弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件各控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決のうち控訴人ら敗訴部分を取り消す。
2被控訴人は,控訴人Aに対し,209万円及びこれに対する平成25年3月
15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被控訴人は,控訴人Bに対し,110万円及びこれに対する平成25年3月
15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要等(本判決に特に掲記する以外,略称等は原判決の例による。)
1傷害被疑事件の被疑者(本件被疑者)の国選弁護人に選任
された佐賀県弁護士会所属の弁護士である控訴人Aが,平成25年3月
13日,佐賀少年刑務所(本件刑務所)に接見に赴き同日午前9時10
分頃から,面会室1において本件被疑者との接見をした際に本
件被疑者が逮捕時に拘束されて腕を負傷した旨申し出たことから,同日
午前9時20分頃,控訴人Aにおいて,その負傷状況を記録するために,
面会室に許可なく持ち込んでいた携帯電話のカメラ機能を用いて,面会
用のアクリル窓越しに本件被疑者を撮影しようとしたところ,面会室1
の本件被疑者側扉の外側通路(本件通路)に設置された椅子(本件待機
場所)に座って待機していた本件刑務所の職員であるCが,被疑者側扉
の視察窓からこれを視認したため,同扉を開けて控訴人Aに対し撮影行
為を中止するよう注意したこと(本件制止行為1)同日午前9
時23分頃,Cから報告を受けた本件刑務所の職員である首席矯正処遇
官Dが面会室1に赴いたところ,控訴人Aが,携帯電話を用いて本件被
疑者の撮影行為を行っているのを現認したため,これを中止するように
求めるなどしたことの同日午前
9時56分頃から,D首席が弁護人待合室で控訴人Aと面談し,同控訴
人に対し,撮影した本件被疑者の写真を消去するように求めたこと(本
件制止行為3),同月15日,控訴人Aと,同じく佐賀県弁護士
会に所属する弁護士で本件被疑者の弁護人になろうとする者である控訴
人Bが,本件刑務所を訪れ,本件被疑者との接見を申し出た際,控訴人
Bが,面会室内にカメラを持ち込んで本件被疑者の負傷状況の写真撮影
をする旨述べたのに対し,D首席らが控訴人らの接見は受け入れるが,
カメラを持ち込んで撮影をするというのであれば敷地内に通すことはで
きないと回答したこと(本件制止行為4)が,いずれも弁護人あるいは
弁護人となろうとする者(弁護人等)である控訴人らの接見交通権を不
当に侵害するものであって
為1に先立ち,Cは面会室内を継続的に視認していた(本件視認行為)
ものであり,これは控訴人Aの接見交通権を侵害するものであって違法
的に聞き
取ることができる位置にあることから,Cが本件待機場所1で待機して
いたことは控訴人Aの接見交通権を侵害するものであって違法であり,
すること
ができ,また会話の内容を把握することができるような構造になってい
るから,本件刑務所は営造物が通常有すべき性能を欠いているとして,
控訴人Aが,ついては国家賠償法(以下「国賠法」と
いう。)1条1項に基づきついては同法2条1項に基づき,
同控訴人が精神的苦痛を受けたことに対する慰謝料200万円及び弁護
士費用20万円並びにこれらに対する最終の不法行為の日である平成2
5年3月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害金の支払を求め,控訴人Bが,(本件制止行為4)につい
て,国賠法1条1項に基づき,同控訴人が精神的苦痛を受けたことに対
する慰謝料100万円及び弁護士費用10万円並びにこれらに対する不
法行為の日である平成25年3月15日から支払済みまで民法所定の年
5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審は,刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)39条1項にいう
