弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主   文
被告人を懲役10年に処する。
未決勾留日数のうち160日を刑に算入する。
              理   由
(犯行に至る経緯及び犯罪事実)
 被告人は,平成13年6月ころ,A農業協同組合の職員として現金輸送車の運転等
の業務を担当していた従兄弟のBから,Bが運転する現金輸送車を襲って輸送中の
現金等を奪うことを持ちかけられて,これを承諾した上,以前に同じ暴力団に所属
していた韓国人のCに対し,この強盗への参加と実行犯役の確保を持ちかけたとこ
ろ,Cもこれを承諾した。そして,被告人,B及びCは,現金輸送車を襲う場所の
下見をしたり,具体的な襲撃方法を話し合ったほか,Cは,強盗の実行当日まで
に,韓国人の知人らに対し,強盗への参加を持ちかけて承諾を得た。こうして,被
告人は,B及びCらとの間で,Bが運転する現金輸送車を襲って輸送中の現金等を
現金輸送車ごと強奪することを共謀した。そして,Cらが,平成13年7月10日午前
10時30分ころ,神奈川県
足柄下郡a町b先路上において,Bが運転し,A農業協同組合の職員D(当時
61歳)が同乗する現金輸送車を待ち伏せ,通りかかった現金輸送車の直前に自転車
を転倒させて現金輸送車を停止させた上,現金輸送車から降りてきたDに対し,拳
で顔面を殴打するなどの暴行を加え,さらに,持っていた刺身包丁(刃体の長さ約
21.2センチメートル)を突き付けながら,「殺されたいのか」などと言って脅迫
し,Dが抵抗できないようにした上,現金輸送車に乗り込んで,運転して乗り去っ
てA農業協同組合(代表理事E)が所有又は管理する現金7860万6000円及び小切手
22枚(額面合計80万8016円)ほか1点を積載した普通乗用自動車1台(時価合計約
60万3000円相当)を強奪したが,その際,一連の暴行により,Dに全治まで約17日
間を必要とする程度の鼻骨骨折等の傷
害を負わせた。
(証拠)省略
(累犯前科)省略
(法令の適用)
罰条 刑法60条,240条前段
刑種の選択   有期懲役刑選択
再犯加重   刑法56条1項,57条,14条
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の不負担   刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,A農業協同組合において現金輸送車の運転を担当していた従
兄弟のBや,以前に同じ暴力団に所属していたCらと共謀して,Bが運転する現金
輸送車を襲って輸送中の現金等を現金輸送車ごと強奪した上,その車に乗っていた
農協の職員に傷害を負わせたという強盗致傷の事案である。
 被告人らは,事前に現金輸送車の走行経路を把握した上,襲う場所の下見をして
襲撃の方法や役割分担を話し合っており,綿密な計画の上で本件犯行に及んだ。犯
行の態様も,顔面を殴打したり,鋭利な刃物を突き付けて脅迫するなど,極めて危
険なもので,被害者Dに与えた傷害の程度も軽いとはいえない。また,Dは,業務
を遂行中に必死に抵抗したにもかかわらず現金などを奪われ,その後の農協への報
告等の後始末を余儀なくされた。本件によりDが受けた肉体的・精神的苦痛は大き
かったと認められる。本件は,大胆にも,輸送中の現金等を現金輸送車ごと強奪し
たのであって,農協が被った被害の総額は7800万円を超える高額である。それにも
かかわらず,Dに対する慰謝の措置は講じられていない上,農協の損害について
も,被害品の一部が還
付又は弁償されたのみで十分な被害回復はなされておらず,D及び農協関係者の被
害感情は極めて厳しい状況にある。そして,本件犯行が,白昼に現金輸送車を襲っ
た強盗事件として,金融機関や警備会社など現金輸送業務に従事する関係者一般に
与えた不安感や,地域社会一般に対して与えた不安感等の社会的な影響も見逃すこ
とはできない。
 被告人は,Bから本件犯行の話を聞かされて,実行犯となるCに話を持ちかけ,
BとCを引き合わせ,その結果,C及びCから依頼されて共犯者となった実行犯に
より現実に本件が実行されるに至った。被告人は,Bに現金輸送車のコースや集金
時刻等を尋ねて,Bから現金輸送車の巡回ルートの一覧表を入手し,集金額が一番
多いのが火曜日であることなどの説明を受け,それをCに伝えた。また,被告人
は,犯行当日の実行行為には加わらなかったものの,犯行前に,被告人が使用して
いた自動車を運転してCと共にわざわざ小田原市内へ出向き,Bとも合流して3人
で集金額の多い火曜日の巡回ルートの下見をし,現金輸送車を襲う具体的な方法に
ついて3人で話し合ったり,その後の実行方法について,BやCに具体的な指示を
出すなど積極的に犯罪
実行に向けた準備に関与している。そうすると,被告人は,本件犯行において中心
的かつ不可欠な役割を果たしており,犯行による利得金についても,Bよりもはる
かに多額の現金を自己の支配下に置いている。
 被告人は,長く暴力団構成員として活動を続け,懲役刑に限っても,覚せい剤取
締法違反,逮捕,傷害,銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪により5回有罪判決を受
け,結局いずれも刑務所で服役した経歴があるにもかかわらず,安易に本件犯行に
及んでおり,法無視の態度が明らかである。これらによれば,被告人の刑事責任は
重大である。
 しかしながら,他方,本件犯行の発案者はBである。被告人は本件犯行の実行行
為自体には関与していない。本件犯行による被害品の一部は農協に還付されている
上,被告人が被害弁償金の一部として現金2000万円を農協に支払っている。被告人
は,指名手配されていることを知った後ではあるが,自ら警察に出頭し,捜査段階
から本件犯行を素直に認め,公判廷においても反省の態度を示し,暴力団とは縁を
切ると述べている。被告人の母親が,被告人の更生に助力する意思を表明し,被告
人の妻も,被告人の社会復帰後は共に暮らす意思を表明している。これらの諸点
は,被告人のために酌むことのできる事情である。
 以上のような諸事情を総合考慮し,被告人の刑を定めた。
(検察官 佐藤 剛 国選弁護人 加藤 勝 各出席)
(求刑 懲役13年)
平成14年5月31日
横浜地方裁判所小田原支部刑事部
   裁判長裁判官田中 優
      裁判官荒川英明
      裁判官戸苅左近
 

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