弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1被告は,原告に対し,113万7900円及びこれに対する平成19年
1月28日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2原告のそのほかの請求を棄却する。
,,。3訴訟費用はその20分の1を被告20分の19を原告の負担とする
4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,2069万6825円及びこれに対する平成19
年1月28日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5パーセントの割
合による金員を支払え。
第2事案の概要
1本件は,大学医学部の受験生である原告が,大学医学部受験を専門とす
る大学受験予備校に入学したのに,大学医学部の入学試験に合格できる程
度の講義を受けられなかったとして,この予備校を開設している被告に対
し,受講契約に基づく債務不履行に基づいて,原告が被った損害の賠償を
求めた事案である。
2前提事実(認定に用いた証拠などは末尾に掲げる)。
(1)当事者など
ア原告は,大学医学部への進学を希望する受験生である。Aはその母
親である。
イ被告は,東京都内に,大学医学部及び歯学部受験専門とする大学受
験予備校であるB医学院を開設する株式会社である。C講師は,B医
学院で,英語担当の講師を務めていた被告の従業員である。
(2)本件各受講契約(甲1,2,乙8)
アAは,平成15年12月,当時未成年者(高校3年生)だった原告
を代理して,被告との間で,冬期講習会,合宿特訓(冬期)の受講契
約(以下「本件受講契約1」という)を締結した。。
イAは,平成16年3月,当時未成年者だった原告を代理して,被告
との間で,本科(高校卒業者を対象とするコース)の基礎強化特訓コ
ース,特設科(大学医学部受験を希望する全受講生を対象とするコー
)(「」。)スの個別特訓コースの受講契約以下本件受講契約2という
を締結した。
ウAは,同年7月,当時未成年者だった原告を代理して,被告との間
で,夏期講習会,合宿特訓(夏期)の受講契約(以下「本件受講契約
3」という)を締結した。。
エAは,同年12月,当時未成年者だった原告を代理して,被告との
間で,冬期講習会の受講契約(以下「本件受講契約4」という)を。
締結した。
オAは,平成17年4月,当時未成年者だった原告を代理して,被告
との間で,特設科の完全個別指導科の受講契約(以下「本件受講契約
5」という)を締結した。。
カAは,同年8月,当時未成年者だった原告を代理して,被告との間
で,夏期講習会の受講契約(以下「本件受講契約6」といい,本件受
講契約1ないし5とまとめて「本件各受講契約」という)を締結し。
た。
キ原告は,被告に対し,本件各受講契約に基づく受講料として,合計
1122万4825円を支払った。
(3)英語の講義の状況
ア原告が本件各受講契約に基づいて受講した英語の担当講師は,平成
17年7月まで,いずれもC講師だった。
イC講師には,遅くても,平成17年4月以降の完全個別指導科の英
,,,語の講義で遅れて講義を始めたり講義を途中で打ち切って外出や
受講生を連れての散歩や食事(中抜け)をしたり,講義時間中に学習
に関係ない話を長々続けたり,受講生の私的な情報をほかの受講生に
話し,受講生の関係を悪くさせるなど,講義態度に問題がみられてい
た。
ウC講師は,平成17年9月3日,被告から解雇された。
(4)原告の通学状況
ア原告は,高校卒業後,Aが原告を代理して賃借した東京都杉並区内
のDマンションから,B医学院に通っていた。
イ原告は,平成17年11月20日以降,B医学院に通っていない。
3争点及び主張
(1)被告には本件各受講契約に基づく債務の不履行があったか。
(原告の主張)
ア被告には,本件各受講契約に基づいて,原告に対し,大学医学部の
入学試験に合格できる程度の講義をする義務がある。
イ(ア)ところが,C講師は,冬期講習会,合宿特訓(冬期(本件受)