「接見」とは面会行為そのものを意味するにとどまるものの,被疑者の
防御活動を十分に保障するためには面会を補助する行為についても,同
条1項の保障が及ぶ場合があると解すべきところ,写真撮影行為につい
ては,「接見」そのものには当たらず,面会を補助する行為としても同
条1項の保障が及ぶものではないから,刑事収容施設及び被収容者等の
処遇に関する法律(収用法)117条,113条1項柱書及び同項1号
ロに定める行為(規律等侵害行為)に該当することを理由に面会の一時
停止の措置を採ることは刑訴法39条1項に違反するものではないとし
た上で,刑事施設の長が,面会室への撮影機器の持込みを禁止すること
は庁舎管理権に基づき適法にされたものであり,弁護人等である控訴人
らにも適用されるところ,本件制止行為1ないし4は,控訴人らによっ
て規律等侵害行為が行われ,あるいは,それが行われることが客観的に
明らかであるという状況を前提に行われたものであるから,違法性はな
いとして,の各行為についての控訴人らの請求をいずれも棄却し,
同Cの視認行為は規律等侵害行為が行われる具体的なおそれ等がな
いにもかかわらず,継続的に行われたものであるとは認められないとし
て,この点にかかる控訴人Aの請求を棄却し,同③については,Cが面
会室1内の会話をおおむね聞き取ることのできる本件待機場所に待機し
ていたと認められるとした上で,このような行為は,立会人なき接見を
保障した刑訴法39条1項に違反するとして,この点についての控訴人
Aの請求を慰謝料10万円及び弁護士費用1万円並びにこれらに対する
遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却した(な
。)。
これに対し,控訴人らが,それぞれ控訴人ら敗訴部分の取消しを求め
て控訴した。
2前提事実,争点及びこれに対する当事者の主張は,当審における当事者の主
張を踏まえて,原判決に後記3のとおり補正し,同4のとおり,当審における
控訴人らの新たな主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2
事案の概要」の3ないし5(原判決2頁10行目から16頁7行目まで)に記
載のとおりであるから,これを引用する。
3原判決の補正
原判決7頁7行目と8行目の間に,次のとおり加える。
「仮に原判決がいうような内在的制約として一定の場合に視認行為が適法と
される余地があるとしても,この点について原判決の示した基準は,刑事施
設の適正な規律及び秩序の維持に支障を及ぼす具体的なおそれがある場合と
いう抽象的なものにすぎず,憲法に由来する権利である接見交通権の制約を
認める場合の基準としては不十分である。視認行為が許される場合があると
しても,刑訴法39条1項の趣旨に照らし,極めて限定的な場合に限られ,
かつ,一見明白な基準によってのみ許容されるべきである。」
同8頁25行目と26行目の間に,次のとおり加える。
「なお,原判決は,「接見」とは別に,「面会を補助する行為」という概
念を用い,これにも刑訴法39条1項の保障が及ぶ場合があるとして検討
を行っているが,そもそも「接見」とは被疑者と弁護人が会って話をする
ことのみを意味するとは解釈できないのだから,「面会を補助する行為」
という概念を用いなくとも,写真撮影は「接見」に含まれ,接見交通権の
保障が及ぶ。」
同9頁14行目の「主張するが,」の次に,「収用法117条は接見の一
時停止に関するもので接見交通権を制限するものであり,刑訴法39条の構
造からすれば,接見交通権の制限は同条2項に定めるところにより,被疑者
の逃亡,罪証の隠滅などの危険性が認められる場合に限られるから,」と加
え,16行目に「具体的な危険性」とあるのを,「具体的事実に基づく現実
的危険性」と改める。
同22行目と23行目の間に次のとおり加える。
仮に収用法独自の制限が可能であったとしても,同法73条2項から
すれば,収容施設の規律・秩序を適正に維持するための措置は必要な限
度を超えてはならないのであり,弁護人等の行う写真撮影が,弁護活動
の一環として行われている以上,その重要性に鑑み,具体的事実に基づ
