弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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            主       文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
 ただし,被告が原告Aに対して,平成4年6月8日付けでした別表1目録(3)の「従前の土地」欄記載の土地につき,
同目録(3)の「換地処分後の土地」欄記載の土地を換地とする旨の換地処分は違法である。
2 訴訟費用中,原告Aと被告との間に生じたものは,これを7分し,その6を同原告の,その1を被告の負担とし,原告
A以外の原告らと被告との間に生じたものは,原告A以外の原告らの負担とする。
     事       実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1)被告が原告Aに対し,別表1(本件換地処分一覧表)目録(1)ないし(7)の「従前の土地」欄記載の土地について,平
成4年6月8日付けでした換地処分を取り消す。
(2)被告が訴訟承継前の原告Bに対し,同目録(8)ないし(10)の同欄記載の土地について,同日付けでした換地処分を
取り消す。
(3)被告が原告Cに対し,同目録(10)ないし(13)の同欄記載の土地について,同日付けでした換地処分を取り消す。
(4)被告が原告Dに対し,同目録(14)及び(15)の同欄記載の土地について,同日付けでした換地処分を取り消す。
(5)被告が原告Eに対し,同目録(16)の同欄記載の土地について,同日付けでした換地処分を取り消す。
(6)被告が原告Fに対し,同目録(17)の同欄記載の土地について,同日付けでした換地処分を取り消す。
(7)被告が原告G及びHに対し,同目録(18)及び(19)の同欄記載の土地について,同日付けでした換地処分を取り消
す。
(8)訴訟費用は被告の負担とする。
2 請求の趣旨に対する答弁
(1)原告らの請求をいずれも棄却する。
(2)訴訟費用は原告らの負担とする。
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1)当事者等
ア 被告は,土地区画整理法(ただし,平成11年7月法律第87号による改正前のもの。以下「整理法」ということがあ
る。)3条3項に基づき,藤沢都市計画事業西部土地区画整理事業(以下「本件事業」という。)の施行者である。
イ(ア) 原告Aは,被告の施行する本件事業の施行地区(以下「本件施行地区」という。)内に,別表1(本件換地処分一
覧表)目録(1)ないし(7)の「従前の土地」欄記載の土地(以下,同目録(1)の「従前の土地」について,「本件従前地(1)」のよ
うにいうことがある。また「神奈川県藤沢市a字」を省略して「bcの土地」のようにいうこともある。)を所有していた。
(イ) 訴訟承継前の原告B(以下「B」という。)は,本件施行地区内に本件従前地(8)ないし(10)の土地を所有してい
た。Bは,平成12年4月5日死亡し,妻子の原告I,同J,同C,同K,同L及び同Mがその訴訟上の地位を承継した。
(ウ) 原告Cは,本件施行地区内に本件従前地(10)ないし(13)(本件従前地(10)はBと共有である。)の土地を所有し
ていた。なお,原告Cは,Bの訴訟承継人としての原告でもある。
(エ) 原告Dは,本件施行地区内に本件従前地(14)及び(15)の土地を所有していた。
(オ) 原告Eは,本件施行地区内に本件従前地(16)の土地を所有していた。
(カ) 原告F(以下,原告D,E及びFを併せて「原告Dら」ということがある。原告E及びFは,原告Dの子である。)は,
本件施行地区内に本件従前地(17)の土地を所有していた。
(キ) Nは,平成4年6月8日当時,本件施行地区内に本件従前地(18)及び(19)を所有していた。同人は,同年7月17
日に死亡し,妻子の原告G及び同H(以下「原告Gら」ということがある。)が同人の権利義務関係を相続した。
(2)本件換地処分
 被告は,原告らに対し,本件事業の施行者として,平成4年5月26日神奈川県知事に認可された換地計画に基づ
き,同年6月8日付けで,別表1(本件換地処分一覧表)の「従前の土地」欄記載の原告ら所有の各土地について,同表
「換地処分後の土地」欄記載の各土地を換地として指定する処分(以下,併せて「本件換地処分」という。また,本件従前
地(1)に対応する換地を「本件換地(1)」,同処分を「本件換地処分(1)」のようにいうことがある。)をし,本件換地処分は同年
8月7日に公告され,翌日発効した。
(3)土地評価基準違反(違法事由その1)
 本件換地処分における従前地及び換地の評価は,本件事業土地評価基準(乙97の3。以下「本件土地評価基準」
という。)に基づいて行われなければならない。
 本件土地評価基準11条(2),(4),(5)及び(6)には,不整形地(上記基準においては「不正形地」と表記されているも
の),三角地,傾斜地及び崖地・法地について,それぞれ修正率を乗ずることが定められている。ところが,本件換地処分
は,上記4つの修正要素を無視しており,その違法性は重大かつ明白である。この点は,本件換地処分に共通する違法
事由である。
(4)公平原則違反(違法事由その2)
ア 不整形地等を有する者と有しない原告らとの不公平
 換地処分においては,換地と従前地とが同一条件にあること(縦の照応)を要し,かつ,他の地権者の場合と比較
して公平に扱われていなければならない(横の照応又は公平の原則)。
 しかしながら,(3)で主張したように,本件換地処分においては,不整形地,三角地,傾斜地及び崖地・法地につい
て必要な修正がされていないため,不整形地等を有していた地権者は,それを有していない原告らよりも有利な扱いを受
けた。
 特に,被告ないし財団法人藤沢市開発経営公社(以下「公社」という。)は,本件換地処分前に,山林(崖地・法地)
であった土地の多くを地権者から買収して取得しており,被告は,被告ないし公社が取得した従前地について,傾斜地及
び崖地・法地による修正をせずに,宅地造成した上で換地処分をした。したがって,原告らは,少なくとも被告及び公社と
比較すると著しく不利な扱いを受けた。
イ 関係人との横の照応原則違反
(ア) 山林から平坦地への換地
 別表2(関係人換地処分一覧表)目録(1)ないし(9)・(14)・(15)の従前地(以下「関係人従前地(1)」のようにいうこと
がある。なお,原告らの主張書面上,関係人従前地(15)について「藤沢市ad番(甲)」と表示するところがあるが,正しくは
別表2目録(15)のとおりである。)に対して,本件事業において換地処分(関係人従前地(1)に対応する換地を「関係人換
地(1)」,同処分を「関係人換地処分(1)」のようにいうことがある。)がされているところ,これらの関係人従前地は,いずれも
現況が山林(傾斜地)であるにもかかわらず,平坦地に換地されており,かつ減歩率が不相当に低く算定された。
 また,同目録(7)及び(8)の換地処分においては,山林から宅地へ換地されたが,換地についてはその隣地である
公社所有地内に高さ約4ないし6メートル(以下「m」と略記する。)の間知ブロックによる石積擁壁(間知石積擁壁)を築造
して,換地を宅地として利用できるように造成しており,宅地として利用できない土地が生ずる後記原告らの待受擁壁の築
造方法と明らかに異なり,この点でも公平の原則に違反する。
(イ) 減歩率の不公平
 関係人換地処分(10)ないし(13)・(16)ないし(21)における減歩率は,原告らに対する換地処分における減歩率と比
較して際だって不相当に低い。特に関係人換地処分(16)ないし(18)は,いずれも復員が18mの幹線道路に接した代表路
線価の著しく高い換地に飛び換地されているにもかかわらず,減歩率が際だって低い。
 また,関係人換地処分(10)ないし(12)は,従前地の地盤が軟弱であるにもかかわらず,地盤が堅固な土地(宅地・
畑)に換地されており,同(13)では,幹線道路に接した路線価が著しく高い角地に換地されているにもかかわらず,減歩率
は32.71パーセント(以下「%」と略記する。)であり,合理性のある数値ではない。
 被告は,本件事業における各従前地及び換地について,明確な評価基準に基づかず,数字として表面に現れ
ない形で実質上の評価に差を付けていたのであるから,本件事業における換地処分の客観性,公平性及び信用性等に
ついては,極めて大きな疑問がある。
(5)各原告個別の違法(違法事由その3)
ア 本件換地処分(1)ないし(7)の違法(原告A関係)
(ア) 軟弱地盤を換地としたことの違法
a 軟弱地盤を換地とすることの非許容性
 本件換地(1)・(3)・(6)②・(7)は,いずれも地盤が軟弱で木質系2階建の建物の支持地盤として適切とされる地耐
力がない。そのような各土地を換地とした本件換地処分(1)・(3)・(6)・(7)は,憲法29条1項,整理法1条・2条1項(都市計画
法12条・13条1項),整理法86条3項に違反し違法である。
 この点について,被告は,上記土地に対する換地処分は「農地の造成」を目的としてされたから,地耐力の点は
問題とならない旨主張する。しかしながら,土地区画整理事業は,都市計画法及び整理法に従い,「宅地の利用増進を図
る」ため「土地の区画形質の変更」をする事業(整理法2条1項)であるところ,「宅地の利用増進を図る」ためとは,市街地
開発事業として宅地の利用を改善することであって,「農地の利用の増進を図る」ことではなく,「土地の区画形質の変更」
とは,土地の区画を適正にし,土地の形状・土質を改良して適正な宅地を造成することであり,「適正な宅地の造成」とは,
農地の造成のことではない。
 土地区画整理事業は,上記の市街地開発事業として「適正な宅地の造成」のため,その事業施行者に強制換
地・強制減歩の強制処分権を法定付与した強行法規事業(都市計画事業・市街地開発事業)であり,これに反することは
違法である。被告の上記主張は,都市計画法及び整理法に反し,失当である。
b 照応原則違反
 本件従前地(1)・(3)・(6)・(7)は,いずれも何らの地盤改良工事をすることなく,木質系2階建ての建物の支持地盤
として適切とされる地耐力が備わった土地である。ところが,aのとおり,上記各従前地に対する換地は,地盤が軟弱で木
質系2階建の建物の支持地盤として適切とされる地耐力がないから,上記各従前地に対する換地処分は,整理法89条1
項に違反し,違法である。
(イ) 従前地の水田修正の違法
a 本件換地処分における従前地の評価の基準時は昭和47年2月1日(事業計画の決定が公告された日)であると
ころ,原告Aが所有する本件従前地(1)①ないし⑥・(3)④は,いずれも土地の現況が「水田」とされ,評価についてマイナス
修正(-10%)がされている。
 しかしながら,上記従前地の昭和47年2月1日時点での現況は,いずれも水田ではなかったから,マイナス修
正は事実に反する。
 この点について,被告は,昭和47年2月1日以前に先行して整地工事を始めたものについては,整地工事に着
手する直前の時点(昭和45年5月)の状態で従前地の評価を行った旨主張するが,少なくとも本件従前地(3)④は,遅くと
も昭和40年には,原告Aが自ら整地工事を行っていたものであるから,同土地について現況を「水田」として,マイナス修
正をする必要はなかった。
b また,被告は,関係人O所有のbeの土地(別表2目録(17)の従前地の一部)の整地工事をしているから,被告の
上記aの主張に従えば,上記土地の基準時の現況を「水田」と認定するべきであるが,水田としてマイナス修正されていな
い。
 被告は,O所有の上記土地については,被告が整地工事を行わなかったとして,昭和47年2月1日を基準に
「畑」として認定し,本件従前地(1)①ないし⑥については「水田」と認定したと主張するが,臼井の上記土地は,原告A所
有の本件従前地(1)①ないし⑥の近隣にあるから,本件従前地(1)①ないし⑥と同時期に被告による整地工事がされたとみ
るのが合理的である。
c このように,被告が,従前地等の評価にあたって恣意的な取扱いをしていたことは明らかであって,本件換地処
分(1)及び(3)は,照応原則・公平原則(整理法89条1項)に違反し,違法である。
(ウ) 急傾斜地を換地としたことの違法
a 急傾斜地を換地とすることの非許容性
 本件換地(2)①は,急傾斜地であり,しかも傾斜度が30度以上で,高さが5m以上という,急傾斜地崩壊危険区
域の指定基準(要件)を充足する土地であり,大規模な宅地造成を施さない限り宅地として利用できない。
 前記のとおり,土地区画整理事業が「宅地の利用増進を図る」ため「土地の区画形質の変更」をする事業であ
り,「土地の区画形質の変更」が土地の区画を適正にし,土地の形状・土質を改良して適正な宅地を造成することであるこ
とに照らせば,「(急)傾斜地」に換地することが違法であることは明らかである。したがって,本件換地処分(2)①は,憲法2
9条1項,整理法1条・2条1項(都市計画法12条・13条1項),整理法86条3項に違反し,違法である。
b 公平原則違反
 前記(4)イ(ア)のとおり,本件事業では,従前地が急傾斜地であるにもかかわらず平坦地に飛び換地された例が
他にあり,従前地が山林(急傾斜地)であるのに,造成されて宅地として現地換地された例も多数ある。
 したがって,本件換地処分(2)①は,公平原則(整理法89条1項)に違反し,違法である。
(エ) 利用不可能な土地を換地とすることの違法
a 擁壁地を換地とすることの非許容性
 本件換地(2)②・(4)・(5)②内には,高さ約5mの待受擁壁が築造されており,そのため原告Aは,上記各換地に
ついて,約200平方メートル(以下「㎡」と略記することがある。)の範囲内の土地を宅地として利用することができない。
 被告は,換地内の上記待受擁壁は原告Aの要望により築造したものであるから違法でない旨主張するが,原告
Aは,待受擁壁の築造を真に要望したものではなく,緊急避難的に要望したものであるから,被告の主張は失当である。
 したがって,本件換地処分(2)②・(4)・(5)は,憲法29条1項,整理法1条・2条1項(都市計画法12条・13条1
項),整理法86条3項に違反し,違法である。
b 前記(4)イ(ア)のとおり,本件事業では,他に換地外に擁壁が築造された例がある。したがって,換地内の一部に
擁壁を築造した土地を換地とした本件換地処分(2)②・(4)・(5)は,公平原則(整理法89条1項)に違反し,違法である。
イ 本件換地処分(8)ないし(13)の違法(B及び原告C関係)
(ア) 公道不接続の違法
 本件換地(8)ないし(10)はいずれも公道に接していない土地であって,上記各土地への換地処分は,憲法29条1
項,整理法1条・2条1項(都市計画法12条・13条1項),整理法86条3項に違反し,違法である。
(イ) 長大画地の違法
 本件換地(11)は,面積877.23㎡の長大画地である。
 本件事業の事業計画第3「設計の概要」1(6)(ハ)「整備改善の方針」では「一般民有地の一画地は250㎡を標準と
して計画する。」と定められており,他の換地は同事業計画に従って換地されている。