講契約1)での英語の講義のときから,講義時間中に学習に関係な
い話を長々続けたり,受講生の私的な情報をほかの受講生に話し,
受講生の関係を悪くさせる,完全個別指導科(本件受講契約5)で
の英語の講義のときになると,遅れて講義を始めたり,講義の途中
で打ち切って外出や食事(中抜け)をしたり,教材にゴシップ紙を
使用したり,その場しのぎの計画性のない講義をするようになるな
ど,その講義態度には終始問題がみられており,大学医学部の入学
試験に合格できる程度の講義をしてこなかった。
原告が,C講師から英語の講義を受け続けたのは,被告代表者,
C講師が「今年こそは誠意をもって面倒をみる「今年は絶対合。」,
格させるから」といわれて,そのことばを信じたからであり,平。
成17年4月以前の講義には問題がなかったからではない。
(イ)そして,基礎強化特訓コース(本件受講契約2)は,いわゆる
,,コースでの受講であり原告には教科を選択する自由はなかったし
,,。実際に英語を除いてこのコースを受講することも考えられない
したがって,基礎強化特訓コースの重要な部分である英語の講義に
債務不履行があった以上,このコース全体の講義が,本件受講契約
2に基づく義務に違反したものになる。
また,冬期講習会,合宿特訓(冬期(本件受講契約1,夏期講))
習会,合宿特訓(夏期(本件受講契約3,冬期講習会(本件受講))
契約4)では,原告は教科を選択することはできるが,実際に,大
学医学部の入学試験の中心科目である英語を除いて,これらの講習
会などを受講することも考えられない。したがって,これらの講習
会などの重要な部分である英語の講義に債務不履行があった以上,
これらの講習会などの全体の講義が,本件受講契約1,3,4に基
づく義務に違反したものになる。
さらに個別特訓コース本件受講契約2完全個別指導科本,(),(
件受講契約5)でも,重要な部分である英語の講義に債務不履行が
あったほか,基礎強化特訓コースと比べて,個々の受講生の習熟度
に応じたきめ細かい指導をすべきだったのに,ほかの科目でもプリ
ント学習に終始し,その場しのぎの計画性のない講義をするだけだ
ったのだから,このコース全体の講義が,本件受講契約2,5に基
づく義務に違反したものになる。
(ウ)以上のとおり,被告は,本件各受講契約に違反して,原告に対
し,大学医学部の入学試験に合格できる程度の英語の講義をしてこ
なかった。
(被告の主張)
ア被告には,本件各受講契約に基づいて,原告に対し,大学医学部の
入学試験に合格できる程度の講義をする義務があることは争わない。
しかし,受講生の能力には個人差があるのだから,基礎的な学力の
欠ける受講生に対しては,それに合わせた講義を行い,学習の習熟度
に応じて,講義の程度も上げていくべきである。学力の程度にかかわ
らず,一律に高度の講義をする義務までは負っていない。
イ(ア)C講師の講義態度に問題がみられたのは,それまでの非常勤講
師だったのが専任講師になった平成17年4月から同年7月中旬こ
ろまでの完全個別指導科(本件受講契約5)での英語の講義のとき
だけである。それ以前には問題はみられなかった。
このことは,原告が,B医学院に通い始めてから,完全個別指導
科での講義を受けるまで,C講師を担当講師に指名しており,被告
に対して何の苦情も述べていないことからも明らかである。
,()(),,(イ)冬期講習会合宿特訓冬期本件受講契約1夏期講習会
()(),(),合宿特訓夏期本件受講契約3冬期講習会本件受講契約4
個別特訓コース(本件受講契約2)では,C講師の講義態度には問
題がなかった。原告の主張は前提を欠いている。そもそも,英語の
,,講義に問題があるからといってほかの科目を含めた全体の講義が
大学医学部の入学試験に合格できる程度の講義ではなくなることに
はならない。
(ウ)また,個別特訓コース(本件受講契約2)では,担当講師は,
受講生の学力を考慮し,個々の受講生と相談した上で,市販の参考
書,問題集を使用したり,担当講師が自分で作成したプリントを使
用し,その学力に見合った個別指導をしている。