く現実的な危険が認められない限り,収容施設の規律・秩序を害する行
為とはいえず,これを規制することは必要な限度を超えている。
さらに,弁護人等による写真撮影が,形式的に施設長の禁止措置に反
していても,刑事施設における逃亡,罪証隠滅の現実的な危険が生じる
わけではないのだから,収用法113条1項ロにいう刑事施設の規律及
び秩序を害する行為に当たることにはならない。」
同12頁6行目に「E首席」とあるのを「D首席」と改める。
同13頁13行目と14行目の間に次のとおり加える。
「そもそも,D首席らは,控訴人らに対し,カメラを持ち込まなけれ
ば面会は構わないと述べていたのであり,接見自体は拒絶していない。
控訴人Aは,3月13日の時点で写真撮影を行い,施設側からの消去
要請を拒否し,控訴人Bは,同月15日にはカメラを持ち込まない限
り接見の用を果たさないと考えると述べており,面会中に写真撮影を
行う意思を有することを明らかにし,そのような行動に出ることは明
らかであったのだから,改めて,接見中におけるそのような行為をあ
らかじめ拒絶したものである。」
同26行目と14頁1行目の間に次のとおり加える。
「なお,かかる制止行為は収用法117条,113条1項に基づくも
のであり,それに先立ち,施設の長の承諾は不要である。仮に承諾を
要すると解したとしても,本件制止行為4に先立ち,D首席らは施設
長の承諾を得ていた。」
4当審における控訴人らの新たな主張
控訴人らの主張
アそもそも未決拘禁者については面会の相手方に制限はなく(収用法
115条),刑事収容施設の面会室は外部の者の面会の権利行使の場
として予定されている。すなわち,刑事収容施設の中でも少なくとも
面会室とこれと一体となる待合室は,公務員の執務場所としての公物
ではなく,国民一般の利用が予定された公共用物である。
公共用物の使用関係は許可使用となり,許可不許可の判断について
は,行政権の行使である以上,法律の留保が妥当し,その基準は法律
に明示される必要がある。またその制限事由は限定的に解されなけれ
ばならない。
刑事施設の長は,収用法114条により面会の態様の制限を定める
ことができるものの,法律の留保の要請から,施設の長が面会室の使
用を拒否することができるのは同条に基づき定められた面会態様の制
限に違反する場合のみであり,そのほかは面会室の使用を許可しなけ
ればならないのであって,明文の法に基づかず,一般的な所有権等に
基づく管理権で面会室の使用を制限することはできない。仮に同法1
13条1項1号ロに基づく場合であるとしても,その解釈は限定的に
行われる必要がある。
イ控訴人らが面会室内で写真撮影を行い,あるいは行おうとしたこと
は,同法114条に定める事由に該当しない。
また,その実質をみても,上記写真撮影は,本件被疑者と第三者と
の意思疎通を図ろうとしたものではなく,これによる罪証隠滅の危険
性は抽象的なものにとどまっている。本件被疑者の同意がある以上,
プライバシー侵害の問題も生じていない。刑事施設の保安警備上の危
惧も抽象的なものにとどまる。写真撮影が行われたことに対し,何ら
かの措置を採るにしても,接見を中断する必要はなく,接見終了後に
適切な措置を採ることで足りたものであり,そのような措置を採れな
かったという事情も見当たらない。本件制止行為4に至っては,被控
訴人が主張する弊害自体が抽象的なものにとどまっている。すなわち
同法113条1項1号ロ(刑事施設の規律及び秩序を害する行為)に
も該当しないというべきである。
ウしたがって,刑事施設の長が,本件刑務所面会室の利用を拒否する
権限はなく,本件各制止行為はいずれも違法なものである。
被控訴人の主張
刑事施設は,法務省設置法9条1項規定の事務(被収容者を収用し,
被収容者に対し必要な処遇を行うこと)をつかさどる施設であり,刑事
施設の庁舎はかかる国の事務の用に供する財産であるから国有財産法3
条2項1号の公用財産に該当する。
面会室は物理的に刑事施設の庁舎内の一室であり,機能的にも被収容
者を収用している区域に密接した場所として刑事施設に含まれるから公
用物であることは明らかである。
