弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中上告人勝訴部分を除きその余の部分を破棄する。
     右部分につき本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告人の上告理由第一点について。
 所論は原判決が適法にした事実認定を非難するか、原判決の認定と異なる事実、
あるいは、上告人が原審において主張せずかつ原判決の認定しない事実に基づいて
原判決を非難するものである。しかし、原判決には所論の違法はなく、論旨は採用
できない。
 同第二点ないし第四点について。
 原判決は、本件約束手形は、D有限会社の被上告人に対する自動車買受代金債務
の分割金の支払に代えて、Eが無断で有限会社F部品商会のゴム印および代表者印
を冒用して振り出し、被上告人に交付したものであるが、被上告人は右約束手形の
支払を受けられず、そのため被上告人は手形金相当の損害を受けたものであり、上
告人が有限会社F部品商会の会社名ゴム印および代表者印等の保管につき善管義務
を尽さず、放置しておいたため、それらをEが使用して右のように本件約束手形が
作成され、それが振出交付されるに至つたものであるから、上告人は有限会社F部
品商会の取締役として職務を行なうにつき重大な過失があつたものというべきであ
る、と認定判断している。
 ところで、代金債務の弁済に代えて手形を交付した場合には代物弁済とみるべき
であるから、右約束手形の交付により右分割金債務は消滅し、被上告人は右約束手
形金を請求するしか外に途がないのであるから、被上告人は右約束手形の支払を受
けられなかつたことにより右約束手形の額面金額相当の損害を被つたものというべ
きである。
 しかし、記録によれば、前記認定事実のうち、本件約束手形が前記分割金債務の
支払に代えて振出交付されたものであるとの点については、この事実に相応する証
拠は全く見当たらない。むしろ、右事実認定のために挙示された証拠のうち第一審
の証人Gの証言、第一審および第二審の証人Hの各証言を記載した調書には、明確
に本件約束手形は右分割金債務の支払のため振り出されたものであるとの記載があ
るのである。そして、既存債務の支払に関し約束手形が振り出された場合において、
当事者の意思が不明のときは、既存債務の弁済を確保するために振り出されたもの
と認むべきであるというのが判例の見解である(大審院判決大正七年一〇月二九日
言渡、民録二四輯二〇七九頁)。そこで、もしも本件約束手形が右分割金債務の支
払に代えてではなく、右債務の支払の確保のために振り出されたものであるとすれ
ば、該約束手形が不渡となつても、これにより被上告人が直ちに損害を受けたもの
ということはできないから、有限会社法三〇条ノ三所定の取締役の責任を論ずるま
でもなく、被上告人の本訴請求は理由がないものといわなければならない。そうと
すれば、本件約束手形が右分割金債務の支払に代えて振出交付されたものであり、
上告人が有限会社法三〇条ノ三により損害賠償義務を負うと判断した原判決には、
同条の解釈適用を誤り、ひいて理由不備、理由そごの違法があるか、証拠によらず
して事実を認定した違法があり、この事実認定の違法が判決に影響を及ぼすこと明
らかである。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
 よつて、その余の上告理由に対する判断を省略し、更に右の点等について審理を
尽くさせるため、原判決中上告人勝訴部分を除きその余の部分を破棄し、右部分に
つき本件を名古屋高等裁判所に差し戻すこととし、民訴法四〇七条一項に従い、裁
判官全員の一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三

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