弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はこれを棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は原判決を取消す、原審原告細田機械工業株式会社の昭和二十二年四
月一日より同年九月三十日に至る事業年度の普通所得金額及び超過所得金額くつき
被控訴人が昭和二十三年十二月六日附でなした審査決定を取消す、訴訟費用は第
一、二審とも被控訴人の負担とする旨の判決を求め、
 被控訴代理人は主文第一項同旨の判決を求めた。
 事実並に証拠の関係は、
 控訴代理人に於て原審原告細田機械工業株式会社は昭和二十五年一月六日控訴会
社に合併されて消滅し本件訴訟手続は中断したところ、控訴会社は本件訴訟手続を
受継し本件訴訟を承継したものであると述べ、
 被控訴代理人に於て右事実を認め、
 控訴代理人は新に甲第十六号証を提出し当審証人A、Bの各供述を援用し乙第二
号証に対する認否を訂正してその成立を認め、
 被控訴代理人は原審に於ける鑑定人Cの鑑定の結果を援用し甲第十六号証の成立
を認めた件はすべて原判決の事実に記載してあるとおりであるからこれを引用す
る。
         理    由
 原審原告細田機械工業株式会社が昭和二十五年一月六日控訴会社に合併されて消
滅した事実は当事者間に争がないから本件訴訟手続は右合併により中断し控訴人が
なした本件受継の申立は適法であるので控訴人は原審原告細田機械工業株式会社の
本件訴訟を承継したものと認める。
 先づ被控訴人の本案前の抗弁について判断するに、被控訴人(当時東京財務局長
以下同様につき省略する)が原審原告細田機械工業株式会社に対し控訴人主張のよ
うな法人所得額審査決定をなし原審原告がこれに対し訴願を経ることなく直ちに本
訴を提起したことは控訴人の認めるところである。そして原審原告が本訴を提起し
た当時(記録によれば昭和二十四年二月八日であること明白である)施行中の改正
前の法人税法第三十八条には、審査決定に不服のある法人は「訴願をなし又は裁判
所に出訴することができる」旨規定してある。被控訴代理人はこのように法律に於
で訴願と訴訟との選択を認めている場合に於ても行政事件訴訟特例法第二条の解釈
として苟も訴願が可能である以上先づ訴願を経べぎである。即ち行政事件について
は先づ行政庁自らの反省を促す機会の許される限りその機会を与へるべき必要上右
規定が設けられた趣旨に鑑み仮に法文上訴願と訴<要旨>訟とが選択的に許された場
合に於ても同様であると主張するも、法文上訴願と訴訟とを選択的に許している
合は訴願と訴訟との孰れを択ぶかはその自由とする趣旨で、訴訟を択ぶ場
合は訴願の手続を経ることを必要としないものと解すべく、行政事件訴訟特例法第
二条はこのような明文によつて訴願前置を必要としないことを定めた場合に迄適用
すべきものでないと考へる。
 よつて原審原告が本件審査決定に対して訴願を経ずに直ちに本訴を提起したとて
何等不適法ではないから被控訴人の本案前の抗弁は理由がないものとして排斥す
る。
 次に本案に入つて審査するに、当裁判所は原審原告の本訴請求を理由がないもの
と認める。そしてその理由は以下は附加補足する外すべて原判決がその理由に於て
判示するとこると同一であるからこれを引用する。
 即ち法人税法上課税の対象となる所得とは各事業年度の総益金から総損金を控除
した金額であり、総益金とは資本の払込以外において法人の純資産の増加となるべ
き一切の事実に基く収益その他の経済的利益を指し、総損金とは資本の払戻及び利
益の処分以外はおいて法人の純資産の減少となるべき一切の事実に基く費用その他
の経済的損費を指すものと解すべく、所得の期間計算は当つてその収益又は費用が
どの期間におけるものであるかを決定するについて税法上明文はないが課税の公
平、明瞭、確実、普遍を期する上に於て原則として発生主義によるべきものと云は
なければならない。このことはその活動範囲が複雑多岐は亘る近代法人企業はおい
ては現金主義によつては到底一定の時期においての企業の損益を知りその担税能力
を正確に測定することが困難であることから敢で多言を要しないものと考へられ
る。然しながら発生主義を複雑多岐に亘る所得の形態に対して適用する場合合目的
見地から夫々の場合に即応した内容と限界を設けなければならないことも否定出来
ないところである。そして本件契約が昭和二十一年法律第六十号政府の契約の特例
