弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人五木田隆の上告趣意第一、第二について。
 所論は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、上告適法の理由に当らない。
 同第三について。
 所論は、公職選挙法一二九条、二三九条一号は、選挙運動についての具体的記載
を欠き、構成要件が実質的に白地であり、また同一九九条の五の規定と対比すると、
政治活動として許される行為がいかなる時期段階から選挙運動となるかがきわめて
あいまいであるから、憲法三一条に違反するというのである。
 しかしながら、公職選挙法を通読すると、同法にいう選挙運動とは、特定の選挙
の施行が予測されあるいは確定的となり、かつ特定の人がその選挙に立候補するこ
とが予測されあるいは確定的となつた場合において、その選挙につきその人を当選
させるため、投票を得もしくは得させる目的をもつて、直接または間接に必要かつ
有利な周施、勧誘もしくは誘導その他諸般の行為をすることをいうものであること、
および政治活動といわれるものであつても、いやしくも右の要件に該当するものは、
選挙運動となるものであることが明らかである。そして、このことは、大審院以来
の判例の趣旨とするところでもある(昭和三年一月二四日大審院判決―刑集七巻六
頁、昭和四年九月二〇日大審院判決―刑集八巻四五〇頁、昭和一一年七月六日大審
院判決―刑集一五巻九四三頁、昭和三〇年二月一〇日第一小法廷決定―刑集九巻二
四〇頁、同年七月二二日第二小法廷判決―刑集九巻一九四八頁、昭和三八年一〇月
二二日第三小法廷決定―刑集一七巻一七五五頁参照)。したがつて、同法にいう選
挙運動の意義は、所論のようにあいまいであるとはいえない。同一二九条は、この
ような選挙運動を一定の期間においてのみなすことを許し、同二三九条一号はこれ
に違反した者を処罰しているのであるから、右違反の罪の構成要件が実質的に白地
であるとはいえないのみならず、政治活動として許される行為との区別の基準があ
いまいであるともいえない。それゆえ、所論は前提を欠き、上告適法の理由に当ら
ない。
 弁護人竹内三郎の上告趣意一について。
 所論は、違憲(三八条違反)をいうが、所論被告人Aの供述が所論のように任意
性を欠くものと認むべき証跡がないから、所論は前提を欠き、上告適法の理由に当
らない。
 同二について。
 所論は、判例違反をいうが、原判決は、所論の点についてはなんらの判断をも示
していないものであるから、所論は前提を欠き、上告適法の理由に当らない。
 弁護人子安良平の上告趣意について。
 所論のうち、違憲(三八条一項違反)をいう点は、所論被告人Aの供述が所論の
ように任意性を欠くものと認むべき証跡がないから、所論は前提を欠き、その余は、
単なる法令違反の主張であつて、いずれも上告適法の理由に当らない。
 また、記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文
のとおり決定する。
  昭和四一年六月四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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