が発光するように制御するBIA
STFTと,を備えてなるエレクトロルミネセンス画像表示装置。
()審決が認定した,本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は,それぞ3
れ次のとおりである。
ア一致点
走査線と,データ線と,画素とを備えた電流駆動型発光表示装置であって,
前記画素は,共通電極と,対向電極と,画素電極と,前記画素電極と前記対向電
極の間に介挿される発光素子と,前記走査線を介して走査信号が供給される第1薄
膜トランジスタと,前記データ線から前記第1薄膜トランジスタを介して供給され
る画像信号に応じて保持電位を保持する保持容量と,前記保持電位に応じて前記共
通電極と前記画素電極の間の導通を制御して前記発光素子に流れる電流を制御する
第2薄膜トランジスタと,を備えてなる電流駆動型発光表示装置。
イ相違点
(ア)相違点1
第2薄膜トランジスタに関して,本願補正発明がnチャネル型であるのに対して,
引用発明にはこのような限定がない点。
(イ)相違点2
本願補正発明が,画素が表示状態となる期間において,保持電位が対向電極の電
位より低く,画素電極の電位が前記対向電極の電位より低く,共通電極の電位が前
記画素電極の電位より低くなるように,画像信号の電位が設定されてなり,
前記画像信号の電位振幅は,前記共通電極と前記対向電極の間の電圧より小さい
のに対して,引用発明にはこのような限定がない点。
第3原告主張の審決取消事由
審決は,周知事項の認定を誤り(取消事由1),本願補正発明と引用発明の相違
点2の判断を誤り(取消事由2,3),本願発明の要旨の認定を誤り,また,進歩
性判断を誤った(取消事由4)ものであって,違法であるから,取り消されるべき
である。
1取消事由1(周知事項の認定の誤り)
()審決は,「薄膜トランジスタの駆動電圧を低くするという課題は周知の事1
項である。そして,引用発明の第2薄膜トランジスタは保持電位により駆動される
から,保持電位を低くすることは格別のことではない。」(6頁第3段落)と認定
したが,誤りである。
()被告は,「薄膜トランジスタの駆動電圧を低くする」という課題が周知の2
事項であるとする根拠として,特開平6−224391号公報(甲4の1,以下
「甲4の1公報」といい,以下の公報についても同様に略称する。),特開平7−
7156号公報(甲4の2),特開平7−249778号公報(甲4の3),特開
平3−233431号公報(乙1)及び特開平6−260501号公報(乙2。こ
れらの公報を併せて「甲4の1公報等」ともいう。)の記載を挙げる。しかし,上
記各公報は,いずれも,駆動方法の観点から薄膜トランジスタのゲート電圧を低く
するという課題が周知であるということを示すものではなく,薄膜トランジスタの
駆動電圧を低くするという課題は周知の事項であるとの審決の認定は誤りである。
すなわち,甲4の1公報は,「従来のメモリセルは,より高い集積度を得るため
により小さいセル形状を確保する必要があり,このような微細寸法の下地シリコン
基板のトランジスタの特性劣化防止としては,低電圧動作仕様とされる傾向がある。
このとき,薄膜トランジスタには低電圧動作時の大きなオン電流の確保が望まれ,
パターン設計上ではより大きなゲート幅の実現が要求されていた。」(段落【00
10】)との記載からも明らかなように,微細寸法のシリコン基板上に形成される
メモリセルのトランジスタの特性劣化を防止するために,駆動電圧を低くするとい
う技術思想を示しているのであって,一般的に薄膜トランジスタの駆動電圧は低く
するほうが望ましいという技術思想を示しているのではなく,その「低電圧動作」
は,オン電流との関連で説明されているが,オン電流は主としてソースの電圧及び
ゲート電圧,さらにはドレインの電圧にも関係するので,「低電圧動作」が直ちに
ゲート電圧を低くすることを意味することにはならないし,構造的に駆動電圧の低
電圧化を行っているのであって,駆動方法の観点から駆動電圧の低電圧化を行って
いるものではない。
甲4の2公報は,活性層を多結晶シリコン膜で構成したトランジスタについて,
その駆動電圧を低くするという技術思想を示しているのであって,一般的に薄膜ト
ランジスタの駆動電圧は低くするほうが望ましいという技術思想を示しているので
はない。また,甲4の2公報の「このように構成することによって,実効移動度μ
effがきわめて大きくかつしきい値電圧VTおよび動作に要するゲート電圧が十
分小さい電界効果型薄膜トランジスタを提供することができる。」(段落【000
7】)という記載は,製造方法によってトラップの数を低減することにより,構造
的に「ゲート電圧が十分小さい電界効果型薄膜トランジスタ」を得ることを述べて
いるものであり,駆動方法の観点から,低いゲート電圧で駆動することを述べるも
のではない。
甲4の3公報には,トップゲート型TFTがボトムゲート型TFTに比べて低ゲ
ート電圧で十分に動作を行うため,構造的あるいはプロセス上の観点から,トップ
ゲート型TFTにかかる電圧が小さい液晶表示素子の駆動装置を得ることが記載さ
れているのであり,駆動方法の観点から,一般的に薄膜トランジスタの駆動電圧は
低くするほうが望ましいということは示されていない。さらに,その段落【005
0】で述べられている「大きな電圧」は,ゲートに印加される電圧なのかソースあ
るいはドレインに印加される電圧なのか判断できない。乙1公報には,液晶ディス
プレイパネルに用いる薄膜トランジスタにおいて,駆動能力を増大させるためにト
ランジスタのW/Lを増やそうとすると寄生容量Cgsも増大し,液晶ディスプレ
イの特性が劣化するという問題を解決するため(1頁右欄7行∼15行),構造的
な工夫によって,薄膜トランジスタの駆動能力を向上させ,かつ寄生容量Cgsも
低減することが記載されている(2頁右上欄8行∼18行)のであり,駆動方法の
観点から一般的に薄膜トランジスタのゲート電圧を低くするほうが望ましいという
技術思想を示しているのではない。乙2公報は,その段落【0074】において,
ドレイン電圧の低減も考慮されており,低駆動電圧で駆動することが,ゲート電圧
を低くすることであるかを判断することができない。
()引用発明において,薄膜トランジスタには,EL素子の充分な発光強度を3
