弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
(申立)
一、原告
原告の被告に対する別紙書面の表示記載(一)、(二)の各意見書に関し、被告が
原告に対してした別紙決定の表示記載の決定のうち、その他の意見書に係る意見は
採択しないとする部分、及び、昭和四八年三月九日付大都第九六二号をもつてし
た。右(二)の意見を却下する旨の決定を、いづれも取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
二、被告
(本案前)
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
(本案)
主文と同旨
の各判決を求める。
(請求原因)
一、原告は、昭和四七年一二月七日から同月二〇日までの期間中縦覧に供された、
設立認可申請中の大阪市庭井土地区画整理組合(以下単に組合という)にかかる事
業計画について、同四八年一月三日、「組合による区画整理事業に対する異議申
立」なる表題のもとに、被告に対し、土地区画整理法(以下単に法という)二〇条
二項による意見書(別紙書面の表示(一)の書面。以下本件第一書面という)を提
出し、ついで同月二六日、「組合による土地区画整理事業に対する異議申立(その
二)」なる表題の表面(同書面の表示(二)の書面。以下本件第二書面という)を
被告に提出し、いづれも受理された。
二、本件第一書面の要旨は、「区画整理の施行及び区域の二点につき異議を申立て
る」とするもので、異議を根拠づける具体的事由として次のとおり主張した。
(一)、組合の構成人員中、相当数の者が血縁関係にあり、事業の公正な運営が期
しがたいこと。
(二) 施行区域については、施行地区に編入する土地と編入しない土地との区別
の基準が不明確なため、区画整理による恩恵を受ける者と受けない者との不平等性
が著しいこと。
三、本件第二書面には、第一書面と異り、申立の要旨となるべき異議の対象事項に
関する集約的な記載はなく、本件区画整理が区画整理本米の趣旨に副わないことの
根拠となるべき、次のような具体的事由が列挙されている。
(一) 原告所有にかかる大阪市<以下略>を本件施行地区に編入することが不当
であること。
(二)、当然本件施行地区に編入さるべき、A及びBの所有地が編入されていない
のは不当であること。
(三)、区画整理図には、国有地や水路等が明示されておらず、又右図面作成のた
めの現地測量をした際、利害関係人に対するなんらの通知がなく、立会の機会が与
えられていないこと。
(四)、実測地に対する減歩率が一九%にも及ぶのに比し、公簿面積地に対する減
歩率が僅かに七%とされており、不平等が著しく、かつ右両者を区別する基準が不
明確であること。
四、原告は、本件第一書面を提出する前に、大阪府又は被告に意見書提出について
の指導を受けようとしたのであるが、意見書提出期間の後半が年末年始にあたり、
担当者が休暇中でその指導を受けることができないでいるうち、意見書提出期限も
追つてきたため、やむなく意見の大略を記載した本件第一書面を提出したものであ
る。そして、右書面提出後被告の担当吏員から、意見書を補充すべき書面の提出が
可能である旨の確認を得たので、本件第一書面の記載内容を、より具体的かつ明確
にし、これを補充するものとして本件第二書面を提出したのである。
五、ところが被告は、本件第一書面と第二書面を相互に関連を有しない別個の意見
書として取扱い、第二書面は法定の提出期間経過後に提出された不適法な意見書で
あるとして、同四八年三月九日、これを却下する決定をすると同時に、第一書面に
対しては、別紙のとおり意見の一部を採択し、一部を採択しない旨の決定をした。
六、しかしながら、右決定は両書面を独立しているものとして取扱つた手続上の違
法がある。
(一)、前記のとおり、第二書面には第一書面に記載しているような異議の要旨と
もいうべき集約的な記載がなく、かつ異議申立(その二)という記載からも明かな
ように、第一書面を補完するものであつて、このことは、被告においても右却下決
定の理由中に「被告の主観においては、この書面は第一書面を補完するものとして
提起したものであると認められる」という趣旨の記載がなされていることからみ
て、自認していたところといわねばならない。
(二)、被告は、第一書面に対する決定において、A所有地に関する原告の意見を
採択しているところ、右意見は、原告が第二書面中に詳細に述べたものであるか
ら、これを採択したということは、少くとも右範囲内においては、被告が事実上第
二書面を第一書面の補完書面として取扱つていたといわねばならない。
七、従つて、両書面を独立した意見書として取扱い、これにもとづいてなされた第
一書面に対する決定は、原告の意見のすべてを審理したうえでなされた決定とはい
えないから、別紙決定のうち不採択の部分、および第二書面による意見を却下した