(エ)そして,完全個別指導科(本件受講契約5)では,平成17年
()4月から同年7月中旬ころまでの完全個別指導科本件受講契約5
での英語の講義に問題があったことは認めるが,そのほかの科目で
は問題はみられなかった。そもそも,英語の講義に問題があるから
といって,ほかの科目を含めた全体の講義が,大学医学部の入学試
。,験に合格できる程度の講義ではなくなることにはならない被告は
C講師の講義態度に問題があることが分かってから,C講師を原告
の担当から外すとともに,解雇した。原告を含む受講生に対し,ほ
かの専任講師による英語の補講を無償で実施するなどの代替措置を
講じている。
(),,,完全個別指導科本件受講契約5でも担当講師は個別課題
公開模擬試験の結果を踏まえて,受講生の学力を考慮し,個々の受
講生と相談した上で,市販の参考書,問題集を使用したり,担当講
師が自分で作成したプリントを使用し,その学力に見合った個別指
導をしている。
原告の学力が,完全個別指導科までの指導を通じても,なかなか
上がらなかったことは認める。しかし,それは,原告が,もともと
すべての科目で基礎的な学力を欠いているだけでなく,担当講師か
ら繰り返し注意されても,講義を欠席がちで,出席しても居眠りが
目立つなど,学力,学習意欲に問題があったからである。
(2)原告が被った損害の有無・額
(原告の主張)
原告は,被告から本件各受講契約に基づく講義を受けるために,被告
に対して本件各受講契約に基づく受講料1122万4825円を支払う
とともに,賃借したDマンションの賃料447万2000円を負担した
のに,そのような講義を受けられなかったことで,これら受講料,賃料
相当額の損害を被った。
また,原告は,被告から本件各受講契約に基づく講義を受けられ,そ
のことで,大学医学部に入学できると期待していたのに,そのような講
義を受けられず,18歳から20歳までの貴重な時期を無駄に過ごさざ
るを得なかったことで,人間不信に陥るとともに,精神的な苦痛を被っ
た。この苦痛を慰謝するための慰謝料は500万円を下回らない。
(被告の主張)
争う。
第3裁判所の判断
1認定事実
,(,,,,,,前提事実関係証拠甲110∼14171920乙1∼8
証人A,原告本人〔枝番を含む。認定と異なる部分を除く)及び弁論の。〕
全趣旨によると,以下の事実が認められる。
(1)原告は,高校3年生だった平成15年10月ころ,大学医学部への
進学を希望するようになった。そのころ,父親が開業している医院に送
,。られてきた雑誌にあった被告の広告を読んでB医学院に興味を持った
その後,被告のパンフレットを取り寄せたり,Aと一緒にB医学院を訪
ねてみて,そこでの印象や,講師陣やバックアップ体制が整っていると
の説明を受けて,ここに通うことに決めた。
原告は,この当時,それまでに大学受験予備校の夏期講習,冬期講習
を受講していたことはあったが,それまで部活動に熱心に取り組んでい
たこともあり,大学医学部への入学するのには基礎学力は足りない状態
で,特に数学,英語でそれが目立っていた。
(2)ア原告は,高校卒業後,Dマンションに引っ越し,平成16年4月
から,基礎強化特訓コース,個別特訓コースでの講義を受け始めた。
また,夏期,冬期には,夏期講習会,合宿特訓(夏期,冬期講習会)
に参加した。
イ(ア)基礎強化特訓コースは,学力を基礎的なところから着実に向上
させることで,比較的難易度の低いとされる新設の医科大学の入学
を目標とするコースであり,1クラス6ないし8名の受講生で構成
されている。平成16年度は5名の受講生で構成されていた。
(イ)個別特訓コースは,苦手科目を克服するために,基礎強化特訓
コースの受講生が,その講義の後に,所定の手続を経て,担当講師
から,個別指導を受けるコースである。このコースでは,担当講師
は,受講生の学力を考慮し,個々の受講生と相談した上で,市販の
参考書,問題集を使用したり,担当講師が自分で作成したプリント
を使用し,その学力に見合った個別指導をしている。
(ウ)夏期講習会,合宿特訓(夏期,冬期講習会は,受講生の成績)
などを考慮して,1クラス8人前後のクラス編成で,基礎強化特訓