刑事収容施設における面会は,被収容者に対する処遇という事務の一
内容であり,面会室で面会ができるのは刑事施設の長が,当該面会室を
面会の場所として指定したことの反射的効果にすぎない。
公共用財産は,国において直接公共の用に供し,又は供するものと決
定したものをいい(国有財産法3条2項2号),公共の用に供するとは
一般公衆の自由な使用の目的に供することをいう。刑事施設の面会室は,
一般国民が自由に立ち入って自由に利用することができることを一般的
に認められた場所ではないから,公共用財産に当たらない。
刑事施設の面会室が公民館などと同様に公共用物(公共用財産)であ
るとする控訴人らの主張は,独自の見解にすぎず,失当である。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,本件各控訴はいずれも理由がないものと判断する。その理由は
以下のとおり,原判決を補正し,後記2のとおり当審における控訴人の新たな
主張に対する判断を付加するほか,原判決「第3当裁判所の判断」(原判決
16頁8行目から30頁12行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用
する。
のとおり加える。
「刑訴法39条1項が規定する接見交通権は,弁護人依頼権を保障する憲
法34条の趣旨にのっとり,身体の拘束を受けている被疑者等が弁護人と
相談し,その助言を受けるなど弁護人等から援助を受ける機会を確保する
目的で設けられたものであり,その意味で刑訴法の上記規定は憲法の保障
に由来するものであるということができる。もっとも憲法は刑罰権の発動
ないし刑罰権発動のための捜査権の行使が国家の権能であることを当然の
前提とするものであるから,被疑者と弁護人等との接見交通権が憲法の保
障に由来するからといって,これが刑罰権ないし捜査権に絶対的に優先す
るような性質のものということはできない。(最高裁判所平成11年3月
24日大法廷判決・民集53巻3号514頁参照)
そして,このような刑罰権ないし捜査権の発動のために,刑訴法の規定
に基づき,逃亡又は罪証隠滅の防止を目的として被疑者等の居住を刑事施
設内に限定する未決勾留という制度を認め,さらには,刑事施設では多数
の被拘禁者を外部から隔離して収用し,集団として管理する必要があるこ
とからすれば,同施設内で内部における規律及び秩序を維持し,その正常
な状態を保持する必要があるところ,憲法がこのような必要性を否定する
ものと解することはできないから,憲法34条は,被疑者等に対して弁護
人等から援助を受ける機会を持つことを保障するという趣旨が実質的に損
なわれない限りにおいて,接見交通権の行使と刑事施設の規律及び秩序の
維持を目的とする調整の規定を設けることを否定するものではないという
べきである。」
同18頁11行目と12行目の間に,次のとおり加える。
「なお,この点につき,視認行為の許される場合の基準が抽象的にすぎ規
範としての妥当性を欠くということはできない。」
同19頁19行目の「検討すると,原告Aは」とあるところ,次のとおり
改める。
「検討すると,上記のとおり,接見とは,自己の防御活動に必要な助言を弁
護人等から受けるために被疑者と弁護人等とが面会をする行為をいうとし
ても,被疑者が面会に際し訴えた内容をその場で記録化することが直ちに
これを補助する行為に当たらないとはいえない。しかしながら,その手段
としては種々のものが考えられるところであるから,その手段を問わず面
会内容を記録化することが全て当然に面会を補助する行為に当たるとまで
はいえない。控訴人らは,面会内容の記録化はその手段を問わず,全て接
見(ないしは面会を補助する行為)に含まれる前提で主張を行っているが,
その前提は採用できない。
控訴人Aは,」
同20行目の「あるが,これは,」とあるのを,「あるが,本件被疑者が
逮捕時に負傷したことを訴えたことや,その負傷状況について記録化する方
法は写真撮影に限られるものではないし,かかる行為は,本件被疑者が逮捕
時に負傷したと訴えたという面会内容を記録に残すにとどまらず,」と改め,
同22行目の「新たな証拠」とあるのを,「面会時における負傷の状況を明
