弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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        主文
被告人を禁錮1年2月に処する。
この裁判の確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
        理由
(犯罪事実)
 被告人は,平成13年12月26日午前8時30分ころ,業務として普通乗用自
動車を運転し,兵庫県三木市A町a番地先道路を南から北に向かい進行するに当た
り,同所はやや上り坂となっており,当時路面が凍結し車輪が滑走しやすい状況で
あったから,路面の状況に留意し,適宜速度を調節し,ハンドル・ブレーキを的確
に操作して進路を適正に保持しつつ進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを
怠り,路面は凍結していないものと軽信して時速約50キロメートルで進行し,左
前方約48メートルの路側帯に佇立しているV(当時36歳)が連れていた犬が道
路上に出てきたのを認めてハンドルを不用意に右に切った過失により,自車後輪を
滑走させ,道路右側の植木に衝突させそうになって,左に急転把したため自車後部
を右に回転させなが
ら左前方路側帯に暴走させ,自車右側部を同人に衝突させて路上に転倒させ,よっ
て,同人に入院加療約9か月間を要し,意識障害,右胸廓変型の後遺症を伴う頭部
外傷,びまん性軸索損傷等の傷害を負わせた。
(証拠の標目)
省略
(補足説明)
1 弁護人は,本件事故当時,凍結していたのは対向車線のみであり,被告人は,
対向車線の路面凍結を予見・認識するすることは不可能であったから,注意義務違
反が認められず無罪である旨主張し,被告人もこれに沿う供述をするので,以下,
裁判所の判断を補足して説明する。
2 関係各証拠によれば,被告人は,時速約50キロメートルで走行中,被害者の
連れていた犬をよけるためハンドルを右に切って対向車線に出ようとしたこと,自
車が対向車線に半分程度進入したところ,自車の後輪が滑るように左に振られ,右
斜め前方に滑走し,道路右側の植木にぶつかりそうになったこと,そこで,被告人
は,ブレーキをかけると共にハンドルを左に切ったところ,自車後部が右に回転し
て制御不能となり,そのまま左前方に滑走し,左前方の路側帯に暴走させ自車右側
部を被害者に衝突させたことが認められ,これらの事実からすると,本件当時,本
件道路が凍結していたことは,明らかである。
3 そうしたところ,本件事故が発生した日時は,平成13年12月26日午前8
時30分という厳冬季の早朝であり,本件現場は,内陸部の非市街地で,交通量の
少ないゴルフ場への進入路であることに加え,被害者の義母であったBは,警察官
に対し,事故直後連絡を受け現場に走っていった際,道は前の日からの寒さのため
黒く光っており一目見て路面が凍結しているのが判り,気をつけながら行ったが,
滑そうになりながら走って行ったと述べていること,本件事故の約10分前に本件
道路を通行したCは,警察官に対し,県道加古川三田線を三木市内に車で西進中,
ABSブレーキが作動したことから凍結可能性に気づき注意して運転したと述べて
いること,さらには,ゴルフ場従業員の送迎をしていたDは,公判廷で,当日午前
8時ころ,ゴルフ場
へ向かう道路は,かなり溶け始めていたが,反対車線はまだかなり凍っていたと思
うと述べていること,他方,被告人が,道路の状況を把握するについて,特段,支
障となる事情はうかがえないことからすると,被告人は,本件道路が凍結している
ことを予見することができたはずであり,予見が可能であったことは明らかであ
る。
なお,弁護人は,被告人の進行車線は凍結しておらず,対向車線のみが凍結し
ていたと主張し,それを前提に,被告人の過失を争うのであるが,本件当時,被告
人の進行車線と対向車線で,その凍結にどの程度の差異があったかは必ずしも明確
ではないものの,仮にそうであったとしても,自動車運転者としては,道路状況等
によっては,対向車線に出て走行する可能性のあることも十分予測できるのである
から,道路全体の状況を把握すべきであることはいうまでもなく,また,自らの進
行車線と同時に対向車線の状況に注意することは,格別困難を強いるものではない
から,前記の状況に照らせば,被告人が,進行車線に限らず対向車線が凍結してい
ることを予見・認識することも可能であったというべきである。
4 以上のとおり,関係各証拠を総合すると,本件事故当時路面が凍結し車輪が滑
走しやすい状況であったことの予見・認識は可能であったから,被告人の過失は明
らかである。
(法令の適用)
 被告人の判示行為は刑法211条1項前段に該当するところ,所定刑中禁錮刑を
選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を禁錮1年2月に処し,情状により同法2
5条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予すること
とする。
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,普通乗用自動車を運転中,路面の凍結に気付かず,ハンドル
を不用意に右に切ったため自車を滑走させ,自車を路側帯に佇立していた被害者に
衝突させて傷害を負わせたという業務上過失傷害の事案である。
 被告人は,本件事故当時の気象及び道路状況等に照らせば,路面が凍結している
可能性に思いを致すべきであったのに,路面は凍結していないと軽信し,時速約5
0キロメートルで走行中に,不用意なハンドル操作をしたものであって,その過失
の程度は低いとはいえず,被害者にこれといった落ち度はなかったにもかかわらず
意識障害等の重篤な傷害を負わせ,植物人間状態にさせたその結果は死亡事故に匹
敵するほど極めて重大であること,被害者の家族の被害感情には厳しいものがある
ことなどを考え併せると,被告人の刑事責任は軽視することができない。
 しかしながら,本件は,凍結路面でハンドル操作を誤り車輪が滑走したことによ
る事故で,被告人自身がことさら危険な運転行為に及んだものではないこと,示談
は成立していないものの,将来,保険により適正な金銭的賠償が見込まれること,
事故後被害者の見舞いに行き親族に見舞金を支払うなどの誠意を示していることな
ど,被告人のために酌むべき情状も見られる。
 そこで,以上の情状を総合考慮し,主文の刑を定めた上,その刑の執行を猶予す
ることとした。
(求刑・禁錮1年2月)
(検察官鈴木淳史 出席)
平成15年5月14日
神戸地方裁判所第4刑事係甲
          裁判官  笹野明義

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