得るのに必要な電流を確保できる駆動電圧(ゲート電圧)を印加する必要があり,
当業者であれば,このような薄膜トランジスタに印加する駆動電圧は高い方が望ま
しいと考える。これに対し,引用例や甲4の1公報等には,EL素子に流れる電流
を制御する薄膜トランジスタのゲート電圧を低くすることについての記載はない。
2取消事由2(相違点2の判断の誤り1)
()審決は,相違点2の判断に当たり,「保持電位を対向電極の電位より低く1
なるようにすることは,単に保持電位を低くするという以上の技術的意義は認めら
れない。してみると,画素が表示状態となる期間において,保持電位が対向電極の
電位より低くなるように画像信号の電位が設定されてなることは,薄膜トランジス
タの駆動電圧を低くするという周知の課題を勘案すれば当業者が容易に想到し得た
事項である。」(6頁最終段落∼7頁第1段落)としたが,保持電位を対向電極の
電位より低くなるようにすることには,保持電位を低くするという以上の技術的意
義があり,誤った技術的意義の認定に基づき,保持電位が対向電極の電位より低く
なるように画像信号の電位が設定されてなることは当業者が容易に想到し得たとの
判断は誤りである。
(2)「画素が表示状態となる期間において,保持電位が対向電極の電位より低
く」なるように設定することには,以下のような技術的意義がある。
有機EL素子のような電流駆動型の発光素子では,電流により輝度や階調が制御
されるため,液晶素子等のいわゆる電圧駆動型電気光学素子に比べ,わずかな電流
の変動やバラツキ等が顕著に輝度や階調に反映され,電流を高い精度で制御するこ
とが求められる。そのため,基本的には,データ信号と発光素子の輝度を対応させ
るため,発光素子を流れる電流の電流量あるいは電流値を,第2薄膜トランジスタ
のゲート電圧あるいはゲート電圧とソース電圧との電位差のみの関数として変化さ
せることができる飽和領域で動作させることが好ましく,ドレインの電圧をゲート
電圧に対して所定の関係を満たすように設定しておく必要がある。
つまり,非飽和領域では電流IDが,ドレイン電圧Vdとゲート電圧Vgからし
きい値電圧VTを引いた値Vp(=Vg−VT)によって変化するのに対し,飽和
領域ではVpのみを変数として電流IDを制御することが可能であるため,飽和領
域の方が電流を制御しやすく,発光素子の輝度や階調も安定する。
そして,飽和領域では,ゲート電圧Vgとドレイン電圧Vdの差は,常にしきい
値電圧VT以下となって,Vg−VT≦Vdとなり,一方,非飽和領域ではVg−
VT>Vdとなる。
有機EL素子を発光させるのに必要な有機EL素子のしきい値電圧は,典型的に
はおよそ2Vかそれ以上である(本件明細書の8頁15行目∼20行目及び図5)。
したがって,表示状態においては,有機EL素子にかかる電圧Ve(対向電極の電
位)−Vdは少なくとも2V以上である。一方,薄膜トランジスタのしきい値VT
は,一般に有機EL素子のしきい値よりも小さく,典型的には1V∼2V程度であ
る。なお,リーク電流や,ドレイン電圧,動作時間等の影響により,薄膜トランジ
スタを完全にオフ状態にするためには,ゲート電圧は一定程度の大きさの負の値に
なる場合があり(甲5のFig2),−5V程度になる場合もある。これらのこと
から,いずれにしても表示状態においてはVe−Vd≧VT,すなわちVe≧Vd
+VT(式1)となる。
そして,表示状態において,ゲート電圧Vgが対向電極電位Veよりも高く,V
g>Ve(式2)であるとすると,(式1)及び(式2)により,Vg>Vd+V
T,すなわち,Vg−VT>Vdとなる。これは非飽和領域での関係式であり,V
g>Veとした場合,第2薄膜トランジスタは非飽和領域で動作することになる。
したがって,第2薄膜トランジスタを飽和領域で動作させるためには,最低限Vg
≦Veでなくてはならず,ゲート電圧Vgは保持電位と等しいから,保持電位が対
向電極の電位より低くならなければならない。
このように,本願補正発明において,「画素が表示状態となる期間において,保
持電位が対向電極の電位より低く」なるように設定することは,第2薄膜トランジ
スタを飽和領域で動作させるために最低限必要な条件であり,第2薄膜トランジス
タを飽和領域で動作させることは,発光素子に流れる電流が安定し,発光素子の輝
度や階調が安定して,画質の精度の向上に繋がるという技術的意義がある。
なお,本件明細書(甲2の1)の「さらに,本実施例では,表示状態にする画素
に対する信号電位212は,対向電位216と比べて低電位である。上記のように,
画素が表示状態になる期間221において,nチャネル型カレント薄膜トランジス
タ122のオン電流は,保持電位213と共通電位214との電位差に依存し,保
持電位213と対向電位216との電位差には,直接には依存しない。」(10頁
26行目∼11頁2行目)という記載は,信号電位212(保持電位)を対向電位
216と比べて低電位にすることで,nチャネル型カレント薄膜トランジスタ12
2のオン電流を保持電位213と共通電位214との電位差(ゲート電圧)にのみ
依存する状態にすること,すなわち飽和領域で動作させることを表している。そし
て,このことにより,「スイッチング薄膜トランジスタ121や,nチャネル型カ
レント薄膜トランジスタ122において,画質の劣化や,動作の異常や,動作可能
な周波数の低下を招くことなく,駆動電圧の低減を実現できる。」(11頁6行目
∼11頁8行目)のであり,本願補正発明は,十分なオン電流を確保しつつ,本件
明細書の[背景技術]に記載された発明の目的である「薄膜トランジスタの経時劣化
を抑制する」(1頁17行目)ことを可能とするものである。
3取消事由3(相違点2の判断の誤り2)
(1)審決は,「画素が表示状態となる期間において,画像信号の電位振幅は,
共通電極と対向電極の間の電圧より小さいことについて検討する。既述したように,
画素が表示状態となる期間において,保持電位が対向電極の電位より低くなるよう
に画像信号の電位が設定されてなることは,当業者が容易に想到し得た事項である。
そして,保持電位は画像信号の電位にほぼ等しいものと考えられるから,画素が表
示状態となる期間において,画像信号の電位振幅は,共通電極と対向電極の間の電
圧より小さくなるようにすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。」