らかにする新たな証拠」と改める。
同20頁11行目の「これらの点に鑑みれば,」とあるのを,「以上に述
べた写真撮影によって面会内容を記録化しなければならないという必要性の
程度,新たな証拠作出目的も含まれるという点も踏まえた上での面会行為と
の関連性,そして電磁的記録として保存された画像の有する情報量を踏まえ
た弊害などを考慮すると,」と改める。
同22頁15行目と16行目の間に次のとおり加える。
「エなお,控訴人らが指摘するように,「面会を補助する行為」という概
念を用いることなく,刑訴法39条1項にいう「接見」の概念(あるい
は,上記最高裁判決にいう「その助言を受けるなど」の行為のうちの
「など」が指し示すもの)の中に,原判決のいう「面会を補助する行為」
の一部が含まれ,その保障が及ぶと捉えた上で,かかる広義の「接見」
の概念に本来的な面会以外にどのような行為が含まれると考えるべきか,
そして,それに写真撮影行為が含まれるかという議論を行ったとしても,
これまで述べたのと同様の理由から,写真撮影行為は同条1項にいう接
見には該当せず,その保障は及ばないという結論は左右されないものと
いうべきである。」
同18行目と19行目の間に,「そもそも写真撮影については,接見交通
権に含まれないから,控訴人Aが写真撮影を行ったことを理由に接見を一時
停止させたことが,接見交通権を侵害するものとして直ちに違法となるもの
ではない。
次に,」と加える。
同23頁3行目に「ロ)は,刑訴法39条1項」とあるのを,「ロ)や,
かかる規定を設けることそれ自体についても,刑訴法39条1項」と改める。
同23頁11行目と12行目の間に次のとおり加え,12行目冒頭に「し
かしながら,」とあるのを,「また,」と改める。
「収用法118条5項によれば,同法114条の規定が弁護人と未決拘禁
者の面会に適用されないことは明らかであるが,同法113条の適用まで
除外されているとはいえない。むしろ同法117条で,弁護人等と未決拘
禁者との面会の場合には同法113条1項1号ロに該当する場合に限り,
同条が準用されるとされている。刑事施設及び被収容者の処遇に関する規
則75条は遵守事項の掲示の要否についての規定であり,同条において弁
護人が掲示の対象になっていないからといって,収用法113条の適用が
除外されることの根拠になるとはいえない。」
同24頁18行目と19行目の間に次のとおり加える。
「控訴人らは,収用法117条は接見の一時停止に関するもので接見交通
権を制限するものであり,刑訴法39条の構造からすれば,接見交通権の
制限は同条2項に定めるところにより,被疑者の逃亡,罪証の隠滅などの
危険性が認められる場合に限られ,かかる危険性があるというためには具
体的事実に基づく現実的な危険性が認められることが必要であり,また,
仮に収用法独自の観点から制限が許されるとしても,刑事施設の規律及び
秩序を害する行為が行われる具体的事実に基づく現実的危険性が認められ
る場合に限定されるから,写真撮影は規律等侵害行為に該当しないとも主
張する。しかし,面会室内への撮影機器や携帯電話の持込み及び面会室内
での写真撮影行為が,逃亡又は罪証隠滅並びに刑事施設の適正な規律及び
秩序の維持に支障を及ぼすおそれは既に述べたとおり認められる。控訴人
らの主張する具体的事実に基づく現実的危険性が,これを上回るものを意
味するのであれば,常にそのような危険性が認められることを必要とする
とまで解することはできず,控訴人らの主張は採用することができない。」
同26行目と25頁1行目の間に,次のとおり加える。
「なお,控訴人らは,写真撮影行為が実質的には遵守事項に違反しない旨
も主張するが,上記のとおり遵守事項の内容自体は合理性のあるものであ
って,控訴人Aに対しても適用されるべきものであるところ,適法に定め
られた遵守事項に外形的に反する行為があったことから採られた本件制止
行為1,2について,再度,その行為の現実的危険性などを吟味し,その
違法性を検討する必要は,特段の事情がない限りないものというべきであ
り,本件においてそのような特段の事情は見当たらない。」
同26頁18行目から27頁6行目までを削除する。