コースと同様の講義が行われる。
,,,,(エ)受講生は基礎強化特訓コース個別特訓コース夏期講習会
合宿特訓(夏期,冬期講習会では,講義を担当する講師を選ぶこ)
とはできない。
ウ(ア)基礎強化特訓コース,夏期講習会,合宿特訓(夏期,冬期講)
習会では,始めにどこまで講義するのか説明がなかったり,時間が
足りず説明された範囲まで講義が受けられないことがあった。
(イ)また,個別特訓コースでは,担当講師が自分で作成したプリン
トを使用されたことがあった。
(ウ)そして,C講師は,冬期講習会,合宿特訓(冬期,基礎強化)
特訓コース,夏期講習会,合宿特訓(夏期,冬期講習会で,講義)
時間中に学習に関係ない話を長々続けたり,受講生の私的な情報を
ほかの受講生に話し,受講生の関係を悪くさせたり,終了時間前に
講義を終わらせることがあった。
しかし,原告を含む受講生が,被告に対し,このことで苦情を述
べたり,担当講師の交代を求めたことはなかった。
(3)ア原告は,平成17年4月から,完全個別指導科での講義を受け始
めた。また,同年8月には夏期講習会に参加した。
イ(ア)B医学院では,平成17年4月から,完全個別指導科が新設さ
れることになった。
完全個別指導科は,受講生が,あらかじめ個別指導料を払い込ん
だコマ数(講義を受けられる回数)の範囲で,1年間を通じて,受
講生が選んだ科目について,受講生が指名した担当講師から,個別
指導を受けるコースである。このコースでも,担当講師は,個別課
題,公開模擬試験の結果を踏まえて,受講生の学力を考慮し,個々
の受講生と相談した上で,市販の参考書,問題集を使用したり,担
当講師が自分で作成したプリントを使用し,その学力に見合った個
別指導をしている。その結果は「個別特訓報告書」にまとめられ,
保護者に送られる。
指名を受けた担当講師は,担当したコマ数が週13コマを超える
と,被告から,超えた分について手当を支給される。
(イ)夏期講習会は,昨年度と違って,担当講師が,受講生2人に対
し,講義をしていた。講義の進め方は,担当講師と受講生が話し合
って決めていた。また,担当講師は,受講生の希望を踏まえて,被
告が決めていた。
ウ(ア)原告は,自宅に戻っていたとき,電話で自分を指名するよう求
められたことから,C講師を完全個別指導科での英語の担当講師に
指名した。C講師は,原告を含めて,4名の受講生から指名を受け
ていた。
(イ)被告は,それまでの非常勤講師だったC講師の勤務成績・態度
に問題がみられなかったことから,平成17年4月から,専任講師
として採用した。
ところが,C講師は,そのころから,講義時間中に学習に関係な
い話を長々続けたり,受講生の私的な情報をほかの受講生に話し,
受講生の関係を悪くさせたり,終了時間前に講義を終わらせるだけ
でなく,遅れて講義を始めたり,講義を途中で打ち切って外出や,
受講生を連れての散歩や食事(中抜け)をするため,それまでより
も講義の時間が短くなったり,教材にゴシップ紙を使用する,講義
が本科での講義と同じだったり,受験に重要な長文読解を軽視し,
英文法・単語・熟語に偏るようになった(甲15・乙3と乙2を読
み比べると,長文読解の講義時間数が減っている,勝手に講義時。)
(,間の延長の扱いをする担当講師は手当を受けられることがあるが
受講生には個別指導料の負担が生じることを意味する)など,そ。
の講義態度,講義内容が目立って悪くなった。
受講生の中には,被告に対し,このことで苦情を述べたり,C講
師の交代を求める者も出てきた。
(ウ)被告では,同年8月1日から,C講師を原告の担当から外し,
別の講師に担当させた。
(エ)完全個別指導科でも,担当講師が自分で作成したプリントを使
用されたことがあった。
(4)原告の学習状況
ア原告は,平成16年4月から4か月くらいは,予習をした上で,遅
刻することなくB医学院に通っていた。しかし,その後は,1日の講
義が終わった後に,1日2,3時間程度の復習はしていたが,朝が苦
手だったこともあり,遅刻や欠席が目立つようになった。また,もと
,,もと集中力が続かず根を詰めて勉強するのが苦手だったこともあり
