弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士大島正恒の上告理由一について。
 所論の要旨はDが上告組合の代表者として、総会の決議に基き登記されている以
上は、その決議無効は訴のみを以て主張し得べきであり、抗弁を以ては主張できな
いというにある。
 中小企業等協同組合法五四条において準用する商法上の株主総会決議取消(商法
二四七条)については訴によることを要し、抗弁を以ては主張し得ない。また株主
総会決議無効の主張も無効確認の訴によることを要する。しかしながら、総会の不
存在の場合は決議無効と区別すべきであり、前者の場合は決議なるものは当然且絶
対的に無効であり、その無効は何人からも、如何なる時期においても無効確認を求
める利益ある限り主張し得るもので、訴によるにしても無効確認の訴の一般原則に
よるものであり、商法の決議無効確認の訴によるものではない。従つて総会の不存
在による決議の不存在は抗弁を以ても主張し得べきであり、このことは総会の決議
事項について登記がなされたとなされないとによつて何ら消長のあるべき筋合のも
のではないのである。原審は証拠上昭和三一年四月五日の本件組合総会は法律上存
在せず、その総会の決議も従つて法律上存在しない事実を確定しこのような場合は
何人もこれを訴訟上訴又は抗弁を以て主張することが許されると判示しているので
あつて、固より正当である。所論は右に反する独自の見解に立却するものであつて、
採るを得ない。
 同二について。
 しかし、原審は上告人から原審に提出された証拠関係(所論指摘の各書証を含む)
を按じ、自由な心証によつて、所論判示のように「(前略)事故が存すると認める
に足りる証拠はない」と云つているのであつて右証拠関係に照せばそのように判断
もできないわけのものでもない。所論はひつきようするに、原審の専権に任かされ
ている証拠の取捨選択、並びに事実認定を非難するに帰するものであつて、採るを
得ない。
 同三について。
 しかし、招集権限のない者の招集にかかる総会は法律上存在しないものと解する
を相当とするのであつて、所論の如きは右招集手続にかしある場合には妥当するで
あろうが、本件のような場合には妥当しないものと解すべきである。所論判例も本
件とは事案を異にし、本件に適切のものとは認められない。所論も独自の見解に座
するものであつて、採るを得ない。
 同四について。
 しかし、原判決は所論総会招集の権限は土台Dにないものと正当に判示している
のであるから、所論組合員脱退の効力の如きは右判示に影響あるべき筋合のもので
はない。従つて原判決には所論の違法ありと云い難く、所論も採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で、主文のとお
り判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    高   木   常   七

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