(7頁第3段落)と認定したが,誤りである。
()前記2のとおり,保持電位が対向電極の電位より低くなるように設定され2
ることに当業者が容易に想到し得るとの審決の判断は誤りであり,誤った判断に基
づき,「画素が表示状態となる期間において,画像信号の電位振幅は,共通電極と
対向電極の間の電圧より小さくなるようにすることは,当業者が容易に想到し得
た」とした審決の判断も誤りである。
()本願補正発明の「前記画像信号の電位振幅は,前記共通電極と前記対向電3
極の間の電圧より小さい」という構成要件には,「画素が表示状態となる期間にお
いて,」との限定はないにもかかわらず,審決は,画素が表示状態となる期間に関
しての進歩性判断しかしておらず,画素が非表示状態となる期間において画像信号
の電位振幅が共通電極と対向電極の間の電圧より小さいこと,すなわち,画素が非
表示状態となる期間において,画像信号電位を共通電極の電位より高くすることに
ついては検討していない。したがって,「画像信号の電位振幅は,共通電極と対向
電極の間の電圧より小さくなるようにすることは,当業者が容易に想到し得た事項
である。」との審決の判断は誤りである。
本願補正発明において,「前記画像信号の電位振幅は,前記共通電極と前記対向
電極の間の電圧より小さい」という構成要件は,画素が表示状態となる期間のみで
はなく,画素が「非表示状態となる期間」も含めて画像信号の電位振幅が共通電極
と対向電極の間の電圧より小さくなることを示していることは,その記載自体から
明らかであり,また,平成16年5月7日付け手続補正書(甲2の9)の「一方,
画素が非表示状態となる期間においては,振幅が共通電極と対向電極の間の電圧よ
りも小さい画像信号における低電位側の画像信号電位に応じて低電位の保持電位が
得られ」との記載からも明らかである。
()被告は,画素が表示状態となる期間について検討したことは,実質的に画4
素が非表示状態となる期間についても検討したことになり,審決の判断に誤りはな
い旨主張し,それを根拠付けるために,非表示状態となる期間における保持電位V
cと共通電極の電位Vfとの電位差はほぼ0ボルトであるという前提(Vc’−V
f≒0)に基づく主張をする。
しかし,本件明細書に,「正置有機EL表示素子131に印加される電圧は,画
素電位215と対向電位216との電位差であるが,図5に示すように,あるしき
い値電圧以下では,オフ状態となり,電流が流れず,発光しない。すなわち,正置
有機EL表示素子131のしきい値電圧を利用することにより,信号電位212が,
共通電位214と比べて,わずかに高電位であり,nチャネル型カレント薄膜トラ
ンジスタ122が,完全にオフ状態にならなくとも,正値有機EL表示素子131
を発光させないことが可能である。」(11頁19行目∼25行目)との記載があ
るように,本願補正発明においては,非表示状態において,画素電極電位と対向電
極電位との電位差が有機EL素子のしきい値電圧以下であれば,第2薄膜トランジ
スタを完全にオフ状態にしなくても,また,Vc’−Vfが第2薄膜トランジスタ
のゲート電圧のしきい値以上であってもよい。すなわち,本願補正発明は,非表示
状態において,一定の条件化で,Vc’−Vf>0としていることが特徴であり,
Vc’−Vf≒0を含むものではない。非表示状態においてVc’−Vf≒0を前
提とする被告の主張は,本願補正発明の上記の特徴を検討しないものであり,誤り
である。
4取消事由4(本願発明の要旨認定の誤り,進歩性判断の誤り)
審決は,本件補正を却下し,「本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」
という。)は,平成15年11月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1
に記載された次のとおりのものと認める。」(8頁第1段落)とした上で,「本願
発明も,同様の理由により,引用例1に記載された発明及び周知の事項に基づいて,
当業者が容易に発明をすることができたものである。」(同頁第4段落)と認定判
断したが,本願補正発明を当業者が容易に発明することができたとして,本件補正
を却下したことは誤っているから,誤った結論に基づく上記認定判断も誤りである。
また,本願発明についての審決の進歩性判断は,本願補正発明についての進歩性
判断と同様の理由により,誤りである。
第4被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1取消事由1(周知事項の認定の誤り)に対して
()原告は,薄膜トランジスタの駆動電圧を低くするという課題は周知の事項1
であるとした審決の認定が誤っている旨主張するが,失当である。
()甲4の1公報には,「薄膜トランジスタには低電圧動作時の大きなオン電2
流が望まれ」(段落【0010】)との記載があり,薄膜トランジスタの駆動電圧
を低くすること(ゲート電圧を十分小さくすること)が開示されている。甲4の2
公報には,「しきい値電圧Vおよび動作に要するゲート電圧が十分小さい電界効T
果型薄膜トランジスタを提供することができる。」(段落【0007】)との記載
があり,薄膜トランジスタの駆動電圧を低くすること(ゲート電圧を十分小さくす
ること)が開示されている。甲4の3公報には,「低ゲート電圧で十分に動作を行
う」(段落【0050】)との記載があり,薄膜トランジスタの駆動電圧を低くす
ること(ゲート電圧を十分小さくすること)が開示されている。乙1公報には,
「また,一方で駆動能力の増大は駆動ゲートパルス振幅の低減をも可能にする。上
記実施例では駆動ゲートパルス電圧の振幅を半分程度に低くすることができる。」
(3頁左下欄16行目∼20行目)との記載があり,薄膜トランジスタの駆動電圧
を低くすること(ゲート電圧を十分小さくすること)が開示されている。乙2公報
には,「ゲート電圧の低電圧化」(段落【0074】)との記載があり,薄膜トラ
ンジスタの駆動電圧を低くすること(ゲート電圧を十分小さくすること)が開示さ
れている。
したがって,甲4の1公報等には,薄膜トランジスタの駆動電圧を低くすること
(ゲート電圧を十分小さくすること)が開示されている。
そして,薄膜トランジスタをオンするためには,薄膜トランジスタの駆動電圧