は関する法律は基く所謂特定契約であることは当事者間に争がなく、成立は争のな
い甲第一ないし第三号証、甲第四号証の一、二、甲第五ないし第八号証、原審証人
D、当審証人A、Bの各供述(但し以上の供述中原審認定並に以下の認定に低触す
る部分を除く)原審に於ける鑑定人Cの鑑定の結果を綜合すれば、右特定契約の締
結に関する一環の手続は、当初進駐軍が日本政府に対し特定の工事の完成、物の生
産又は労務の提供を求める調達要求書(PROCUREMNT DEMAND……
P.D.と略称)を発し、政府は請負人との間に右P、D、記号事項を目的とする
請負契約を締結するが、その報酬金額は未だ確定せず、(唯場合随より成程度の概
算払をなすことがある)、請負人が進駐軍主計将校から作業命令(WORK OR
DER)を得て工事施行の上完成した時はこれを右主計将校く報告してその承認を
得た上その引渡をなし仮受領書(WORK ORDERRELEASE)を受け、
次で工事に要した資材費、労力費、諸役務費、諸経費を計上した請求書を地方庁に
提出して査定を求めると共に、作業完了証明と工事仮受領書を集め同一の品種、規
格を備えて正式受領書の案を作成し、これを主計将校に提出して署名を求め(この
署名を得たものが工事受領書PROCUREMENT RECEIRT……P.
R.と略称)請負人は査定書に右正式受領書を添え特別調達庁は対し支払金額の指
定申請をなし、同庁はこれは基き支払明細書を作成して大蔵省経理担当官に送付し
同省はこれを審査した上請負人に支払金額の指定通知をなし、若し請負人がこの指
定に異議がなければこゝに報酬金額が確定するに至るものであることが認められ
る。従つて工事引渡後報酬金額が確定するの間右の様な手続が要求せられ、一見工
事完成の上引渡した当時に於ては報酬金額は未確定で不明の観は呈するものゝ、右
特定契約はその特異の性質を帯有するもその本体は依然請負契約の実質は失はない
ものと認められる。従て契約成立と同時に報酬金債権は発生し工事完成引渡の後そ
の請求をなし得るものであつて、前記指定によつて始めて債権の発生するものでは
なく、通常の請負契約に於ては契約成立と同時に報酬金額は当事者の合意によつて
定められるのが普通であるが、前段挙示の資料並に昭和二十一年法律第六十号、昭
和二十二年勅令第十一号の決意を参酌すると、特定契約に於ては政府が契約の注文
者となるも契約の目的である工事は進駐軍の命ずるものであり、契約当初に於ては
詳細は亘つて具体的に工事の内容を予め確知し難く且工事は急速を要する為め工事
前に報酬金額の調査決定に手間取ることを許さず、他面不正、不当の報酬金額の支
払はれることを予防せんが為め前記の手続により報酬金額を決定せんとしたもので
あつて、本来契約成立と同時に客観的に適正な報酬金額を当事者の協定によつて決
定すべきものを以上の事情から後社政府の指定によつてこれに代えたものであり、
従て政府の報酬金額の指定はその恣意により一方的に報酬金額を創設するものでは
なく、前記契約当時協定せらるべかリし客観的に適正な報酬金額を確認せんが為め
くなされるものであることが看取出来る。従て工事完成引渡の当時に於ては当事者
にはその報酬金額は不明ではあるが、客観的は適正な報酬金額の債権は現存してい
るものと考へるのを相当とする。よつて同債権を目して未実現利益と云ふこは該ら
ない。
 そしてその報酬債権はその引渡の属する期末に於てその評価が十分可能であり且
容易である。少くとも原審原告に於て本件(九)ないし(三五)の分についてその
評価が従前の関係から十分可能であり且容易であると考へる。(この点原判決の理
由参照)
 又評価可能の債権として存在する以上当然益金に算入すべく、右債権が当時未だ
現実に支払はれないからと云つて、原審原告の担税能力に何等の影響を及ぼすもの
でもないから同債権を目して課税適状にないものと論ずることは出来ない。
 当審証人A、Bの各供述中以上の各認定、見解に反する部分は当裁判所の採用し
難いところでありその他以上の認定、見解を覆すべき資料はない。
 よつて原審原告の請求を排斥した原判決は相当で本件控訴は理由がないから民事
訴訟法第三百八十四条第一項、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり判
決する。
 (裁判長裁判官 渡辺葆 裁判官 浜田潔夫 裁判官 牛山要)

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