弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決及び第一審判決を破棄する。
     本件を東京地方裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人の上告理由について。
 上告人が国税局長を名宛人とする審査請求書と題する書面を浅草税務署に提出し
たのであるが、原判決によれば税務署長はこれを再調査請求書として取り扱い、所
得税法四九条四項二号によつて審査請求があつたものとみなされ、国税局長は審査
請求として補正を命じ、応じなかつたという理由で却下したというのである。本訴
の上告人の請求は更正処分の取消であるから同法五一条により原則として再調査決
定、審査決定を経なければ提起できないのであるが、国税庁長官又は国税局長が誤
つてこれを不適法として却下した場合には本来行政庁は処分について再審理の機会
が与えられていたのであるから、却下の決定であつてもこれを前記規定にいう審査
の決定にあたると解すべきことは原判示のとおりである。而して同法施行規則四七
条によれば、再調査請求をしようとする者は一定の再調査請求書に証拠書類を添付
して提出しなければならないと規定しているのであるが、税務署長の更正には青色
申告の場合を除いて、その理由を示されないから納税者としては何故に更正を受け
たのか判らないから証拠書類の添付のしようのない場合もあり、更正の理由は判つ
ていてもその所得が存しないときなどは、かゝる消極的な立証は困難であつて消極
的な立証の証拠書類の存在しないこともあり得る。然らば同規則で証拠書類の添付
を命じているのはかゝる書類があれば添付せよという趣旨と解すべく、証拠書類の
添付を所得税法四八条四項の方式と解すべきではなく、従つて証拠書類の添付のな
いとの理由で同項にいう当該請求の方式に欠陥があるものとして補正命令をなし、
更に提出なき故をもつて却下することはできないものと解すべきである。かくの如
く不適法として却下すべきでない場合に国税局長が誤つて却下した場台は前述説明
の如く同法五一条の審査の決定があつたものとして適法に出訴ができるものと解す
べきである。然るに本件において所得税法所定の審査の決定を経ていないから本件
訴は訴願前置の要件を欠き不適法なものとして却下した第一審判決及びこれを是認
した原判決は違法であつて共に破棄を免れない。
 よつて本件上告は理由があるものとして民訴四〇八条、三八八条により主文の如
く判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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