 したがって,上記基準に反する本件換地処分(11)は,整理法86条3項・89条1項に違反し,違法である。
(ウ) 間口・奥行きの基準違反
 本件換地(12)は,間口が10.01m,奥行が24.27mの土地である。
 本件事業の換地設計基準(乙97の1。以下「本件換地設計基準」という。)第5章10条では「一画地の間口は,原
則として奥行の10分の5以上となるように定める」とされており,他の換地は同設計基準に従って換地されている。
 したがって,上記基準に反する本件換地処分(12)は,整理法86条3項・89条1項に違反し,違法である。
(エ) 準袋地を換地とすることの違法
 本件換地(13)は,間口が3.45m,奥行が10.00mの準袋地である。
 本件換地設計基準第5章9条では「換地はなるべく整形」とするとされており,他の換地は同設計基準に従って換
地されている。
 したがって,上記基準に反する本件換地処分(13)は,整理法86条3項・89条1項に違反し,違法である。
ウ 本件換地処分(14)ないし(17)の違法(原告D,同E及び同F関係)
(ア) 軟弱地盤・傾斜地を換地とすることの違法
 本件換地(14)②・(15)ないし(17)は,いずれも水田を埋め立てた土地であって,同土地上の建物にひび割れ等の
被害が生じており,地盤が軟弱で木質系2階建の建物の支持地盤として適切とされる地耐力がない。
 また,上記各換地は,いずれも河川に接しており,同土地の東側は約5mの勾配がある傾斜地である。
 したがって,本件換地処分(14)ないし(17)は,憲法29条1項,整理法1条・2条1項(都市計画法12条・13条1
項),整理法86条3項に違反し,違法である。
(イ) 照応原則違反
  本件従前地(14)ないし(17)は,いずれも平坦地であり,また何らの地盤改良工事をすることもなく,木質系2階建
の建物の支持地盤として適切とされる地耐力が備わった土地であった。
 前記(4)イ(ア)のとおり,本件事業では,従前地が急傾斜地であるにもかかわらず平坦地に飛び換地された例が他
にある。
 したがって,本件換地処分(14)ないし(17)は,整理法89条1項に違反し,違法である。
エ 本件換地処分(18)・(19)の違法(原告G及び同H関係)
(ア) 急傾斜地を隣接地とする換地の違法
 本件換地(18)・(19)に接する被告所有の土地(hiの土地)は,急傾斜地であり,しかも,傾斜度が30度以上,高さ
が5m以上という急傾斜地崩壊危険区の指定基準を充足する土地であり,このような崩壊のおそれが極めて高い急傾斜地
に隣接する上記各土地を換地とした換地処分は,憲法29条1項,整理法1条・2条1項(都市計画法12条・13条1項),整
理法86条3項に違反し,違法である。
(イ) 利用不可能な土地を換地とすることの違法
 本件換地(18)・(19)内には高さ約5mの待受擁壁が築造されており,そのため約82㎡の土地が宅地として利用不
可能である。
 被告は,換地内の上記待受擁壁は原告らの要望により築造したものであるから違法ではない旨主張するが,待
受擁壁は原告らが真に要望したものではなく,緊急避難的に築造したものである。被告の上記主張は失当である。
 したがって,本件換地処分(18)・(19)は,憲法29条1項,整理法1条・2条1項(都市計画法12条・13条1項),整
理法86条3項に違反し,違法である。
(ウ) 公平原則違反
 前記(4)イ(ア)のとおり,本件事業では,換地外に擁壁が築造された例があるから,本件換地処分(18)・(19)は,公
平原則(整理法89条1項)に違反する。
(6)本件審査請求
 原告らは,本件換地処分を不服として,平成4年8月11日,神奈川県知事に対して審査請求をしたが,未だ裁決が
されていない。
(7)結語
よって,原告らは,被告に対し,本件換地処分の取消しを求める。
2 請求原因に対する認否及び被告の主張
(1)請求原因(1),(2)及び(6)の事実は認める。
(2)請求原因(3)(土地評価基準違反)は否認ないし争う。
ア 原告らが本件土地評価基準に基づいて本件換地処分されていないと主張する修正率項目のうち,三角地(11
条(4)),傾斜地(同(5))及び崖地・法地(同(6))の3項目については,実際には修正が行われている。
イ 原告らは,本件事業において,従前地及び換地の評価が,本件土地評価基準11条(2)(不整形地)の95%以内の
修正率を乗ずる,とする規定に基づかずなされており,違法であると主張する。
 しかしながら,本件事業においては,本件施行地区内の従前地のほとんどが古来からの未開発状態にあった山
林・原野・畑・田(これらの土地は通常不整形であった。)によって占められていたところ,被告は,そのような従前地の土地
利用の状況や本件事業の結果,集約換地がされて土地が整形状態になることなどを考慮して,従前地について一律に不
整形地修正を行わないこととした。
 仮換地指定処分の場合を含めて,換地処分は法定手続に従い,地権者の縦覧に供して意見を聴き,本件事業に
おける土地区画整理審議会(法56条参照。以下,単に「審議会」ということがある。)への諮問とこれに対する答申を経て行
われており,これらの手続によって,換地処分に至る過程において,従前地について不整形地修正を行わないことが本件
事業の目的に適合するとの行政判断が是認された。
 そして,本件基準11条(2)(不整形地)は,95%以内の修正率を乗ずると規定するに止まるから,修正率を乗じない
としても,この規定には違反しない。
(3)請求原因(4)ア(公平原則違反)は争う。
 照応の程度については,縦の関係においていえば,客観的・総合的にみて,著しい不照応や特定の土地に対する
特別な不均衡がなく,ほぼ同一条件と認められれば照応しているというべきである。また,土地区画整理法の設ける清算
金制度が,横の関係において生じる不均衡をも是正することに照らせば,横の関係について違法性が問われるのは,合
理的理由がなく故意に特定の権利者に不利益(利益)な処分を行った場合に限られる。
 また,前記のとおり,被告は従前地について不整形地の修正を行わなかったが,そのほかの修正項目については全
て行っており,原告らの主張にあるように「他の地権者について,不整形地,三角地等を有さず水田を有している原告らと
比較して有利な扱いがなされた。」ということはない。
(4)請求原因(4)イ(関係人との横の照応原則違反)は争う。
ア 山林から平坦地への換地(関係人換地処分(1)ないし(9)・(14)・(15)との関係)
 本件事業における各地権者の仮換地指定,換地計画は,各段階において土地区画整理審議会の意見を聴いた
上で,地権者ごとに各従前地の事情,整理後の事業計画の設計内容を勘案し,地権者相互間においても公平が保たれる
ように総合的に調整し,判断しており,違法を問われる理由はない。
 関係人換地処分ごとに説明すると次のとおりである。
(ア) 関係人換地処分(1)(別表2目録(1)の換地処分)の減歩率は,50.78%と高率である。
(イ) 関係人従前地(2)・(3)は,いずれも小規模宅地所有者の救済策として講じられた制度である「小宅地」(換地設
計基準15条)に該当するため,減歩率が緩和された。
(ウ) 関係人従前地(4)は,都市計画決定されたa城址公園内に所在することから,現地換地できず,隣接する街区内
に飛び換地された。しかも,その換地は,山の中腹に造成された平坦地にあるため,利用部分は限定されている。関係人
従前地(4)が山林(傾斜地)であるため,関係人換地(4)については平坦地ではあるものの減歩率が高くなった。
(エ) 関係人従前地(5)・(6)は,a城址公園の公園区域の拡大に伴い,同公園の斜面林保全計画の対象地に含まれ
ることとなり,仮換地指定が相当程度進捗した後に,仮換地先を変更する必要が生じたことから,現地換地が困難となり,
飛び換地となった。関係人換地処分(5)・(6)では,いずれも平坦地が換地とされたが,従前地が山林(傾斜地)であったこと
から,いずれも高い減歩率となった。
(オ) 関係人換地(7)・(8)の隣地に存する擁壁は,区画道路の設置に伴って道路を保護するために築造した間知石
積擁壁であり,私有地内に設置した原告Aらの土地における待受擁壁とはその性格を異にする。
 また,関係人従前地(7)・(8)は,本件施行地区のn地区(本件施行地区のほぼ中心部の地域。別紙1参照)に所在
した。n地区は,地権者間の調整に難航し,仮換地の指定が他の地区に比べて大幅に遅れていたなどの問題が集中して
いた地区である。被告は,そのような状況を踏まえて,藤沢都市計画事業西部土地区画整理事業施行に関する条例施行
規則(乙96)3条に基づきn特別委員会を設置し,その調査審議の結果を審議会に諮問したところ,異議ない旨の答申を
受けた。被告としては,同委員会の調査審議結果は,現地の実情に即し,地権者の意向に沿った結論であるとしてこれを
尊重することが迅速的確に事業を実施することになると判断して,同結果に基づいて仮換地指定,換地指定を行ったもの
である。
(カ) 関係人換地処分(9)は,公社所有地に対する換地処分であるが,公社が買収した農地及び山林の多くは,従前
の土地の公簿上の地目にかかわらず集約され,合併換地され,集合住宅団地などとして利用されているところ,関係人従
前地(9)についても,18筆が合併換地されており,その減歩率は47.51%と著しく高率である。
イ 減歩率の不公平に対する反論
(ア) 関係人換地処分(10)ないし(13)(別表2目録(10)ないし(13)の換地処分)については,減歩率が著しく低いという
ことはない。
(イ) 関係人換地処分(16)ないし(21)の減歩率は,いずれも本件換地処分における減歩率より低い。また,関係人換
地処分(16)ないし(18)・(21)の減歩率が特に低いことは認める。
 本件事業の換地設計は,換地の地積について従前地・換地の路線価を基本とした評価指数から算定する路線
価式換地計算法(本件換地設計基準3条参照)により行われているところ,関係人換地処分(16)ないし(20)については,い
ずれも従前地の路線価が高かったことから,減歩率が減少した。また,関係人換地処分(16)ないし(18)については,同換
地処分の従前地の公簿上の地目は田であったところ,現況が畑である土地が多く,本件土地評価基準上の水田修正がさ
れなかった結果,特に低い減歩率となった。
 関係人換地処分(21)は,本件事業における緑地保全の観点から,公社が買収した山林を原位置に換地したが,
現況斜面を保存し,宅地造成を施すことなく従前と同様に傾斜山林で換地したことから,著しく低率の減歩率となった。
(5)請求原因(5)(各原告個別の違法)は争う。
ア 本件換地処分(1)ないし(7)の適法性(原告A関係)
(ア)適法性の根拠
 原告Aの従前地が集約換地されたK24街区(本件換地(1)・(6)①・(7))及びK25街区(本件換地(3)・(6)②)は,同
原告の住居とその裏山の換地されたK6ー1街区(本件換地(2)・(4)・(5)②)の東側にそれぞれ区画道路を挟んで連続して
隣接しており,K24及びK25街区の換地前は水田であったが,本件事業によって区画道路が築造され,街区内には農地
造成工事が施された。
 上記各換地は,いずれも①住居に地続きの②標高9m程の住居と同じ標高の場所に③集約により面積に恵まれ
た④整形平坦な⑤都市施設の完備した⑥都市農業としての近代的な営農を可能とする,土地利用上の価値の著しく増進
した土地となった。これに対し,上記各換地の従前地は,いずれも農地(田畑)であって,原告Aの住居から離れた距離に
所在するものがあり,土地の面積も狭小で不規則な形状を呈しているものもあり,標高50m前後の台地に所在するものも
あった。
 施行地区内の他の農業者(地権者)についても上記のような保全農地への集約換地は同様に行われたのである
から,減歩率等の事情を総合考慮すれば,照応の原則に違反することなく本件換地処分(1)ないし(7)の違法を問われる理
由はない。
 なお,原告らは,「宅地開発事業」である土地事業において,「宅地」ではなく「農地」や「急傾斜地」を換地するこ
とは違法であると主張するが,土地事業は,都市基盤施設の未整備な市街地又は今後市街地化が予想される開発予定
地を健全な市街地として造成するため,施行地区を定め,道路・公園等の公共施設を整備するとともに宅地の区画や形状
を整え,整序された「まちづくり」を行うものであって,整理法2条6項の「宅地」には,現況に応じ,宅地(建物敷地)をはじ
め山林,畑,雑種地等の地目の付される土地を含まれる。上記原告らの主張は理由がない。
(イ) 軟弱地盤に対する反論(請求原因(5)ア(ア)への反論)
 原告Aは,上記両街区に換地された土地の地盤が軟弱で木質系2階建の建物の支持地盤として適切とされる地
耐力がないと主張する。しかしながら,K24街区と至近距離にある37街区(f公園)は,宅地として建物建築後の増加荷重
による庄密沈下はほとんど発生しない。したがって,本件換地(1)・(3)・(6)・(7)についても軟弱地盤であるということはできな
い。
 なお,原告Aが主張するK24街区の地盤沈下については,昭和63年9月26日,同原告と被告との間で損失補
償契約(乙30)が成立しており,被告が同原告に対して,損失の補償として金592万0340円を支払う代わりに,同原告
は,上記損失補償金以外は一切被告に補償の請求をしないとされており,以後,本件換地の地盤沈下により同原告の被
る不利益については,この契約の成立によって不問に付するとの趣旨となった。
(ウ) 水田修正の適法性(請求原因(5)ア(イ)への反論)
 本件従前地(1)①ないし⑥・(3)④の周辺においては,被告は,整地工事を始める前に,地権者らに対して作付け
の休止を依頼するとともに休耕補償をすることとなり,上記各従前地については,原告Aに対して,昭和47年度分の田とし
ての休耕補償を平方メートル当り年額32円60銭支払い,同原告はこれを受領した。また,上記各従前地の「土地評価指
数計算書」(乙128)における地目も田とされていた。以上のことから,上記各従前地の当時の現況が田であることは明らか
である。
(エ) 急傾斜地を換地としたことの適法性(請求原因(5)ア(ウ)への反論)
a 原告Aが「急傾斜地」と主張する換地(本件換地(2)①)は,従前の同原告の住居の裏山(山林)であって,従前
地である山林(現況)に対し,原位置に現況のまま山林を現地換地したのであるから,照応原則に反しない。
b 原告らは,本件事業において,「他に従前地が急傾斜地であるにもかかわらず平坦地を飛び換地された例があ
る。」として,急傾斜地が平坦地に換地されなかったのは公平原則に違反すると主張する。
 しかしながら,本件事業において,従前地が急傾斜地であるのに平坦地へ飛び換地された例があったとしても,
各地権者への仮換地指定,換地計画の作成は,地権者ごとに,各従前地の事情,整理後の事業計画の設計内容を勘案
し,地権者相互間においても公平が保てるよう総合的に調整し,判断した結果であり,そうした調整の結果は,仮換地の指
定,換地計画の作成の各段階において審議会の意見を聴き,そうした手続を経て決定されたものであって,違法を問われ
る理由はない。また,原告Aは,本件従前地(2)①について,被告ないし公社からの買収の申し出に応ずることなく,自宅の
