弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被上告人らに関する部分を破棄する。
     本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人弁護士塚本安平の上告理由第一、第二点について。
 所論の点に関する原判示は所論も言つているとおり次の如くである。すなわち、
被上告人らは本件身元保証契約の成立した昭和二八年一〇月二〇日以後に生じた損
害のみを賠償する義務を負担すべき筋合であるところ、本件においては訴外Dが雇
傭された昭和二七年九月一日以降昭和二九年一一月一六日までに、昭和二八年度産
粳玄米上位二四〇俵、同下位四俵、昭和二九年度産粳玄米下位一四俵、同年度産裸
麦上位一三俵、下位三六俵、小麦五等一八俵計三二五俵の欠量の生じたことが認め
得るに止まり、右欠量が本件身元保証契約成立の日である昭和二八年一〇月二〇日
以後に生じたものであるか、あるいはその日以前既に生じていたものであつて、単
に右契約成立の時までに発覚しなかつたものであるかは全く不明であつて、結局右
欠量が右昭和二八年一〇月二〇日以後に生じたものであり、従つてこれによる損害
が右身元保証契約に基いて被上告人らの賠償すべきものであるか否かについては立
証なきに帰するというのである。しかしながら、昭和二九年度産米麦が右昭和二八
年一〇月二〇日以前に欠量になるものとは考えられず、また、昭和二八年度産米に
しても、稲の刈取、乾燥、脱穀、俵詰、供出等の順序を経て、大体その年の一〇月
末頃に政府倉庫に入庫さるべきものである(本件産米は入庫米である)ことの顕著
な事実に鑑みるときは、前示昭和二八年一〇月二〇日以前に判示の如き多量の欠量
を生じたるものとは考えられない。されば判示の欠量の大部分は、原判文上特段な
事情の認められない本件においては本件身元保証契約成立以後に生じたものであり、
従つてこれに因る損害は被上告人らにおいて賠償の義務あるを当然と解すべきであ
る。然るに原判決は上叙の点に思を致すことなく、ただ漫然と、前示欠量が本件身
元保証契約成立以後に生じたものであるかは不明であり、従つて右欠量による損害
が被上告人らにおいて賠償すべき義務あるものであるか否かについては結局立証な
きに帰すると断じ去つたのは、審理不尽にあらずんば理由不備の誹を免れないもの
であつて、本上告理由は結局理由あるに帰し、原判決は破棄されなければならない。
 よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    高   木   常   七

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