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平成28年6月29日判決言渡
平成27年(行コ)第10004号異議申立却下決定取消請求控訴事件
(原審東京地方裁判所平成27年(行ウ)第202号)
口頭弁論終結日平成28年5月25日
判決
控訴人(一審原告)アンスティチュー
デヴェッソーエデュサン
控訴人(一審原告)ユニベルシテパリ
ディドロ-パリ7
2名訴訟代理人弁護士日野孝俊
愛甲栄治
被控訴人(一審被告)国
代表者法務大臣
裁決行政庁特許庁長官
指定代理人尾江雅史
湯峯奈々子
門奈伸幸
平川千鶴子
小林大祐
主文
1本件各控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
用語の略称及び略称の意味は,本判決で付するもののほか,原判決に従い,原判決で付され
た略称に「原告」とあるのを「控訴人」に,「被告」とあるのを「被控訴人」と,適宜読み替え
る。
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2特許庁長官が平成26年10月2日控訴人らに対してなした異議申立却下決
定を取り消す。
3訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1事案の要旨
(1)本件請求の要旨
本件は,控訴人らが,被控訴人に対し,本件国際出願に関する本件国内書面及び
本件翻訳文提出書に係る各手続を特許庁長官が却下した本件却下処分に対してされ
た本件異議申立てを特許庁長官が平成26年10月2日に却下した本件決定の取消
しを求める事案である。
本件異議申立ては,行政不服審査法(平成26年法律第68号)の施行(平成2
8年4月1日施行)前にされたものであり,本件決定は,本件異議申立てが同法に
よる改正前の行政不服審査法(昭和37年法律第160号,以下,単に「行政不服
審査法」という。)13条(代表者の資格の証明等)1項に反することを理由とす
る。
控訴人らは,原審において,本件決定が,行政不服審査法21条(補正)又は憲
法29条(財産権)1項の規定に反すると主張した。
(2)原審の判断
原判決は,控訴人らの主張はいずれも採用することができないとして,控訴人ら
の請求をいずれも棄却した。
これに対して,控訴人らが控訴をした。
2前提となる事実
本件の前提となる事実は,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」
欄の第2(事案の概要)の「1前提事実」に記載のとおりである。
(原判決の補正)
①原判決2頁15行目の「製薬業を営む会社」を「疾患及び血管に関する研究
等を目的として設立された法人」に改める。
②原判決2頁19行目から同26行目までを次のとおり改める。
「控訴人らは,平成23年3月28日,『COMPOSITIONSPROANGIOGENIQUES,
LEURPROCEDEDEPREPARATIONETLEURSUTILISATIONS(血管新生促進性
組成物,その調整方法およびその使用)』との名称の発明について,「千九百七
十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約」(特許協力条約)に基
づき,フランス特許庁を受理官庁とし,平成22年3月26日を優先日とし,
国際出願(PCT/FR2011/050673,本件国際出願,乙6)をした。本件国
際出願は,特許協力条約4条(1)(ⅱ)の指定国に日本国を含むところ,特許法1
84条の3第1項の要件を満たしていたことから,その国際出願日に日本国に
されたものとみなされた。
控訴人らは,特許法184条の4第1項の規定による国内書面の提出期間の
満了日である平成24年9月26日,本件国際特許出願について,特許庁長官
に対し,国内書面(本件国内書面とは別のもの)を提出したことから,同項た
だし書の規定により,明細書等の翻訳文の提出期限は,同年11月26日とな
った。
しかしながら,控訴人らは,上記期限までに,明細書等の翻訳文を提出せず,
同年12月6日,特許庁長官に対し,明細書等の翻訳文の提出書(本件翻訳文
提出書とは別のもの)を提出した。」
③原判決3頁14行目及び同19行目の各「特許法184条の4第4項」をい
ずれも「平成27年法律第55号による改正(平成28年4月1日施行)前の
特許法184条の4第4項」に改める。
④原判決5頁7行目の「同年10月2日付けで,」の次に「本件異議申立手続を
併合した上で,」を加える。
3争点
本件の争点は,原判決の「事実及び理由」欄の第2(事案の概要)の「2争点」
に記載のとおりである。ただし,「憲法29条」の次に「1項」を加える。
第3当事者の主張
当事者の主張は,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第
2(事案の概要)の「3争点に関する当事者の主張」に記載のとおりである。
(原判決の補正)
①原判決5頁18行目から同19行目にかけての「被告が」から同21行目末
尾までを削る。
②原判決7頁18行目から同20行目までを削る。
第4当裁判所の判断
1行政不服審査法21条違反の有無
(1)検討
行政不服審査法13条1項は,「代表者若しくは管理人,総代又は代理人の資格は,
書面で証明しなければならない。」と規定し,同法に基づく不服申立てにおける代表
者等の資格は,書面で証明しなければならないとされる。前記第2,2に認定の事
実経過のとおり,控訴人らが本件異議申立てに際して代表者の資格証明に関する書
