弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人向坂保治の上告理由第一点について。
 所論は、原審の裁量に委ねられた証拠の取捨判断および事実の認定を非難するに
すぎないから、採るを得ない。
 同第二点について。
 手形割引貸付契約のような継続的取引契約に基づく債務の履行を一定の極度額に
おいて担保するため、第三者が債権者との間にその所有不動産につき期間の定めの
ない根抵当権設定契約を締結した場合において、右基本たる継続的取引契約が存続
し、被担保債権がなお現存しているとしても、根抵当権設定当時に比して著しい事
情の変更があつた等正当の事由があるときは、当該根抵当権設定者において、右根
抵当権設定契約を将来に向つて廃棄し、爾後は現存被担保債権のみを担保する通常
の抵当権とする意味における解約告知をすることができると解すべきである。
 ところで、本件において、原判決の確定した事実は、つぎのとおりである。訴外
Dは、かねて沼津市内において反毛業を営み、その営業上の手形決済および資金調
達のため、上告人との間に当座勘定契約を結び、また、上告人より手形貸付を受け
たり手形・小切手の割引を得たりしていたが、昭和二八年暮頃から業務不振となり、
Dは従前以上に上告人からの融資を得ることによつて営業を建て直そうと計り、借
入金の元本極度額を拡げるため、昭和二九年三月一五日上告人との間に極度額一三
〇万円の手形割引貸付契約を締結し、同時に、右契約によつて生ずべきDの債務を
担保するため、Dの実兄である被上告人をして、上告人に対し、存続期間の定めな
く、本件不動産上に根抵当権を設定させ、その旨の設定登記手続が経出された。そ
の結果、Dは、昭和二九年三月一二日三五万円、同月一七日八〇万円、同月二五日
三〇万円の各手形貸付を得たので、Dおよび被上告人は、これによりDの営業は危
機を切り抜けられるものと考えていた。しかるに、早くも翌四月中にD振出のE銀
行あての小切手が不渡りとなり、そのためDは不渡処分を受けるに至つたので、上
告人はDとの前記当座勘定取引を解約するに至つた。当時のDの総債務は約一、〇
〇〇万円に達しており、同年五月五日には多数の債権者が集会して、これらの債務
の履行期を一年猶予することになつて、Dの営業は辛くも即時の廃業を免かれたよ
うな状態であつた。ここにおいて、被上告人は同年七日上告人のF支店に出向き、
同支店長に面会のうえ、Dの経済事情を述べ、今後同人に対する信用供与の継続を
停止されたく、もしそのようなことが続けられても、被上告人としてはもはや人的・
物的の保証の責任を将来に向つて負いかねる旨を告げ、もつて、本件根抵当権設定
契約につき上述の意味における解約の告知をした。(なお、上告人は、その後、当
分の間Dのためにする取引を停止し、昭和三〇年五月頃になつて、Dの妻の名義に
よる手形割引をして、その割引金の幾分を順次Dの債務の内入れに充当させること
によつて、ようやくDの債務の整理に着手することになつた。)以上の事実が認め
られるというのである。
 このように、本件根抵当権の設定の時からその将来に向つての解約告知がなされ
るまでわずか一月半余の期間ではあつたが、その間、前記のように、上告人よりの
融資にもかかわらず、被上告人の予期に反して、Dの営業状態はさらに深刻に悪化
して倒産の危険さえ感ぜられるようになり、被上告人の将来の求償権の行使等にも
多大の支障を生ずるおそれもある等、著しい事情の変更があつたというべきである
から、このような場合には、被上告人のした前記解約の告知には正当の事由があり、
それを有効と解するのが相当であり、したがつて、これと同趣旨の原判示は正当と
いうべきであつて、右と反対の見解に立つ論旨は採用するを得ない。
 よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致
で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