裏山としてそのまま保存されることを望んだことから,本件換地(2)①の位置に現地換地されたものである。
 そうすると,同原告に対し,従前山林であった土地につき原位置に山林として換地した本件換地処分(2)①は,
同原告に対し合理的な理由もなく故意に不利益な処分を行ったことはなく,違法を問われる理由はない。
(オ) 擁壁があることと換地処分の適法性(請求原因(5)ア(エ)への反論)
 原告Aの換地内の擁壁は,従前からの同原告の住所地(本件換地(2)②・(4)・(5)②)とその裏山(本件換地(2)①)
との境界付近である本件換地(2)②・(4)・(5)②内に設置された,いわゆる待受擁壁(裏山の崩れに備え,崩れの発生したと
き土砂等が住居敷地内に流れこむのを防ぐための擁壁)である。上記擁壁は,同原告からの要望に基づいて被告が設置
したものであり,本件事業における街区造成工事として設置したものではない。上記擁壁につき,同原告は,上記3筆の換
地内に設置されることを承諾し,設置完了後その引渡しを受けた。
 なお,同原告は,本件事業において他に換地外に擁壁が築造された例があり,公平原則に違反する旨主張する
が,同原告が主張する擁壁は,当時公社所有の土地(換地処分は藤沢市に対して行われた。)に築造されたものであり,
丘陵の斜面を削り取って区画道路を築造する際に設置したいわゆる土留擁壁であって,同原告の換地内の待受擁壁とは
その性格を異にする。
イ 本件換地処分(8)ないし(13)の適法性(B及び原告C関係)
(ア) 公道不接続の違法に対する反論
 Bに対する当初の仮換地指定(昭和51年3月3日付け通知)においては,指定された仮換地はいずれも公道に
接していたところ,この点につき,Bから2回にわたる仮換地変更願があり,この変更願い出どおり,第1回及び第4回の仮
換地変更指定処分がされた。
 これらの仮換地内には,Bの要望により街区内に幅員4.00ないし4.20mの道路が築造され,平成5年2月開会
の藤沢市議会の議決を経て市道路線の認定が行われた公道となった。そのため,本件換地(8)ないし(10)は,いずれも公
道に接している。
(イ) 長大画地・間口・奥行き等の適法性
 本件換地(8)ないし(13)は,Lー10ー2街区(gjないしkの土地)に所在するところ,B,原告C及びBの父Pは,被告
が同人らに対して最初の仮換地指定処分をしたのち,4回にわたって仮換地変更願を提出した。被告は,上記変更願ど
おりに仮換地変更指定をし,そのまま,本件換地処分(8)ないし(13)をしたものである。
 そうすると,原告Cらが主張する各換地の位置,形状,規模に係る設計は,すべて同原告らからの要望(仮換地
変更願)によって設計されたのであるから,一般的,原則的な方針を定めた事業計画中の定めどおりになっていないとして
も違法にはならない。
ウ 本件換地処分(14)ないし(17)の適法性(原告D,同E及び同F関係)
(ア) 適法性の根拠
 本件従前地(16)・(17)は,原告Dらの先代が経営した「a製材所」の所在した土地であり,全体として約11mの高低
差のある傾斜地であった。本件従前地(14)・(15)は,原告Dらの先代の家族の住居の北西方向にある標高約50mの畑地
であった。
 本件換地処分(14)ないし(17)は,本件従前地(16)・(17)と一部重なる位置に,宅地として整地された上で集約換地
されており,減歩率等を総合考慮すると,原告らに対し,権利者相互間の公平,均衡を欠いた不利な処分を行ったというも
のではなく,照応の原則に違反しない。
(イ) 土質の非軟弱性(原告Dらの主張に対する反論)
a 本件換地(14)ないし(17)の造成前の土地の状態は,約6割に当たる部分が水田で,その余は道路敷地及び山
地であった。旧水田部分には,造成により6ないし7mの盛土がされており,今日までに陥没等は生じていない。
 したがって,上記各土地は,地盤が軟弱な不良の土地ではない。
(ウ) 斜面地を換地とすることの適法性(同)
 本件換地(14)ないし(17)とその東側の区画道路との間には,幅員12mの水路が構築されたが,同水路の両岸は
間知ブロックによる護岸工事がされ,本件換地(14)ないし(17)と高さ約10.5mの斜面で接している。このような区画造成方
法は,本件事業に共通のものである。
 また,被告は,昭和47年12月11日の土地区画整理審議会の諮問を経て,被告と原告らの被相続人であるQ
(昭和63年1月29日死亡)との間に合意結果に基づいて,同人に対して昭和51年3月10日付けで仮換地処分を行った。
本件換地処分(14)ないし(17)は,上記仮換地処分と同様の内容である。
 また,この点に関連して,原告らは,本件事業において,他に従前地が急傾斜地であるにもかかわらず平坦地を
飛び換地された例があることを主張するが,前記のとおりの事情があるので,このことから本件換地処分(14)ないし(17)が違
法となるものではない。
エ 本件換地処分(18)・(19)の適法性(原告G及び同H関係)
 原告らに対する本件各換地内には,昭和61年3月中に,藤沢市に換地処分されたhiの土地との境界に,待受擁
壁が築造されているが,この擁壁の築造について,原告ら先代であるN(築造時の土地所有者)は設置を承諾し,昭和61
年3月31日付けでその引渡しを受けた。
 また,他に換地外の擁壁築造の例があることについては,前記のとおりであり,そのことにより,本件換地処
分(18)・(19)が違法とされる理由はない。
     理       由
(証拠により直接認定する事実については,当該事実の前後に,主な証拠を略記する。書証の成立は弁論の全趣旨により
認められる。一度説示した事実は,原則としてその旨を断らない。枝番号のある証拠について枝番号を省略した場合は,
すべての枝番号を含む趣旨である。)
第1 前提となる事実
1 争いのない事実
 請求原因(1),(2)及び(6)は争いがない。
2 本件事業の概要
(1)本件事業の施行地区
ア 位置
 本件事業の施行地区(本件施行地区)は,別紙1(乙3。ただし,換地処分後の地図である。)のうち赤線で囲まれ
た範囲内の地域であり,藤沢市の西方に位置し,東は県道藤沢厚木線を境とし,西は神奈川県茅ヶ崎市に,南は民間の
ゴルフ場に接し,北は県道遠藤茅ヶ崎線を境とする地区である。
イ 現況
(ア) 地形及び土地利用状況
 本件施行地区内の土地の昭和47年当時の状況は,標高約50mの台地部と標高10mの谷が入り込んだ複雑な
地形となっており,土地利用の状況は,本件事業計画書(乙12)によると,水田12.5%,畑38.5%,山林・原野33.1
%,宅地3.5%,その他12.3%で,主な公共施設としては,アの県道のほかに地区中心に県道藤沢寒川線が存在する
だけであった。本件施行地区内には,約500戸の住宅が50ないし70戸程度の集落として散在していた。
(イ) 都市計画
 本件施行地区は,昭和44年5月8日建設省告示第1828号により住居地域に指定され,同月13日建設省告示
第1941号により藤沢都市計画事業西部土地区画整理事業区域として区域決定がされた。
(以上(1)全体につき,乙7の4,乙12ないし23・65,弁論の全趣旨)
(2)事業の目的
 本件事業は,藤沢市の北西部に位置する本件施行地区を含む農業地域における開発事業(以下「西部開発事業」
という。)の一環として行われた。被告は,上記地域について散発的な宅地開発が進み,無秩序な市街地が形成されること
を防ぐため,総合的な計画により都市施設の整備を図り,理想的な市街地を造成することを目的として,本件事業を行っ
た。
 完成した結果から見ると,本件事業の内容は,下記のとおりである(100㎡未満は切り捨て)。
記   
││施行前│施行後│
│ 道  路│ 27万5300㎡│ 78万9500㎡│
│ 公  園│    2100㎡│17万5000㎡│
│ 水  路│  2万9600㎡│3万7400㎡│
│ 堤  塘│  3万3300㎡│ 0│
│ 緑  地│     0│1400㎡│
│計(公共用地)│34万0500㎡│100万3400㎡│
│ 田│36万2400㎡│0│
│ 畑│110万1500㎡│33万1700㎡│
│宅  地│ 73万2700㎡│138万1100㎡│
│山  林│ 76万6500㎡│1万4700㎡│
│雑種地│    7200㎡│5万7400㎡│
│墓  地│4500㎡│1万3200㎡│
│水道用地│5400㎡│4500㎡│
│学校用地│  0│1万6400㎡│
│その他│1万7300㎡│9万1700㎡│
│計(民有地)│299万7900㎡│191万1100㎡│
│ 国有地│7700㎡│ 700㎡│
│保留地│0│49万2000㎡│
│測量増│6万1200㎡│(32㎡)│
│総  計│340万7300㎡│340万7300㎡│
 上記によると,本件事業後の公共用地は事業前の約3倍程度に増加し,事業後の民有地(後述するように,ほぼ整
理法上の「宅地」に該当する。)は事業前に比べて約36%減少したことが分かる(なお,本件事業計画上の平均減歩率
は,36.39%とされている。乙12ないし23)。すなわち,本件事業は,公共施設が道路以外にほとんどなく,田,畑,山林
を中心としていた本件施行地区について,公共施設を充実させ,宅地を大幅に増やし,畑を多少残して,田,山林をほぼ
なくし,市街化に必要な事業者等の参入を図り,もって,本件地区の計画的市街化を実現するというものであり,それが結
果として実現しているということができる。
(以上につき,乙4・12・65)
(3)経緯
ア 被告は,昭和42年4月1日に,藤沢市西部開発事務局を設置し,本件施行地区について前記のとおり都市計画
決定を受け,事業計画の策定に入り,昭和46年11月25日から同年12月8日にかけて事業計画を縦覧し,昭和47年1月
31日にその設計の概要について神奈川県知事の認可を受け,同年2月1日に公告を経た後(乙125),同月,当初の事
業計画(乙12)を出し,その後,11次にわたる事業計画の変更を行った。
 そして,被告は,後記第2の2(1)のとおり,本件土地評価基準等を定め,審議会の諮問と答申を経て,公衆の縦覧
に供した上で換地計画を決定し,平成4年5月26日に神奈川県知事からその認可を受け,同年6月8日付けの通知によっ
て原告らに対して本件換地処分を行い,同処分は同年8月7日に公告された。また,被告は,平成5年2月17日に,本件
事業の完成式を挙行した。
イ 被告は,アのとおり本件事業を進める一方で,全額出資により財団法人藤沢市開発経営公社(公社)を設立し,公
社主体で昭和42年から開発に必要な用地の買収に着手した。公社は,本件施行地区内の山林については100%,農地
については本件施行地区内のみに所有する地権者からは45%,同区域内外に所有する地権者からは50%を目標とする
買収計画を立てて買収を進め,買収した土地については宅地に造成の上,その分譲,市営住宅の建設・経営等を行っ
た。
(以上(3)全体につき,乙4・6・12ないし23・65・125,弁論の全趣旨)
(4)保全農地の集約換地
ア 本件施行地区の地権者のほとんどが農業経営者であったことから,西部開発事業については,都市と農業の調和
を基本理念の1つとし,本件事業では,施行地区は「開発地」と「保全農地(換地処分後も保全される農地)地域」とに分け
られた。また,地権者から,都市型の農業経営が可能となるように,散在していた農地をできるだけ住居地域周辺に集約し
て保全することが強く要望されたことから,本件事業では,散在していた農地を保全農地地域に集約換地し,農耕に適す
るように造成することとなった。さらに,開発に伴って農用地が減少するため,農業の継続を希望する者に対しては,農業
経営の近代化を推奨するために技術的指導等を行い,昭和43年から56年まで助成金を交付した。他方で,保全農地が
将来宅地化される可能性があることを考慮して,道路等の基盤整備が行われた。
 さらに,本件事業においては,地権者(農業者)から(仮)換地先となる保全農地における使用収益を速やかに行
いたい旨の要望が強かったことから,本件事業について神奈川県知事から認可を受けるのに先立って,本件施行地区内
の地権者から起工承諾を得る形で,昭和45年5月ころから,保全農地等の造成工事が行われた。
(以上につき,乙7,乙8の2・3,乙65,証人R,弁論の全趣旨)
イ 農地造成工事については,昭和50年ころ,次のとおりの調査基準が定められ,地権者は,同基準に従って換地さ
れた農地の造成状況を調査し,問題があるときは,農地造成対策委員に申し出,地図に則し工事手直調書に問題点を記
入し,西部開発事務局工事課へ届けて農地造成の適正化を図ることとされた(乙6の95頁,弁論の全趣旨)。
「(ア) 耕土の厚さと土性
 耕土の厚さは,標準で50cm(黒土30cm+盛土又は切土20cm)以上必要なので,土壌表面から深さ50cmま
では耕作に支障を来たさない土性とする。
(イ) 混合物の除去
 栽培管理に支障を来たさないようコンクリート破片,礫等耕作に適さないものは除去する。
(ウ) 道路又は宅地跡の造成工事
 この場合は,条件が悪いので,その都度協議して決めるが,アスファルト・コンクリート等は必ず取り除くこと。
(エ) 深耕及び客土
 農耕を行う場所については,地主の意見を確認のうえ黒土30cmの客土を行い,その上を大型トラクターにより
2回深耕を行う。
(オ) 農地の浸食
 農地法面の決壊は早急に手直しする。
(カ) その他農耕に不適当と思われること。」
ウ 深耕基準
 昭和52年8月ころ,被告は,前記調査基準(エ)の深耕について,次のとおりの基準を設けた(乙6の98頁,弁論の
全趣旨)。
「① バックホーにて1mの深さに耕起する。
② 小型ブルドーザーで整地する。
③ 小型ブルドーザーの後部にスクリューベーターを取りつけ80~90cmの深さで深耕整地する。」
第2 違法事由の存否
1 判断の順序
 原告らは,個別の原告らに対する換地処分固有の違法事由として,他の地権者との不平等な取扱いがあったこと(い
わゆる横の照応,公平原則違反)を主張するほかに,本件換地処分に共通する違法事由としても公平原則違反を主張す
る。
 原告らが主張するいわゆる横の照応(公平原則)は,後記のとおり,整理法89条1項が規定する照応原則の1つの側
面であるところ,横の照応違反の有無を判断するためには,従前地と換地との照応(いわゆる縦の照応)を併せて検討する
ことが前提となる。そこで,当裁判所の判断の順序としては,①まず,原告らが主張する共通の違法事由のうち,他の違法
事由の判断にとっても前提問題となり得る本件土地評価基準違反(請求原因(3))の有無について検討した上で,②各原
告ら個別の違法事由(請求原因(5))の有無を判断し,その中で,必要な限りで横の照応の有無についても検討し,③最後
に本件換地処分に共通する横の照応原則違反(請求原因(4))の有無について検討することとする。
 なお,②の各原告の個別の違法事由の判断における対象とその順序,請求原因との対応関係等については,当該
欄に別途記載する。
2 本件土地評価基準違反(請求原因(3))の有無
(1)本件土地評価基準等の定め
証拠(乙1・97・106・122・130,証人R)及び弁論の全趣旨から次のとおり認められる。
ア 都道府県又は市町村が土地区画整理事業を施行しようとする場合には,施行規程及び事業計画を定めなければ