(ゲート電圧)をゲート電圧のしきい値よりも低くすることはできないので,駆動
方法において薄膜トランジスタの駆動電圧を低くする(ゲート電圧を十分小さくす
る)ためには,薄膜トランジスタのゲート電圧のしきい値を低くすることが必要で
ある。つまり,構造的に薄膜トランジスタの駆動電圧を低くすること(ゲート電圧
を十分小さくすること)は,駆動方法において薄膜トランジスタの駆動電圧を低く
すること(ゲート電圧を十分小さくすること)を目的としたものであり,構造的に
薄膜トランジスタの駆動電圧を低くすること(ゲート電圧を十分小さくすること)
によって,駆動方法において薄膜トランジスタの駆動電圧を低くすること(ゲート
電圧を十分小さくすること)が可能となるのであり,駆動方法において薄膜トラン
ジスタの駆動電圧を低くすることは周知の課題であったといえる。
()原告は,当業者であれば,薄膜トランジスタに印加する駆動電圧は高い方3
が望ましいと考えるの対し,引用例,甲4の1公報等には,EL素子に流れる電流
を制御する薄膜トランジスタのゲート電圧を低くすることについての記載はない旨
主張する。
しかし,引用発明において,画素が表示状態となる期間,発光素子は発光してい
るのであるから,第2薄膜トランジスタはオンしており,第2薄膜トランジスタが
オンするようなゲート電圧が印加されているのであり,画素が発光状態になる期間
においては,第2薄膜トランジスタがオンするようにゲート電圧を設定すればよい
ことは明らかである。原告は,当業者であれば,このような薄膜トランジスタに印
加する駆動電圧は高い方が望ましいと考える旨主張するが,画素が発光状態になる
期間においては,第2薄膜トランジスタがオンするようにゲート電圧を設定すれば
よいのであるから,失当である。
2取消事由2(相違点2の判断の誤り1)に対して
()原告は,本件発明において「画素が表示状態となる期間において,保持電1
位が対向電極の電位より低く」なるように設定することは,第2薄膜トランジスタ
を飽和領域で動作させるために最低限必要な条件であり,技術的意義がある旨主張
する。
()第2薄膜トランジスタのゲート電圧,ドレイン電圧(発光素子131に接2
続した電極の電圧)は,それぞれ保持電位Vc,画素電極の電位Vdである。また,
第2薄膜トランジスタのしきい値電圧をVTすると,第2薄膜トランジスタの飽和
領域では,Vc−VT≦Vd(式a)となる。
ここで,発光素子131の電位差をVel,対向電極の電位をVeとすると,V
el=Ve−Vdであるから,Vc−VT≦Ve−Vel(式b)となる。
一方,本願補正発明においては,保持電位Vcが対向電極の電位Veより低く設
定されているので,Vc<Ve(式c)となる。
式bと式cとの対比からも,Vc−VTとVe−Velとの大小関係は,Vcと
Veの値だけでなくVTとVelの値にも依存する。しかし,本願補正発明におい
ては,第2薄膜トランジスタのしきい値電圧の記載も発光素子の電位差の記載もな
い。したがって,本願補正発明において,保持電位が対向電極の電位より低くなる
ように設定すると第2薄膜トランジスタを飽和領域で動作するという主張は,特許
請求の範囲の記載に基づく主張ということはできない。
()本願補正発明において,第2薄膜トランジスタを飽和領域で動作させるこ3
とは,特許請求の範囲に記載されたものでない。本件明細書(甲2の1)をみても,
本件明細書には,「画素が表示状態となる期間221において,nチャネル型カレ
ント薄膜トランジスタ122のオン電流は,保持電位213と共通電位214との
電位差に依存し,保持電位213と対向電位216との電位差には,直接には依存
しない。」(10頁28行目∼11頁2行目)との記載があり,飽和領域となるか
非飽和領域となるかは,VcとVeのみならずVTとVelにも依存するので,薄
膜トランジスタのオン電流は,保持電位213と対向電位216との電位差には,
直接には依存せず,本件明細書の上記記載が,第2薄膜トランジスタを飽和領域で
動作させることを意味しているとはいえない。また,本件明細書においては,第2
薄膜トランジスタのしきい値電圧VTの具体的な記載はなく,第2薄膜トランジス
タを飽和領域で動作させることが記載されているとはいえない。
()薄膜トランジスタを飽和領域で動作させることは,従来周知の技術事項で4
あり,また,引用例の【0013】にも記載されているから,引用発明は,薄膜ト
ランジスタを飽和領域で動作させるという観点からも,本願補正発明と大きく異な
っているとはいえない。そして,薄膜トランジスタの駆動電圧を低くするという課
題は周知の事項であるから,飽和領域で動作させるため,ドレイン電圧を高くしす
ぎて薄膜トランジスタの経時劣化を招くことのないように,ゲート電圧(保持電
位)を低くすることは,当業者が当然考慮すべき事項である。
したがって,引用発明においても,ゲート電圧(保持電位)を低くすることによ
って,Vc<Veとすることは当業者が容易に想到し得た事項であり,薄膜トラン
ジスタを飽和領域で動作させるという観点からも,画素が表示状態となる期間にお
いて,保持電位が対向電極の電位より低くなるように画像信号の電位が設定されて
なることは,薄膜トランジスタの駆動電圧を低くするという周知の課題を勘案すれ
ば当業者が容易に想到し得た事項である。
3取消事由3(相違点2の判断の誤り2)に対して
()原告は,本願補正発明の「前記画像信号の電位振幅は,前記共通電極と前1
記対向電極の間の電圧より小さい」という構成要件には,「画素が表示状態となる
期間において,」との限定はないにもかかわらず,審決は,画素が表示状態となる
期間に関しての進歩性判断しかしていないとして,審決の判断を争うが,失当であ
る。
()EL素子が発光する表示状態となる期間について,表示状態となる期間に2
おける保持電位Vcは表示状態となる期間,データ線の画像信号の電位Vbとほぼ
等しくなる(Vb≒Vc(式①))。そして,画素が表示状態となる期間において,
保持電位Vcが対向電極の電位Veより低くなるように設定されている(Vc<V
e(式②))。そして,式①,②により,画素が表示状態となる期間において,画
像信号の電位と共通電極の電位Vfとの電位差Vb−Vfは,共通電極と対向電極
の間の電圧Ve−Vfより小さいことが示される(Vb−Vf<Ve−Vf(式
③))。
