弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 原告の請求
原告と被告とを離婚する。
第2 事案の概要
本件は,夫である原告が,妻である被告に対し,長期間の別居等から婚姻生
活は破綻していると主張して,民法770条1項5号に基づき離婚を求めた事案で
ある。
1 前提となる身分関係等
(1) 原告(昭和21年3月26日生)は,高校卒業後の昭和40年3月22
日,海上自衛隊に入隊し,昭和44年からは潜水艦の乗艦勤務となった。(甲2)
(2) 原告は,被告(昭和22年12月9日生)と知り合って後,約1年間の交
際を経て,昭和47年2月27日婚姻届を了して夫婦となり,同年4月からは神奈
川県横須賀市に家を借りて同居した。なお,これに伴い,被告は勤務していた大阪
の会社を退職した。また,その後,原告と被告は,自衛隊の官舎に移り,さらにそ
の後,神奈川県横須賀市の県営住宅に移った。(甲1,2)。
(3) 原告と被告は,昭和47年12月22日に長女Aを,昭和49年9月1日
に長男Bを,昭和59年1月に2女Cを,それぞれもうけた。(甲1,甲2)。
(4) 原告は,被告との結婚後も引き続き潜水艦の乗艦勤務をしていたが,後記
自衛隊退職前の約2年間は機関科教官として術科学校に勤務していた。(甲2)
(5) 原告は,昭和60年8月10日,自衛隊を退職し,その後の同月23日に
は,被告及び3人の子と住んでいた前記神奈川県横須賀市の県営住宅を出て,神戸
に行き,以来,現在まで被告との別居生活が続いている。(甲2)
なお,戸籍上は,原告が,平成11年12月20日,被告に無断で協議離
婚届を提出したことから,いったん離婚の戸籍記載がなされたが,被告が,神戸地
方裁判所に離婚無効の訴えを提起し,平成12年12月22日離婚無効の判決が確
定した結果,同確定判決に基づく被告の申請により,婚姻記載が復活されるに至っ
ている。(甲1,弁論の全趣旨)
(6) 原告と被告の子らのうち,2女Cは,昭和63年12月2日,当時,被告
及び3人の子が身を寄せていた高知県の原告の実家の火災により死亡した。長女A
は,既に結婚し,現在は東京都に住んでおり,長男Bも,いまだ独身ではあるが,
既に成人し,兵庫県姫路市に住んで働いている。(甲2,被告本人)
2 原告の主張
(1) 原告の生活は,1年の半分ほどは艦上での生活であり,これを終えて家に
帰ると家の中の整理がまったくと言っていいほどされていなかった。被告の親を呼
んで状況を見てもらったこともあった。このようなことから夜中に喧嘩となり,仕
方なく原告は飲みに出るということがたびたびであった。
そのため,原告は昭和60年ころ,横浜家庭裁判所横須賀支部に第1回目
の離婚調停申立てを行ったが,不成立に終わった。
(2) 原告が,術科学校の教官となってからは,朝の通勤時に車で追いかけてき
て新聞忘れているよなどと叫び,術科学校の正門前で新聞を投げつけるなどして教
官の立場をまったく無視される始末で,原告は,いたたまれず,自衛隊を退職し,
単身神戸に行った。
なお,自衛隊の退職金は,被告が買った乗用車のローンの残金の支払に充
てるとともに,残りは全部被告に手渡した。
(3) 神戸に行った後,原告は,横浜家庭裁判所横須賀支部に第2回目の離婚調
停申立てをしたが,被告の出頭が得られず,不成立に終わった。
(4) その後,被告は,原告が神戸に行って就職していた会社に現れ,他の従業
員や社長の前であることないことを言い,そのため,原告は,いたたまれず,退職
を余儀なくされた。
(5) 原告は,平成13年に神戸家庭裁判所洲本支部に第3回目の離婚調停申立
てをしたが,被告の出頭が得られず,平成13年9月26日に不成立となった。
(6) 以上のとおりで,原告と被告との婚姻生活が完全に破綻しており,婚姻を
継続しがたい事由のあることは明らかである。なお,原告に婚姻生活の破綻に一端
の責任があるとしても,別居生活は20年近くに及んでいるうえ,夫婦間の財産も
退職金を渡すことによって清算済みといえるし,その間の子らも,火災で死亡した
2女Cは別として,残りの2人は,既に成人し,結婚あるいは就職していることに
照らせば,離婚が認められて然るべきである。
3 被告の主張
(1) 原告が,自衛隊を退職し,被告及び家族を捨てて神戸に行った背景にある
のは,原告の女性問題であり,原告が主張するような理由によるものではない。ま
た,原告の退職金500万円のうち,被告がもらったのは当座の生活費としての1
00万円のみであり,残金全部をもらったというような事実はない。
(2) 被告が,原告の神戸での就職先を訪ねたのは,被告が生活保護を受けてい
る関係で,役場から原告の勤務先に行き,生活費及び養育費等につき話し合いをす
るよう指示されたからであり,そこで,あることないことを言ったようなことはな
い。
(3) 原告に無断で出て行かれ,そのうえ,無断で離婚届を出された被告とその
家族がどれだけの苦労,迷惑をかけられたか,原告には理解できないものと思われ
る。
自分のことのみに生き,夫として親としての情や責任,義務をまったく果
たしていない原告の離婚請求を受け入れることはできない。
第3 当裁判所の判断
1 婚姻の破綻について
前記第2の1の(5)で認定のとおり,原告は,昭和60年8月10日,自衛
隊を退職し,その後の同月23日には,被告及び3人の子と住んでいた前記神奈川
県横須賀市の県営住宅を出て神戸に行き,以来,現在まで被告との別居生活が続い