ならず,施行規程については条例で定めなければならない(整理法52・53条)ところ,被告は,本件事業に係る施行規程
として「藤沢都市計画事業西部土地区画整理事業施行に関する条例」(昭和45年3月30日条例第31号。乙1。以下「施
行条例」という。)を定めた。そして,従前地及び換地の評価については,同条例25条1項で「従前の土地および換地の評
定価格は,その位置,地積,形状,土質,水利,区画利用状況,環境,固定資産税の課税標準等を考慮し,評価員の意
見を聞いて定める。」とされた。
イ また,被告は,本件事業につき本件換地設計基準(乙97の1),本件事業路線価算定基準(乙97の2。以下「本件
路線価算定基準」という。)及び本件土地評価基準(乙97の3)を定め,いわゆる路線価式評価法で従前地及び換地を評
価することとした。
 上記各基準は,前記施行条例25条を具体化した基準であり,換地計画を定める上での基礎となる準則である。
 そして,換地の地積(Ei)は,下記の計算式によって算出した地積を標準として定めることとされた(本件換地設計
基準4条)。

Ei=Ai×ai×(1-d)×y÷ei
Ai=従前地の地積
ai=従前地の平方メートル当たり指数
d=平均減歩率
y=宅地利用増進率
ei=換地の平方メートル当たり指数
 従前地・換地の平方メートル当たり指数は,本件路線価算定基準により算出された路線価指数のうち,当該区画を
囲む指数の最下位を原則とし,奥行逓減,角地・背面加算を行う(本件土地評価基準6ないし9条)。
ウ さらに,本件土地評価基準11条では次のとおり修正項目が定められた。
「(1) 水田又は低湿地
従前の土地について,現況が水田又は湿地と認められるものは修正率「90%」を乗ずる。
(2) 不正形地
従前の土地及び換地について形状が宅地としての利用に適しないもの又は部分のあるものは「95%」以内の修
正率を乗ずる。
(3) 袋地
 換地について形状が袋地のものは修正率「95%以内」を乗ずる。
(4) 三角地
換地について三角地又は三角部分の土地については修正率「90%以内」を又,逆三角のものは「80%以内」を
乗ずる。
ただし,三角地,三角部分とは底辺からの垂線が10メートル以内を限度とする。
(5) 傾斜地
従前の土地及び換地について傾斜地のものは別表「第3表」に定める修正率を乗ずる。
(6) 崖地又は法地
従前の土地及び換地について,高さ1メートルを超える崖及び法の部分について次の修正率を乗ずる。
崖地「30%」法地「50%」
(7) 道路と高低差がある土地
従前の土地および換地について道路と高低差があるものは別表「第4表」に定める修正率を乗ずる。」
 そして,上記(5)に対応する同基準別表第3表によれば,修正率は,勾配に応じて50%から100%と定められた。
エ なお,利用状況が同じで同一権利者の連続する土地については,上記各土地を一体のものとして平方メートル
当たり指数を算出することができるとされた(本件土地評価基準10条)。
オ また,本件事業においては,前記第1の2(3)イのとおり,公社が買収によって本件施行地区内の多くの土地を取
得したことから,対象地が公社取得の土地(開発地)と地権者所有の土地(保全地)とに分けられることになり,また,本件
事業開始前の公社による土地買収時において地権者に対して保全地の減歩率をできるだけ低くするという約束がされて
いたという特殊事情があり,地権者らの要望が強かったことから,被告は審議会の諮問を受け,公社に対して交付する清
算金を0と設定して,その分で保全地の清算金の緩和を行うこととし,従前地の評価の際に下記のとおりの「配分率」が乗
ぜられて調整が図られることとなった(乙9・122・130)。
記  
一般民有地:1.39498485
公社所有地:1.04185752
藤沢市所有地:1.19076334
民有地のうちM街区:1.40511597
 前記第1の2(2)のように本件事業による「宅地」の平均減歩率は約36%であるが,上記のような「配分率」による修
正がされたため,一般の民有地に限定した標準の減歩率は,二十数パーセント程度(本件換地処分及び関係人換地処分
の減歩率から考えると,21ないし24%と程度と推認される。以下「標準減歩率」という。)に修正されたということになる。
(2)本件土地評価基準に関する原告ら主張の違法事由の有無
ア 本件土地評価基準11条には,評価指数の修正事項について(1)イのように定められている。すなわち,三角地修
正は従前地については不要であるが,換地については必要であり,その余の修正は従前地・換地ともに必要である。ところ
で,原告らは,本件換地処分においては,①不整形地,②三角地,③傾斜地,及び④崖地・法地について,本件土地評
価基準11条が定める修正がされたことはなく,本件換地処分は違法である旨主張する(請求原因(3))。
イ(ア) 不整形地の修正の有無
   上記4項目のうち,まず,不整形地の修正が従前地についてされていないことは,当事者間に争いがない。これ
は,上記基準に適合しない。
   これに対し,換地については不整形地の修正がされていることを示す証拠(乙114の2)があり,反対に換地につ
いて不整形地修正がされていない旨を示す証拠はない。したがって,不整形地修正がされていないから基準に違反する
との事実は認められないといわざるを得ない。
(イ) 三角地の修正の有無
   次に,従前地について三角地の修正がされなかった点は当事者間に争いはなく,これは上記基準に適合する。
   これに対し,換地については,三角地修正がされていることを示す証拠(乙110の3)があり,反対に換地につい
て三角地修正がされていない旨を示す証拠はない。したがって,三角地修正がされていないから基準に違反するとの事
実は認められないといわざるを得ない。
(ウ) 傾斜地の修正の有無
 傾斜地の修正は,従前地及び換地のいずれにもされていることを示す証拠(乙109の10・12等)が多くあり,その
とおりに肯定するのが相当である。したがって,標記の点は上記の基準に適合するというべきである。
(エ) 崖地の修正の有無
 証人Rは,崖地修正は記憶がはっきりしない旨を供述する(第37回口頭弁論期日における証人調書24頁以下)
ところ,これは従前地を念頭においた証言と見られる。そして,他に,従前地について崖地修正がされていないことを明示
的に示す証拠はない。
 他方,崖地の修正が換地についてされたことを示す証拠(乙114の7・8・10)があり,換地について崖地修正がさ
れていない旨を示す証拠はない。
 そうすると,崖地修正がされていないから上記の基準に違反するとの事実は認められないといわざるを得ない。
(オ) 法地の修正の有無
法地の修正が従前地についてされたことを示す証拠(乙85)があり,また換地についてされたことを示す証拠(乙
114の9・11・12・16・17・21・23)もある。
 ところで,証人Rは,法地修正はされていない旨供述する(第37回口頭弁論期日における証人調書23頁以下)と
ころ,これは,従前地を念頭において証言したとみられる。しかし,証人Rが本件事業に従事していたのは,昭和57年8月
ころであるから,それから約19年が経過した第37回口頭弁論期日においては,本件事業の詳細に関する記憶に不確か
な点が出ていてもやむを得ないというべきであり,上記の点については,書証の記載を信用すべきであって,R証言を採用
しないのが相当である。
 なお,この点について,原告らは,土地評価指数計算書(乙109,110,113,114)は鉛筆で作成されており,
何度か書き直された形跡があるから,偽造された疑いがある旨主張するが,上記計算書は,被告から業務委託を受けた財
団法人東京土地区画整理協会が評価指数を算定する過程で作成したものであり,計算の過程で何度か書き直したものと
考えられるから(乙122,証人R),上記主張は採用できない。
 そうすると,法地修正は従前地・換地ともにされたと認めるのが相当であり,この点は,上記の基準に適合する。
(カ) 以上をまとめると,傾斜地修正及び崖地・法地修正については従前地・換地ともになされ,不整形地・三角地修
正は換地のみになされたと認めることができる。
  そうすると,本件換地処分は,従前地の評価に際し,不整形地修正がされていない点において,本件土地評価
基準どおりに行われていない点があったといわざるを得ず,上記基準が整理法,施行条例に根拠をおく以上,本件換地
処分には根拠法令不遵守の瑕疵があることになる。なお,本件土地評価基準11条(2)は,不整形地について「95%以内
の修正率を乗ずる」としているので,従前地について修正率を乗じなかったとしても上記文言には違反しないが,上記規定
が従前地・換地について区別しないで修正率を乗ずる旨定めている以上,換地について一律に不整形地修正しながら従
前地について一切修正しないという取扱いは,規定の趣旨に反しているといわざるを得ない。
 しかしながら,本件事業の全体としての手続は,公的補助を受けて広範な非宅地地域を大規模に宅地化すると
いうものであり,そのために,地権者の土地を飛び換地によりまとめるような方法が多用されるから,従前地の非宅地相互
間の違いの程度は,換地後の宅地との対比で見た時には,相対的に小さいと評価される面がある。むしろ,等しく宅地又
は畑としての換地を受けることとの対比からすると,従前地の形状が不整形地かどうかといった非宅地相互間の違いは捨
象する方がより実態に適合していると考えられ,そのために,まとめて畑か宅地にするのに費用を要するかどうかの観点か
ら修正の要否を決めることとされ,地権者も審議会も同意見であったところから,不整形地修正が行われなかったと解する
ことができる(証人R第37回口頭弁論における尋問調書24頁以下)。
 したがって,このような点に照らすと,本件土地評価基準違反の評価方法が一部行われたという上記の事実は,
本件換地処分に取り消すべき違法をもたらすものとまではいえない。
ウ 以上から,原告らの本件土地評価基準違反の主張は理由がない。
3 本件換地処分(1)ないし(7)(原告A関係ー請求原因(5)ア)
(1)宅地として利用できない土地を換地することの適否(同ア(ア)a,(ウ)a,(エ)a)
ア 原告らは,本件換地(1)・(3)・(6)②・(7)は地盤が軟弱で地耐力がなく,本件換地(2)①は急傾斜地であり,本件換
地(2)②・(4)・(5)②の一部の土地は隣接した斜面地との間に擁壁が築造されたことにより,いずれも宅地として利用すること
ができないと主張し,そのような上記各土地を換地とする処分は,憲法29条1項,整理法1条・2条1項(都市計画法12条・
13条1項),整理法86条3項に違反する旨主張する。
 上記主張の趣旨は,土地区画整理事業が公共施設を備えた良好な宅地の造成を図るための事業であることから,
宅地として利用することができない土地を換地とする処分はそれだけで違法であるというものである。
イ そこで検討するに,土地区画整理事業は,公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るために行われる土
地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業をいう(整理法2条1項)のであって,都市基盤施設の
未整備な市街地又は今後市街化が予想される開発予定地を健全な市街地として造成するため,一定の範囲の土地を定
め(施行地区),道路・公園等の公共施設を整備するとともに,宅地の区画や形状を整え,整序されたまちづくりを行うため
の事業である。
 そうであるところ,整理法2条6項は,「宅地」とは「公共施設の用に供されている国又は地方公共団体の所有する
土地以外の土地」をいうと定めているから,用語としては適切でないきらいもあるが,従前地及び換地のいずれの場合も,
「宅地」とは,建物の敷地等に限られず,農地(畑)又は山林等をも含むと解するのが相当である。したがって,宅地(建物
敷地)として利用できない農地,山林及び急傾斜地等を換地とする処分であっても,直ちに整理法の趣旨に反して違法と
なるというものではない。この点に関する原告らの主張は独自のものであって,採用することができず,原告A主張の法令
違反の事由は認められない。
 ところで,原告らは,換地の現況を照応原則に違反することの理由としても主張しているので,換地の現況に関す
る上記の原告らの主張は,その観点からは検討する必要がある。
(2)照応の原則違反の有無
ア 原告Aは,本件換地処分(1)ないし(7)について,請求原因(5)ア(ア)b,同(イ),同(ウ)b及び同(エ)bにおいて,軟弱地
盤を換地としたこと,従前地の水田修正に違法があったこと,急傾斜地を換地としたこと及び擁壁地を換地としたことを理
由に,照応原則違反がある旨主張する。
 ところで,整理法89条1項は,「換地計画において換地を定める場合においては,換地及び従前の宅地の位置,
地積,土質,水利,利用状況,環境等が照応するように定めなければならない。」と規定しているところ,土地区画整理に
おいては,その本質上土地の区画,形質に変更を生じるものであるし,また道路,公園等公共施設の新設を伴うことが通
常であるため,すべての条件が従前の土地に照応するように換地を定めることは,技術的にもほとんど不可能であるから,
上記規定において要求される「照応」とは,同条項に定める土地の諸要素を総合的に勘案して,換地が従前の土地と概ね
同一の条件を持つもので,多数の権利者間においても均衡がとれ概ね公平である,という状態を示すものと解するのが相
当である。そして,このように解すべきことは,整理法が多数の権利者間に多少の不均衡の生ずることを当然のことと予定
し,これを是正するために清算金の制度を設けていることからも明らかである。
 したがって,換地処分が上記規定に定める照応の原則に反して違法とされるには,単に換地が従前の土地と比較
して多少不照応の点があるというだけでは足りず,前記諸要素等を総合的に勘案してもなお従前の土地と著しく条件が異
なり(縦の照応違反),かつことさらに特定の者の不利益を図ったとか,あるいは近隣の土地と比較して著しく不利益でその
ことにつき合理的理由がない場合等の事情がなければならないもの(横の照応違反)とするのが相当である。
 そして,このような性質を有する照応原則違反の有無を判断するためには,原告らが主張する具体的事由につい
てのみ認定・判断することでは十分ではなく,原告らの整理法89条1項違反の主張に対する被告の反論における事実をも
総合して,照応違反かどうかを判断する必要がある。
 また,本件換地処分の適法性については,各処分ごとに検討するのが原則であるが,本件のように各原告らにつ
き,複数の換地処分がなされている場合には,各換地処分ごとに検討することが煩瑣な場合もある。
 そこで,本件換地処分(1)ないし(7)については,本件換地(1)ないし(7)の利用状況等に応じて,便宜上,本件換地
処分(2)②・(4)・(5),同(2)①,同(1)・(6)・(7)及び同(3)に分け,この順番で照応原則違反の有無を判断することにする。
イ 本件換地処分(2)②・(4)・(5)
(ア) 減歩率
 まず,被告が主張中で趣旨において触れている減歩率の問題を検討する。本件換地処分(2)②の減歩率は19.