EL素子が非発光となる非表示状態になる期間について,保持電位Vc’は非表
示状態となる期間データ線の画像信号の電位Vb’とほぼ等しくなる(Vb’≒V
c’(式④))。そして,対向電極の電位Veと画素電極の電位Vdとの間にEL
素子に電流が流れないよう電位差が小さいことが必要であり,画素電極の電位Vd
を対向電極の電位Veに近くすることで,対向電極の電位Veと画素電極の電位V
dとの電位差を小さくする。そのためには,第2薄膜トランジスタのドレイン・ソ
ース間に電流が流れないように,保持電位Vc’と共通電極の電位Vfとの電位差
を第2薄膜トランジスタのゲート電圧のしきい値より小さくすればよい。通常,ゲ
ート電圧をほぼ0ボルトとするのが一般的であるので,保持電位Vc’と共通電極
の電位Vfとの電位差はほぼ0ボルト(Vc’−Vf≒0(式⑤))となり,Vb
’≒Vf(式⑥)となる。そして,画像信号の電位振幅と,共通電極と対向電極の
間の電圧の関係式は,Vb−Vb’<Ve−Vf(式⑦)となる。すなわち,画素
が表示状態となる期間において,保持電位が対向電極の電位より低くなるように設
定されている(式①,②)ならば,画素が表示状態となる期間において,画像信号
の電位と共通電極の電位との電位差は,共通電極と対向電極の間の電圧より小さく
なり(式③),画像信号の電位振幅は,共通電極と対向電極の間の電圧より小さく
なる(式⑦)。
画素が表示状態となる期間における画像信号の電位と共通電極の電位との電位差
Vb−Vfは,画像信号の電位振幅Vb−Vb’にほぼ等しいものであり,画素が
表示状態となる期間における画像信号の電位と共通電極の電位との電位差Vb−V
fを検討すれば,画素が表示状態となる期間における画像信号の電位と画素が非表
示状態となる期間における画像信号の電位の電位振幅が明らかとなる。
そして,画素が表示状態となる期間において,保持電位が対向電極の電位より低
くなるように設定されることは,当業者が容易に想到し得た事項であるから,画素
が表示状態となる期間において,画像信号の電位と共通電極の電位との電位差は共
通電極と対向電極の間の電圧より小さくなるようにすることも当業者が容易に想到
し得た事項であり,また,画像信号の電位振幅は共通電極と対向電極の間の電圧よ
り小さくなるようにすることも当業者が容易に想到し得た事項である。
()原告は,本願補正発明は,非表示状態において,一定の条件化でVc’−3
Vf>0としていることが特徴であり,Vc’−Vf≒0との状態は含まれない旨
主張するが,これは,特許請求の範囲の記載に基づくものではなく,画素が非表示
状態となる期間において,画像信号の電位は,通常,共通電極の電位とほぼ等しい。
4取消事由4(本願発明の要旨認定の誤り,進歩性判断の誤り)に対して
原告は,本件補正を却下したことが誤りであることを前提として,本願発明の要
旨認定の誤りを主張するが,本願補正発明は当業者が容易に想到し得たものであり
本件補正を却下すべきであるとした審決の結論に誤りはなく,失当である。また,
原告は,本願補正発明と同様,本願発明に進歩性が認められる旨主張するが,本願
発明も,引用発明及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることがで
きたものであるから,失当である。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(周知事項の認定の誤り)について
()審決が,「薄膜トランジスタの駆動電圧を低くするという課題は周知の事1
項である。そして,引用発明の第2薄膜トランジスタは保持電位により駆動される
から,保持電位を低くすることは格別のことではない。」(6頁第3段落)とした
のに対し,原告は,「薄膜トランジスタの駆動電圧を低くする」という課題が周知
の事項であるとの認定を争う。
()薄膜トランジスタの駆動電圧について,本件優先日当時の技術水準につい2
て検討する。
甲4の1公報には,「【発明が解決しようとする課題】この従来のメモリセルは,
より高い集積度を得るためにより小さいセル形状を確保する必要があり,このよう
な微細寸法の下地シリコン基板のトランジスタの特性劣化防止としては,低電圧動
作仕様とされる傾向がある。このとき,薄膜トランジスタには低電圧動作時の大き
なオン電流の確保が望まれ,パターン設計上ではより大きなゲート幅の実現が要求
されていた。従来例のような配置では,セル形状の短辺寸法と薄膜トランジスタの
ゲート幅の設計が関連しているために配置が制約されるという問題点があった。」
(段落【0010】,【0011】)との記載がある。
甲4の2公報には,「【発明の目的】本発明は,上述の問題にかんがみ,実効移
動度μeffがきわめて大きくかつしきい値電圧Vおよび動作に要するゲート電T
圧が十分小さいMOSTFTなどの電界効果型薄膜トランジスタを提供すること
を目的とする。」(段落【0005】)との記載がある。
甲4の3公報には,「次に上記トップゲート型TFT3をnチャネルおよびpチ
ャネルトップゲート型TFTとし形成したもののドレイン電流とゲート電圧の関係
を,図2のドレイン電流−ゲート電圧特性図によって説明する。なお,nチャネル
およびpチャネルトップゲート型TFTともに,半導体層12はキセノンクロライ
ド(XeCl)エキシマレーザ光を照射するレーザ結晶化法によって多結晶化した
ものであり,また第2絶縁膜31はリモートプラズマCVD法によって形成したも
のである。図に示すように,nチャネルおよびpチャネルトップゲート型TFTと
もに,シャープな立ち上がり特性を示した。この特性から,キャリア移動度は,n
チャネルトップゲート型TFTが570cm/Vs,pチャネルトップゲート型2
TFTが400cm/Vsになり,しきい値電圧は,nチャネルトップゲート型2
TFTが1.2V,pチャネルトップゲート型TFTが−1.5Vになった。この
結果,トップゲート型TFT3はnチャネルのものおよびpチャネルのもの共に低
電圧で高速動作することがわかった。」(段落【0036】,【0037】),
「液晶の偏向特性を変化させるには,通常5V程度の電圧が必要になる。またTF
Tの動作電圧は,通常10V∼15Vである。ところが,上記説明したトップゲー
ト型TFTは,前記図2に示したように,低ゲート電圧で十分に動作を行う。この