部分はいづれも違法である。
八、仮に、第二書面による意見が第一書面による意見と別個独立のものであつたと
しても、前記のとおり本件意見書の提出期間が年末年始にまたがり、被告の担当吏
員等から充分説明をきくいとまもなかつたため、取りあえず第一書面を期限内に提
出し、その後二三日目に第二書面を提出したのであつて、本件決定がこれより四二
日後になされている事実を考え合わせると、第二書面が意見書提出期間経過後にな
されたからという一事をもつてこれを却下すべきではなく、これについては法一三
四条二項にいう「容認すべき事由がある場合」にあたるものとして、その内容を審
理すべきものである。
(答弁)
一、本案前の答弁
(一)、法二〇条二項による意見書の提出は、法一四条に規定する事業計画の決定
が関係者の利害に影響するところが重大であることから、知事(本件においては被
告)の自発的な監督権の発動のみに委ねないで、積極的に利害関係者から知事に対
して監督権の発動を促すべき途を講じ、できるだけ利害関係者の保護を図るために
認められたものであり、法二〇条三項による意見不採択の通知は、単に知事がその
監督権を発動しないという態度を表明した事実上の措置に過ぎず、なんらの処分性
を有するものではない。
(二)、事業計画は、それが公告された段階においても、直接、特定個人に向けら
れた具体的な処分ではなく、又宅地、建物の所有者等の有する権利に対し、具体的
な変動を与える行政処分ではない(最高大法廷昭四一・二・二三判決)。仮に事業
計画にかかる意見を採択しない旨の通知に処分性が認められ、取消の訴の対象とな
ると解したならば、結果として、意見書にかかる意見を採択しない旨の通知を争う
ことによつて事業計画そのものを争いうるという矛盾が生じる。従つて、この点か
らみても右通知が処分性を有しないことが明らかである。
(三)、以上のとおり、本件訴は、取消を求めるべき被告の処分が存在しないとい
う点において、不適法として却下されるべきである。
二、本案の答弁
(一)、請求原因のうち、第一ないし第三項、第五項、および第六項中被告が原告
主張のとおりの内容の決定をしたことをいずれも認めるが、その余の主張を争う。
(二)、本件事業計画についての意見書は、縦覧期間の末日たる同四七年一二月二
〇日の翌日から起算して二週間を経過する日、即ち同四八年一月三日までに提出さ
れねばならないのであるところ、本件第二書面が提出されたのは、同月二六日であ
るから、明らかに提出期間経過後のものであり、従つて第二書面による意見を却下
したことにつき、なんらの違法がない。
(証拠)(省略)
○ 理由
一、請求原因第一ないし第三項、第五項、及び第六項中被告が原告主張の内容の決
定をした事実は当事者間に争いがない。
二、本案前の答弁について。
被告は、法二〇条三項による意見書不採択の通知は、知事(又は指定都市における
市長)が、法一四条一項による設立認可を申請した組合に対する監督権を発動しな
いという態度を表明する事実上の措置に過ぎず処分性を有するものではないと主張
するので考えてみる。
組合施行による土地区画整理事業は、知事による組合設立の認可によつて開始され
るのであり(法一四条、二一条参照)、組合が設立されると、定款・事業計画に定
められた施行地区内における土地所有者及び借地権者は、当該組合設立の申請をす
ることについて反対の意思を有している場合でも、すべて組合員とされる(法二五
条、一八条)のであるから、これらの者を含む利害関係者に、組合設立認可申請の
段階において、定款、事業計画についての意見を述べる機会を与えることは、利害
関係者の権利を保護する上からみても、また事業の円滑な施行を図る点からみても
必要かくべからざるものであつて、この意見書提出の機会を与えずになされた組合
設立認可が無効と解せられる所以もここにある。
そして知事が提出された意見書の内容を審査し、意見書にかかる意見を採択すべき
であると認めるときは、設立認可申請者に対し事業計画に必要な修正を加えるべき
ことを命じ、採択すべきでないと認めるときは、その旨を意見書提出者に通知しな
ければならないとされ、意見書の内容を審査するについては、行政不服審査法中の
異議申立の審理に関する規定が準用されているのであり(法二〇条三項、四項)、
さらに、知事の修正命令によつて事業計画の修正がなされた場合には、その修正部
分について右と同様の手続を採らねばならないとされ(同条五項)、意見書の扱い
については慎重を期すべきことを法が要求しているのである。
これらの点を考え合わせると、知事が意見書の内容となつている意見の採否を決す
ることによつて、組合設立認可申請者に対する監督権を発動するとともに、利害関
係者の権利保護と事業の公益的性格を確保しようとするものであり、また意見不採
択の場合にはその旨を決定して意見書提出者に通知することにより、その者の意見