80%,本件換地処分(4)の減歩率は18.27%であり,本件換地処分(5)の減歩率は26.01%である。いずれも第1の2(2)
で認定した本件事業における「宅地」の平均減歩率約36%を大きく下回っており,本件換地処分(5)を除くと,一般の民有
地(公社所有地等を除いた「宅地」)における標準的な減歩率(標準減歩率ー21%ないし24%)より若干低いということが
できる。
(イ) 位置及び形状(別紙2(4),(5),(8)及び(9)参照)
 次に,被告が指摘する標記の問題を検討する。本件従前地(2)③・(4)は,h川流域の田園地域の西側に所在した
比較的整形な一団の土地であり,本件従前地(2)②は本件従前地(2)①の西南側に隣接したほぼ長方形の土地であった。
本件従前地(5)は本件従前地(1)⑦に隣接した不整形な傾斜地であり,原告Aの住所地から約500m程度離れた高台に所
在した。
 本件換地(2)②・(4)・(5)②は,本件従前地(2)③・(4)と重なる位置にあり,いずれも整形な一団の土地である。本件
換地(5)①は,本件従前地(2)②と一部で重なる位置にある比較的整形な土地であり,本件換地(5)③は,本件換地(2)
②・(4)・(5)②から北西方向に約100m離れた場所にある長方形の土地である。
(ウ) 土地利用状況
 さらに,被告が指摘する標記の問題を検討する。本件従前地(4)は原告Aの住居敷地として利用されており,同従
前地と一団の土地である本件従前地(2)③は,公簿上の地目は田であったが,基準時の現況は宅地であって,本件従前
地(4)と一体的に利用されていた。本件従前地(5)は,かなり大規模な土地であり,その地目は畑であるが,傾斜地かつ不
整形地であったことに鑑みれば,都市近郊の集約的な農業には適さない土地であったと推認される。
 本件換地(2)②・(4)・(5)②は,換地処分前と同様に同原告の住居敷地として利用されている。本件換地(5)①及び
③の地目は別表1のとおりであるが,実際の利用状況は証拠上明らかではない。
(以上,(イ)及び(ウ)につき乙65,乙67の4・5・8・9,乙131,証人R,弁論の全趣旨)
(エ) 換地内の待受擁壁の設置(公平原則との関係)
a ところで,原告Aは,「本件換地(2)②・(4)・(5)②内には,西側に隣接する斜面地である本件換地(2)①との境界
付近に擁壁が設置されており,約200㎡の範囲の土地を宅地として利用することができない。本件事業においては関係人
換地(7)・(8)のように換地外に擁壁を築造した例があるところ,上記のように換地内に擁壁を築造した土地を対象とした本
件換地処分は,公平の原則に違反する。」旨主張する(請求原因(5)ア(エ)b。なお,擁壁の位置については,別紙2(1)参
照)。
b そこで,待受擁壁の設置の経緯について検討するに,証拠(甲7,乙32ないし36・47・65,乙67の1・15・16,
乙77・78・101ないし103,証人R,原告Aの一部,原告Hの一部)及び弁論の全趣旨から,次のとおり認められる。
 本件換地(2)②・(4)・(5)②及び(18)・(19)(後者は原告Gらの換地である。)には,昭和57年ころ,同換地の西側
に隣接する斜面地(本件換地(2)①及びhiの斜面地。以下,同斜面地を含む南北に連なる一連の斜面地「h地区斜面地」
という。)から土砂の流入があった。なお,上記土砂は,h地区斜面地の上部にあるhl土地及び同mの土地(K11街区。い
ずれも原告Aが換地指定を受けた土地であり,hmは本件換地(5)①に該当する。乙55参照)から斜面地に流出し,上記各
換地内へ流入したものであって,h地区斜面地が崩壊してできた土砂ではない。
 そのため,被告は,原告A及びN(原告Gらの親であり,本件換地処分(18)・(19)当時の地権者であった。)ら,h
地区斜面地に面する土地について仮換地を受けていた地権者らから,土砂の流入を防ぐための擁壁を設置して欲しい旨
の要望を受け,昭和60年10月2日,同人らの承諾を得て,被告の費用で同斜面地の下端に傾斜地から流出する土砂等
を受け止めて流出を防ぐための約5mの高さの擁壁(待受擁壁)を築造し,昭和61年3月31日,上記擁壁を同人らに無償
で引渡した(乙34・47)。被告は,h地区斜面地自体については,樹木により保護されて安定した斜面であるとの認識であ
ったため,上記待受擁壁は比較的簡易な重力式擁壁構造のものが設置され,本件事業において宅地ないし道路の崩壊
を防ぐために設けられた土留擁壁(関係人換地(7)・(8)の隣地にある石積擁壁など)とは異なる構造とされた。
 その結果,本件換地(2)②・(4)・(5)②については,h地区斜面地に接面した一部の範囲(約200㎡)について,
宅地として利用することができなくなった。
c 前記bの認定事実に照らせば,被告による上記擁壁の設置によって上記換地内の約200㎡の範囲の土地を利
用することができなくなったが,それは地権者であったAの要望に従って被告が行ったのであるから,同原告の受忍すべき
やむを得ない不利益である。
d この点について,原告Aは,本件換地(2)①を含むh地区斜面地は,急傾斜地崩壊危険区域の指定基準である
傾斜度が30度以上,高さが5m以上という基準を充足する土地であり,土砂の崩壊の危険が高い斜面地であるから,被告
に対して緊急避難的に待受擁壁の設置を要求したものであって,真に要望したものではない旨主張する。
 しかしながら,前記のとおり,昭和57年ころに起きた土砂の流入は,同斜面地の上部の土砂が流出した結果で
あり,同斜面地が崩壊したことによるものではない。また,同斜面地は,急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律に
おける急斜面地崩壊危険区域には指定されておらず,上記基準を充たす急斜面地ではない(乙31。なお甲8参照)から,
このことに照らせば,同斜面地の崩壊の危険性が高いという原告らの主張は,理由がないといわざるを得ない。
 他方,原告らが指摘する別表2目録(7)・(8)の関係人換地の隣地に存する擁壁は,公共施設である区画道路の
設置に伴って道路を保護するために被告が築造した間知石積擁壁であって(甲4・乙36・65,証人R),上記擁壁とは性
格が異なるというべきであるから,同目録(7)・(8)の換地との関係において公平の原則に違反するという原告らの主張は採
用できない。
 なお,原告A及び同Hは,h地区斜面地のうち,原告A及び同Gらの土地の隣地(SないしTの所有地)につい
て,被告は宅地内には擁壁を築造せず,斜面地内に擁壁を築造した旨供述するが,これを裏付ける客観的な証拠はな
い。仮に同原告らの供述が正しければ,公平の観点からすれば行政上の対応としては原告らとの関係で疑問が残るところ
であるが,同原告らの換地内に設置された待受擁壁の位置を考慮すれば,本件換地(2)②・(4)・(5)②について実質的な宅
地利用地が大幅に減少したとはいえない。
(オ) まとめ
 以上のとおり,本件従前地(2)②③・(4)と本件換地(2)②・(4)は,位置・形状及び土地利用状況においてほぼ照応
するということができ,減歩率も比較的低い。本件従前地(5)は,本件換地(5)①ないし③に分割換地されており減歩率も若
干高いが,本件換地(5)②は本件換地(2)②・(4)と一団の土地を形成し,原告Aの住居敷地として一体的に使用されてお
り,本件換地(5)①③は上記住居敷地の近隣地に所在している。
 そして,本件換地(2)②・(4)・(5)②内に待受擁壁が設置されたことについては,(エ)のとおりの事情がある。
 以上を総合考慮すれば,本件換地処分(2)②・(4)・(5)は照応の原則に違反しない。
ウ 本件換地処分(2)①
(ア) 減歩率
 ここでもまず,被告が主張中で趣旨において触れている減歩率の問題を検討する。本件換地処分(2)①の減歩率
は3.03%であり,極めて低い。
(イ) 位置及び形状(別紙2(8)参照)
 次に,被告が指摘する標記の問題を検討する。本件従前地(2)①は本件従前地(4)の西側に隣接する傾斜地(山
林)であった。本件換地(2)①は本件従前地(2)①と重なる位置にある整形な傾斜地(山林)である。同傾斜地の高低差は約
14m程度であり,傾斜度は平均で約31ないし37度程度である(甲7)。
(ウ) 土地利用状況等
 さらに,被告が指摘する標記の問題を検討する。本件従前地(2)①は本件従前地(4)(住居敷地)の裏山として,同
土地と一体的に利用されていたものであり,地権者による燃料木の採取等のために,利用されていたと推認される。
 被告は,本件施行地区内の山林については,その全てを買収し(前記第1の2(3)イ),保全山林として整備すると
いう方針であったが,原告Aは,被告ないし公社による本件従前地(2)①の買収に応じなかった。被告は,買収できなかっ
た地権者所有の山林については,開発をせずそのまま現地換地するという方針で臨んだため,本件換地(2)①は原告Aに
対し,その住所地と一体的に現地換地された。
(以上,(イ)及び(ウ)につき,乙65,乙67の8,乙103,証人R)
(エ) 急傾斜地を換地をしたこと(公平原則との関係)
a ところで,別表2目録(1)ないし(9)・(14)・(15)の換地処分は,従前地の現況に山林(傾斜地)が含まれるにもかか
わらず,宅地(平坦地)を換地としている(争いがない)。これに対し,本件換地処分(2)①は,山林を山林に換地している。
そこで,原告Aは,横の照応違反があると主張する(請求原因(5)ア(ウ)b)。
b しかしながら,まず,関係人換地処分(1)・(5)・(6)・(9)・(14)・(15)の減歩率は33.79%ないし50.78%であり,標
準減歩率より高く,本件換地処分(2)①の減歩率3.03と比較すると非常に高い(乙88・129)から,本件換地処分(2)①
は,上記関係人換地処分において山林が宅地に換地されたこととの相応の均衡が保たれているということができる。
 関係人換地処分(4)ないし(6)・(14)については,従前地が都市計画決定をされ,公共施設(都市公園)として開
発されることとされた区域にあったことから斜面地に現地換地することができず,平坦地に飛び換地することとなったもので
あり,合理的な理由があったと認めることができる(乙82の2,乙88)。
c 他方,関係人換地処分(2)・(3)は,山林から宅地に換地指定がされているにもかかわらず,減歩率が著しく低
い。
 しかしながら,本件事業においては,本件施行地区内に325㎡以下の従前地のみを有している者については
減歩率を緩和するという特例措置がとられており(換地設計基準15条及び同別表「小宅地減歩緩和表」参照),同制度
は,整理法91条,同法施行令57条に基づいて被告が策定したと考えられる。上記各換地処分の減歩率が目立って低い
のは,この措置が適用されたことによるものである。
 本件事業の規模等に鑑み,比較的小規模の土地を所有していた地権者に対する優遇策として,上記の小宅地
制度を定めたことが,およそ合理性がないとまでいうことはできない。 
d また,関係人従前地(7)・(8)は,従前地のうちnoの土地を除くと全て山林である(noの土地の公簿上の地目は山
林であるが,換地前の現況は宅地であった。乙113の7,乙129参照)ところ,宅地が換地指定されているにも係わらず,
減歩率は標準減歩率とほぼ同等である24.32%及び21.17%であり,地権者であるUにとってやや利益に扱われたとみ
ることも可能である。
 しかしながら,関係人換地処分(7)・(8)がされたことには,下記のような経緯がある。すなわち,上記各従前地は,
本件施行地区のn地区(本件施行地区のほぼ中心部の地域。別紙1参照)に所在しており,n地区においては,地権者間
の調整が困難で,仮換地の指定が他の地区に比べて大幅に遅れ,換地前の現況が水田のところを仮換地として指定され
た地権者らが地盤の固い土地への仮換地変更を求めたことなどがあり,換地指定に難航した地区であった。被告は,その
ような状況を踏まえて,藤沢都市計画事業西部土地区画整理事業施行に関する条例施行規則(乙96)3条に基づきn特
別委員会を設置した。n特別委員会は,昭和60年7月16日から同63年1月22日まで13回にわたって,審議を重ね,調査
結果を出し,審議会に諮問したところ,6回に及ぶ審議の上で異議ない旨の答申が出された。被告としては,同委員会の
調査審議結果は,現地の実情に即し,地権者の意向に沿った結論としてこれを尊重することが迅速的確に事業を実施す
ることになると判断して,同結果に基づいて仮換地指定,換地指定を行った。(甲12・13,乙88・90,証人R,原告A)
 加えて,関係人従前地(7)の一部(noの土地)の現況が宅地であって,関係人従前地(7)・(8)の勾配(傾斜地修
正)が他の関係人従前地(1)ないし(6)・(9)・(14)・(15)と比較してやや緩やかであること(乙113の7ないし9)などに照らせ
ば,Uに対して著しく利益な取扱いがされたとまで認めることはできない。
e 加えて,上記各従前地は,前記2で認定した一定の基準・算定式に基づいて評価された上で,それぞれ相応す
る換地が換地指定されており,多少の不均衡が生じた場合には,清算金による調整が図られたことが認められる(乙99・1
06,証人R)。したがって,上記評価については一応の合理性があるということができ,このことに照らすと,特定の地権者