完全個別指導科での講義を受けるころになっても,C講師だけでなく
ほかの科目の講師からも,講義中の集中力,注意力が足りないため,
予定していたところまで進めることができない,日々の学習,復習が
足りないため,前に学んだことが定着せず,忘れていたり,あいまい
になっているとの指摘を受けていた。
イ原告の学力は,B医学院に通っている期間を通じて,目立った変化
がみられず,大学医学部の入学試験に合格できる程度には達していな
かった。B医学院の学院長ら担当講師からは,どの大学医学部の入学
試験を受けるのがいいか指導,助言を受けていない。
ウ原告は,B医学院に通うのを止めて,自宅に戻った後,仙台市内に
ある大学受験予備校に通って,大学医学部の受験勉強を続けている。
現在,平日には毎日5,6時間の自習をしており,化学,生物の学力
は目立っての変化はないが,数学,英語の学力は徐々に上がってきて
いる。
2争点(1)についての検討
(1)原告は「被告には,本件各受講契約に基づいて,原告に対し,大学,
医学部の入学試験に合格できる程度の講義をする義務があるのに,C講
師は,平成15年12月の冬期講習会,合宿特訓(冬期)での英語の講
義のときから,大学医学部の入学試験に合格できる程度の講義をしてこ
なかったから,被告は本件各受講契約に基づく義務を怠っている」と。
主張する。
(2)C講師の講義態度,講義内容は,前記認定のとおり,平成17年4
月からの完全個別指導科での講義で,目立って悪くなっている。
そうすると,完全個別指導科では,本科の基礎強化特訓コースと比べ
て,講師にはより質の高い講義の内容,程度が求められているとみるの
が相当であることや,講義時間の延長の扱いをして,経済的な負担を生
じさせるだけでなく,その対応を余儀なくさせることで,学習の妨げに
なりかねない状況を作り出していることや,ほかの受講生から苦情や担
当講師の交代を求められていたことからすると,この当時の原告の学力
や講義中の集中力,注意力が足りないため,予定していたところまで進
めることができないといった受講態度を考慮しても,C講師が担当して
いた平成17年4月からの同年8月1日までの完全個別指導科での英語
の講義は,大学医学部の入学試験に合格できる程度の講義をしていたと
は認められない。
(3)他方で,完全個別指導科は,前記認定のとおり,受講生が選んだ科
目について,受講生が指名した担当講師から,個別指導を受けるコース
である。C講師が担当した講義が大学医学部の入学試験に合格できる程
度の講義でなかったからといって,ほかの講師が担当した講義も同じと
いうことにはならない。
そして,本件全証拠を検討しても,ほかの講師が,完全個別指導科で
の講義で,大学医学部の入学試験に合格できる程度の講義をしていなか
った様子はうかがわれない。前記認定のとおり,担当講師が自分で作成
したプリントを使用されたことがあったが,このコースでは,市販の参
考書,問題集を使用したり,担当講師が自分で作成したプリントを使用
して,個別指導がされているのだから,このことだけで,この講義に問
題があったとみることはできない。
(4)アC講師は,前記認定のとおり,冬期講習会,合宿特訓(冬期,基)
礎強化特訓コース,夏期講習会,合宿特訓(夏期,冬期講習会,個)
,,別特訓コースでの講義で時間中に学習に関係ない話を長々続けたり
受講生の私的な情報をほかの受講生に話し,受講生の関係を悪くさせ
たり,終了時間前に講義を終わらせることがあった。
しかし,このC講師にみられる講義態度は,平成17年4月以降に
みられるものと比べて,その問題の程度は小さい。原告を含む受講生
が,被告に対し,このことで苦情を述べたり,担当講師の交代を求め
ていない。C講師に求められたからとはいえ,原告を含めて,4名の
受講生が,C講師を完全個別指導科での英語の担当講師に指名してい
る。それまでの英語の学力は,ほかの科目と比べて,目立った変化,
違いをみせていない。
,,このような事情からするとC講師が担当していたこれらの講義は
問題があることは否定できないが,大学医学部の入学試験に合格でき