ているもので,その別居期間は17年を超える長期間に及んでおり,その婚姻がも
はや完全に破綻していることは,明らかである。
2 原告の離婚請求について
(1) 原告は,自衛隊を退職し,被告及び3人の子をおいて自宅を出て別居をす
るに至った経緯につき,被告の家の中の不整頓や,術科学校の門前で新聞を投げつ
ける等の原告の教官としての立場を無視した行動等を挙げ,甲2(原告の陳述書)
及び原告本人尋問の結果中にはこれに沿うかのような部分がある。しかし,原告が
それら主張及び供述等するところは,それ自体,退職及び別居の理由というには説
得力に欠け,にわかには措信しがたいうえ,他に原告の主張を認めるに足りる証拠
はない。
かえって,原告が詳細を明らかにしないため判然としない部分はあるもの
の,被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,原告が自衛隊を退職し,その
後,被告及び3人の子をおいて自宅を出て神戸に行き別居するまでに至ったのは,
原告の女性問題が原因であったと考えられ,かつ,現在もその女性との関係が継続
していることが窺われる。
そのうえ,原告は,自衛隊退職時,退職金については,被告の希望で買っ
た乗用車のローン残金の支払いをしたほか,残金は全部被告に交付した旨を主張
し,前掲甲2及び原告本人尋問の結果中にはこれに沿う部分があるが,被告は,そ
の本人尋問において,前記ローンの支払い後の退職金のうち被告が受け取ったのは
100万円だけであったと供述していることと対比すると,退職金残額全部を被告
に交付したとの前記原告の供述等はにわかには措信しがたい。また,前記第2の1
で認定の各事実,甲2,原告本人尋問の結果,被告本人尋問の結果及び弁論の全趣
旨によれば(ただし,甲2,原告本人尋問の結果は一部),原告は,被告との別居
開始以降,被告及びその子らの生活を何ら顧みることがなく,生活費や養育費等の
送金等をまったくしてこ
なかったこと,そのため,3人の幼い子をかかえて生活に困った被告は,原告の実
家である高知県の原告の母親宅に身を寄せるとともに,生活保護を受ける等して子
供らを育て上げたこと,その間の昭和61年12月ころ,被告は,生活保護を受け
ている関係で,役場から生活費及び養育費の話し合いを原告とするように指示され
たことから,神戸市D区の原告の勤務先を訪問し,原告と話し合ったが,その直後
に原告は勤務先を退職してしまい,原告からの送金等はその後も得られなかったこ
と,また,昭和63年12月2日,当時被告らが身を寄せていた高知県所在の原告
の母親宅の火災により2女Cがわずか3歳で死亡したが,被告はその葬儀に参列す
ることもしなかったこと,さらに,原告は,平成11年12月20日,原告に無断
で協議離婚届を提出
し,そのため,戸籍上は,同届出に基づき,離婚の記載がなされたこと,これに気
づいた被告が神戸地方裁判所に離婚無効の訴えを提起し,平成12年12月22日
離婚無効の判決が確定した結果,婚姻記載が復活されたこと,その後,平成13年
になって,原告は,神戸家庭裁判所洲本支部に離婚調停を申し立てたが,被告が出
頭しなかったため不成立で終わったこと(原告は,これまでにも神奈川県横須賀市
で同居していた昭和60年初めころ,別居を開始してほどないころに,それぞれ離
婚の調停を申し立てているがいずれも被告が応じず,あるいは被告の出頭がなく不
成立に終わっている。),そこで,原告は,本件離婚の訴えを提起したものである
が,本件訴えにおいても,原告からは,被告に対する慰謝の方途を講ずるに足りる
ような提案はなされ
ておらず,被告は,その本人尋問において,慰謝料も何も支払わないという原告か
らの離婚請求には応じられず,少なくとも,長男Bの結婚までは離婚せずにいたい
旨を述べていることが,それぞれ認められる。
(2) 以上の事実によれば,原告と被告との婚姻破綻の原因は,もっぱら,原告
の女性問題にあったものと認められ,かつ,別居後,原告は,何ら被告及びその子
らの生活を顧みることがなかったもので,その有責性の程度も極めて重いものであ
ること,加えて,原告は,被告に無断で協議離婚届を出すといった行為にまで及
び,被告をして,その誤った戸籍記載を是正するために離婚無効の訴訟を提起せざ
るを得なくさせたものであること,さらには,原告は,離婚無効の判決が確定し,
婚姻記載が復活するや,ほどなく離婚調停を申し立て,本件訴訟の提起に至ったも
のであるうえ,本件訴訟においても,被告に対する慰謝の方途を講ずる提案はない
ばかりか,むしろ,婚姻破綻の責任の大半は被告にあると主張して離婚を求め,こ
れに対し,被告は,夫
として親としての情や責任,義務をまったく果たしていない原告の離婚請求を受け
入れることはできないと主張しているといった本件の一連の経緯にも照らすと,そ
の別居期間が既に17年を超える長期間に及び,原告と被告との間の子らも成人
し,結婚あるいは就職していること等を考慮してもなお,原告の離婚請求をそのま
まこれを認容するのは,正義,公平の観点からも,また,信義則に照らしても相当
とは認めがたく,有責配偶者の離婚請求としてこれを棄却するのが相当である。
3 よって,原告の離婚請求はこれを棄却することとし,主文のとおり判決す
る。
神戸地方裁判所第4民事部
裁 判 官  上  田  昭  典

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