に有利に評価・算定されたとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
f なお,原告Aは,本件換地(2)①について,平成3年11月14日付けで,土地区画整理審議会及び被告に対し
て,平坦地(宅地)へ換地変更をするように要望したこと(乙101),同審議会はこれを受けて,被告に対し,本件換地(2)①
を平坦地(宅地)へ換地変更する場合の換地面積は,従前地面積の3分の1程度とする旨の要望書を提出したこと(乙10
2),同原告は被告からその旨説明を受けたこと(甲11,原告A)が認められる。同原告は,このことから同原告について他
の地権者と比較して特に不利益な扱いをされた旨主張する。
 しかしながら,同原告は,前記(ウ)のとおり,当初は公社による山林部分の買収に応じなかったことから,現況の
まま現地に仮換地を受けていたところ,同原告の要望は,本件事業の開始後20年を経過し,本件事業が終局する段階に
至って,平坦地(宅地)への換地を求めたものである(乙103)。その間に社会は変化し,本件換地(2)①のような土地の価
値も変化が生じてきている。したがって,この段階での換地変更の要望は,当初の事業計画時とは,基準時,可否,条件
等に大きな変化が生じてきているのであり,いわば別個の案件とも目すべきものであり,他の地権者の換地処分と同列に
論ずることは相当でない。また,この要望に対する扱いについて,当初から山林の買収に応じた者との間に差が設けられ
たとしても,そのことに合理性がないということはできない。
 したがって,この点に関する同原告の上記主張は採用できない。
(オ) まとめ
 以上(ア)ないし(ウ)によれば,本件従前地(2)①と本件換地(2)①は,位置・形状及び土地利用状況においてほぼ照
応するということができ,減歩率は極めて低いから,本件換地処分(2)①は従前地との関係においては照応の原則に違反
しない。
 また,(エ)のとおり,関係人の一部について,従前地が山林(傾斜地)であったにもかかわらず,宅地(平坦地)に
換地処分を受けた者がいるが,いずれもそのことには合理的な理由があるということができる。また,原告Aが本件従前
地(2)①の買収に応じなかったことから本件換地(2)①を現地換地されたという事情もあり,前記関係人との関係で原告Aが
著しく不利益に扱われたとまでいうことはできない。
 以上から,本件換地処分(2)①は関係人との関係でも照応の原則に違反しない。
エ 本件換地処分(1)・(6)・(7)
(ア) 減歩率
 ここでもまず,被告が主張中で趣旨において触れている減歩率の問題を検討する。本件換地処分(1)の減歩率は
28.06%,同(6)の減歩率は28.23%,同(7)の減歩率は25.83%であり,いずれも本件事業における一般民有地の減
歩率としては,標準減歩率と比較して若干高いと評価できる。
(イ) 位置及び形状(別紙2(2)・(4)ないし(7)参照)
 次に,被告が指摘する標記の問題を検討する。
a 本件従前地(1)①ないし⑥の6筆の土地は,原告Aの住居敷地(本件従前地(4))の近隣の田園地域に所在した
一団の水田であり,個々的には整形地であったが,一団の土地としてみると不整形地であった。本件従前地(1)⑦・(6)は同
原告の住所地から約500m離れた高台にあり,本件従前地(5)と共に一団の不整形な傾斜地を形成していた。本件従前
地(7)は,原告Aの住所地から約720m離れた標高約42mの台地にある不整形地であった。
b 本件換地(1)・(6)①・(7)は,本件従前地(1)①ないし⑥と重なり合う位置にある一団の整形な土地(K24街区)で
あり,本件換地(6)②は,K24街区の隣地にあるほぼ正方形の土地(K25街区の一部)である。
(以上(イ)全体につき,乙48・65,乙67の2・4ないし7,証人R)
(ウ) 土地利用状況
 さらに,被告が指摘する標記の問題を検討する。
a 本件従前地(1)①ないし⑥は,いずれも水田として利用されていた。
 本件従前地(1)⑦・(6)・(7)の公簿上の地目は畑であるが,(イ)のように,原告Aの住所地から離れた高台に散在し
ており,不整形な土地であったから,都市近郊の集約的な農業には適さない土地であったと推認できる。
b 本件換地(1)・(6)・(7)は,いずれも昭和45年5月ころないし昭和47年秋ころにかけて,被告が造成した保全農地
である。被告は,原告Aに対して,昭和50年3月13日付けの通知により,K24街区(本件換地(1)・(6)①・(7)に相当するが
区画割りは異なる。)について仮換地として指定し,同年10月3日付け通知により,K25街区の一部(本件換地(3)・(6)②に
相当する。)を仮換地として指定した。K24街区については,昭和52年10月10日から使用収益が可能となり,同原告は
そのころから上記各土地を畑として使用し始めた。(乙49・50)
 その後,K24街区について同原告の要望により仮換地の変更がされ,別紙2(1)のとおりの区割りとなった(乙2
6)。そして,本件換地処分の際には本件換地(6)①・(7)上には,平屋建ての事務所・倉庫等が建築されていたため,本件
換地処分時には地目が宅地に改められた(乙27・48・69の1,弁論の全趣旨)。
(エ) 土質(軟弱地盤を換地したことと照応原則との関係)
a ところで,原告Aは,本件換地(1)・(3)・(6)②・(7)はいずれも地盤が軟弱で木質系2階建ての建物の支持地盤とし
て適切とされる地耐力がなく,他方,本件従前地(1)・(3)・(6)・(7)は地耐力のある土地であったから,照応の原則に違反す
る旨主張する(請求原因(5)ア(ア)b)。
b そこで検討するに,
(a) 本件従前地(1)①ないし⑥は,前記のとおり,原告Aの住居地の近隣に所在する田園地域に存し,同原告ら
によって田として耕作されていた土地であり,木質系2階建ての建物の支持地盤として十分な地耐力を有していたもので
はない。他の従前地については,地目が畑であって,地耐力を有していたと推認される。
 (b) これに対応する上記各換地はいずれも保全農地(畑)として昭和45年5月ないし同47年秋ころ,約3m前後
の盛土がされ,造成された土地であるところ,少なくともK24街区については,造成直後の圧密沈下が終了するべき時期
を過ぎても地盤沈下が収まらず,昭和62年1月以降,区画道路の舗装工事等が行われた後にも地盤沈下が続き,隣接す
る区画道路との高低差が小さくなり,街区内へ浸水が生ずるなどの被害も発生した。また,K24街区以北の他の土地につ
いてもそのような地盤沈下が多数発生しており,かかる土地について仮換地を受けた原告Aを含む地権者らは,自ら造成
工事をするか,被告に対して地盤改良のための工事(さらなる盛土等)を要求していた。
 被告は,同原告からのK24街区の盛土工事の要請に応じ,同原告に対して盛土工事等に相当する費用につ
いて,補償することとなり,昭和63年9月26日同原告と被告は,損失補償契約(乙30)を締結した。被告は,同契約に基づ
いて,同原告に対して,同原告が受けた損失に対する補償として592万0340円を支払い,他方,同契約書の3条では
「損失の有無の調査は,この契約により終了し,甲(被告)及び乙(原告A)はこれについて以後異議をのべず,また乙は,
この損失補償金以外は一切甲に補償の請求をしないものとする。」と定められた。
 同原告は,平成4年6月8日付けで本件換地処分(1)を受け,その後平成6年4月ころ,同土地上に家屋を新築
しようとした際に,横浜ボーリング工業株式会社に対してボーリング調査を依頼したところ,調査の結果,本件換地(1)は,3
m以上の深さから非常に軟弱な地盤となっており,5.7mないし18.5mの深さにおけるいわゆるN値(標準貫入における
貫入抵抗を示す値)は1ないし2にすぎず,建築学上軟弱で地耐力をほとんど期待できないという報告がされた。
(以上につき,甲6・11,乙30・65,証人R,原告Aの一部,弁論の全趣旨)
(c) (b)の認定事実に照らすと,本件換地(1)は,少なくとも本件換地処分時においては,木質系2階建ての建物を
建築するための宅地としては,必要な地耐力を有していたと認めることはできない。
 この点について被告は,K24街区の近隣である37街区において行ったボーリング調査では,宅地として十分
な地耐力がある旨の結果が出ている旨の証拠(乙28)を提出するが,37街区はK24街区の南東の土地であって,同原告
が問題とするK24街区以北の土地ではない。また,近隣の土地であっても地耐力が異なることは十分に考えられ,本件に
おいては,仮換地(農地造成)前からK24街区が特に軟弱地盤であったことを窺わせる証拠(甲11,原告A,証人R第22
回口頭弁論期日における尋問調書12頁参照)もあるから,乙28から本件換地(1)についても37街区と同様の地耐力があ
ると認めることはできない。
c 小括
 そうすると,本件換地(1)・(3)・(6)②・(7)について,その従前地との縦の照応,他の地権者らとの横の照応が問題
となり得る。ただし,本件では,bのようにK24街区について,被告は原告Aに対して損失補償として既に592万0340円を
支払っており,その後,同原告が同街区の本件換地(1)・(6)①・(7)を換地として指定されたという事情がある。したがって,
上記各換地が軟弱地盤であることについては,相応の補償がなされているということができ,土質の観点だけから,照応を
欠き違法とまで断ずることはできない。
(オ) 水田修正の是非(従前地の評価基準時との関係)
a 原告らは,従前地の評価の基準時について,本件事業の公告がされた昭和47年2月1日を基準とすべきとこ
ろ,本件従前地(1)①ないし⑥は,そのころまでには畑として造成されていたから,これを水田として評価するべきではない
旨主張する(請求原因(5)ア(イ))。
b そこで検討するに,従前地と換地の照応については,原則として土地区画整理事業開始の時における状況を
基準とすべきであって,同事業開始後における状況の変化は,それが同事業の実施に伴うものである場合には考慮すべ
きではない(最高裁昭和36年12月12日第三小法廷判決・民集15巻11号2731頁参照)。ただし,施行者が,同事業開
始に先立って,同事業の施行地区となる予定の土地について,地権者から起工承諾を受け,整地工事を先行していたよう
な場合については,整地工事を同事業の実施に伴うものと同視するべきであるから,起工承諾を得る前の現況を基準とす
るべきである。
c これを本件についてみると,本件事業の開始時は本件事業の公告日である昭和47年2月1日と解するべきであ
るから,一般的には同日における現況を基準に従前地を評価するべきである(この点は当事者間にも争いがない)。しかし
ながら,本件事業においては,前記第1の2(4)アのとおり,被告は,本件事業の認可に先行して地権者から起工承諾を得
て保全農地の造成を行った経緯があるため,そのような従前地については起工承諾を得て造成工事を行う前の現況を基
準とするべきである。
 そうすると,本件従前地(1)①ないし⑥については,少なくとも昭和45年以前は原告Aが水田として使用収益し
ており,昭和45年5月ころないし昭和47年の秋ころにかけて,被告が同原告の起工承諾を得て畑として造成工事をしたこ
とが認められる(乙126・127,証人R,弁論の全趣旨)。そうすると,仮に,被告が昭和47年2月1日以降に造成工事を行
ったのであれば,本件従前地(1)①ないし⑥の現況は,同日を基準として水田と評価されるべきであるし,仮に被告が同日
までに造成工事を終えていたとしても,その工事以前の状態である換地前の現況を把握すべきであるから,やはり水田と
評価されるべきである。したがって,いずれにせよ,被告が上記各従前地を水田と評価したことについて誤りはない。
d なお,原告Aは,別表2目録(16)ないし(18)の従前地の一部について,基準時の現況が水田であるにもかかわら
ず,畑として,被告により有利な評価がされている旨主張する。
 しかしながら,同原告の上記主張を認めるに足りる的確な証拠はない。同原告は,O所有のbeの土地が本件従
前地(1)①ないし⑥の近隣に所在していたことから,同従前地と同様に被告が農地造成工事を行ったとみるのが合理的で
あると主張し,航空写真である甲31・32を提出するが,同証拠から直ちに被告がbeの土地について造成工事を行ったと
認めることはできない。
 したがって,この点に関する原告らの主張は採用できない。
(カ) まとめ
 以上(ア)ないし(オ)のとおり,本件換地処分(1)・(6)・(7)においては,いずれも25%を超える減歩がされているが,従
前地には原告Aの住所地から遠く離れた不整形な土地が多く存在したところ,それらの従前地に対応する土地として同住
所地周辺に集約的に換地が指定され,従前地農地については,換地処分により,区画道路が整備された場所に保全農
地として造成されて換地されており,上記各換地処分により,土地利用の利便性が向上したと評価することができる。そし
て,(エ)のとおり,K24街区(本件換地(1)・(7)・(6)①)が宅地として利用することが困難な土地であったとしても,補償がされ
ており,そのことから上記土地を換地とする各換地処分が,従前地及び関係人換地処分との関係において,公平に反する
とはいえない。