る程度の講義ではないとまでは認められない。
イまた,本件全証拠を検討しても,ほかの講師が,冬期講習会,合宿
特訓(冬期,基礎強化特訓コース,夏期講習会,合宿特訓(夏期,))
冬期講習会,個別特訓コース,夏期講習会での講義で,大学医学部の
入学試験に合格できる程度の講義をしていなかった様子はうかがわれ
ない。前記認定のとおり,基礎強化特訓コース,夏期講習会,合宿特
訓(夏期,冬期講習会では,始めにどこまで講義するのか説明がな)
かったり,時間が足りず説明された範囲まで講義が受けられないこと
があったほか,個別特訓コースでも,担当講師が自分で作成したプリ
ントを使用されたことがあったが,受講生の中で,被告に対し,これ
らのことで苦情を述べたり,担当講師の交代を求める者がいた様子は
うかがわれないし,関係証拠(甲1∼4)によると,被告では,相応
,,,の合格実績を上げていることや個別特訓コースでも市販の参考書
,,問題集を使用したり担当講師が自分で作成したプリントを使用して
個別指導がされていることからすると,これらのことだけで,この講
義に問題があったとみることはできない。
(5)以上のとおり,被告は,本件受講契約5に違反して,C講師が担当
していた平成17年4月からの同年8月1日までの完全個別指導科での
英語の講義で,原告に対し,大学医学部の入学試験に合格できる程度の
講義をしなかったことは認められるが,このコースでのほかの科目の講
,,(),,,義冬期講習会合宿特訓冬期基礎強化特訓コース夏期講習会
合宿特訓(夏期,冬期講習会,個別特訓コース,夏期講習会での講義)
で,大学医学部の入学試験に合格できる程度の講義をしなかったことは
認められない。
3争点(2)についての検討
(1)受講料相当額認容額・83万7900円
前記判断のとおり,被告は,本件受講契約5に違反して,C講師が担
当していた平成17年4月からの同年8月1日までの完全個別指導科で
の英語の講義で,原告に対し,大学医学部の入学試験に合格できる程度
の講義をしなかった。原告は,このことで,この英語の講義に対する個
別指導料相当額の損害を被ったと認められる。関係証拠(甲8)による
と,その額は83万7900円であると認められる。
(2)賃料相当額認容額・0円
前記判断のとおり,被告は,本件受講契約5に違反して,C講師が完
全個別指導科での英語の講義で,原告に対し,大学医学部の入学試験に
合格できる程度の講義をしなかったことは認められるが,このコースで
のほかの科目の講義,それ以前の講義で,そのような講義をしてこなか
ったとは認められない。その不履行の期間,程度からすると,C講師が
完全個別指導科で大学医学部の入学試験に合格できる程度の講義をしな
かったことにより,平成17年4月分以降に限ってみても,賃料相当額
の損害が生じたとまでは認められない。
(3)慰謝料認容額・30万0000円
原告は,C講師から完全個別指導科で大学医学部の入学試験に合格で
きる程度の講義を受けられなかったことにより,受講料を無駄にしただ
けでなく,受験勉強のための貴重な時間も無駄にし,人間不信に陥ると
ともに,精神的な苦痛を被ったことが認められる。その苦痛を慰謝する
ための慰謝料は30万円とみるのが相当である。
第4結論
以上によれば,原告の請求は,113万7900円及びこれに対する平
成19年1月28日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法で定める
年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由がある
から認容し,そのほかの部分は理由がないから棄却することとし,訴訟費
用の負担について民事訴訟法64条本文,61条,仮執行の宣言について
同法259条1項を適用して(相当ではないから,訴訟費用の負担を求め
る部分には,この宣言を付さない,主文のとおり判決する。。)
仙台地方裁判所第1民事部
裁判官近藤幸康

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