弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審における未決勾留日数中五〇日を被告人に対する本刑に
算入する」との部分を破棄する。
     その余の部分に対する本件上告を棄却する。
         理    由
 名古屋高等検察庁検事長柳川真文の上告趣意は、判例違反を主張するけれども、
原判決は、論旨引用の判例に相反する判断、すなわち、刑の執行と重複する未決勾
留日数を本刑に算入することが違法ではない旨の判断を示したものとは解せられな
いから、所論判例違反の主張は、前提を欠き刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 しかし、職権により調査するに、記録によれば次の事実を明認することができる。
すなわち、被告人は、本件につき起訴前である昭和三七年三月一九日勾留状の執行
を受けて以来、第一審及び原審を通じて勾留を継続されているものである。しかる
ところ、被告人は、これよりさき昭和三六年三月一六日名古屋簡易裁判所において
窃盗罪により懲役一年二月に処せられ、同判決は同月二九日確定し(法定未決勾留
通算一三日)、即日右刑の執行を受け、その後同年一二月二六日仮出獄を許された
が、右仮出獄取消決定により昭和三七年五月一四日から刑期満了の同年一〇月四日
まで残刑の執行を受けた。一方被告人は、同年六月一八日言い渡された本件第一審
判決に対し同月二五日控訴を申し立て、原審はこれに対し、同年一〇月一日控訴を
棄却すると共に第二審における未決勾留日数中五〇日を本刑に算入する旨の判決を
言い渡した。してみれば、被告人は、前記残刑の執行を受けていた期間は前示勾留
と右確定刑とを重複執行されていたことが明らかであり、右のように刑の執行と重
複する未決勾留日数を本刑に算入することは、不当に被告人に利益を与えることと
なり、違法であるといわなければならない(昭和二九年(あ)第三八九号同三二年
一二月二五日大法廷判決、刑集一一巻一四号三三七七頁参照)。従つて原判決中前
記未決勾留日数を算入した部分は結局刑法二一条の適用を誤つた違法があり、刑訴
四一一条一号により破棄を免れない。
 よつて同四一三条但書により原判決中「当審における未決勾留日数中五〇日を被
告人に対する本刑に算入する」との部分を破棄することとし、その余の部分に対す
る上告は、上告趣意として何らの主張がなく、従つてその理由がないことに帰する
から、同四一四条、三九六条によりこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の点につ
き同一八一条一項但書を適用して主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 安田道直出席
  昭和三八年二月二二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介

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