 以上の(ア)から(エ)を総合考慮すれば,本件換地処分(1)・(6)・(7)に照応原則違反は認められないし,同原告指摘
の他の法令違反の事由も認められない。
 なお,(オ)のとおり水田修正には同原告指摘の誤りはない。また,同原告は,本件従前地(1)⑦・(6)について,当時
の現況が傾斜地ではないのに,傾斜地修正がされている点で違法である旨主張する(原告ら平成10年12月7日付け準
備書面)が,前記第2の2(1)エのとおり,利用状況が同じで同一権利者の連続する土地について,一体のものとして評価
することが可能であるところ,本件従前地(1)⑦・(6)は,本件従前地(5)と連続する土地であり,かつ,いずれも地目が畑であ
るから,被告は,上記規定を適用して一体的に傾斜地として評価したと推認される(乙67の4,乙109の12参照)。したが
って,本件従前地(1)⑦・(6)について,現況を傾斜地と評価し,傾斜地修正をしたことは,本件土地評価基準に違反すると
はいえない。
オ 本件換地処分(3)
(ア) 減歩率
 ここでもまず,被告が主張中で趣旨において触れている減歩率の問題を検討する。本件換地処分(3)の減歩率は
26.93%であり,本件事業における標準減歩率と比較すると若干高い。
(イ) 位置及び形状(別紙2(3)参照)
 次に,被告が指摘する標記の問題を検討する。本件従前地(3)①は,原告Aの住所地から約150m離れた標高
約38mないし52mの傾斜地にある非常に細長い長方形の土地であった。本件従前地(3)②③は,同原告の住所地から約
130m離れた場所にあり,いずれも地積は49㎡という狭小な一団の土地で,非常に細長い長方形の土地であった。本件
従前地(3)④は,同原告の住居敷地の隣地にある比較的整形な土地であった。
 本件換地(3)は,本件従前地(3)④と重なり合い,K24街区の隣地にあるほぼ正方形の土地(K25街区の一部)で
ある。
(以上,乙48・65,乙67の3,証人R)
(ウ) 土地利用状況
 さらに,被告が指摘する標記の問題を検討する。
a 本件従前地(3)①ないし③の公簿上の地目は畑であるが,(イ)のように,原告Aの住所地から離れた高台に散在
する非常に細長い土地であり,都市近郊の集約的な農業には適さない土地であったと推認できる。
b 本件従前地(3)④は,現況水田として減価修正されており,従前地の平方メートル当たりの評価指数を算定する
際に90%が乗ぜられた(争いがない。)。そして,被告は,昭和47年10月ないし11月ころ,本件従前地(3)④等について
整地工事をする際に,原告Aに対して休耕補償料を支払っており(乙126・127),それによれば,現況が水田と評価され
て補償料が支出されていたことが認められる。なお,被告が,休耕補償料を支払う際に,どのような現況調査を前提として
行ったかについては何ら立証がない。
 しかしながら,昭和44年6月8日に撮影された本件従前地(3)④周辺地の航空写真(甲31。なお,位置関係に
ついては原告らの平成13年3月22日付け準備書面添付の図面①参照)によれば,同従前地の場所には,畝状に耕され
た情況が撮影されており,また,同従前地の東側には小屋のような建物があることが認められる。仮に,同従前地が水田と
して使用されていたのであれば,6月ころは水が張っているはずであるところ,そのような状況が撮影されていない。そうす
ると,少なくとも昭和44年6月8日時点での本件従前地(3)④における現況は,水田ではなかったと認めることができ,その
後,再び水田として使用されたことを認めるに足りる証拠はない。
(エ) 土質
 次に,原告Aが問題とする土質について検討する。
 本件従前地(3)④は,(ウ)のように原告Aが水田ではなく畑ないし雑種地として使用していた土地と推認される。ま
た,本件従前地(3)①ないし③は地目が畑である。したがって,上記各従前地は,いずれも,地耐力については問題がなか
ったと推認できる。
 他方,本件換地(3)は,いずれも昭和46年ころ,被告が畑として造成した保全農地である。同原告は,本件換
地(3)(K25街区)についても前記エ(エ)におけるK24街区(本件換地(1)・(6)①・(7))と同様,軟弱地盤である旨主張し,これ
に沿う供述をする。また,乙27・48・69の1によると,本件換地(3)上には建築物等が築造されず,遊休地とされていること
が認められ,地耐力について問題がある土地との疑いがある。しかしながら,同換地の一部は本件従前地(3)④と重なり合
っていること,同換地についてはボーリング調査等がされていないことから,本件換地(1)のように,木質系2階建ての建物
の支持地盤として十分な地耐力があるか否かについて,確認することができない。
(オ) まとめ
 前記(ウ)のとおり,本件従前地(3)④については,現況が水田ではなかったと認められるから,被告が同従前地に
ついて水田修正して従前地の平方メートル当たりの評価指数を算定し,換地の地積等を算定したことは,本件土地評価基
準に違反する明白な瑕疵があるといわざるを得ない。前記(第2の2(2))のとおり,本件土地評価基準は整理法及び施行条
例に根拠をおく基準であるから,これに反した評価をしたことは重大な違法があったといわざるを得ない。また,他の換地
処分との横の照応の関係から見ても,本件従前地(3)④についてのみ現況が水田でないにもかかわらず水田修正をしてお
り,かつ,そのことに特別の合理的な理由は見当たらない。
 したがって,他の(ア),(イ)及び(エ)の事情を総合考慮したとしても,本件換地処分(3)には,取り消されるべき違法の
瑕疵があるといわざるを得ない。
4 本件換地処分(8)ないし(13)の違法の有無(B及び原告C関係ー請求原因(5)イ)
(1)証拠(乙38ないし42・65,乙67の10,乙70・83,証人R)及び弁論の全趣旨から,本件換地処分(8)ないし(13)の
経緯に関し,次の事実が認められる。
ア 被告は,別紙3(1)の青線又は赤線で囲った範囲の従前地に対応する仮換地として,昭和51年ころ,Bの父である
P,原告C及びB(以下「原告Cら」という。ただし,Pの死亡後は同人を除く。)に対して,別紙3(2)の赤線で囲った範囲(L
ー10ー2街区)を指定した。そのうち,Pに対しては別紙3(2)の③及び④の画地,原告Cに対しては同②の画地,Bに対し
ては同①ー①から①ー③の画地が,それぞれ仮換地として指定された。
 上記の仮換地指定の後,原告Cらは,被告に対し,昭和61年1月6日まで,4回にわたり仮換地変更願を提出し
た。上記変更願は,いずれも,Lー10ー2街区内で原告Cらが仮換地の範囲・配分方法を変更するという要望であったか
ら,被告は,原告Cらの上記要望どおりに仮換地の変更指定を行い,4回目の仮換地指定変更の結果,別紙3(3)の赤線
で囲った範囲のとおり仮換地が指定された(原告Cに対しては別紙3(3)の②,③ー②及び③ー③の画地が仮換地指定さ
れ,Bに対してはその余の画地が指定された。)。
イ その後,被告は,BがLー10ー2街区内の別紙3(3)の黄色部分を被告に寄付して,道路の築造を要望したため,
それに受けて街区内に幅員4.00ないし4.20mの道路を築造し,上記道路は,平成5年2月開会の藤沢市議会の議決を
経て市道路線としての認定がされ,公道となった。
 そして,本件換地処分(8)ないし(13)においては,原告Cらの変更願どおりに変更指定されていた仮換地が,そのま
ま換地として指定された(本件換地(8)ないし(13)の位置関係については別紙2(10)参照)。
(2)原告Cら主張の違法事由の有無
ア 公道不接続
 原告Cらは,本件換地(8)ないし(10)が公道に接していない旨主張するが,前記(1)イのとおり,いずれも公道に接し
ている。よって,原告Cらの主張は前提において失当である。
 なお,原告Cらは,請求原因記載の事実とは別に,前記(1)イの道路敷地部分の寄付が錯誤により無効である旨主
張するが,このような主張を認めるに足りる証拠はない(なお,乙83参照)。
イ 長大画地,間口・奥行き及び準袋地換地
(ア) 原告Cらは,本件換地(11)ないし(13)について,本件事業計画,本件換地設計基準で標準とされる規模,形状
等に違反しているから,整理法86条3項に違反する旨主張する。
  また,同Cらは,併せて,整理法89条1項違反を主張するが,これは,本件換地(11)ないし(13)が,本件事業計画
及び本件換地設計上の標準とされる規模・形状等に違反していることから,他の地権者の換地処分と比較して不利に扱わ
れており,照応原則(整理法89条1項)に違反するという趣旨の主張と考えられる。
(イ) そこで検討するに,土地区画整理事業の換地計画において換地を定めるにあたり,施行地区内の特定の数筆
の土地につき所有権その他の権利を有する者全員が他の土地の換地に影響を及ぼさない限度内において上記数筆の土
地に対する換地の位置,範囲に関する合意をし,上記合意による換地を求める旨を申し出たときは,事業施行者は,公益
に反せず事業施行上支障を生じない限り,整理法89条1項所定の基準によることなく上記合意されたところに従って各土
地の換地を定めることができると解すべきである(最高裁昭和54年3月1日第一小法廷判決・判例時報925号63頁)。
(ウ) これを本件についてみるに,前記(1)のとおり,被告が本件従前地(11)ないし(13)についてLー10ー2街区内の
土地を仮換地先として指定した後,原告Cらは4度にわたり,被告に対して仮換地先の変更の要望をしたこと,上記要望の
内容は,同街区内における仮換地区分の変更に止まり,他の土地の換地に影響を及ぼさなかったこと,被告は,上記原告
Cらの要望に沿って仮換地先の変更を行い,その仮換地区分に従って本件換地(11)ないし(13)を行ったことが認められ
る。
 そうすると,本件換地処分(11)ないし(13)は,地権者である原告Cらの合意に基づいてなされたものと同視すること
が可能であって,そのために規模,形状等が本件事業計画及び本件換地設計上の標準とされる規模・形状にならなかっ
たとしても,そのことから整理法86条3項に違反することにはならず,整理法89条(照応原則)に違反することにもならな
い。
 なお,原告Cらは,請求原因記載の事実とは別に,「原告Cらが昭和61年に行った4度目の仮換地変更願は,本
件区画内の道路敷地(別紙3(3)の黄色部分)の寄付が有効であることが前提となっているところ,上記寄付は錯誤により無
効である。したがって,同原告らによる仮換地変更願も無効であるから,それに従った本件換地処分が有効になるもので
はない。」旨主張するが,前記(1)イのとおり,上記寄付が無効であることを認めるに足りる証拠はない。
5 本件換地処分(14)ないし(17)の違法の有無(原告D,同E及び同F関係ー請求原因(5)ウ)
(1)軟弱地盤・傾斜地換地の適否
 原告Dらは,本件換地(14)②・(15)ないし(17)は,地盤が軟弱で地耐力がなく,急傾斜地であると主張し,そのような
上記各土地を換地とする処分は,憲法29条1項,整理法1条・2条1項(都市計画法12条・13条1項),整理法86条3項に
違反する旨主張する。
 上記主張の趣旨は,土地区画整理事業が公共施設を備えた良好な宅地の造成を図るための事業であることから,
宅地として利用することができない土地を換地とする処分は違法であるというものであるが,この点については前記3(1)で
判示したとおりであり,整理法上は,公共施設用地以外が宅地なのであるから,同原告らの主張は採用できない。したがっ
て,同原告ら主張の法令違反の事由は認められない。
(2)照応原則違反の有無
ア 減歩率
 まず,被告が主張中で趣旨において触れている減歩率の問題を検討する。 本件換地処分(14)の減歩率は21.4
8%,同(15)の減歩率は22.50%,同(16)の減歩率は21.24%,同(17)の減歩率は20.97%であり,いずれも標準減歩
率と同程度か,若干低いということができる。
イ 位置・形状・利用状況(別紙2(11)ないし(14)参照)
 次に,被告が主張する標記の問題を検討する。本件従前地(14)・(15)は,標高が約49mほどの高台に所在した一
団の長方形の土地であり,地目は畑であった。本件従前地(16)・(17)の地目は山林であるが,実際には,原告Dの夫である
Qが,同人経営の「a製材所」の工場敷地として使用していたものであり,やや不整形な土地であった。
 本件換地(14)②・(15)ないし(17)(H21ー1街区)は,本件従前地(14)・(15)と一部において重なる位置にある整形な
土地であり,本件事業前は中央を北東から南西方向に道路が走り,その両側が水田として耕作されていた土地であった。
本件換地(14)①は,他の換地から100m以上離れた位置にある長方形の土地であり,その利用状況は不明である。
 本件換地(14)②・(15)ないし(17)の東側は,いずれも幅約12mの水路敷(被告所有地)に法面で接しており,法地
の高低差は約5m,法地部分の地積は約400㎡と推測される。また,水路敷と法地との境界には,約1m程度の高さの擁
壁が設置され,水路敷内の水路の両側は間知石積の擁壁で保護されている(乙72参照)。
 Q及び原告Dらは,仮換地指定を受ける前である昭和48年秋ころから,本件従前地(16)・(17)からa製材所の工場・
事務所をH21ー1街区上に移転させ,上記街区をa製材所の工場・事務所や同原告らの住居敷地として使用してきた。
