弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人中村達の上告理由第一点について。
 民法八二六条にいう利益相反行為に該当するかどうかは、親権者が子を代理して
なした行為自体を外形的客観的に考察して判定すべきであつて、当該代理行為をな
すについての親権者の動機、意図をもつて判定すべきでないとした原判決の判断は
正当であつて、これに反する所論は採用できない(昭和三六年(オ)第一〇一三号
同三七年二月二七日第三小法廷判決、最高裁判所裁判集民事五八号一〇二三頁参照)。
 論旨は、本件各約束手形(論旨は、甲第一号証ないし第一〇号証というが、乙第
一号証ないし第一〇号証の誤記と認める。)は上告人ら三名の親権者たるDがその
法定代理人として振り出し、かつ、D個人としても振り出したもの、すなわち上告
人らとDとの共同振出にかかるものであるから、共同振出人相互の関係において利
益相反が考えられるところ、この点について原判決の判断には、法律解釈の誤り、
理由不備の違法があるという。
 しかし、原判決は、挙示の証拠関係に徴し、所論手形行為の原因関係たる貸付は
上告人ら自身が債務者となり、Dはその連帯保証人となつたものであること、およ
び、本件各手形はいずれも右借受金支払のために振り出されたものであることを認
定し、右事実関係を外形的に観察した場合、上告人らと親権を行なうDとの間に民
法八二六条所定の利益相反関係は存しない旨判示しているのであるから、所論理由
不備はなく、かつ、その判断は首肯できる。また、所論挙示の大審院判例は、いず
れも本件と事実関係を異にするものであつて、原判決に右判例違反はない。
 従つて、論旨はすべて採用できない。
 同第二点について。
 本件借受金はDの経営する所論会社の営業資金に充てられるものであること、従
つて上告人ら名義を使用してDがこれを借り受けるものであり、Dによつて代理さ
れた上告人らの意思表示はその真意に出たものでないことを被上告銀行が知つてい
たとの所論は、原審の認定にそわないことをいうものである。原判決が右事実を認
定できないとした点に所論違法はない。
 論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨、事実の認定を非難するに
帰着し、すべて採用できない。
 同第三点について。
 原判決が、その認定の事実関係のもとで、Dの本件代理行為の効力を否認するに
足りる背信性、反道徳性はないとした判断に所論違法はない。
 論旨は、原審認定にそわないことを前提として原判決の違法をいうものであつて、
採用できない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    松   本   正   雄

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