面及び代理人であることを証明する書面(以下,両者を併せて,「資格証明所等」と
いう。)を添付しなかったことから,特許庁長官は,補正期間を30日と定める本件
補正命令を発したが,控訴人らが上記期間内に資格証明書等を提出しなかったため,
本件決定をした。本件補正命令の内容は,資格証明書等の提出を求めるという明確
なものであり,また,控訴人らのような種類の法人についても,補正を命じられた
不備を補正することは困難なことではないから(現に,控訴人らは,本訴提起に当
たっては,控訴人らの資格証明書等を提出している。),控訴人らは,相当の期間を
定めて命じた補正に従って資格証明書等を提出することをしなかったのであって,
本件異議申立ては,行政不服審査法13条1項に違反し,不適法である。したがっ
て,これらをいずれも却下した本件決定に違法は認められない。
(2)控訴人らの主張に対して
控訴人らは,控訴人らが提出すべき書面について特許庁に教示を求めている以上,
特許庁からその教示に対する回答がなければ控訴人らにおいて適切な補正はできず,
そして,控訴人らが補正に応じる意思を示していることから,特許庁長官は,教示
に係る書面を具体的に特定してその提出を求める再度の補正命令を発するか,又は,
その書面を事実上控訴人らに教示すべき義務があったと主張する。
しかしながら,本件補正命令の内容は明確であり,かつ,補正命令に係る不備を
補正することは困難なことではなかったから,特許庁から本件補正命令について説
明等を受けなければ適切な補正ができなかったとはいえず,控訴人らの上記主張は,
前提を欠くものであって,採用することができない。
もっとも,補正命令に係る不備が期間内に補正されない場合に,特許庁長官にお
いて裁量権を行使して,申立てを直ちに却下をすることなく再度の補正命令を発す
るとの選択をする余地もあり得るところ,控訴人らの主張は,本件補正命令に応じ
た補正をしなかったことを理由に直ちに本件決定をすることは,本件事実経過にか
んがみれば,特許庁長官において裁量権を濫用又は逸脱するものであって違法であ
るとの趣旨を含むとも解される。そこで,更に検討する。
前記第2,2にて認定の事実経過のとおり,①控訴人らは,平成26年5月7日
に本件却下処分の送達を受け,平成26年7月4日付けで本件異議申立てをしたが,
申立書に資格証明書等を添付しておらず,②そのため,特許庁長官は,平成26年
7月9日付けで控訴人らに対し資格証明書等の提出を求める本件補正命令を発し,
本件補正命令は,同月11日に送達されたが,③同月31日に至って,控訴人らの
代理人であるA弁理士が,特許庁の担当者に対し,「フランスでは代表者の資格を証
明する公的な書面がないので,代理人事務所が作成した書面を公証したものでよい
か。」との旨を電話で照会してきたことから,同日,特許庁の担当者は,「通常は,
公証する者が自ら書面を作るのではないかと思います。」と回答しており,④さらに,
A弁理士らは,補正期限に直近する同年8月6日ころに,「代表者の資格を証明する
書面(に)ついて,フランスでは登記事項証明がなく,公的な機関による証明書は
ないとのことであり,貴庁において,本件のように,証明書類がない場合において,
代表者の資格証明として認定された事例が御座いましたら,具体的な書面の内容を
ご教示頂けますようよろしくお願い申し上げます。」との記載がある書面を特許庁長
官に提出するだけであり,控訴人らの代表者の資格証明に関する書面を提出せず,
また,具体的な補正案や当該書面を提出できる期限の提示も行わなかった。
そうすると,特許庁の担当者は,A弁理士の照会に対して適切な回答をしたので
あり,控訴人らの代表者の資格証明に関する書面の提出を遅延させるような言動は
なく,また,A弁理士らは,補正期限直近になって特許庁に具体例の調査を求めて
きたのであり,本来,本件異議申立て前に行うべき自らの調査等が不十分なまま漫
然と補正期限を徒過したものといわざるを得ない。
以上からすれば,控訴人らが補正期間内に控訴人らの代表者の資格証明に関する
書面を提出しなかったことに正当な理由があるとは認められず,本件決定が,信義
則に反するなど裁量権の濫用又は逸脱として違法であるとは認められない。
したがって,控訴人らの行政不服審査法21条違反の主張は,いずれにせよ,採
用することができない。
2憲法29条1項違反の有無
控訴人らは,本件決定が,控訴人らの財産権を侵害するものであり,憲法29条
1項に違反すると主張し,その財産権とは,特許権をいうものと解される。
しかしながら,特許権は,適法な手続を経た上で国家から付与される権利である
から,適法な手続を経なければこれを取得できないのは当然のところ,上記のとお
り,控訴人らは,資格証明書等を添付しない不適法な本件異議申立てを行ったもの
であり,このような異議申立てが本件決定によって却下されたからといって,控訴
人らに財産的損害が生じたと認める余地はなく,本件決定は,憲法29条1項に違
反するものではない。
したがって,控訴人らの憲法29条1項違反の主張は,採用することができない。
3まとめ
以上の次第であり,控訴人ら請求は,いずれも理由がない。
第5結論
よって,控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件各控訴は
いずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
清水節
裁判官
中村恭
裁判官
森岡礼子

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