(甲26,乙56ないし61・65,乙67の11ないし14,乙72,証人R,原告Eの一部,弁論の全趣旨)
ウ 土質
(ア) 原告Dらは,本件換地(14)ないし(17)(H21ー1街区)は水田を埋め立てた軟弱な地盤の土地であって,宅地と
して利用することができない旨主張する。
(イ) 本件従前地(14)ないし(17)については,地耐力・地盤について特に問題となる点があったことは認められない。
また,前記イ認定のとおり,本件換地(14)ないし(17)の本件事業前の現況の大半は水田ないし道路であったところ,被告は
本件換地(14)ないし(17)について約6から7mの盛土をし,宅地とするための整地工事をしたのであって,Q及び原告Dら
は,仮換地を受けたころから,本件換地(14)ないし(17)を工場・事務所又は住居の敷地として利用してきている(甲1,乙7
2,証人R)。
 この点について原告Eは,同街区上の住居建物にひび割れ等が生じている旨供述し,その証拠として甲27(写
真)を提出するところ,甲27には屋内の壁に亀裂があることが撮影されているが,建物の経年によるものである可能性があ
り,この屋内亀裂が生じていることと地盤との因果性は必ずしも明らかではない。そして,他に,地盤沈下ないし陥没などが
発生していることを認めるに足りる的確な証拠はない。
 また,法地については,前記イのとおり,水路との境界について擁壁が築造されて保護されており,法地自体にも
樹木等が植えられていること(甲1,乙72)などに照らせば,特に崩壊の危険があると認めることはできない。
 そうすると,本件換地(14)ないし(17)が軟弱な地盤であり,法地についても崩壊の危険があると認めることはできな
い。
エ 関係人換地処分(1)ないし(9)・(14)・(15)との比較
(ア) また,原告Dらは,関係人換地処分(1)ないし(9)・(14)・(15)について,従前地が急傾斜地であるにもかかわらず
平坦地に飛び換地された例があるから,本件換地処分(14)ないし(17)は公平原則に違反する旨主張する。
 しかしながら,前記3(2)ウ(エ)で判示したとおり,上記各関係人換地処分の内容については,そのようにされたこと
について合理的な理由が認められるから,同原告らが上記関係人換地処分との関係で著しく不利益な取扱いを受けたと
いうことはできない。
(イ) なお,関係人換地(7)・(8)に隣接する法地(npの土地)が公社所有地とされ,同法地内に土留擁壁が築造されて
いる(乙36・90の3(付図参照),乙129,弁論の全趣旨)。したがって,換地内に法地が残され,簡易な擁壁しか築造され
なかった本件換地処分(14)ないし(17)と比較すると,上記関係人換地処分が若干有利に扱われたとみることも可能である。
 しかしながら,原告Dらに対する本件換地処分(14)ないし(17)では,本件換地(14)ないし(17)について法地修正が
されており,その結果,本件換地処分(14)ないし(17)の減歩率も関係人換地処分(7)・(8)より若干低くなっているということが
できる。したがって,本件換地処分(14)ないし(17)は,換地内に法地があるなどの点で,関係人換地処分(7)・(8)より著しく
不利益であるということはできない。
オ まとめ
 アないしウを総合すれば,本件換地(14)①を除くと,上記各換地処分によって,大きく2か所に分散していた原告D
らの従前地が,本件従前地(16)・(17)の土地の近隣に集約換地されているということができ,各換地処分の減歩率もそれほ
ど高くない。また,本件換地(14)ないし(17)が軟弱な地盤であって宅地として利用できないとは認められない。このような点
に照らすと,上記各換地の東側が法地となっており,水路と接しているものの,本件換地処分(14)ないし(17)が従前地との
関係で照応に欠けるということはできない。また,エのとおり,関係人換地処分(1)ないし(9)との関係を考慮しても,ことさら
に不利益な取扱いを受けているとまで認めることはできない。
 したがって,本件換地処分(14)ないし(17)は照応の原則に違反しない。
6 本件換地処分(18)・(19)の違法の有無(原告G及び同H関係ー請求原因(5)エ)
(1)宅地として利用できない土地を換地とすることの適否
 原告Gらは,本件換地(18)・(19)が急傾斜地に隣接しており,本件換地(18)・(19)内には隣接した急傾斜地との間に
擁壁が築造されたことによって,宅地として利用できない土地があるとして,そのような土地を換地とする処分は,憲法29
条1項,整理法1条・2条1項(都市計画法12条・13条1項),整理法86条3項に違反する旨主張する。
 上記主張の趣旨は,土地区画整理事業が公共施設を備えた良好な宅地の造成を図るための事業であることから,
宅地として利用することができない土地を換地とする処分は違法であるというものと考えられるが,この点については前記
3(1)で判示したとおりであり,同原告らの主張は採用できない。したがって,同原告ら主張の法令違反の事由は認められな
い。
(2)公平原則違反の有無
ア 原告Gらは,本件事業においては関係人換地(7)・(8)のように換地外に擁壁が築造された例があるところ,本件換
地処分(18)・(19)は,擁壁を築造した土地を換地として指定されたから,公平の原則に違反する旨主張する。(なお,従前
地・換地と擁壁の位置については,別紙2(15)・(16)参照)
イ この点は,前記3(2)イ(エ)で認定したとおり,本件換地(18)・(19)内にある擁壁は,当時の地権者であるNの要望によ
り,被告が設置したものであって,その結果,h地区斜面地に接面した部分である本件換地(18)・(19)内の82㎡の範囲の土
地が利用できなくなったものである。そうすると,上記擁壁の設置によって原告Gらが被る不利益は,受忍すべきやむを得
ない不利益であるといわざるを得ず,このことから直ちに従前地及び関係人換地(7)・(8)との関係で照応を欠き,本件換地
処分(18)・(19)が違法となるということはない。
 したがって,同原告らの主張は採用できない。
7 原告ら共通の横の照応原則(公平原則)違反の有無(請求原因(4))
(1)不整形地修正等の不適用による公平原則違反(請求原因(4)ア)の有無
 原告らは,本件換地処分においては,不整形地,三角地,崖地・法地及び傾斜地について必要な修正がされてお
らず,不整形地等を有していた地権者が,不整形地等を有していない原告らと比較して有利な扱いをされた旨主張する。
 本件換地処分では,傾斜地及び崖地・法地について必要な修正がされており,従前地について不整形地・三角地
の修正がされていなかったということは前記2(2)のとおりであるが,本件施行地区は,前記2(2)イで判示したとおり,従前地
について一律に不整形地・三角地修正を行わなかった点については,相応の合理的な理由があるから,このことから照応
の原則に反するものではない。
 したがって,原告らの主張は採用することができない。
(2)関係人との横の照応
ア 山林(傾斜地)から宅地(平坦地)への換地と公平原則違反(請求原因(4)イ(ア))の有無
 標記の点については,前記3(2)ウ(エ)及び5(2)エで判示したとおりであって,本件換地処分は,別表2目録(1)ない
し(9)・(14)・(15)の換地処分との関係において,横の照応で要求される合理性が認められるから,原告らの主張は採用でき
ない。
イ 減歩率の不公平(請求原因(4)イ(イ))の有無
(ア) 関係人換地処分(10)ないし(13)
a 標記の換地処分の減歩率は,別表2のとおり,約23%ないし33%であるから,原告らに対する本件換地処分の
減歩率と大きく異ならず,原告らに対する本件換地処分が上記各換地処分と比較して著しく不利益であるとまで認めること
はできない。
b 原告らは,関係人換地処分(10)ないし(12)について,軟弱地盤(水田)である従前地が宅地へと換地されている
が,それにもかかわらず,減歩率が低く,軟弱地盤(畑)を換地指定された原告ら(本件換地処分(1))は,上記関係人換地
処分との関係で不利益な取扱いをされた旨主張する。
 しかしながら,まず,畑を換地指定された原告Aについては,本件事業において,もともと農地を換地とされるこ
とを希望しており,希望どおり農地の換地指定を受けたのであるから(乙24,原告A,証人R,弁論の全趣旨),そのことか
ら不利益な取扱いをされたということにはならない。また,本件換地(1)・(3)・(6)・(7)及び(14)ないし(17)が軟弱な地盤である
という主張については,前記3(2)エ・オ及び5(2)ウで認定・判断したとおりであって,原告らの主張を採用することはできな
い。
c 原告らは,関係人換地処分(13)について,幅員18mの幹線道路に接した土地を換地とされているにもかかわら
ず,減歩率が約33%というのは不合理である旨主張するが,関係人換地(13)が上記の幹線道路に接道していることは,減
歩率の算定上,同換地の路線価として正当に反映されており(乙114の18),原告らの主張は理由がない。
(イ) 関係人換地処分(16)ないし(21)
 標記の換地処分の減歩率は,別表2のとおり,約5%ないし20%であるから,本件換地処分の標準的な減歩率よ
り低い。特に同目録(16)ないし(18)・(21)における減歩率は,4.75%から7.86%の間であり,著しく低い。
 しかしながら,関係人換地処分(16)ないし(18)については,関係人従前地(16)ないし(18)において基準となる路線
価が比較的高く,また,公簿上の地目が水田であった土地についても現況が畑であった土地が含まれていたことによる
(乙88・107,弁論の全趣旨)。原告らが主張するように,水田修正について特に現況に反する認定がされたと認めるに足
りる証拠はない。
 また,同目録(21)の減歩率が4.75%と著しく低くなったのは,山林(傾斜地)である従前地が現況の山林(傾斜
地)のまま現地に換地された結果であり,本件換地処分(2)①と同様の趣旨である。
(ウ) まとめ
 (ア)及び(イ)によれば,関係人換地処分(10)ないし(13)・(16)ないし(21)の減歩率は,その一部に特に低いものが認
められるが,そのことには,合理的な理由があるということができる。また,上記各関係人換地処分も,原告らに対する本件
換地処分と同様,前記2のとおりの路線価式評価法によって従前地の評価指数を算定した上で,換地の減歩率を算定し
ており(乙88・106・107,乙109の1ないし10,乙110の1ないし4,乙111・112,乙113の32ないし45,乙114の15な
いし18,乙118ないし120,証人R),原告らが主張するように,被告が本件土地評価基準等に基づかずに,関係人らに
対して特別有利な取扱いをしたという事実は認められない。
 したがって,本件換地処分について,上記関係人換地処分との関係で,合理的な理由がなく著しい不利益な取
扱いがされたということはできない。
第3 結論
1 以上のとおりであって,本件換地処分は,本件換地処分(3)については本件従前地(3)④の現況の判断を誤って水田
と認定した点において違法であるが,原告らのその余の主張に係る違法事由があるとはいえないから,この点に関する請
求は理由がない。
2 次に,本件換地処分(3)の取消の可否について検討する。前記認定事実に照らせば,既に本件事業は事業開始時か
ら約30年が経過し,原告Aが本件換地(3)について昭和50年10月3日付けで仮換地の指定を受けてから,26年余が経
過しており,その間に,本件従前地(3)及び本件換地(3)等について,多数の法律関係及び事実関係が形成されていること
が容易に推認できる。他方,本判決の理由に従って,本件従前地(3)④について,水田修正(90%を乗ずること)をせずに
新たに換地処分を行ったとしても,換地処分の減歩率が低下する割合は僅かであると推測されるから,本件換地処分(3)
の取消しによる同原告の実益は僅かなものというほかはなく,原告Aが被った損害は,金銭賠償の方法により十分補填す
ることが可能である。上記換地処分を取り消して原状を回復させることは,換地処分後の多数の権利関係を覆らせ,多数
の者に損害を与え,少なからぬ社会経済的損失を発生させるといわざるを得ない。
 以上のような換地処分の取消しによって生ずる公共の損害並びに換地処分により同原告が受ける損害の程度,その
損害の賠償の程度,その他一切の事情を総合して考えると,本件換地処分(3)は違法であるが,これを取り消すことは公共
の福祉に適合しないと認めるのが相当である。
3 よって,原告らの請求のうち,本件換地処分(3)の取消しに係る請求については,行政事件訴訟法31条を適用して請
求を棄却することとするとし,その余の請求については理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について
は,本件換地処分(3)の取消しに係る点は実質的には原告Aの勝訴の場合に当たるので,行政事件訴訟法7条,民事訴
訟法61条,64条,65条1項を適用し,主文のとおり判決する。
 横浜地方裁判所第1民事部
      裁判長裁判官   岡光民雄
          裁判官   窪木稔
         裁判官   家原尚秀

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