を却下する処分をするものであつて、これをもつて単なる事実行為であるとみるべ
きものではない。
意見書の内容によつては、これに対する知事の判断は自由裁量に過ぎない場合もあ
るであろうが、自由裁量にとどまらず法規裁量となる場合もあると考えられる。例
えば、或土地を施行地区に編入すべきかどうかを、法の目的に照らして判断する場
合など、まさに法規裁量といい得るであろう。
いずれの場合であつても、意見書の内容即ち意見を違法に却下された者は、却下処
分の取消を求める行政訴訟を提起することができるといわねばならない。そしてこ
の見解は、意見書不採択の通知なる処分については行政不服審査法による不服申立
を許さない旨の法一二七条二号の存在によつて左右されるものではない。却つて同
条においては、右通知をも処分の一つとみていることから考えて右見解の正当なる
ことを裏づけるものである。また、被告が引用する事業計画に関する最高裁大法廷
判決も-その当否はともかくとして-右見解を採る上において妨げとなるものでは
ない。
以上説示したところから、被告の本案前の答弁は、これを採用することができな
い。
三、本案について
(一)、本件第一書面と第二書面の一体性の有無
第一書面と第二書面の内容が原告主張のとおりであることは、前示のとおり当事者
間に争いのないところであるが、右第二書面をもつて第一書面の内容を補完したも
のとは、にわかに断定することができない。なるほど一部重複しているとみられる
部分もあるけれども、そうでない部分もあるのであつて、全体として対照するとき
は、両書面は別個独立した意見書とみるのが相当である。
(二)、第一書面による意見に対する被告の処分の適否
第一書面による原告の意見に対し、被告が審理のうえ、本件組合の施行地区に、A
所有にかかる大阪市<以下略>農地五七八平方米を編入すべき旨の命令を組合に発
することにし、その余の原告の意見を採択しない旨の決定をして、原告に通知した
ことは、前示のとおり当事者間に争いのないところであつて、被告がした右一部不
採択の決定は、原告の前示第一書面記載の意見内容に照らすと、これをもつて法の
目的に反する違法があるということができないばかりでなく、裁量権の範囲を著し
く逸脱した違法があるともいうことができないから、結局原告の第一書面による意
見の一部を不採択とした被告の決定部分の取消を求める原告の請求は失当である。
(三)、第二書面による意見を却下する処分の適否
被告がした右却下処分の理由とするところが、第二書面による意見書の提出が、提
出期間の末日たる同四八年一月四日(同月三日は休日にあたるからその翌日が末日
となる)を二二日間経過してなされた不適法なものであるというにあることは当事
者間に争いがなく、第二書面が第一書面と別個独立したものとみるべきことは前説
示のとおりであるから、右被告の判断は正当である。原告は、右期間不遵守につい
ては、法一三四条二項にいう「容認すべき事由がある場合」にあたるものとして、
その内容を審理すべきであると主張しているところ、右事由として原告が挙げてい
る事実が仮に存したとしても、本件における徒過した期間の長さを考えてみると
き、右条項にあたるものと認めることができないから、原告の右主張も採用しな
い。(なお付言すれば、第二書面に記載されているような不服事由の大部分は、区
画整理事業が進捗し、仮換地指定ないし換地指定処分がなされた段階においても、
その当否を争う事由として主張できるものであるから、あえて本件において却下処
分の適否を争わなくても、目的が達せられるであろう。)
四、以上の理由により、原告の請求をいづれも失当として棄却し、民訴法八九条を
適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 下出義明 藤井正雄 石井彦寿)
(別紙) 書面の表示
昭和四七年一二月七日から同年同月二〇日までの期間中縦覧に供された設立認可申
請中の大阪市庭井土地区画整理組合に係る事業計画について
(一) 原告が被告に対し昭和四八年一月三日付で提出した「庭井土地区画整理組
合による区画整理事業に対する異議申立」なる表題の書面。
(二) 原告が被告に対し昭和四八年一月二六日付で提出した「庭井土地区画整理
組合による区画整理事業に対する異議申立(その二)」なる表題の書面。
決定の表示
被告が原告に対し昭和四八年三月九日、大都第九六〇号をもつてなした「意見書に
係る意見の一部を採択し、土地区画整理法第二〇条第三項の規定に基づき、事業計
画において定める施行地区に大阪市<以下略>Aの所有する大阪市<以下略>農地
五七三平方メートルの土地を含めるよう大阪市庭井土地区画整理組合の設立の認可
を申請した者に命ずることとし、その他の意見書に係る意見は採択しない」との決
定。

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