同27頁7行目に「これを本件についてみると」とあるのを,「
また,本件においては,」と改める。
同16行目に「E首席」とあるのを「D首席」と改める。
同21行目に「に照らせば」とあるのを,「といった事実が認められる。」
と改める。
同21行目「原告A」から同23行目末尾までを削除し,改行の上,次の
とおり加える。
「そうするとD首席らは,控訴人らの申し出た接見自体を拒んでいるわけ
ではなく,接見に際し写真撮影を行うことを拒んでいたにすぎないところ,
控訴人らは,当初から,接見時に写真撮影を行うことを目的に接見を申し
入れたもので,写真撮影を拒絶されたことから,接見を行うことなく立ち
去ったというべきである。
すなわち本件制止行為4は,接見を拒んだものではないから,接見交通
権を侵害しているとはいえないし,接見に際し行う写真撮影については,
接見交通権の対象ではなく,むしろ規律等侵害行為に該当するから,D首
席らがあらかじめこれを拒むことは,遵守事項の遵守を求めるものにすぎ
ず,何ら違法とはいえない。」
同24行目同26行目「しかしながら,」
の次に,「D首席らは接見自体を拒絶したわけではなく,」を加える。
同28頁1行目「に加え,」から同7行目までを削除し,「からすれば,
刑事施設長の承諾を改めて得ないまま,控訴人らの面会希望を拒絶したこと
に違法はない。」と改める。
同29頁末尾と30頁1行目との間に次のとおり加える。
「6争点6(本件刑務所の構造が国賠法2条の「瑕疵」に該当するか)
拘禁の目的や施設管理の必要性などからすると,面会室内にある
被疑者の様子や物音をおよそ把握することができないような設備を
刑務所施設として要求するのは妥当ではなく,面会室内の音が外部
に漏れるからといって,直ちに接見交通権を侵害するものとはいえ
ない。本件刑務所における面会室1については,Cが本件待機場所
に待機していたことから接見内容を聴取できる状態にあったにとど
まり,待機場所を変更することでこれを避けられる。そうすると,
仮に国賠法2条の「瑕疵」の概念を控訴人らが主張するように捉え
ることができるとしても,本件刑務所に国賠法2条にいう瑕疵があ
ったとはいえない。
よって,この点に関する控訴人Aの主張は理由がない。」
同30頁1行目冒頭「6」を「7」と改める。
2控訴人の当審における新たな主張に対する判断
刑事施設は,法務省設置法9条1項規定の事務(被収容者を収用し,被
収容者に対し必要な処遇を行うこと)をつかさどる施設であり,刑事施設
の庁舎はかかる国の事務の用に供する財産であるから国有財産法3条2項
1号の公用財産に該当し,公共用財産には該当しない。
刑事収容施設における面会は,被収容者に対する処遇という事務の一内
容であり,面会室で面会ができるのは刑事施設の長が,当該面会室を面会
の場所として指定したことの反射的効果にすぎないというべきである。
したがって,刑事施設の面会室が公共用財産であることを前提にした控
訴人らの主張はその前提を欠くものであり,採用することができない。
3なお,Cが本件待機場所で待機していたことによる控訴人Aに対する接見交
通権の侵害について,諸事情を考慮し,控訴人Aに生じた慰謝料の額を10万
円とし,本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち,かかる違法行為と因果関係
のある損害の額を1万円とした原判決の判断は相当である。
4そうすると,控訴人Aの請求については,Cが本件待機場所で待機していた
ことに関し11万円とこれに対する遅延損害金の限度で認容し,その余の請求
を棄却し,控訴人Bの請求については,これを全部棄却した原判決は相当であ
って,本件各控訴はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,
主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所第3民事部
裁判長裁判官阿部正幸
裁判官坂本寛
裁判官横井健太郎

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