ようなトップゲート型TFTに大きな電圧を印加すると過剰な電流が流れてTFT
の特性を劣化させることになる。」(段落【0050】)との記載がある。
乙1公報には,「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的はTFTの構造
の変更によってCgsの低減を実現することにあり,ディスプレイパネル上の直流
電圧成分の発生を抑えることである。本発明の別の目的はTFTの相互コンダクタ
ンスの実効的増大であり,駆動ゲート電圧の振幅低減である。[課題を解決するた
めの手段]上記目的を達成するために,薄膜トランジスタのドレイン電極(ソース
電極)をソース電極(ドレイン電極)に対向してU型もしくはL型に配置したもの
である。」(2頁左上欄14行目∼右上欄6行目),「【発明の効果】本発明によ
れば薄膜トランジスタのCgsをW/Lを減らすことなく低減できる。このためこ
のトランジスタを液晶ディスプレイパネルに用いたとき,画素液晶の駆動能力を増
大させるとともにCgsによる直流電圧成分の発生を低く抑えることができるとい
う効果を持つ。このことは液晶パネルの特性劣化を防ぐのに大きな効果を有する。
Cgsを一定としたときトランジスタの駆動能力は大幅に改善される。これは電圧
書込率の改善を可能にするものである。また,一方で駆動能力の増大は駆動ゲート
パルス振幅の低減をも可能にする。上記実施例では駆動ゲートパルス電圧の振幅を
半分程度に低くすることができる。直流電圧成分の大きさはゲート電圧振幅に比例
するので,Cgsが小さいこととゲート電圧が低いことが二重効果となって働き,
パネルの特性劣化を防止する効果を持つ。すなわち液晶の信頼性の向上や焼付きの
低減等の効果を持つものである。」(3頁左下欄6行目∼右下欄5行目)との記載
がある。
()上記()によれば,本件優先日当時,ゲート電圧を小さくし,駆動電圧を32
小さくした電界効果型薄膜トランジスタが知られていたこと,そのようなトランジ
スタにおいて,トランジスタの特性の劣化を防止でき(甲4の1公報),高速動作
が可能になること(甲4の3公報)が知られていたと認めることができる。
そして,表示装置を含めた駆動回路においては,可能であれば,消費電力を少な
くすることは当然の技術的課題であるというべきであることも併せ考えると,駆動
電圧を小さくした電界効果型薄膜トランジスタが知られ,そのようなトランジスタ
において,トランジスタの特性の劣化を防止でき,高速動作が可能になることが知
られていたとき,電界効果型薄膜トランジスタを用いた回路において,ゲート電圧
を低くすることが可能な薄膜トランジスタを採用して,電界効果型薄膜トランジス
タの駆動電圧を小さなものとすることは,当業者が当然なし得る程度の設計的事項
というべきものである。
したがって,引用発明の第2薄膜トランジスタにおいて,ゲート電圧を低くする
ことが可能な薄膜トランジスタを採用して,駆動電圧である保持電位を十分小さい
電圧となるようにすることは,当業者が通常なし得る程度のことであると認められ
るから,「引用発明の第2薄膜トランジスタは保持電位により駆動されるから,保
持電位を低くすることは格別のことではない。」(6頁第3段落)とした審決の結
論に,原告主張の誤りはない。
()原告は,被告が周知技術として掲げる甲4の1公報等は,いずれも,駆動4
方法の観点から薄膜トランジスタのゲート電圧を低くするという課題が周知である
ということを示しているものではない旨主張している。
しかし,前記()のとおり,本件優先日当時,ゲート電圧を小さくし,駆動電圧3
を小さくした電界効果型薄膜トランジスタが知られていたことなどに,表示装置を
含めた駆動回路における技術課題を併せ考慮すると,引用発明において,ゲート電
圧を低くすることが可能な薄膜トランジスタを採用して,保持電位を低くするよう
にすることは当業者が通常なし得る程度のことといえ,このことは,甲4の1公報
等に駆動方法の観点から薄膜トランジスタのゲート電圧を低くするという課題その
ものが記載されているか否かに左右されるものではないから,原告の主張は,採用
の限りではない。
また,原告は,トランジスタには,EL素子の充分な発光強度を得るのに必要な
電流を確保できる駆動電圧(ゲート電圧)を印加する必要があり,当業者であれば,
薄膜トランジスタに印加する駆動電圧は高い方が望ましいと考える旨主張する。し
かし,画像表示装置において,必要な駆動電流を得ることが望まれているとしても,
必要な範囲において駆動電流を得ることができればよいのであり,消費電力との関
係に照らしても,当業者が薄膜トランジスタに印加する駆動電圧を高い方が望まし
いと考えるものであると認めることはできない。
()したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。5
2取消事由2(相違点2の判断の誤り1)について
(1)審決が,相違点2の容易想到性判断に当たり,「保持電位を対向電極の電
位より低くなるようにすることは,単に保持電位を低くするという以上の技術的意
義は認められない。してみると,画素が表示状態となる期間において,保持電位が
対向電極の電位より低くなるように画像信号の電位が設定されてなることは,薄膜
トランジスタの駆動電圧を低くするという周知の課題を勘案すれば当業者が容易に
想到し得た事項である。」(6頁最終段落∼7頁第1段落)としたのに対し,原告
は,その認定を争い,本願補正発明において「画素が表示状態となる期間において,
保持電位が対向電極の電位より低く」なるように設定することは,単に保持電位を
低くする以上の技術的意義がある旨主張する。
()本願補正発明は,特許請求の範囲の記載に照らし,保持電位を対向電極の2
電位よりも低くするものである。
この技術的意義についてみると,本件明細書(甲2の1)には,「さらに,本実
施例では,表示状態にする画素に対する信号電位212は,対向電位216と比べ
て低電位である。上記のように,画素が表示状態になる期間221において,nチ
ャネル型カレント薄膜トランジスタ122のオン電流は,保持電位213と共通電
位214との電位差に依存し,保持電位213と対向電位216との電位差には,
直接には依存しない。そこで,nチャネル型カレント薄膜トランジスタ122にお
