弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人佐藤思良の上告趣意第一点について。
 論旨は原判決がその第一、二、三の各判示事実中被告人Aの所為を以て刑法二五
三条(業務上横領)の罪に該る旨判示したのは地方自治法一四八条を遺脱し、法律
の解釈をあやまり、憲法に違反するというのであるが、本件各救援物資及義捐金の
受払、保管の事務は普通地方公共団体であるa村水害罹災者を救護する事務の一部
に外ならないので、地方自治法(昭和二三年法律第一七九号による改正前の法律)
二条二項にいわゆる普通地方公共団体の公共事務に該当し、同法一四八条により同
村長たる被告人Aの管理、執行すべき事務に属するものと解するを相当とする。さ
ればa村の水害罹災者に対するものとして交付された判示各救援物資及び義捐金の
保管は、村長たる被告人において職務としてこれを為すものといわなければならぬ
から、原判決には地方自治法の解釈をあやまつた違法は存しない。従つて所論憲法
違反の主張はその前提を欠きとるをえない。
 同第二点乃至第五点について。
 論旨第二点は原判決はその判示する各救援物資が何人の所有に属していたかを判
示していないから、審理不尽、判断遺脱の違法がある(しかし、横領罪の判示には
所論の物資が他人の所有に属していることを示せば足り、その何人の所有に属する
かまで判示するの要はないから、所論の物資が被告人以外の者の所有に属すること
の判文上明らかな原判決には所論の違法はない)、同第三点は判示の各救援物資は
被告人が職権に基ずき処分したもの、すなわち、不法領得の意思なく配分したもの
であるから、原判決には不法領得の意思の有無につき審理を尽さず、判断を遺脱し
た違法がある(しかし、原判決は所論の不法領得の意思ありたることを確定判示し
ているし、この判示事実の認定はその挙示する証拠によつて肯認するに足り、所論
の不法は認められない)、同第四点は原判決はその判示第四事実の判示義捐金の性
質、その保管が何人の業務に属するか等について何等判示していないから、審理不
尽の違法がある、(しかし、判示義捐金がa村の歳計現金として収入役の保管に属
する事の記録上認むるに足る事実はないし、原判決は被告人はa村に設けられた水
害対策本部の本部長として所論義捐金を保管中被告人以下役場吏員一六名の慰安旅
行の費用にこれを流用した旨判示しているのであるから、原判決には所論審理不尽
の違法はない)、同第五点は原判決を以て法律の規定と事実の関係を審理しない違
法がある、(しかし、独自の見解であつてとるをえないこと前段の説明で明らかで
ある)というのであるから、論旨いずれも刑訴四〇五条に定める上告の理由にあた
らない。なお記録を精査するも同四一一条を適用すべきものとも認められない。
 弁護人清水胤治、同大沢愛次郎の各上告趣意について。
 弁護人清水胤治の上告趣意第一点、同大沢愛次郎の上告趣意第一点乃至第四点の
論旨はいずれも結局事実誤認の主張に帰するし、清水弁護人の上告趣意第二点大沢
弁護人の上告趣意第五点の論旨はいずれも結局量刑不当の主張に帰し、刑訴四〇五
条に定める上告の理由にあたらない。そして記録を精査するも本件には同四一一条
を適用すべきものとは認められない。
 よつて刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い裁判官全員一致の意見で主文の
とおり判決する。
  昭和二七年二月二一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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