弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における未決勾留日数中九〇日を本刑に算入する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 被告人の上告趣意第一点について。
 論旨(1)主張の証人尋問調書は、第一審昭和二六年(わ)第二一八号放火同未
遂被告事件について、検察官の請求により刑訴二二八条一項の規定によつてなされ
た証人尋問の供述調書であるところ、同条項による証人尋問に当つては必ずしも被
告人、被疑者又は弁護人の立会を要するものでないことは同条二項の規定するとこ
ろでありそして同条二項が憲法三七条二項に違反しないことは当裁判所の判例(昭
和二五年(あ)第七九七号同二七年六月一八日大法廷判決、集六巻八〇〇頁参照)
であり、また、右証人尋問に当つて被疑者、被告人、弁護人のいずれか又はその双
方に立会を許すか否かは右証人尋問をする裁判官の裁量に属するものと解すべきで
あるから(昭和二五年(し)第二四号同二八年四月二五日第一小法廷決定、集七巻
八七六頁参照)、右裁判官において所論証人尋問に当り、被告人を立会はせなかつ
たからといつて、かかる措置が憲法三七条二項に違反しないことは前記大法廷の判
例の趣旨に徴し明らかである。また、論旨(2)主張の公判廷外における各証人尋
問において、第一審および原審が、被告人を立会はせていないことは所論のとおり
であるけれども、記録によれば、当時被告人は本件により未決勾留中であり、また
第一審においては弁護人関谷信夫が、原審においては弁護人湯川忠一がそれぞれ右
各証人尋問に立会い反対尋問をしていることが明白であるから、このような場合に
は、必ずしも被告人自身が立会つていなくとも、憲法三七条二項の規定に違反しな
いことは当裁判所の判例とするところである(昭和二四年(れ)第一八七三号同二
五年三月一五日大法廷判決、集四巻三七一頁、昭和二六年(あ)第二三九〇号同二
八年三月一三日第二小法廷判決、集七巻五六一頁参照)。従つて、所論中憲法三七
条二項違反の主張はすべて採用できない。また、所論中憲法三一条違反を主張する
点は、論旨主張の第一審および原審の措置において刑訴法に違反する何等のかども
ないのであるから、その前提を欠き適法な上告理由とならない。
 同第二点について。
 起訴状謄本の送達を受けていないとの主張で刑訴四〇五条の上告理由に当らない
(記録によれば本件各起訴当時被告人の身柄が勾留されていた機関の長あて執行吏
送達または被告人に直接交付送達されている)。
 同第三点について。
 論旨(1)は、量刑不当の主張に帰し、同(2)は、単なる訴訟法違反の主張で
あつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第四点について。
 原審において主張判断のない単なる刑訴法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の
上告理由に当らない(原審における公判廷外における所論証人尋問は、原審の職権
によるものであり、原審は右決定をするにあたり、弁護人湯川忠一および検察官の
意見を徴したこと、および右決定謄本は被告人に対し東京拘置所長あて、また弁護
人に対しても送達されていることは、記録により明白である)。
 同第五点について。
 事実誤認、理由不備、採証法則違背の主張であつて、すべて刑訴四〇五条の上告
理由に当らない。
 弁護人佐々木正義の上告趣意について。
 第一点は量刑不当の主張であり、第二点は単なる刑訴法違反の主張であつて、い
ずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条、刑法二一条刑訴一八一条により裁判官全員一致の意見で主文
のとおり判決する。
  昭和三二年五月三一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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