いて十分大きなオン電流を確保しながら,保持電位213,すなわち,表示状態に
する画素に対する信号電位212を,対向電位216よりも低電位にすることが可
能となり,ひいては,信号電位212の振幅や,走査電位211の振幅を低減する
ことが可能となる。すなわち,スイッチング薄膜トランジスタ121や,nチャネ
ル型カレント薄膜トランジスタ122において,画質の劣化や,動作の異常や,動
作可能な周波数の低下を招くことなく,駆動電圧の低減を実現できる。」(10頁
26行目∼11頁8行目)との記載がある。
これによれば,本件明細書には,nチャネル型カレント薄膜トランジスタ122
のオン電流は,保持電位213と対向電位216との電位差に直接には依存しない
ため,保持電位を低くすることができるとされている。そして,ここで,対向電位
に比し保持電位を低くすることにより奏するとされる,「画質の劣化や,動作の異
常や,動作可能な周波数の低下を招くことなく」という効果は,「保持電位213
をより低電位にすることが可能となり,信号電位212の振幅,ひいては,走査電
位211の振幅を低減することが可能となる。」(本件明細書の10頁20行目∼
22行目)ことによる,「スイッチング薄膜トランジスタ121や,nチャネル型
カレント薄膜トランジスタ122において,画質の劣化や,動作の異常や,動作可
能な周波数の低下を招くことなく,駆動電圧の低減を実現できる。」との効果(同
頁22行目∼25行目)と同様のものであると記載され,他に本件明細書において,
技術的意義についての記載がないことからも,その技術的意義は,保持電位を低く
することに尽きるものと認められる。
したがって,「保持電位を対向電極の電位より低くなるようにすることは,単に
保持電位を低くするという以上の技術的意義は認められない。」(6頁最終段落∼
7頁第1段落)とした審決に原告主張の誤りは認められない。
そして,前記1のとおり,薄膜トランジスタの駆動電圧が十分小さい電圧となる
ようにすることは,当業者が通常なし得る程度のことと認められるから,「画素が
表示状態となる期間において,保持電位が対向電極の電位より低くなるように画像
信号の電位が設定されてなることは,薄膜トランジスタの駆動電圧を低くするとい
う周知の課題を勘案すれば当業者が容易に想到し得た事項である。」(7頁第1段
落)とした審決に,誤りは認められない。
()原告は,本願補正発明の「画素が表示状態となる期間において,保持電位3
が対向電極の電位より低くなる」ように設定することは,第2薄膜トランジスタを
飽和領域で動作させるための条件であるという技術的意義がある旨主張する。すな
わち,原告は,ドレイン電圧(画素電極電位)をVd,ゲート電圧をVg,薄膜ト
ランジスタのしきい値電圧をVTとした場合において,Vg−VT≦Vdであり,
対向電極の電位をVeとすると,本願補正発明においては,有機EL素子のしきい
値電圧は,少なくとも2V以上であって,Ve−Vdは,表示状態においては少な
くとも2V以上であること,薄膜トランジスタのしきい値VTは,1∼2V程度で
あることであることから,本願補正発明は,表示状態において,Ve−Vd≧VT
となるから,Ve≧Vd+VTとなり,Vg>Veとなると,Vg>Vd+VT,
Vg−VT>Vdとなって,第2薄膜トランジスタが非飽和領域で動作することと
なってしまうから,それが飽和領域で動作するためには,最低限Vg≦Veである
ことが必要である,と主張するのである。
ここで,保持電位を対向電極の電位よりも低く設定することが,第2薄膜トラン
ジスタが飽和領域で動作するために最低限必要な条件であるとの技術的意義を有す
るとの記載は本件明細書にないだけでなく,原告の上記主張は,本願補正発明の
「発光素子」が「有機EL素子」であり,しきい値電圧が少なくとも2V以上であ
ることを前提とするものである。しかし,本願補正発明の特許請求の範囲の記載は,
前記第2の2()のとおりであり,その発光素子は,電流駆動型のものであるとい2
う以上の特定がされていないこと,発光素子のしきい値が規定されていないことは
明らかである。また,本件明細書(甲2の1)においても,「また上述の実施例は,
発光素子として有機EL素子を用いて説明したが,有機EL表示素子に限らず,無
機EL素子あるいはその他の電流駆動型発光素子にも適用可能であることは言うま
でもない。」(16頁13行目∼15行目),「〔産業上の利用分野〕本発明に係
わる表示装置は,有機EL表示素子,無機EL素子等の各種の電流駆動型発光素子
とこれを駆動する薄膜トランジスタ等のスイッチング素子とを備えた表示装置とし
て利用可能である。」(同頁16行目∼19行目)との記載があり,本願補正発明
の「発光素子」は,「有機EL素子」に限定されない電流発光素子であるとされて
いて,本願補正発明の「発光素子」は,「有機EL素子」以外の電流駆動型の発光
素子を含むものと認められる。そして,そのようなすべての電流駆動型の発光素子
について,そのしきい値電圧の値が2V以上であると認めるに足りる証拠はないし,
本願補正発明において,発光素子のしきい値が特定されているとは認められない。
そうすると,原告の上記主張は,前提を欠くというほかなく,採用の限りではない。
()したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。4
3取消事由3(相違点2の判断の誤り2)について
(1)審決が,「画素が表示状態となる期間において,保持電位が対向電極の電
位より低くするように画像信号の電位が設定されてなることは,当業者が容易に想
到し得た事項である。そして,保持電位は画像信号の電位にほぼ等しいものと考え
られるから,画素が表示状態となる期間において,画像信号の電位振幅は,共通電
極と対向電極の間の電圧より小さくなるようにすることは,当業者が容易に想到し
得た事項である。」(7頁第3段落)としたのに対し,原告は,保持電位が対向電
極の電位より低くするように設定されることに当業者が容易に想到し得るとの審決
の判断は誤りであるから,「画素が表示状態となる期間において,画像信号の電位
振幅は,共通電極と対向電極の間の電圧より小さくなるようにすることは,当業者
が容易に想到し得た事項である。」との審決の判断も誤りである旨主張する。
しかし,前記2のとおり,保持電位が対向電極の電位より低くするように設定さ
れることに当業者が容易に想到し得るとの審決の判断に誤りはなく,原告の主張は
失当である。
()原告は,本願補正発明の「前記画像信号の電位振幅は,前記共通電極と前2
記対向電極の間の電圧より小さい」という構成要件には,「画素が表示状態となる
期間において,」との限定はないにもかかわらず,審決は,画素が表示状態となる
期間に関しての進歩性判断しか行っておらず,審決の認定が誤りである旨主張する。
前記第2の2()の本願補正発明の特許請求の範囲の記載によれば,本願補正発2
明は,「前記画像信号の電位振幅は,前記共通電極と前記対向電極の間の電圧より
小さい」というものであるところ,その「前記画像信号の電位振幅」とは,表示状
態の画像信号の電位と非表示状態の画像信号の電位の電位差の大きさであると解さ
れ,「前記共通電極と前記対向電極の間の電圧」は,共通電極と対向電極との間の
電位差のことであると解される。
ここで,上記()のとおり,引用発明において,画素の表示期間についてみると,1
保持電位が対向電極の電位よりも低くなるものとすることは,容易になし得ること
であるといえる。そして,画素の表示期間においては,画像信号の電位は,保持電
位とほぼ等しいものと認められることからすると,画像信号の電位は対向電極の電
位より低いと認められる。次に,画素の非表示期間についてみると,発光素子に電
流を流さないようにするためには,薄膜トランジスタをオフ状態とする必要がある
ところ,薄膜トランジスタをオフ状態とするには,通常,ゲート,ソース間電圧を
等しくすればよく,ゲート電圧と等しい保持電位をソース電圧と等しい共通電極の
電位と同程度とすることにより,薄膜トランジスタがオフ状態となる(乙3,4。
なお,本件明細書の図4参照)。
そして,このような場合の表示状態の画像信号の電位と非表示状態の画像信号の
電位差についてみると,表示期間においては,対向電極の電位よりも小さな電位で
あり,非表示期間においては,共通電極とほぼ同じ電位といえるから,画像信号の
電位振幅は,対向電極と共通電極の間の電圧より小さくなるものであるといえる。
そうすると,画像表示状態において,引用発明の保持電位を対向電極の電位より
も小さくすることで,当業者が通常,試みるような条件において,画像信号の電位
振幅は,前記共通電極と前記対向電極の間の電圧より小さくなるのであるから,相
違点2に係る本願補正発明の構成につき,当業者は容易に想到することができたと
認めることが相当であり,この点についての審決は結論において誤りがない。
()原告は,本願補正発明は,非表示状態において,画素電極の電位と対向電3
極の電位との電位差が有機EL素子のしきい値電圧以下であれば,第2薄膜トラン
ジスタを完全にオフ状態にしなくてもよいし,また,保持電位Vc’と共通電極の
電位について,Vc’−Vfが第2薄膜トランジスタのゲート電圧のしきい値以上
であってもよく,本件補正発明は,非表示状態において,一定の条件下でVc’−
Vf>0としていることが特徴である旨主張する。
しかし,特許請求の範囲の記載に照らし,本願補正発明において,そのようなし
きい値電圧に係る構成が規定されているものではないことは明らかであり,また,
有機EL素子についてしきい値が認められるとしても,前記2のとおり,本願補正
発明は有機EL素子を前提としたものとは認められない。原告は,本件明細書に,
「正置有機EL表示素子131に印加される電圧は,画素電位215と対向電位2
16との電位差であるが,図5に示すように,あるしきい値電圧以下では,オフ状
態となり,電流が流れず,発光しない。すなわち,正置有機EL表示素子131の
しきい値電圧を利用することにより,信号電位212が,共通電位214と比べて,
わずかに高電位であり,nチャネル型カレント薄膜トランジスタ122が,完全に
オフ状態にならなくとも,正値有機EL表示素子131を発光させないことが可能
である。」(11頁19行目∼25行目)との記載があることを主張の根拠として
掲げる。しかし,上記は,一実施例についての説明であり,前記2()のとおり,本3
願補正発明の発光素子は有機EL素子に限定されるものではなく,「しきい値電圧
を利用」することに係る構成は,特許請求の範囲には記載はないから,本願補正発
明が,「しきい値電圧を利用」するものであるとの構成を前提とする主張は,特許
請求の範囲には記載されておらず,明細書の実施例に初めて登場する構成を特許出
願に係る発明の構成として取り込もうとするものにほかならず,採用することがで
きない。
()したがって,原告主張の取消事由3は理由がない。4
4取消事由4(本願発明の要旨認定の誤り,進歩性判断の誤り)について
審決は,本件補正を却下し,「本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」
という。)は,平成15年11月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1
に記載された次のとおりのものと認める。」(8頁第1段落)とした上で,「本願
発明も,同様の理由により,引用例1に記載された発明及び周知の事項に基づいて,
当業者が容易に発明をすることができたものである。」(同頁第4段落)と認定判
断したが,原告は,本願補正発明を当業者が容易に発明することができたとして本
件補正を却下したことが誤っているとして,審決の認定判断が誤りである旨主張し,
また,審決の本願発明についての進歩性判断は,本願補正発明についての進歩性判
断と同様の理由により,誤りである旨主張する。
しかし,前記1ないし3のとおり,本願補正発明について,引用発明及び周知の
事項に基づいて当業者が容易に想到することができたとの審決の認定判断に誤りは
ないから,原告の主張は前提を欠くものである。
したがって,原告主張の取消事由4は理由がない。
5以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は理由
がないから棄却することとする。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官塚原朋一
裁判官柴田義明
裁判官澁谷勝海

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